[ちょっと気付かぬ重要症候]
◇【剖検から得た臨床への提言】(NIS 2005:No.4213(H17/1/22))
●画像診断の発達は非正診率を下げていることを予想したが、結論は予想に反した
結果となった(p.42)。
1) 臨床所見をしっかりとる
2) 絶えず重複癌を疑え(胸部CTを)
3) 内分泌腫瘍を見落とすな
4) 肺腫瘍をみたら全身検索をして原発巣を探せ
5) 胸部異常影は病理診断(気管支鏡・経皮肺生検)を
6) 結核の存在を忘れるな
7) 不明癌には大腸内視鏡を
8) 生検結果を鵜呑みにしない
9) 心筋梗塞を単純に考えるな
10) ショック例は大動脈瘤を疑え
11) 到着時死亡(CPAOA)も諦めるな
12) 検査技術の発達は正診率を上げているとは限らない
(東京慈恵会医科大学内科学講座などより)
◇センチネルリンパ節理論
腫瘍から最初にリンパ流が到達するリンパ節(センチネルリンパ節)に最初に
転移が生じるというもの。悪性黒色腫や乳癌では妥当とされている。
◇肺の結節影は非常に大事。奇形、感染症(Tbc、真菌症、サルコイドーシス(1970
年代よりアクネ菌(Propionibacterium acnes)が注目されている)などからリンパ
腫、悪性腫瘍(原発、転移)、良性腫瘍まで非常に多くの原因がある。
over diagnosisから不必要な切除に至らないように十分に原因を見極めること。
(●画像診断は全くアテにならないことを再確認しておく)。
◇高血圧薬(最終的に残るもの)
・βブロッカー:アーチスト・メインテート
・Ca拮抗剤:カルブロック・アテレック(歯肉肥厚がきてもかまわない)
・ラジレス:血中半減期が長い(40時間)。血中で蛋白との結合率が低い(40~50%)。
・併用:βブロッカー+利尿剤、ACE/ARB+利尿剤
・WPW症候群に対して:ARB + Ca拮抗剤(ラジレスもOK)
◇限局性の横隔膜挙上は腹腔内病変(肝臓癌、肝膿瘍など)も考慮する。
◇発熱、原因不明な熱について
・特に乳幼児の原因不明な熱については必ず薬物中毒・誤嚥・大量投与も考慮する。
(カフェイン,コカイン,モノアミン,レセルピン,サリチル酸中毒,覚醒剤など)
◇比較的徐脈とは一般的には体温39度で脈拍110/分より少ない・体温40度で130/分よ
り少ない場合で、体温が37?38度台の場合は言及できない。(NIS 2011:4549:44)
◇デルタ心拍数20ルール:「体温が1度上昇するごとに心拍数が20/分以上増加する
場合は最近感染症の可能性が高い」(NIS 2011:4549:44)
◇感染症:特定の微生物を想定するキーワード(NIS 2011;4536(H23/4/2):35)
・温泉:Legionella
・COPD:H. influenzae, S. pneumoniae, M. catarrhalis
・多量の飲酒歴:K. pneumoniae
・嚥下機能低下、口腔内不潔:嫌気性菌
・鳥への接触:C. psitassi
・最近の抗菌薬投与:P. aeruginosa, その他の耐性菌
・インフルエンザ罹患後:S.pneumoniae, S.aureus
・HIV合併症:Pneumocystis jirovecii, Tbc., MAC
◇原発不明癌について(NIS 2009;No.4468(H21/12/12):78)
・組織型:高?中分化腺癌(60%)>未分化癌・未分化腺癌(30%)
>扁平上皮癌(5%)=未分化悪性新生物(5%)
・剖検例:肺癌(27%)>膵臓癌(24%)>肝胆道系癌(8%)>腎臓癌(8%)
大腸癌(7%)
◇皮膚に腫瘍を見たら皮膚癌だけでなく皮膚の転移性腫瘍も考える。
以下の腫瘍マーカーを調べること:卵巣癌(CA-125)、消化管癌(CEA・
CA19-9・SLX)、膵胆道系癌(CA19-9)、扁平上皮癌・有棘細胞癌(SCC Ag)
肺癌(CYFRA・SLX・NSE(小細胞肺癌))、悪性黒色腫(5-SCD)
◇花粉症関連
・鼻閉(または耳閉感)では上咽頭癌も考える。
・早めに1月頃から抗アレルギー剤で治療を始める。
・花粉症に伴う鼻閉の治療:肩の下に枕を置き顔面を挙上させてバイナス(TXA2
受容体拮抗剤)、コールタイジン(抗炎症・血管収縮剤)などを点鼻。数分後
にステロイド薬を点鼻すると効果がある。高ロイコトリエン薬も効くが高すぎ
る。
・薬剤性鼻炎に注意。
市販の花粉症点鼻薬にはボスミンが入っていることが多く、薬剤性鼻炎をき
たすことがある。使い続けている場合には中止してみる必要がある。
・くしゃみを起こすメカニズムはH2-recepterを介するもののほかに、カプサイ
シン(唐辛子)recepterを介するものがある。
・感作と発症は異なる。感作はIgEを作りやすい体質。
・ディーゼルは花粉症を起こし易くする。
・妊婦にはタベジール、ポララミン、インタールはOK。
・小児の投薬は成人量の半分が基本。
◇1リットルの発汗で580Calの熱量を失う。
◇原因不明のCRP陽性は、リンパ腫、サルコイドーシス、高コレステロール血症、
喫煙加齢変化、アルコール多飲なども考慮(ただし徹底的に炎症性変化を追求)。
◇食欲不振、体重減少において、特に「病識がある」場合は徹底的に原因究明する。
必ず器質的疾患の存在の有無を追求しなければならない。
◇不定愁訴、原因の明確でない頭痛、軽いボケ、うつ状態、脱力感、倦怠感などに
対しては、必ず甲状腺機能を調べること。
◇歯痛:一度は狭心症、心筋梗塞を考慮する。
◇免疫機能が障害された患者の舌の側面の白い病変はoral hairly leucoplakia(OHL)
でEBウイルスが原因。HIV感染者でOHLを認めたらAIDSに進行しやすい。
◇心窩部痛:回盲部の病巣も考える。肝機能を絶対調べておくこと。
その真裏の脊椎の痛みまで考慮に入れて、脊椎の圧痛、打痛も調べる。
(同時に同部またはその周囲に圧痛があるかどうかは鑑別診断に重要)
※突然の心窩部痛、心窩部鈍痛、心窩部不快感はまず胆石とその胆管、胆嚢管
への嵌頓を考える。また背部痛がなくても膵炎まで想起する。
※狭心症、心筋梗塞、心筋炎、感染性心内膜炎など心疾患も考慮
◇腹痛:常に虫垂炎を考える。若い女性のクラミジア感染症(卵管炎さらに上行感染
して肝周囲炎)も。腹痛の部位を考慮しないこと(膿瘍・炎症の波及)。
ひどい糖尿病で腹痛が主訴のことがある。
※下腹部痛:女性では必ず婦人科疾患を想起する。
※狭心症、心筋梗塞、心筋炎、感染性心内膜炎など心疾患も考慮
◇四肢しびれ感・全身脱力感:肺癌(Eaton-Lambert syndrome)
Guillain-Barre syndromeなど末梢神経障害も考える。
甲状腺機能を調べる。
※急な違和感やしびれ感の到来に冷汗を伴ったら循環器系異常(解離性大動
脈瘤や軽いくも膜下出血、狭心症、心筋梗塞、肺梗塞など)も考慮。
