◎気管支喘息慢性炎症性疾患「 気管支喘息は広範かつ種々の程度の気道閉塞と気道の炎症により
特徴づけられる。気道閉塞は軽度のものから致死的な高度のものまで存在 し、自然
にまた治療により可逆的である。気道の炎症はリンパ球・肥満細胞・好酸球など多
くの炎症細胞が関与し気道粘膜上皮の損傷を示し、種々の刺激に対する気道の反応
性亢進を伴う。」※ ECP (好酸性塩基性蛋白)
気道の炎症状態を反映、喘息治療・経過観察のモニターとして有効
(H7/10/23日現在、保険未収載)
※呼吸機能検査
FEV 1.0・ピークフロー (PEF) の低下、呼吸抵抗 (Raw) の増加(努力肺活量の低下
は少ない)
※ピークフロー (PEF) について
(1). 最大吸気位より最大呼出を行う時に得られる最大呼気流量
(2). スパイロメトリーではフローボリュームカーブの頂点(リットル / 秒)
(3). ピークフローメータで測ったピークフロー値はスパイロメトリーの値とは厳密に
は一致しないが実用上大差ない
(4). ピークフローはより中枢の気道の狭窄を感知(FEV1 はより末梢の気道狭窄感
知)
(5). ピークフローは気道収縮が軽度の患者には敏感だが重症の場合は感度が鈍い
(6). 正常値は予測ピークフローの 80% 以上である
※アトピー型とは
アレルゲンや IgE が高値のタイプで当然アレルギー性気道炎症が認められる(但し非
アトピー型でも気道炎症が認められ、非アトピー型の炎症の原因は不明)
1). 治療
(1). 吸入ステロイドが一番有効:スペーサーが必要・うがい(口腔内カンジダ予防)
●一吸入で 50μg(ベコタイト100 は100μg)、10 - 15% が肺まで届く
●プレドニン 5mg が吸入 400μg に相当
常用量:100 - 400μg (100 x 2 〜 2200 x 2)
高用量:400 - 800μg (最大:1000 - 1600μg)
1000μg 以上で体内吸収増大
1600μg 以上で副腎皮質の抑制
※一日 800 〜 1000μg 以上になると副作用が問題
(2). テオフィリン
※注意して使う場合:新生児、高齢者、心不全、肝不全、ウイルス感染症
※併用薬剤で中毒発現:ニューキノロン、マクロライド(エリスロシン等)、シメ
チジン、アロプリノール、チクロピジン(パナルジン)、経口避妊薬
※副作用:カフェイン様作用(CNS 興奮-不安・不眠・tremor・痙攣)
尿酸上昇作用
胃液分泌亢進
Na;K;Cl の排泄促進
(3). β2 刺激剤
(4). 抗コリン剤:肺気腫があって痰の多い人に用いてみる
(5). 抗アレルギー剤
※抗ヒ作用なし:インタール、トラニラスト、ロメット、ケタス、ペミラストン、
タザノール、ドメナン
※抗ヒ作用あり:ケトチフェン(スプデル)、アゼプチン、セルテクト、ニポラジ
ン、トリルダン
※とりあえずアトピー型にケトチフェンを非アトピー型にドメナンを投与
※抗アレルギー剤の併用:時に良く効くことあり。
(6). 柴朴湯 (TJ-96)
難治性喘息に有効であるといわれている。2). 運動誘発喘息:アトピーの 70% に発症、インタール吸入が良い
3). 咳喘息・Cough variant asthma:抗コリン剤やドメナンがきく例がある
◇喘鳴・呼吸困難を伴わない乾性咳が長期間続く
◇咳は夜間に多く、運動・寒気で誘発される。
◇理学所見・肺機能はほぼ正常。胸部 X-p・胸部CT は正常
◇気道過敏性亢進。
◇鎮咳剤よりも気管支拡張剤やステロイドが効果あり。
◇他の咳を起こす原因疾患がない。
◇アレルギー検査では IgE の上昇あり、IgE-RAST 等もしばしば陽性。喀啖を伴う
例では
喀啖中の好酸球増多あり。
◇肺活量、一秒量は正常又は一秒量がわずかに低下。
※鑑別診断:気管支喘息、肺気腫、慢性気管支炎、副鼻腔気管支症候群、アレルギ
ー性気管支炎
※神経性咳:これは日中に多い。4). 気管支喘息と妊娠
◇軽快 1/3 ・増悪 1/3 ・不変 1/3
◇妊娠前のコントロールが良い程いい
◇ステロイド、テオフィリン、β2 刺激剤は常用量であれば安全
◇抗アレルギー薬はデータがないので避ける、但し吸入は安全(例、インタール)
◇発作がひどければ躊躇なくステロイド使用
◇発作増悪時期は、妊娠のごく初期・妊娠後期・出産直後である。時期的に計画出産
を考えるべきである。5). 気管支喘息と鼻茸・慢性副鼻腔炎
◇鼻茸は慢性副鼻腔炎に併発する隆起性産物
◇アスピリン過敏症ではそのための喘息に加え鼻茸が併発
◇小児には稀で中年期に発症、鼻閉・嗅覚低下に続き喘息発作
◇アスピリンをはじめとする NSAID 使用で喘息発作が誘発される
◇成人喘息患者に対するアスピリン過敏症の占める割合は 5 〜 10% とされており
鼻アレルギーの 1% 、副鼻腔炎の 1% 、鼻茸患者の 4% がアスピリン過敏症
と言われている。6). アスピリン喘息
