第39話: 自民日本国憲法改憲草案批判その2
 【自由民主党日本国憲法改憲草案のデタラメを発掘する---その2】

まずは現行の日本国憲法第九十九条をみてみよう

 

第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務
員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 

立憲主義の理念はこの文言に尽きる。憲法は国民主権の下で国家権力を縛り、権力の暴走を阻止し国民の人権を守るためにあるのだ。

ところが自民党の高市早苗議員は「私、その憲法観、とりません」という趣旨の発言をしたという(『「憲法改正」の真実』、集英社新書、p25)。このように憲法を軽視し・倒錯した狂気に近いメンタリティをもった国会議員が自民党改憲派には山ほどいるのだ。

そこで筆者は平成24の自民党改憲草案をすべて読んでみることにした。そこにあったのは、国民主権を無視し・個人を否定し・戦争を肯定し・国民の自由と人権を制限し・道徳を押し付け・国民の義務を強調しひいては国家総動員につながるような陰湿で凄惨な国民を愚弄しているとしか言えない改憲草案だった。筆者はこんなデタラメな文言の羅列を改憲草案などとは到底呼ぶことができない。以下逐一みてゆくことにする。特に赤で強調している部分に注目してほしい。なおは筆者の感想である。

 

<日本国憲法改正草案 自由民主党 平成二十四年四月二十七日(決定)>

第三章までは

「第38話 自由民主党日本国憲法改憲草案のデタラメを発掘する—-その1

をお読みください。以下第四章から

 

第四章 国会

 

(国会と立法権)

第四十一条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

 

★ここの部分は後で沖縄アメリカ基地建設の法的根拠の不十分さの根拠になる。しっかり覚えておいてほしい。

 

 

(両議院)

第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成する。

 

(両議院の組織)

第四十三条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員で組織する。

両議院の議員の定数は、法律で定める。

 

(議員及び選挙人の資格)

第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律で定める。この場合においては、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない

 

(衆議院議員の任期)

第四十五条 衆議院議員の任期は、四年とする。ただし、衆議院が解散された場合には、その期間満了前に終了する。

 

(参議院議員の任期)

第四十六条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

 

(選挙に関する事項)

第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律で定める。この場合においては、各選挙区は、人口を基本とし、行政区画、地勢等を総合的に勘案して定めなければならない。

 

(両議院議員兼職の禁止)

第四十八条 何人も、同時に両議院の議員となることはできない。

 

(議員の歳費)

第四十九条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける

 

(議員の不逮捕特権)

第五十条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があるときは、会期中釈放しなければならない。

 

(議員の免責特権)

第五十一条 両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない

 

現行憲法の表現も同じ文言なのだけれど、議員の発言は院内では何でもありかな

 

(通常国会)

第五十二条 通常国会は、毎年一回召集される。

 

おいおいおい、「主権者である国民が憲法に基づいて毎年一回召集するんだ」。決して「権力に基づいて召集される」んじゃないよ

 

通常国会の会期は、法律で定める。

 

(臨時国会)

第五十三条 内閣は、臨時国会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があったときは、要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない。

 

憲法に基づいて行政をあずかる内閣は、臨時国会の召集を決定しなければならない」というのが正しい表現だとおもうが。

 

(衆議院の解散と衆議院議員の総選挙、特別国会及び参議院の緊急集会)

第五十四条 衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する。

衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、特別国会が召集されなければならない

 

何度でも書くが、(主権者である国民が憲法に基づいて)召集するのであって、決して(権力に基づいて)召集されるんじゃないのよね。

 

衆議院が解散されたときは、参議院、同時に閉会となる。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

前項ただし書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。

 

(議員の資格審査)

第五十五条 両議院は、各々その議員の資格に関し争いがあるときは、これについて審査し、議決する。ただし、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

 

(表決及び定足数)

第五十六条 両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

両議院の議決は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければすることができない

 