◇肩こり・肩頚部痛:胆嚢?胆道系疾患・膵臓・腎臓の検索
狭心症、心筋梗塞、心筋炎・感染性心内膜炎も考慮
※肩甲骨内側の痛みは、筋肉の凝りだと思っても必ず腎臓癌の存在を考慮する。
※肝門部?肝内胆管のCCCでも右季肋部痛、右胸痛、肩こり、背部痛を訴える。
◇肩頚腰背部痛:悪性腫瘍の転移、肺・甲状腺・膵臓・腎臓・前立腺の検索、
解離性大動脈瘤(体位により痛みが変化することあり)も考える。
さらに脊椎炎、脊椎骨髄炎、脊髄腫瘍、MMなども考慮。
(熱の有無は問わない。化膿性・結核性なども考慮。)
※狭心症、心筋梗塞、心筋炎、感染性心内膜炎など心疾患も考慮
◇頚部腫瘤では動脈瘤も考慮する。とても硬いことがある。発熱の有無は問わない。
◇背部痛:どんな痛みでも悪性腫瘍の存在を疑うこと。急激に発症したものは尿管
結石(激しい痛み)をまず考慮。腹部解離性大動脈瘤、狭心症、心筋梗塞
も念頭におく。
胆石--->総胆管への嵌頓--->膵炎、胆管炎合併も考慮
◇糖尿:膵臓癌の可能性
◇不可解な痛み:帯状疱疹(時に悪性腫瘍の存在)もムンテラに加える。
※帯状疱疹:水痘に罹ったあと、ウイルスが三叉神経節や脊髄神経節に潜んで
いて、何かのきっかけで発症。皮疹出現前に診断不能、感染する
が帯状疱疹から帯状疱疹にはならない。帯状疱疹後神経痛は予測
できないし予防できない、悪性腫瘍の全身検索は不必要。
(H19/5/22、医師会講演会より)
◇ネフローゼ症候群(成人):1/10に悪性腫瘍の存在(30~50%は血液疾患、0.5%は
肺癌)
※成人のネフローゼ症候群の原因(NEJM 2005;352:2115)
(NIS 2009;4435(H21/4/25):42より一部追加)
1. 腎疾患
微小変化群、原発性巣状(focal or segmental)糸球体硬化症
続発性巣状糸球体硬化症、ショック腎(Collapsing glomerulopathy)
膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、IgA腎症、Fibrillary and
immunotactoid glomerulopathies
2. 全身性疾患
SLE、糖尿病、B型肝炎、C型肝炎、HIV感染、癌、リンパ腫、鎌状
貧血、アミロイドーシス、骨髄腫、
Light-chain- and heavy-chain-deposition disease、
マラリア、住血吸虫症、梅毒、パルボウイルスB19、毒(花粉、蜂
ヘビ)、薬剤(金、ペニシラミン、NSAIDs)、妊娠中毒、放射線
腎症、移植腎
※多量の蛋白を含んだ尿は排尿後"foamy"(泡立つ)ように見える。
※随時尿において[尿蛋白/尿Cr]比 >= 3.5(g/gCr)の場合[蛋白尿>=3.5g/日]
と同等と考えネフローゼの可能性がある。
◇眼球震盪・不随意運動運動等CNS症状:例えば神経芽細胞腫の様な悪性腫瘍の
非転移性CNS症候(傍悪性腫瘍症候群)
◇狭心痛・前胸部痛(不快感):食道癌、胃癌(噴門・弓隆部)、脳血管障害も
考える。
◇胸やけ・前胸部灼熱感:心筋梗塞も考える。
◇胸痛:特発性縦隔気腫も考えて慎重に胸部レ線を読影する。この場合の胸痛の
痛みの程度は体位によりかなり変化。
※さらに脊椎炎、脊椎骨髄炎、脊髄腫瘍、骨髄腫なども考慮。
(熱の有無は問わない。化膿性・結核性なども考慮)。
※胸痛、胸部レ線画像の異常(胸水)が主訴の胆管癌がある。
※右季肋部痛?胸痛があれば、肝?胆道?膵臓を中心とした腹腔内臓器の
疾患も考慮。
※心室瘤:肥大性心筋症、右室形成不全、先天性(瘤または憩室)
僧帽弁下心室瘤、心筋梗塞に伴う、たこつぼ心筋症
シャーガス病、心筋炎、サルコイドーシス、細菌性心内膜炎
結核性、外傷性、医原性(NEJM 2010;362:259)
◇心筋梗塞後の心原性ショックでは以下を鑑別する(NEJM 2010;363:2658)
1. 左室流出路の閉塞
2. ひどい右室機能不全
1) 右室梗塞
2) 肺梗塞
3. 出血性心膜炎または心膜血腫による心タンポナーデ
4. ひどい心機能不全を惹起するような再発性虚血性変化
5. 機械的合併症
1) 乳頭筋断裂
2) 心筋破裂(穿孔)
・偽心室(動脈)瘤
・心室隔壁の破裂
・自由心室壁の破裂
◇高血圧:腎臓癌、副腎癌も考える。(特に治療抵抗性の高血圧に注目)
(治療抵抗性高血圧:脳幹部血管圧迫・閉塞性動脈硬化症・薬剤性高血圧など)
◇大腿部痛・鼠徑部痛:閉鎖孔ヘルニア、後腹膜腫瘍、腸腰筋膿瘍、骨髄炎等
◇心電図異常:脳血管障害(特に、くも膜下出血)も考える。
◇肺水腫:脳血管障害、脳挫傷も考える。
◇L5/S1という位置の重要性:この部分は大動静脈が分岐する位置。さらに正中仙骨
動脈もあるから手術には大いに注意が必要。
◇貧血において以下の定型的考慮が必要
・MCVが大きければ(大赤血球)必ず何か病態がある:肝疾患、血液疾患、薬剤に
よる核酸合成阻害など。
<大球性貧血(MCV>100)鑑別のアルゴリズム>(H19.4.19福山内科会)
○大球性正色素性貧血(MCV>100、MCHC:30?35g/dl)
1. VB12低値
1) 抗内因子抗体(+):悪性貧血
2) 抗内因子抗体(-):その他のVB12欠乏症
2. 葉酸低値:葉酸欠乏症
3. 巨赤芽球増加(VB12、葉酸が正常):その他の巨赤芽球貧血
4. 網赤血球増加
1) 溶血性貧血
2) 出血による貧血
5. 肝障害、その他
・MCVが小さい(小球性貧血)場合は鉄欠乏性貧血、慢性炎症、サラセミアを考慮
<小球性貧血(MCV<80)鑑別のアルゴリズム>(H19.4.19福山内科会)
○小球性正色素性貧血(MCV<80、MCHC:<30g/dl)
1. 血清Fe低値・TIBC増加・フェリチン低下:鉄欠乏性貧血
2. 血清Fe低値・TIBC↑↑:無トランスフェリン血症
3. 血清Fe正常ないし軽度増加・TIBC正常ないし軽度低下
1) 鉄芽球性貧血
2) サラセミア
サラセミア・インデックス(= MCV/RBC * 100万)が13を
下回るとサラセミアの可能性が高くなる。
4. 血清Fe低下ないし正常・TIBC低下ないし正常:二次性貧血
・正球性貧血(MCV:80〜100)鑑別のアルゴリズム(H19.4.19福山内科会)
○正球性正色素性貧血(MCV<80、MCHC:30?35g/dl)
1. 末梢血への芽球出現:急性白血病(あるいはMDS)
2. 汎血球減少
1) 再生不良性貧血
2) 赤血球形態異常:MDS
3. 網赤血球増加
1) Hamテスト(+):発作性夜間血色素貧血
2) Cooms(+):自己免疫性溶血性貧血
3) 赤血球形態異常:遺伝性球状赤血球症
4) 出血(+):急性出血
・網状赤血球低値:再生不良性貧血、赤芽球癆、ウイルス・薬剤性の造血障害など
※後天性赤芽球癆の鑑別診断(NEJM 2007;357:1749)
a. 薬物:最も多いのはフェニトイン
b. 感染:パルボウイルスB19、mumps、肝炎ウイルス、EBウイルス
HIV(稀)
c. 悪性新生物:非ホジキンリンパ腫、胸腺腫
ホジキンリンパ腫(稀)
d. 骨髄異型性症候群(MDS)
e. 自己免疫疾患
f. 妊娠
g. ABO血液型不適合性同種間骨髄移植
h. 特発性・原因不明(これが約50%を占める)
・フラグメント(+):血管内溶血(DIC,TTP/HUS,MAHA,TMAなど)
・慢性貧血:痔出血を患者は言わない。
悪性リンパ腫の可能性(リンパ節腫脹を探す)
※寝たきり老人のやや急な貧血では逆流性食道炎も考慮する。またカテーテ
ルや胃ろう栄養の患者では胃潰瘍-->失血-->貧血も考慮する。
◇多血症鑑別のアルゴリズム(H19.4.19福山内科会)
○多血症
1. 脱水あり:相対的多血症(熱傷、嘔吐・下痢、発汗など)
2. 脱水なし
1) 血漿エリスロポエチンの増加あり
a. SpO2低下あり:高値居住、呼吸器疾患、チアノーゼ型心疾患
b. SpO2低下なし:腎疾患、エリスロポエチン産生腫瘍、内分泌
疾患、異常ヘモグロビン症
2) 血漿エリスロポエチンの増加なし
a. 循環赤血球量増加あり:真正多血症、エリスロポエチン受容
体異常
b. 循環赤血球量増加なし:ストレス多血症
◇血小板増加または減少鑑別のアルゴリズム(H19.4.19福山内科会)
○血小板減少症
0. 偽血小板減少症(EDTA依存性血小板凝集による)
1. 脾腫あり
1) 骨髄異常:白血病、悪性リンパ腫
2) 骨髄正常:肝硬変、門脈圧亢進症
2. 脾腫なし
1) 骨髄異常:再生不良性貧血、骨髄線維症、癌の骨髄転移
2) 骨髄正常:ITP、DIC、TTP、HUS
○血小板増多症
1. 出血症状あり
1) 骨髄異常:CML、特発性骨髄線維症
2) 骨髄正常:出血後のリバウンド
2. 出血症状なし
1) 骨髄異常:本態性血小板血症、真正多血症、鉄欠乏性貧血
2) 骨髄正常:化学療法後のリバウンド、悪性貧血・葉酸欠乏性貧血
治療開始後のリバウンド
◇汎血球減少とは(随所で値がちがうが概ね以下の値と考えておく)
Hb:7.0g/dl以下・WBC:1500/μ以下(好中球は1000/μ以下)・Pt:50000/μ以下
◇不正性器出血(自覚的):婦人科で異常なければ消化管や尿路系を考える
(患者は尿路からの出血を間違えていることもある。)
◇頑固な湿疹・皮疹:Leser-Trelat 兆候。
多発性筋炎・皮膚筋炎に合併するinternal malignancyに注意。
降圧剤ニフェジピンは頑固な皮疹を生ずることがあるので注意。
※皮疹:全身疾患の皮膚症状かも(Hystiocytosis-X・LCH等)しれない。
◇皮膚に腫瘍を見たら皮膚癌だけでなく皮膚の転移性腫瘍も考える。
以下の腫瘍マーカーを調べること:卵巣癌(CA-125)、消化管癌(CEA・
CA19-9・SLX)、膵胆道系癌(CA19-9)、扁平上皮癌・有棘細胞癌(SCC Ag)
肺癌(CYFRA・SLX・NSE(小細胞肺癌))、悪性黒色腫(5-SCD)
◇手掌・足底部が橙色(カロチン色)になる:代謝の低下、甲状腺機能低下、神経性
食欲不振症などで見られる(かぼちゃ・にんじん・みかんの食べ過ぎに注意)。
◇頑固に続く喘息発作:そば穀の使用の有無をかならず聞くこと。
◇原因不明の咳や発作性の咳:気管内異物、食道癌も考慮。嚥下性気管支炎・肺炎、
逆流性食道炎、ACE阻害剤の副作用も考慮。
◇大腿の付け根が痛くて足が伸ばせぬ:閉鎖孔ヘルニア、Psoas signも考える。
◇倦怠感・眩暈・頭重感・食欲不振等自律神経症候のみ:糖尿病、代謝異常、中毒等
アルコール多飲、精神的ストレスなど。また甲状腺機能を調べる。
◇倦怠感のみ:大動脈弁疾患、僧帽弁疾患、肺気腫(COLD)を考える。
念の為甲状腺機能、副腎機能、下垂体機能も調べる。低血糖も考える。
◇下腿浮腫:骨盤内腫瘍、後腹膜腫瘍も考える。
◇RS3PE(RS3PE;remitting seronegative synmetrical synovitis with pitting
edema):PMR様(全身のどこかの痛み、朝のこわばり、炎症反応・赤沈亢進など)
の症状を呈し手足の浮腫が著名な場合に考慮する。
◇のどが詰まる・嚥下時の不快感:噴門?fornixの胃癌。食道癌。
◇喉の痛み:亜急性甲状腺炎を疑う。(意外と多い)
◇嗅覚脱失:カプトリルなど薬物副作用を考える。
◇急性中耳炎では肺炎球菌、モラクセラ・カタラーリス、インフルエンザ菌が3大原
因菌であるが鼻咽腔にコロニーを形成せいしている頻度が非常に高い。
(NIS
2010;No.4522(H22/12/25):85)
◇異臭症・悪臭症:てんかん性の嗅覚異常発作を考えて、バルプロ酸などの抗痙攣
剤の投与を試みる価値がある。
◇頭痛:緑内障を見逃さない(嘔吐も伴うことあり)。甲状腺機能検査も。
◇原因不明の全身痙攣:アミノグリコシド系抗生剤、NSAID+ニューキノロン等、薬物
の副作用を考える。
◇興奮状態:錯乱・興奮状態でも低血糖の可能性を考える。
◇原因不明の嘔吐:低ナトリウム血症も考慮。
◇光視症・飛蚊症:網膜剥離を考える(次いで視野欠損を呈する)。霧視にも注目。
(光視症:目が光でピカッと輝いた様に見える状態)
◇閃輝暗点(視覚異常=目の前にキラキラ光る点やギザギザの光が拡がるのが見える
ことがある)を前兆として片頭痛が起きることがある。(--->片頭痛の薬であ
るミグシス(塩酸ロメリジン)を投与してみる)
◇元々便秘気味の人が、突然下痢した時:下痢の原因が何であろうとColonの検査を
する。結腸癌の可能性を否定出来ない。
◇大腸メラノーシスについて
癌との関係はない。便秘薬(特にアロエ、センナ、ダイオウ)を半年?1年以上
服用し続けるとその成分が大腸粘膜に蓄積して黒ずみ腸の動きが悪くなる。治療
はそういう緩下剤を中止すること。
◇下肢がだるい、体が弱くなった、力が萎えた:ALSなど神経変性症も考慮。
末梢神経炎(障害、例えばギラン・バレー)や甲状腺機能低下も考慮。
◇嗄声:呼吸障害に伴う種々の疾患も考える。
呼吸筋を萎縮させる病態(ALS、myelopathy、肺気腫など)も考慮。
◇霧視、羞明(photophobia;光がまぶしい)、飛蚊症さらに続発緑内障、続発白内
障:サルコイドーシスの可能性。
◇鬱病・鬱状態:特に鬱を起こす原因が不明の場合膵癌も考慮する。
甲状腺機能を必ず調べること。血糖も調べること。
SLEを見逃さない。
薬剤による鬱病・鬱状態、特に抗鬱剤でも鬱になる可能性あり。
(inf-α、ステロイド、アルドメット、インデラール、シメチジン、
アルコール、プリンペランなど)
◇軽い意識障害(痴呆・見当識障害):甲状腺機能低下、低血糖、下垂体機能低下
アジソン病ほか内分泌系疾患も考慮