ここの一項はよくわからん。「議事は・・・決し、可否同数の・・・」ってさっぱりわからん。それになぜ現行と比べて一項と二項が逆なんだろう。一項で議事を二項で議決について書いてるんだろうが、そもそも総議員の三分の一以上の出席のもとに議事を開き議決するのが正統と思うが。いかがかな。

 

(会議及び会議録の公開等)

第五十七条 両議院の会議は、公開しなければならない。ただし、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。

 

ここもさっぱりわからん。「出席議員の三分の二以上で『秘密会にする』と決定したなら秘密会にできる」ということなのかな。これじゃ与党が大多数のときは全部秘密会になってしまう。まことに怖ろしいことだ。こんな文言が国民主権の下の最高法規(憲法)としてありうるのか。

 

両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるものを除き、これを公表し、かつ、一般に頒布しなければならない。

出席議員の五分の一以上の要求があるときは、各議員の表決を会議録に記載しなければならない。

 

ここの部分は現行憲法と同じであるが、恣意的に秘密にしまえば全部隠せるではないか。

憲法にこんなことを明記してはいけない

 

(役員の選任並びに議院規則及び懲罰)

第五十八条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。

両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、並びに院内の秩序を乱した議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

 

(法律案の議決及び衆議院の優越)

第五十九条 法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。

衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。

前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。

参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

 

(予算案の議決等に関する衆議院の優越)

第六十条 予算案は、先に衆議院に提出しなければならない。

予算案について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする

 

予算における、この衆議院の優越性は仕方ないんだろうなぁ。文言を変えずに現行のまま採用してるのは怪しいが

 

(条約の承認に関する衆議院の優越)

第六十一条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。

 

(議院の国政調査権)

第六十二条 両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

 

(内閣総理大臣等の議院出席の権利及び義務)

第六十三条 内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、議案について発言するため両議院に出席することができる。

内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、答弁又は説明のため議院から出席を求められたときは、出席しなければならない。ただし、職務の遂行上特に必要がある場合は、この限りでない

 

こんなこと(赤印)を許したら、なんでもありになってしまう。最後の部分「ただし、職務の遂行上特に必要がある場合は、この限りでない」は要らない

 

(弾劾裁判所)

第六十四条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。

弾劾に関する事項は、法律で定める。

 

(政党)

第六十四条の二 国は、政党が議会制民主主義に不可欠の存在であることに鑑み、その活動の公正の確保及びその健全な発展に努めなければならない。

政党の政治活動の自由は、保障する。

 

さりげなく付け足されたこの文言は要注意だな。「政党の政治活動、何でもあり」はいかん。「公序良俗にのっとり、それぞれの政党の理念の範囲で行われる政治活動は、妨げられない」と書くべきであろう。

 

前二項に定めるもののほか、政党に関する事項は、法律で定める。

 

第五章 内閣

 

(内閣と行政権)

第六十五条 行政権は、この憲法に特別の定めのある場合を除き、内閣に属する。

 

なぜ「この憲法に特別の定めのある場合を除き」が挿入されたのか。行政権は三権分立の下ではすべて内閣に属するものである。行政権が内閣を離れ、誰かにあるいは何かほかの

「行政を委託されるような機関」の存在可能性を想定して挿入したのか。これはまさに改憲草案に新たに登場した「第九章 緊急事態のためである。読者は最後までこのことを常に念頭においてこの改憲(改悪)草案を読み進めるべきであろう。

 

(内閣の構成及び国会に対する責任)

第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長である内閣総理大臣及びその他の国務大臣で構成する。

内閣総理大臣及び全ての国務大臣は、現役の軍人であってはならない

 

それじゃ、退役軍人ならばいいというのか。確かに退役したら文民扱いとされるのだろうし、また任命直前に軍人を辞めたらいいということになるだろう。しかし退役しても軍人としてのメンタリティは変わらないだろう。そして軍の希望にそった活動を行うだろう。そういうことに鑑みると「現役の軍人」と書く必然性はなかろう。現行のように「文民でなければならない」とすればいい。

 

内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。

 

(内閣総理大臣の指名及び衆議院の優越)