◇意識障害の鑑別診断
1) AIUEO-TIPS:Alcohol
Insulin
Uremia
Electrolytes/Endocrinopathy/Encephalopathy
Oxygen/Overdose
Trauma/Temperature/Tumor
Infection
Psychiatric/Porphyria/Poison
Shock/stroke/Seizure
2) Do DONT:Dextrose, O2, Naloxone, Thiamine(意識障害をみたらこうする)
◇痴呆・認知症の見逃し易い徴候について
物忘れについて訴えない(物忘れを忘れている)。本人と家族の話が全く違
う。嘘や言い訳で取り繕う。家族の返答を頼りにする振り向き動作。楽観的雰
囲気がある。(うつ病との鑑別が難しい)。
◇ 4大認知症
1) Alzheimer型:元気な認知症状、学習・記憶障害、上手な取り繕い
2) 脳血管性:段階的な悪化、手足の麻痺、呂律不良、誤嚥、情動失禁
3) Lewy小体型:変動する認知機能、ありありとした幻視、Parkinson兆候
大きな寝言・寝ぼけ、抗精神病薬過敏、起立性低血圧・失神
うつ
4) 前頭側頭型:脱抑制、自分勝手、他人との共感欠如、常同的行動
言葉が少なくなる。
◇認知症の中核症状と周辺症状
1) 中核症状:記憶障害、実行機能障害(計画ができない)、失行(着衣失行
・道具がうまく使えない)、失認(ものが何かわからぬ・迷子
になる)、失語、見当識障害
2) 周辺症状:抑うつ、妄想、幻覚、睡眠覚醒リズム障害(夜間不眠)
不安・焦燥、介護抵抗、食行動異常(何でも食べようとする)
暴言・暴力・攻撃性・易怒性、徘徊、昼夜逆転、譫妄、不穏
アパシー、排泄異常など
◇脳血管障害・各種中枢神経病変に関して
○若い婦人の脳梗塞は経口避妊薬服用について考慮。
○脳梗塞ではホモチスチン尿症、抗リン脂質抗体症候群、膠原病、ベーチェット病
も考慮。
○脳出血ではアミロイドーシス、白血病、ITP、抗凝固療法なども考慮。
○頭痛は軽度でも(特に突発している場合には)くも膜下出血に注意。
特に「何時何分何秒」」というように特定できて瞬時にその頭痛のピーク
に達するような頭痛はくも膜下出血を疑え。
○めまいが脳幹梗塞の初発症状のことがある。
○めまい・嘔吐は小脳梗塞を考える。
○脳卒中を考えた時は、必ず唾液を飲み込ませて嚥下障害の有無を確かめる。
○舌や口の周囲のしびれはラクナ梗塞を考える。
○口の周囲と手掌に限局する知覚障害は視床の病変を考える(非常に稀)。
○複視があれば脳幹や内頚動脈閉塞についても考慮する。
○声や発音で病変を推定する。
・パ行の発音が出来ない:
顔面神経麻痺(前額筋が障害されて眉の上方移動で額に皺ができないの
は末梢性(核下性)顔面神経麻痺)
・ラ行(サ・タ・ナ行)の発音が出来ない(舌がうまく動かない):
舌下神経またはその末梢の麻痺
・カ行の発音が出来ない:舌咽神経の麻痺
・声が鼻に抜ける:迷走神経麻痺
・開口不全:三叉神経麻痺
○呼吸状態による部位の推定。
・Chayne-Stokes呼吸:皮質下病変、間脳の病変
・過呼吸、頻呼吸:橋、中脳の病変
・失調性の乱れた呼吸:延髄の病変
○眼球の上で聴診して強い血管雑音が聴かれたら同側内頚動脈の閉塞
○monoplegia(単麻痺)、paraplegia(対麻痺)では先ずは脳血管障害を考え
ない。ただし大脳皮質運動領域の限局性病変ではmonoplegiaを来す。
・中心前回(運動領)腫瘍は、脱落症状としては単麻痺、刺激症状としては
Jacksonてんかんで発症するから部位診断は容易である。中心旁小葉損傷
(旁矢状髄膜腫が多い)は初め末梢性腓骨神経麻痺のような症状を呈する。
○瞳孔
・両側散瞳:アルコール中毒、重症低酸素血症、バルビツール酸系薬剤中毒
アンフェタミン中毒、アトロピン中毒
・両側縮瞳:ヘロイン中毒、モルヒネ中毒、有機リン中毒、視床病変、中心性
ヘルニアの初期、橋出血(pinpoint pupil)
・一側散瞳+対光反射消失:障害側の動眼神経麻痺(鉤ヘルニア、脳動脈瘤破裂
、中脳障害)
・一側縮瞳+眼瞼下垂+発汗低下:Horner症候群
○視野障害と病変(患者あるいは家族が”眼が見えにくい”と言ったら後頭葉の
病変も考える)
・一側全視野欠損:視神経障害
・同名性半盲:視野の同じ側が同時に障害される。視交差より上位の病変
同名性上1/4半盲は視放線が側脳室側頭角を迂回する部分の障害
視放線?鳥距野皮質では黄斑部回避を示すが、視索部では黄斑部
回避を示さない。(右同名性半盲なら左脳の病変)
・両耳側性半盲:視交差の障害。視交差の下方よりの圧迫では両耳側性上1/4半盲
となる。また視交差の上方よりの圧迫では両耳側性下1/4半盲
※視覚路障害部位と視野欠損(内科2007増大号、Vol.99、No.6、p.976)
左視束:左眼全盲
視交叉部左外側からの圧迫:左側接合部暗点・右側1/4盲
視交叉部:両耳側半盲(特に下垂体腫瘍)
左視索:右側同名性半盲
左視放線の下方線維:右側上1/4盲
左視放線の上方線維:右側下1/4盲
左後頭葉:右側同名性半盲
・中心暗点(時に小視症や変視症を伴う)
片側中心暗点では中心性漿液性脈絡網膜症、網膜静脈(分岐)閉塞症、黄斑
部変性症、黄斑部網膜剥離など眼科疾患を考える。
両側の暗点拡大は頭蓋内圧亢進(脳腫瘍・水頭症・悪性高血圧)を考える。
石津暗点(盲斑中心暗点)では軸性視神経炎・球後視神経炎・視神経内膠細
胞腫・脚気・中毒性多発性神経炎などを考える。
○半側空間無視(失認)について
1) 半側空間無視(半側空間失認)(unilateral spatial neglect,
heispatial neglect)の定義
半側空間無視(半側空間失認)は、半側視空間失認、一側空間無視
とも呼ばれる。(右)劣位半球障害の左片麻痺の高次脳傷害としては最
も多く見られる症状である。
・外界に対する無視:heispatial neglect
・身体に対する無視:unilateral spatial neglect
(文献によっては、空間に対する無視と身体に対する無視を別物と
して表記しているものもある)。
空間の左右いずれかの半側を認知できず無視するといわれるが、ほ
とんどが左側である(右側の無視も存在する)。しかし「半側」といい
つつも、認識できない一定の境界が存在するわけではなく、検査や状
況によって無視される範囲は一定ではない。
視覚的なものに限らず、感覚性の入力運動を伴う出力との密接な関
係における右方向への反応が特徴である。視野障害ではなく、左下四
半盲、同名半盲や半側身体失認(本症状とは別物)を伴いやすく、無視
の自覚はない。
2) 半側空間無視(失認)の障害病変(原因)
右頭頂葉(右側頭頂葉後部) と言われるが、この症候は劣位半球で
ある右大脳半球病変の代表的なものであるから、右大脳半球障害の場合