第六十七条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会が指名する

 

そうかなあ、内閣総理大臣は国民が選んだ国会議員が国民の意思を代行する形で総理大臣を指名するのである。ここんとこ間違えないように。

 

国会は、他の全ての案件に先立って、内閣総理大臣の指名を行わなければならない。

衆議院と参議院とが異なった指名をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が指名をしないときは、衆議院の指名を国会の指名とする。

 

(国務大臣の任免)

第六十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。この場合においては、その過半数は、国会議員の中から任命しなければならない。

内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

 

(内閣の不信任と総辞職)

第六十九条 内閣は、衆議院が不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

 

(内閣総理大臣が欠けたとき等の内閣の総辞職等)

第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、または衆議院議員の総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

内閣総理大臣が欠けたとき、その他これに準ずる場合として法律で定めるときは、内閣総理大臣があらかじめ指定した国務大臣が、臨時に、その職務を行う。

 

(総辞職後の内閣)

第七十一条 前二条の場合には、内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまでの間は、引き続き、その職務を行う。

 

(内閣総理大臣の職務)

第七十二条 内閣総理大臣は、行政各部を指揮監督し、その総合調整を行う。

内閣総理大臣は、内閣を代表して、議案を国会に提出し、並びに一般国務及び外交関係について国会に報告する。

内閣総理大臣は、最高指揮官として、国防軍を統括する。

 

国防軍なぞ、今も今後も永久に要らないと思う。戦争好きの内閣も総理大臣もいらない。

 

 

(内閣の職務)

第七十三条 内閣は、他の一般行政事務のほか、次に掲げる事務を行う。

法律を誠実に執行し、国務を総理すること。

外交関係を処理すること。

条約を締結すること。ただし、事前に、やむを得ない場合は事後に、国会の承認を経ることを必要とする。

法律の定める基準に従い、国の公務員に関する事務をつかさどること。

予算案及び法律案を作成して国会に提出すること。

法律の規定に基づき、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない

 

現行では「この憲法および法律の規定を実施するために、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない」。

 冒頭で「この憲法」という言葉を省いているのは大問題である。これでは内閣は憲法の規定を無視して罰則のない政令ができてしまうことになる。

 

大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

 

(法律及び政令への署名)

第七十四条 法律及び政令には、全て主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。

 

(国務大臣の不訴追特権)

第七十五条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、公訴を提起されない。ただし、国務大臣でなくなった後に、公訴を提起することを妨げない

 

現行憲法の表現とは多少違うが、まあよしとしよう。

 

第六章 司法

 

(裁判所と司法権)

第七十六条 全て司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

特別裁判所は、設置することができない。行政機関は、最終的な上訴審として裁判を行うことができない。

全て裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。

 

(最高裁判所の規則制定権)

第七十七条 最高裁判所は、裁判に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。

検察官、弁護士その他の裁判にかかわるものは、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。

 

ちょっと待って頂戴。現行憲法では「検察官は・・・」となっている。弁護士その他云々」

は必要なかろう。検察は権力側、弁護士その他は主権者たる国民の側に立つのであって、書き込むまでもないと思うのだが。上から目線は憲法になじまないだろ。

 

最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

 

(裁判官の身分保障)

第七十八条 裁判官は、次条第三項に規定する場合及び心身の故障のために職務を執ることができないと裁判により決定された場合を除いては、第六十四条第一項の規定による裁判によらなければ罷免されない。行政機関は、裁判官の懲戒処分を行うことができない。

 

(最高裁判所の裁判官)

第七十九条 最高裁判所は、その長である裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官で構成し、最高裁判所の長である裁判官以外の裁判官は、内閣が任命する

 

どうもおかしい。三権分立の理念からいえば、国民が選良に付託し、立法を両院議会が行い、議会が選んだ総理大臣・国務大臣が内閣を作り行政を行う。司法は立法府(議会)と行政府(内閣)からそれぞれ独立して法の番人たる裁判所が憲法と法律によって司法権を司るわけだ。で、「最高裁判所の長である裁判官以外の裁判官は、内閣が任命する」とはどういうことなの。これじゃ最高裁の判決は内閣のいいなりになるじゃないか

 

最高裁判所の裁判官は、その任命後、法律の定めるところにより、国民の審査を受けなければならない。

前項の審査において罷免すべきとされた裁判官は、罷免される。

最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。

最高裁判所の裁判官は、全て定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、分限又は懲戒による場合及び一般の公務員の例による場合を除き、減額できない。

 

ここの言い回しは気にいらないが、底意が読めないので感想は保留。

 

(下級裁判所の裁判官)

第八十条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣が任命する。その裁判官は、法律の定める任期を限って任命され、再任されることができる。ただし、法律の定める年齢に達した時には、退官する。

前条第五項の規定は、下級裁判所の裁判官の報酬について準用する。

 

現行でも内閣の任命権としているが、現行でも同じ。行政が司法に介入することにはならないのか

 

(法令審査権と最高裁判所)

第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する最終的な上訴審裁判所である

 

へー、最高裁って、こんなに権限が狭かったのか。冤罪が多そうなこの頃であり、司法の独立も上記のように怪しいので、恐怖すら感じるんだよね。

 

(裁判の公開)

第八十二条 裁判の口頭弁論及び公判手続並びに判決は、公開の法廷で行う。

裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、口頭弁論及び公判手続は、公開しないで行うことができる。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪又は第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の口頭弁論及び公判手続は、常に公開しなければならない。

 

ここも筆者は詳しく分析できない。赤にした部分はどういう底意があるのだろうか。

 

第七章 財政

 

(財政の基本原則)

第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければならない。

財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない。

 

すべてを法律でとりしまるなんて無理でしょ。こんな表現をよむと「公序良俗に違反しても法の網をすり抜けていればいい。、限りなく黒に近い灰色でも許される」ということになる。でも法の縛りが万全に及ぶと困るしなぁ。考えどころでっせ

 

(租税法律主義)

第八十四条 租税を新たに課し、又は変更するには、法律の定めるところによることを必要とする。

 

(国費の支出及び国の債務負担)

第八十五条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。

 

(予算)

第八十六条 内閣は、毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その審議を受け、議決を経なければならない。

内閣は、毎会計年度中において、予算を補正するための予算案を提出することができる

 

ほほー「補正予算」を憲法に書いてきたか。

 

内閣は、当該会計年度開始前に第一項の議決を得られる見込みがないと認めるときは、暫定期間に係る予算案を提出しなければならない

 

暫定予算についても書いてきた。まあ予算がきまらなければ何にも進まないので仕方ないことではあるが、公金が動くと魑魅魍魎が集るし、いろいろと胡散臭い。

 

毎会計年度の予算は、法律の定めるところにより、国会の議決を経て、翌年度以降の年度においても支出することができる。

 

第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。

全て予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

 

この予備費も胡散臭い出費の一つ。どこへどう行くか皆目見当がつかない。

 

(皇室財産及び皇室の費用)

第八十八条 全て皇室財産は、国に属する。全て皇室の費用は、予算案に計上して国会の議決を経なければならない。

 

(公の財産の支出及び利用の制限)

第八十九条 公金その他の公の財産は、第二十条第三項ただし書に規定する場合を除き、宗教的活動を行う組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため支出し、又はその利用に供してはならない。

公金その他の公の財産は、国若しくは地方自治体その他の公共団体の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対して支出し、又はその利用に供してはならない。

 

第二十条第三項ただし書ね。「・・・ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない」。そうすると我が国のお金好き・贈収賄好きの政治屋さんは、公金でいろいろと曖昧な支出が許されるわけだ最近話題の政務活動費なぞ使いたい放題になるわけだ。

 

(決算の承認等)

第九十条 内閣は、国の収入支出の決算について、全て毎年会計検査院の検査を受け、法律の定めるところにより、次の年度にその検査報告とともに両議院に提出し、その承認を受けなければならない。