はほとんどどこでも起こりえると考えてよい。
右側頭葉?頭頂葉?後頭葉接合部が重要とされてきた(中大脳動脈
梗塞によることが多い)が後方へ進展する右被殻出血でも出現する。
またそのほかにも内包後脚や視放線起始部など様々である。
3) 半側空間無視の教科書的(一般的)な症状
(ほとんどが左側の空間の対象物を無視し、左へ注意が向かない。
下記は重症例または急性期症状)。
・急性期は、頭部、眼球ともに右側を向けている。
・ナースコールやめがねを左に置くと見つけられない。
・左方にある食物に気づかず眼前の皿の左半分の食物を残す。
・読書などでは改行して読めず、意味がわからない。
・車椅子のブレーキを掛け忘れたり、フットレストを上げ忘れて
危険を伴う。
・車椅子や歩行では左側の障害物にぶつかる。
・左へ回ること、左に曲がることができないため迷う。
・図形や時計の文字盤の模写では左半分は書かない。
・横に並んだ文字も右半分のみ読む。
4) 半側空間無視の臨床的な特徴
「半側を無視する=半側が見えない」と認識されている看護師さん、
PT/OT/STさんも多いようですが、そういうわけではありません。半側
を無視すると思われる方の眼球運動、眼球方向をも確認していない人
が多いと思います。
半側空間無視は半側を無視するというより、病識が乏しいといった
方がしっくり来ると思われます。(が、重度の半側無視患者でも半盲
などに気づいている場合などがあります。半側空間無視の根底にある
のは病態失認・身体失認、そして空間性の注意障害に非空間的要因が
加わった状態と言えると思います。
また、左右対称的な物品や人の顔、物の一部を見れば他の部位が想定
できるものについては無視が出現しにくいようです。
5) 半側空間無視と同名半盲について(鳥越の私見)
半側空間無視は殆どが左側空間無視(つまり右大脳半球皮質の障害の
場合に生ずる)としてあらわれると考えておればいい。また同時に右脳
側の視交差上位の病変で左同名半盲が起きる。したがって左側空間無視
と左同名半盲は合併していることが多いので、患者の症状のみからこの
両者をことさらに区別する必要はないだろうと思う。臨床症状は両者と
もに多くは「左側がみえない」と考えれば了解可能な行動をとる。例え
ば左側のものが見つからない・車椅子で左には回れない・食事は右半分
だけ食べる・左側の障害物にぶつかる・時計が半分しか見えないなどで
ある。 CTやMRIでも病変の位置によっては、左側空間無視なのか左同名
半盲なのか分からないことがあるだろう。
(以下Webより:半側空間無視と同名半盲は合併することも多いのですが
別個の症候として扱わなければならないと思います。半側空間無視が
存在するかどうか調べる簡易的方法として、私は聴診器を左右の手で
水平に持って、患者さんに正中を指させます。同名半盲のみの方は、
盲側へ頚を向けて空間が存在することを確認した上で(聴診器を盲側
端まで確認した上で)、正しく正中を指すことが出来ます。半側空間
無視を有していると、障害の程度とともに健側へずれて指します)。
○眼球の偏位による病変の特定(病変部の正常機能が障害されたとして考える)
・斜偏位(例:右眼球は下内側へ、左は上外方へ)は橋の病変、位置は下内側
偏位をとった側である(この例では橋右側の病変)。一般に後頭蓋窩の病変で
微小梗塞、脳幹梗塞、橋出血、小脳出血を考える.
斜偏位では上下斜視を来し垂直性の複視を訴えるが、「焦点があわない感じ」
とか「ブレてみえる」などと訴える。眼科で確認する。
・共同偏視:被殻出血では病巣をにらむ様に偏視(左被殻出血( ・)( ・)。
瞳孔は普通大で対光反射正常)。小脳出血や視床出血では健側を
にらむ(瞳孔は縮小または不同)。
・水平性:偏位側のfrontal eye fieldから対側の橋のPPRF(paramedian
pontine reticular formation)までの経路の障害で、天幕上の
破壊性病変では病巣側へ天幕下では健側に偏位することが多いが、
痙攣発作など刺激性病変では反対に偏位。
・垂直性(下向き):脳幹被蓋部の圧迫によるものがおおいが、肝性昏睡
など代謝性昏睡でも生じる。視床出血が中脳へ伸展
すると内下方へ偏位。
・垂直性(上向き):痙攣、Cheyne-Stokes呼吸の無呼吸時、脳幹虚血、
脳炎、小脳虫部の出血
・内下方偏視(両目が鼻先を見る様に偏視):視床出血(瞳孔は縮小)( .)(. )
・眼球の正中位固定+縮瞳:橋出血( . )( . )。
・眼球震盪:小脳出血、椎骨脳底動脈循環不全
・周期性眼球垂直運動:橋出血、(小脳出血)
・片眼の外下方偏位:動眼神経障害
・片眼の内方偏位:外転神経障害(頭蓋内圧亢進でも生じ、局在的意義はない)
・四肢、顔面に動きがない状態で自発的で意図的な眼球運動:閉じ込め症候群、
緊張症、偽昏睡、植物状態
・眼球彷徨(眼球が左右にうろつく(roving eye movement)):眼球運動に関
する神経核(動眼、滑車、外転)と各神経核間の線維連絡が保たれ脳幹機能
が比較的保持されていることを示す。大脳半球の障害、両側天幕上病変、代謝
異常、中毒など。
・眼球浮き運動(ocular bobbing、両眼が急速に下方に偏位し、ゆっくり正常
に戻る動き):脳幹(特に橋)の障害時にみられる(橋出血、橋梗塞、小脳
出血)
・”人形の目”現象
脳幹障害がなければ頭を急速に上下左右に動かすと眼球はその運動方向
と反対方向に動く。このような眼球運動を人形の眼現象という。人形の目
現象が消失し、頭部とともに眼球が動けば、脳幹や中脳の障害を示唆する。
脳死を判定するためには、全ての脳幹の反応が消失していることを確認し
なければならない。脳幹反応検査には人形の眼運動(眼球頭反射)のほか
に対光反射、角膜反射、毛様脊髄反射、咳反射、前庭反射、咽頭反射等が
あり、全て消失していることが脳死の条件となる。ただし、意識のない外
傷患者で頸椎損傷が否定できない場合に、脳幹の機能を評価するために安
易にこの検査をおこなうと頸髄損傷を悪化させる可能性があるので注意を
要する。
○舌下神経麻痺:舌を前方に突き出すと麻痺側に偏位。両側麻痺では突き出しが
できない。
○舌咽・迷走神経障害:開口して「アー」と発音させる。健側の口蓋帆のみ挙上
して口蓋垂の健側への偏位、咽頭後壁の健側への偏位あ
り。両側麻痺は動きが少なくむせる。
○味覚脱失(ageusia):舌前方2/3の味覚脱失は鼓索または膝神経節(顔面神経)
の障害によって起こる。舌の後方1/3は舌咽神経の障害
によって起こる。孤束およびその核の障害は一側の味覚
脱失を生ずる。橋の中央部近くの障害は両側味覚路の
破壊のため味覚脱失を起こす。(奥村二吉「神経病の
検査と診断」、pp.34-36より)
○右脳について
脳卒中によってひらめいたこと。それは右脳の意識の中核には、心の奥深