会計検査院の組織及び権限は、法律で定める。

内閣は、第一項の検査報告の内容を予算案に反映させ、国会に対し、その結果について報告しなければならない。

 

(財政状況の報告)

第九十一条 内閣は、国会に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

 

現行憲法では「内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない」とされている。ここで「国民」をはずしているのはなぜかなぁ。第九十条三項との整合性のためと思われるが、わざわざ「国民」を避けることの恣意はなんだろうかな。

 

第八章 地方自治

 

(地方自治の本旨)

第九十二条 地方自治は、住民の参画を基本とし、住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施することを旨として行う

住民は、その属する地方自治体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、その負担を公平に分担する義務を負う

 

ここの部分は、国が負担すべきものを地方に担わせようとする悪意と意図がみえみえ。家族単位でみんな助けあえとか、地方自治体で自主・自立でやれとか、税金をいっぱい取り上げておいて、ご都合主義も甚だしい。

 

(地方自治体の種類、国及び地方自治体の協力等)

第九十三条 地方自治体は、基礎地方自治体及びこれを包括する広域地方自治体とすることを基本とし、その種類は、法律で定める。

地方自治体の組織及び運営に関する基本的事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律で定める。

国及び地方自治体は、法律の定める役割分担を踏まえ、協力しなければならない。地方自治体は、相互に協力しなければならない

 

何をいいたいのかさっぱりわかりません。二重に「協力」を強いて、一体何をさせたいのでしょう。まさか「国家総動員」への伏線ですか

 

(地方自治体の議会及び公務員の直接選挙)

第九十四条 地方自治体には、法律の定めるところにより、条例その他重要事項を議決する機関として、議会を設置する。

地方自治体の長、議会の議員及び法律の定めるその他の公務員は、当該地方自治体の住民であって日本国籍を有する者が直接選挙する。

 

日本国籍がなくったって、そこに住んで地域のために役立っている方々に等しく選挙権を与えるというのが、まっとうな考え方だとおもうのだが。

 

 

(地方自治体の権能)

第九十五条 地方自治体は、その事務を処理する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

 

(地方自治体の財政及び国の財政措置)

第九十六条 地方自治体の経費は、条例の定めるところにより課する地方税その他の自主的な財源をもって充てることを基本とする。

国は、地方自治体において、前項の自主的な財源だけでは地方自治体の行うべき役務の提供ができないときは、法律の定めるところにより、必要な財政上の措置を講じなければならない。

第八十三条第二項の規定は、地方自治について準用する。

 

えーっと、八十三条二項というのは「財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない」か。

 前にもかいたけれど「法律」っておうように胡散臭いんだよな。

 

(地方自治特別法)

第九十七条 特定の地方自治体の組織、運営若しくは権能について他の地方自治体と異なる定めをし、又は特定の地方自治体の住民にのみ義務を課し、権利を制限する特別法は、法律の定めるところにより、その地方自治体の住民の投票において有効投票の過半数の同意を得なければ、制定することができない

 

★ここで現行憲法の第九十五条は「・・・住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない」とあるのだが「国会は」を外したことに大きな胡散臭さを感じる。ここも先の自民改憲草案四十一条・九十三条とともに沖縄アメリカ基地を、憲法を軽視し住民の意向を無視して正当化するための布石だろうか

 因みに現在の沖縄米軍基地は「日米地位協定」に基づいて存在するのだが、これは現行憲法第四十一条(国会は国権の最高機関、唯一の立法機関)・第九十二条(地方自治の本旨)・第九十五条(住民投票)をすべて無視し、国会が例えば「米軍基地設置法」のようなものを立法したことはなく、地方自治を無視し住民投票を行うこともなく、国家権力が強引に存在させているのだ。

 

住民投票に関する条文はここだけに出てくるようだ。後ででてくる憲法改正(第十章(現行憲法では第九章))で国民投票が出てくるのだが、筆者は国民・住民による直接選挙の条文をもっとあちこちにちりばめてもいいと思う。ただし改憲草案は常に「有効投票の過半数の同意」と書いている。とても怪しい。

ついでだが自民改憲草案の第十章はよく読んでください。もちろん後でコメントします

 

第九章 緊急事態

 

おっ、ついにでました緊急事態条項。自民党は戦争をやりたくて仕方ないんですよ。戦争をするとね、財界と政治屋さんが儲かるんです。今は地震や原発崩壊で「緊急事態」とあおって大騒ぎしてますが、本音は戦争だけなんです。あといっぱいなんや条文を書いてますが、皆さんしっかり読み解いてください。

 そうそう、ここに原発事故が全然出てきませんが、怪しいですね。

 

(緊急事態の宣言)

第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。

緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない

内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。

第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。

 

ふむふむ第六十条第二項ね。「予算案について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする」

ほほー、ここでまた衆議院の優越性をもちだしてきたよ。どんどん独裁性が強くなってゆく。

 

(緊急事態の宣言の効果)

第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。

 

おお「政令」ときた。政令とは広辞苑によれば「政治上の命令または法令。内閣が制定する命令」だそうな。おいおい内閣は何でもできてしまうことになった。国会でも衆議院の優越性で多数与党のいいなり。独裁政治の完成・完遂は近い

 

前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。

緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない

 

「最大限」ということは、「まったくあてにするな」と同義だろう。

 

緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる

 

、あーー、もうダメ。「ニーメラーの教訓」を思い出す。

 

自分とは関係がないように見えても、ある人の表現の自由が国家の力、

    政府の力で弾圧されたことを見過ごしていたら、社会の自由の総量が減る

    のを黙認することになる。それはめぐりめぐって、いつか自らの表現の自

   由が侵されることにつながるだろう。・・

かつてドイツでヒトラーの独裁体制が暴威を振るいましたが、ナチス

    が権力を獲得していく過程を、後にニーメラーという牧師が回想して語っ

    た有名な話があります。「ナチスが共産主義者を襲ったとき、自分は少し

不安であったが、自分は共産主義者ではなかったので、何も行動に出なか

った。次にナチスは社会主義者を攻撃した。自分はさらに不安を感じたが、

社会主義者ではなかったから何も行動に出なかった。それからナチスは学

校、新聞、ユダヤ人などをどんどん攻撃し、そのたび自分の不安は増した

が、なおも行動に出ることはなかった。それからナチスは教会を攻撃した。

自分は牧師であった。そこで自分は行動に出たが、そのときはすでに手遅

れだった」。ですから、自分に関係のないことだと見過ごしていると、気

    がついたときは自分の人権や自由も奪われ、手遅れになってしまうという

    ことなんです。だから早い段階で反対や抗議の声を上げないといけません」

     (ニーメラーのエピソードは、丸山眞男「現代における人間と政治」『丸山

      眞男集』第9巻、岩波書店、1996年で紹介されている)

   ・・・・・

     「政府を批判すると、微罪にこじつけて取り締まる。何で引っかけられ

るかわからない。警察にフリーハンドを持たせてそうした人権侵害が日常

化する社会にしていいのか。そんな社会がはたして暮らしいいのかどうか。

よく考えるぺき時に差しかかっています」。・・・

            (吉田敏浩氏著『ルポ 戦争協力拒否』岩波新書、p.183-185

 

 

第十章 改正

 

第百条 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。

憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、直ちに憲法改正を公布する。

 

書くまでもないことだが改憲のハードルがとても低くされている。

現行第九十六条では「この憲法の改正は、各議員の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならないこの承認には、特別の国民投票または国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と書いてある。しっかり読み比べてほしい。

 

第十一章 最高法規

 

おいおいおいおい、現行憲法第九十七条「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」というのはどこに雲散霧消したの。まあいい、これまでの自民党憲法完璧改悪草案国民の自由や天賦の人権は完全に無視されているので、現行憲法第九十七条をとぼけたようにすっ飛ばかすしかなかったんだろうよ。

 

(憲法の最高法規性等)