くにある、静かで豊かな感覚と直接結びつく性質が存在しているんだ、とい
う思い。右脳は世界に対して、平和、愛、歓び、そして同情をけなげに表現
し続けているのです。(ジル・ボルト・テイラー『奇跡の脳』竹内薫訳、新
潮社、pp.162-163)
安らぎの感覚は、現在の瞬間に起こる何かです。それは過去を反映したも
のや、未来を投影するものではありません。内なる安らぎを体験するための
第一歩は、まさに「いま。ここに」いる、という気になること。(ジル・ボ
ルト・テイラー『奇跡の脳』竹内薫訳、新潮社、pp.194-195)
◇大脳構造の概略(野村総一郎氏著『精神科にできること』講談社現代新書,
pp.42-45)
1. 前頭葉
基本的なものから高度なものまで、いろいろな働きをもっており、人間の脳の
中では最も重大な役割を担っているとも言える。一番基本になる役目が、とりあ
えず届いた情報を一時的に溜めておく働きである。これができないと、考えるこ
とや判断したりすることに支障が出る。次に頭項菓にコトバとして貯えられてい
る過去の知識とか記憶を引き出してきて、現在とりあえず貯めてある情報と照ら
し合わせ、今からどうすべきかを判断したり、具体的な情報を抽象的に加工して、
さらに良いアイデアを出したりする。その場合、コトバをしゃべる働きも司る。
この他にも、一定のやる気を引き出したり、相手の気持ちを推察したり、人間集
団の中でうまくやっていくための微妙なやりとりを統括するなどの、非常に高度
な働きも担っている。前頭薬が障害されたとしても、すぐに生きていけなくなる
ほど致命的な問題が起こるわけではないが、ここに述べたような高度で繊細な機
能が果たせなくなるので、特に社会生活に非常な困難が生じることになる。
2. 側頭葉
この場所は主として耳で開いたことが最終的に達するところである。それに基
づき現実がどうであるかを判断し、それを記憶として、多くはコトバという形に
加工して蓄える。
3. 頭頂葉
皮膚で感じた感覚などを受け止めて、それを運動につなげる働きをこの場所が
担っている。現実の出来事をどう受け止めるか、という認知機能にも大きな役割
を果たしている可能性があり、ここが障害されると、自分の問題点や病的な部分
を認識できなくなる。
4. 後頭葉
これは完全に視覚に関係している。形や色や人の顔などを認識する役割である。
大脳基底核 脳の中側にある部分で、運動を微妙に調整する役割が主だが、感覚
のフィルター機能も担っていると言われる。慣れてくるにしたがって、特に意識
しなくてもスムーズにある運動や動作ができるようになるのは、基底核でよけい
な動きの神経活動がふるいにかけられるようになるためだと考えられる。
5. 大脳辺緑系
これは感情を生む場所である。「感情的になる」という日本語は悪いイメージ
だが、脳機能から言えば感情は環境に適応していく上に非常に重要である。危機
が迫れば、不安になって警戒態勢をとる、家族と一緒に食事をした後はリラック
スして、消化機能を高める、悲しい別れのあとは一時的にゆううつになって、次
の態勢を整える、などなど、感情には多くの意義があり、その感情を生むのが辺
緑系の役割である。また相手の気持ちを判断するのも、辺緑系によって行われる
部分が大きい。
◇脳科学からわかったこと(池谷裕二氏著『単純な脳、複雑な「私」』朝日出版社
などより)
○MT野ニューロン:動きを感知する。動いてなくても動いていると錯覚する。
○島皮質:恐怖を感じる
○中脳腹側被蓋野:快感を感じる(「報酬系」)
「快楽中枢」(辺縁系中隔野):コカイン、躁状態、恋愛などで快楽を感じる
ハードルが低くなり(グローバル化)、苦痛や不快感などもそれほど
感じなくなる。(ノーマン・ドイジ『脳は奇跡を起こす』竹迫仁子訳
講談社、pp.140-143)
○淡蒼球:「やる気」に関係
○大脳基底核:直感を生む(「ひらめき」は理由付けできるので多分大脳皮質が
関係)。もちろん「手続き(方法)記憶」の場でもある。--->直感は努力の賜物
○睡眠:情報の整理や保管を行うための活動的な「行為」
○前頭葉と大脳基底核は大人になっても成長する。
○海馬:新しいことを覚える。
○ヒトは痛みを感じる回路を使って不快感を感じ、他者の痛みに共感する。
○角回(頭頂葉-後頭葉の境):ここを刺激すると自分自身を背後に感じて背中
に寒けを覚える。右脳の角回の刺激では対外離脱体験(幽体離脱)を感じる。
○「知覚」と「運動」は独立した機能:1)「脳の準備」-->2)「意思」-->3)「動
いた = 知覚」4)「脳の指令 = 運動」
○運動前野・補足運動野(=運動準備野):前頭葉後方で運動野の前方にある。
例えば右脳のここが障害されると、左半身が勝手に動く。(「エイリアンの
腕」症候群)
○脳はゆらいでいる:脳を流れる電気信号は常にゆらぎながら入力待ちの状態
にあって「同じ入力刺激に対しての出力結果が全く違う」ということの原因
になっている。(「ルビンの壷」は自分がみたいように見えるわけではない)。
○「記憶」も「注意力」もゆらぎに依存している。
○「行動したくなる」よりも「行動する」ことの方が必ず1秒くらい遅い(「動
く」よりも前に「動いた」気がしている)。しかも「行動したくなる」より
0.5秒前に「準備」が始まっている。この1.5秒間に「その行動を止める」と
いう「自由な”否定”意思」がある(前頭葉の一番前の部分と側頭葉の一番端
っこの部分が関係するらしい)。
○アイディアは脳のゆらぎから生まれる。自分はそのアイディアを選ぶか選ばな
いかを決定するのみである。
○脳のゆらぎは環境や身体によって規定される:これは考え方によっては環境や
刺激に単純に反応する(「反射」)だけなのかもしれない。たしかに反射によ
ってゆらぎの大枠は決定されてしまうが、学習や記憶よって、同じ刺激でもゆ
らぎや反応のパターンは変わり得る。(ゆらぎの具合が悪い状態というのは、
前頭葉のα波が多いとき)。
○脳のゆらぎ(ノイズ)の意義:1)効率よく正解に近づく(最適解への接近)。
2)弱いシグナルを増幅する(確率共振)。3)創発のためのエネルギー源。
○予測:動きの制御を常にフィードバックで行っていると素早くてスムーズな動
きは出来ない。脳は常に結果を予測しながら行動する(「逆モデル」)。脳は
そのために未来を感じようと懸命に努力している。
○脳は縦方向と横方向を均等に扱ってない。きっと地球上は縦と横が等価ではな
い。脳の中では時空がゆがみ、それは経験によって生まれる。
○可塑性:脳は時空を微調整して環境の変化に順応しなければならない。しかも
経験は記憶に残っていなければならない。ヒトは脳の可塑性の恩恵に預かって
いる。
○ニューロン(神経細胞)は積分マシン:樹状突起=入力、軸索=出力。軸索はシ
ナプス(中継点)で次のニューロンの樹状突起に接続している。軸索の出力に