第百一条 この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

 

(憲法尊重擁護義務)

第百二条 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。

 

あたり前だろ。国民が主権在民のもとに、憲法という最高法規を制定し、権力の暴走の歯どめを行おうとするものである。国民が憲法を尊重するというのは当たり前であって、下記二項を独立させたことに権力の極め付けの悪意を感じる

 筆者はそういう意味でこの上から目線で、国民(及び個人の)自由を制限し、天賦の人権を否定する自民憲法改悪草案を尊重できない

 

国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。

 

現行憲法第九十九条はこのように成っている。 「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」

 このことこそが立憲主義の要諦である。権力側の皆さんゆめゆめ忘るることなかれ。

 

 

附則

 

(施行期日)

この憲法改正は、平成○年○月○日から施行する。ただし、次項の規定は、公布の日から施行する。

(施行に必要な準備行為)

この憲法改正を施行するために必要な法律の制定及び改廃その他この憲法改正を施行するために必要な準備行為は、この憲法改正の施行の日よりも前に行うことができる。

 

改正ではなくて「徹底改悪」だろ。で「必要な準備行為」って、今こそこそ何をやってらっしゃるの。

 

(適用区分等)

3 改正後の日本国憲法第七十九条第五講公団(改正後の第八十条第二項において準用する場合を含む。)の規定は、改正前の日本国憲法の規定により任命された最高裁判所の裁判官及び下級裁判所の裁判官の報酬についても適用する。

この憲法改正の施行の際現に在職する下級裁判所の裁判官については、その任期は改正前の日本国憲法第八十条第一項の規定による任期の残任期間とし、改正後の日本国憲法第八十条第一項の規定により再任されることができる。

改正後の日本国憲法第八十六条第一項、第二項及び第四項の規定はこの憲法改正の施行後に提出される予算案及び予算から、同条第三項の規定はこの憲法改正の施行後に提出される同条第一項の予算案に係る会計年度における暫定期間に係る予算案から、それぞれ適用し、この憲法改正の施行前に提出された予算及び当該予算に係る会計年度における暫定期間に係る予算については、なお従前の例による。

改正後の日本国憲法第九十条第一項及び第三項の規定は、この憲法改正の施行後に提出される決算から適用し、この憲法改正の施行前に提出された決算については、なお従前の例による。

 

あーーあ、疲れた。以下「私、その憲法観、とりません」という歪んだ、国民を愚弄し韜晦する権力側の面々の名前だけでもしっかり憶えておきましょう

 おバカでデタラメな表現の探索で神経を使い、怒りのせいで気が狂いそう。本当に疲れ切った。

平成28118日 鳥越恵治郎

 

憲法改正推進本部

 

平成23年12月20日現在

(平成21年12月 4日設置)

 

本部長   保利耕輔

最高顧問  麻生太郎  安倍晋三  福田康夫  森喜朗

顧問    古賀誠   中川秀直  野田毅   谷川秀善  

中曽根弘文  関谷勝嗣  中山太郎  船田元  

保岡興治

       副会長     石破茂   木村太郎  中谷元  平沢勝栄

古屋圭司    小坂憲次  中川雅治 溝手顕正

事務局長   中谷元

事務局次長 井上信治  近藤三津枝  礒崎陽輔 岡田直樹

 

(役員の並びは、五十音順)

憲法改正推進本部 起草委員会

平成23年12月22日

委員長   中谷元

顧問    保利耕輔    小坂憲次

幹事    川口順子    中川雅治    西田昌司

委員    井上信治   石破茂    木村太郎

          近藤 三津枝<兼務>   柴山昌彦   田村憲久   棚橋泰文

          中川秀直   野田毅   平沢勝栄     古屋圭司     有村治子

          礒崎陽輔<兼務>        衛藤晟一     大家敏志   片山さつき

          佐藤正久   中根弘文  藤川政人     古川俊治     丸山和也

          山谷えり子   若林健太

事務局長  礒崎陽輔

 

平成28年11月8日 鳥越恵治郎