は閾値があってON、OFFの二つしかない。シナプスではイオンの流れで情報が
伝播され、Naイオンは興奮性、K・Clイオンは抑制性に働く。
○脳のゆらぎはシナプス入力がゆらいでいることに由来する。はじめの方のシナ
プス入力のゆらぎが大きくても、段々そのネットワークを下ってゆくとノイズ
は一定の強さに整えられて大きくなり一気に発火する。ノイズは脳のエネルギ
ー源といえる。
○数少ない単純なルールに従って同じプロセスを何度も繰り返してすことで、本
来は想定してなかったような新しい性質を獲得することを「創発」という。フ
ィードバック回路を通してノイズは創発の原料となる。こうして周囲との関係
性のなかで脳のなかには全体として見事な秩序が生まれる。これこそが集合ダ
イナミクスで、いわゆる「複雑系」というシステムの醍醐味なのだ。
○心は、脳の思惑とは関係なく、フィードバック処理のプロセス上、自動的に生
まれてしまうもの。脳の創発性に驚くことの産物が心というものだ。
○リカージョン(recursion、再帰):リカージョンがあるから無限がわかる。こ
の自己投影によって自分に心があることがわかる。しかしリカージョンによっ
て自己言及が行われ、そこでは矛盾が避けられない。(ラッセルのパラドック
ス)。
○強迫観念に関与する脳の部位は、眼窩前頭皮質・辺縁系の帯状回・尾状核であ
る。眼窩前頭皮質で何か強迫観念が起こり帯状回で何らかの不安を惹起し、そ
れは尾状核で増幅される(尾状核の粘着 = 脳ロック状態;正常では尾状核が
不安などの強迫観念を抑制し鎮静するはず)。(ノーマン・ドイジ『脳は奇跡
を起こす』竹迫仁子訳、講談社、pp.198-201)
◇血液化学検査等の異常に関して
・ALPのみ高値:甲状腺機能亢進症を考える。
・CPKとLDHが高い時、その原因が説明できない時は甲状腺機能低下症や薬物の
影響を考える。
・ZTTが高かったら:肝炎マーカーを必ず調べる。
・異常高Na血症(hypernatremia)をみたとき
ESR測定時クエン酸Naが混入するとZTTが低下して血清Na値が著明に増加、
血清Cl値とのバランスが悪くなる。
・原因不明のCRP陽性:悪性リンパ腫の可能性。サルコイドーシスの可能性
・ASLO(ASO)が非常に高値(10000倍以上)のときは骨髄腫を考える。
・高コレステロール血症:甲状腺機能低下症も考えておく。
薬物等でコントロール不良の高コレステロール血症では甲状腺機能を必
ずチェック。
・説明困難な血液化学検査等の思わぬ変化は、どんなに些細なものであっても
その原因について考え抜くべきである。
※例えばγ-GTP、あるいはLAPのただ一つの軽度上昇は、胆道系の悪性
腫瘍の存在にまで思い至るべきである。
・APTT単独延長は臨床的にはヘパリンの使用を考えるが、抗リン脂質抗体症候群
(APS)に気づかなければならない。
APTT単独延長し外因系(III・IV・VII・X・V)凝固異常がないとき、患者
血漿と健常人血漿とを混和するmixing testにより、LA(lupus anticoaglant)
と凝固因子欠乏を区別。次いで抗CL(cardiolipin)抗体とLAを検査して、抗CL
抗体とLAの二種類の抗リン脂質抗体を検出。
・ANA(抗核抗体):80倍では健常者でも50%が陽性。160倍で約10%が陽性。
(健常な若い女性や高齢者では、40倍が31.7%、80倍が13.3%、160倍が5.0%、
320倍以上が3.3%の陽性率という報告もある。(Medical Tribune 2011.
5.19;44(20):p.42)--->160倍以上では95%の健康人を除外できる。
※陽性率(日内雑誌 2003;92:1922)
・SLE:97%
・Screloderma:83%
・PM/DM:55%
・MCTD:99%
・Sjogren:76%
・RA:41%
※ANAが陽性になりうる疾患
IMN、C型肝炎、SBE、Tbc、HIV感染、ライム病、HPV感染症、リンパ
増殖性疾患、自己免疫性肝炎、甲状腺疾患などなど多数
・RF(リウマトイド因子):健常者でも2%程度陽性。RA患者でも20~30%は陰性。
慢性肝疾患、SBE、肺線維症などで陽性。
高齢になるに連れて陽性率が上がる傾向
------------------------------------------------
※関節リウマチ以外でRF(リウマトイド因子)が陽性になる疾患
(日内雑誌 2003;92:1918)
1)膠原病:SLE、PSS、PM/DM、PN、Sjogren、MCTD、Behcet
2)肝疾患:慢性肝炎、肝硬変、HCC
3)感染症
a)細菌性:感染性心内膜炎、Tbc、梅毒、らい
b)ウイルス:風疹、インフルエンザ、EB、HIV、サイトメガロ
c)寄生虫
4)その他:Sarcoidosis、悪性腫瘍、間質性肺炎、混合性クリオグ
ロブリン血症、高γ-gl血症性紫斑病
・eGFR(推定式によるGFRの計算)
※推定式=[(140 - 年齢)× BW(kg)/(72 × Cr(mg/dl))]× 0.85(女性)
病期
1期 90 >
2期 60〜89 (軽症)
3期 30〜59 (中等症)
4期 15〜29
5期 < 15
------------------------------------------------
◇胸部単純レ(X)線画像の異常について
・胸水をはじめ胸部単純レ(X)線画像の異常の存在は常に全身の疾患について
考慮しなければならない。特に腹腔臓器の異常にその原因を求めることをも
怠ってはならない。
・胸部仰臥位レ線写真では、心縦隔影が15~20%増大するため、CTRは60%まで
正常範囲とする。また肺血管影が上肺野でもかなり拡大してみられるように
なる。胸水や気胸は仰臥位写真ではほとんど見えなくなる。
(この項、NIS、No.4063(H14/3/9)、P113より)
◇悪性リンパ腫・慢性リンパ性白血病・マクログロブリン血症・骨髄腫はまったく
別々の病気というより、B-lymphocyteの分化の一連の流れのなかの何処で腫瘍化
したかによって決まる疾患と考えるほうがよい。
◇褥創の初期にはコムフィール・アルカスがよく効くらしい(H14/12/2、伝聞)
◇緊急避妊ピル:エチニルエストラジオール0.05mg+ノルゲストレル0.5mgを含有す
る中用量ホルモン剤(ドオルトンまたはプラノバール)を72時間以内にできる
だけ早く2T服用し、その12時間のちにさらに2T服用する(喫煙者、35歳以上
等は血栓症に注意)。悪心、嘔吐、腹痛などの副作用が55%程度ある。効果が
あれば、通常10日前後に出血をみるが20日を越えて出血をみない場合は妊娠し
ている可能性がある(NIS 2005;4247(H17/9/17)、pp.125-126)。
なおプラノバールはH21年現在入手できず、低容量ピル(アンジュ、トリキ
ラー、トライディオール)の4Tがプラノバール2Tに相当する(NIS 2005;
4247(H17/9/17)、pp.78-79)。
◇イボ(疣贅):パピローマウイルスによる。--->治療は液体窒素による凍結療法。
鑑別:にきび、鶏眼(出血・黒点なし、同心円状の模様あり)
◇固形癌の骨転移の痛みにメタストロン(89Sr)またはビスフォスフォネートを。
◇妊娠を望む婦人・可能性のある婦人は神経管閉鎖障害(無脳症・脳瘤・二分脊椎
など)のリスク軽減のため、葉酸0.4mg/日の摂取が望ましい。(『日本人の食事
摂取基準2005年度版』、NIS 2008;No.4405(H20/9/27):65-69などより)
◇黒毛舌(Lingua villosa nigra; 舌の上に黒や茶褐色の毛様物がみられるもの、
着色のみの場合もある):舌乳頭の異常な角質増殖とそこに付着した細菌による
色素産生。ドキシサイクリンやビスマス製剤でも起きるが、C. albicansによる
ことが多い。可能性のある(ドキシサイクリンなど)薬物を中止してフルコナゾ
ールで加療する。
◇固有感覚(proprioception)とは
自分の体が空間内でどのような位置にあるのかを把握する感覚のこと。アルコ
ールを飲むとこの感覚が覚束なくなる。固有感覚は意識されない感覚で(第六感
覚ともいわれる)、個体のパーツの配置の認識や姿勢制御を司っている。なお姿
勢制御に関与する感覚はこのほかに視覚と内耳覚がある。
◇認知症関連
・統合失調症と認知症とは共にリウマチ(多分関節リウマチ)と有意の負の相
関をする。・・・統合失調症の患者がリウマチを発症したとたん非常に軽症
化したのを知っている。(中井久夫氏著『日時計の影』みすず書房、p.35)
・認知症においてまっさきに障害が発見されるのは、ゴルフのパットの際と、
車の車庫入れであるという(中井久夫氏著『日時計の影』みすず書房、p.29)
◇外傷性障害に漢方薬として”四物湯 + 桂枝加芍薬湯”の合剤を試す価値はある。
侵入体験が消失するとともに胃腸障害が現れるからそれに応じて減量。(中井久
夫氏著『日時計の影』みすず書房、p.57、2006年5月博多の精神神経学会で神田
橋條治が紹介)
◇胃ろう栄養と水疱性類天疱瘡発症の関係について
胃ろう症例の8%に水疱性類天疱瘡を見た。一般に推定されている2?3例/1万人
の発症率と比べて多い。胃ろう症例では水疱性類天疱瘡が発症しやすいのではな
いか?(日内雑誌 2009:Vol.98;臨時増刊号;日本内科学会講演会要旨515:p.244)
◇妄想性障害(paranoia、paranoid disorder)
誤った思い込みを事実と確信し、正すことができない状態が1カ月以上持続す
る精神障害で、統合失調症と近い関係にあると分類。主な妄想の内容は(1)誰か
に見張られたり、嫌がらせをされたりしている。(2)配偶者や恋人が浮気をして
いる。(3)体から異臭がする-など。2008年の厚生労働省の調査で推計された全
国の患者数は約18000人。元厚生次官ら連続殺傷事件の一審で弁護側が「妄想性
障害のため心神喪失か心神耗弱だった」と主張し、退けられたケースがある。
◇扁桃病巣疾患:扁桃が原病巣となり、扁桃から離れた臓器に反応性の器質的また
は機能的障害を引き起こす疾患。自己免疫機序がその病態。
・代表的疾患:掌蹠膿疱症、胸肋鎖骨過形成症、IgA腎症、
・可能性あり:尋常性乾癬、アナフィラクトイド紫斑病、RA、反応性関節炎
微熱、ベーチェット病、尿細管間質病変
◇ビタミンDの作用について再考する(H23.11.22の講演から)
1. 歩くスピードは”元気”のバロメータ。遅いとよく転ぶ。ビタミンDが
10ng/mLを下回ると転びやすくなりしかも何度も転ぶ。ビタミンDは30ng/mL
が望ましい。
2. 皮膚1平方cmを1時間太陽にさらせば100IU/日のVit Dが生成される。日本人
の必要量を200~300IU/日とすると10分ほど皮膚を日光にさらすと十分。
3. 骨粗鬆症と心血管疾患は相関する。また骨粗鬆症は死亡の予知因子とも云
えて骨密度が基準値以下に減少すれば10年後の死亡率は2倍以上。
4. ビタミンD(1α-25(OH)D)が減れば骨形成が抑制され、筋力・筋肉量も低下
(サルコペニア)。
5. ビタミンD欠乏は多発性硬化症発症と明確に関係する。
6. ビタミンD欠乏は1型DMや易感染性とも関連している。
7. ビタミンD投与量は欧米では700~800IU/日、日本では200~300IU/日。
ビタミンDの血中濃度は夏から秋口に一番高く、春先がもっとも低い。
◇一般医療施設における食塩摂取量評価:随時尿でのNa、Cr測定とNa/Cr比による
推定(日内雑誌 2011;100(2):425)
●24時間Na排泄量(mEq/日) = 21.98 ×( Na*/Cr* × Pr.UCr24)^0.392
(Na*:随時尿Na濃度(mEq/L) , Cr*:随時尿Cr濃度(mg/L) )
(Pr.UCr24:24時間尿Cr排泄量推定値(mg/日) = -2.04 × 年齢
+ 14.89 × 体重(kg) + 16.14 × 身長(cm)
- 2244.45 )
●おおよその摂取食塩量(g/日) = 尿中Na(mEq/日) × 0.0585
●おおよその摂取Na量(g/日) = 尿中Na(mEq/日) × 0.023
◇血清-腹水アルブミン格差(SAAG; serumAlb - ascitesAlb)
●SAAG増加( > 1.1g/dl)は門脈圧亢進を示す:肝硬変、心不全、Budd-Chiari
●SAAG減少:癌性腹水、結核性腹水
◇頚部の神経症状について(日本医事新報 2011(H23/9/10);4559:37-41)
頚部の根症状の殆どは片側頚部痛で発症。一方脊髄症の多くはしびれで発症
し頚部痛はない。つまり頚部痛先行がなければ脊髄症か絞扼性末梢神経障害を
疑う。頚椎は7個、神経根は8個。C1はC1椎体の上からC8はC8椎体の下から出る。
・肩の挙上困難:C4/5ヘルニアによるC5神経根症状。C5は三角筋、上腕二頭筋
を支配しているため、障害されると肩外転、肘屈筋力が低下。
・僧帽筋上縁の痛み:C5 or C6の根症状
・肩甲骨または肩甲骨間部の痛み:C7 or C8の根症状
・横隔膜神経支配はC3
・肘を曲げるのはC5、手首の背屈はC6、C7は手首の掌屈と肘の伸展、C8は手指
の屈曲、T1支配は手指の開閉、母指はC6、中指はC7、小指はC8。
・頚部の突然の激痛:偽痛風:石灰沈着性頚長筋腱炎、crowned dens syndrome。
・Pancoast腫瘍:肺尖から上方へ浸潤するから小指のしびれで始まる。
(H24年5月1日、大幅改訂)
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