※アスピリンをはじめとする種々の酸性非ステロイド剤の投与による喘息発作の発
現をいう。成人喘息の約 10%・発症のピークは 30 才代。男:女 = 2:3
※アスピリン喘息における誘発発作の強弱は解熱鎮痛薬がプロスタグランジン合成
酵素のシクロオキシゲナーゼを阻害する力と概ね相関する。
◇酸性非ステロイド性抗炎症薬
イ. サリチル酸:各種アスピリン製剤・ジフルニサル(ドロビッド)
ロ. フェナム酸(アントラニール系):メフェナム酸(ポンタール)・フルフェナ
ム酸(アンサチン)
ハ. アリール酢酸:インドメタシン・ジクロフェナック(ボルタレン)トルメチン
(トレクチン)・スリンダク(クリノリル)
ニ. プロピオン酸:イブプロフェン(ユニプロン)・ケトプロフェン・ナプロキセ
ン(ナイキサン)・ロキソプロフェン(ロキソニン)
ホ. ピラゾロン(ピリン系):スルピリン・アミノピリン・アンチピリン
ヘ. オキシカム:ピロキシカム(バキソ)・テノキシカム(チルコチル)
◇アスピリン喘息の患者には塩基性非ステロイド性抗炎症薬が比較的安全
チアラミド(ソランタール)・エモルファゾン(ペントイル)
エピリゾール(メブロン)・チノリジン(ノンフラミン)
ベンジダミン(シダミン)
◇アスピリン喘息は難治性喘息患者に多く慢性鼻炎・鼻茸・副鼻腔炎を高率に合併重
症、難治性でステロイド依存性が多い
◇どうしても解熱させたい時は抗生剤投与下にステロイドを使うがコハク酸エステル
型の静注ステロイドは喘息発作を誘発することがあるのでリン酸エステル型(ドー
ジロン)を使う。
◇ブスコパンは使用可能(痰が粘ることに注意)だが複合ブスコパンはスルピリンを
含んでおり、注意する。
◇静注用ステロイドの急速静注はアスピリン喘息には極めて危険である。
◎職業性喘息について(1). 動物蛋白
実験動物取り扱い者、獣医 毛垢、尿蛋自 食品加工業 貝、卵蛋自質、膵臓酵素,パパイン、アミラーゼ 酪農業者 倉庫のダニ 養禽業者 禽のダニ、糞、羽毛 穀物倉庫労働者 倉庫のダニ、アスペルギルス属のカビ,屋内のブタクサ、イネ科の花粉 研究従事者 イナゴ 魚肉食品製造業 ユスリカ 洗剤製造業 枯草菌酵素 絹関係労働者 カイコガ、カイコの幼虫
(2). 植物蛋白
パン製造業者 小麦粉,アミラーゼ 食品加工業 コーヒー豆ダスト、食肉軟化剤(ババイン)、茶 農業者 大豆ダスト 海運業者 穀物ダスト(カビ、昆虫、穀物) 緩下剤製造業 ispaghula、オオバコ種子 製材所労働者、大工 木材ダスト(ペイスギ、オーク、マホガニー、マメモドキ、アメリカスギ、レパノンシーダ一、アフリカカエデ、ヌマヒノキ) 電気はんだづけ コロホニー(マツヤニ) 綿繊維業労働者 綿ダスト 看護婦 オオバコ種子、ラテックス
(3). 無機化学物質
精油所労働者 白金塩、バナジウム メッキ業 ニッケル塩 ダイヤモンド研磨業 コバルト塩 製造業者 フッ化アルミニウム 美容室 過硫酸塩 溶接業 ステンレス銅煙、クロム塩
(4). 有機化学物質
製造業 抗生物質、ピペラジン、メチルドーパ、サルブタモ一ル、シメチジン 病院労働者 殺菌剤(スルファチアゾール、クロラミン、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド) 麻酔科医 エンフルラン 養禽業労働者 アブロリウム 毛皮染色業 パラフェニレンジアミン ゴム加工業 ホルムアルデヒド、エチレンジアミン プラスチック加工業者 トルエンジイソシアネート (TDI) 、ヘキサメチルジイソシネート、ジフェニルメチルイソシアネート、無水フタル酸(TMA)、トリエチレンテトラミン、無水トリメト酸、ヘキサメチルテトラミン 自動車塗装業 ジメチエタノールアミンジイソシアネート 鋳造業労働者 フラン結合剤の反応製品
◎慢性咳・慢性持続性咳・慢性咳嗽※海外の報告では気管支喘息・後鼻漏(鼻・副鼻腔疾患)・post-viral cough・たば
こ・胃食道逆流(日本では少ない)が原因※各種アレルギーの関与が想定されている。
(1). 喘息:閉塞性換気障害・気管支拡張剤有効・喀啖中好酸球増多
(2). 咳喘息
(3). アレルギー性非喘息性咳嗽:アレルギー性鼻炎を高頻度で合併・季節感に乏しい
・気管支拡張剤無効
(別名:アレルギー性気管支炎・アトピー咳嗽・中気道アレルギー・喉頭アレルギ
ー)
治療:吸入ステロイド・抗ヒ作用を有する抗アレルギー剤
(4). 夏型過敏性肺臓炎:5 〜 10月に症状・冬軽快・咳・呼吸困難・熱・スリガラス
陰影
(真菌:Trichosporon cutaneum が原因)※慢性咳嗽の鑑別診断
●せき喘息 (CVA)・喘息:気道過敏亢進、気管支拡張剤やステロイドが有効
●後鼻漏症候群:慢性鼻炎、鼻粘膜所見、抗ヒ剤や点鼻ステロイドが有効
●胃食道反射:胃透視、食道内視鏡所見、長時間食道 pH モニター、H2 ブロッカー有効
●慢性気管支炎:閉塞性換気障害、胸部レ線、β2 刺激剤による可逆性 <15%
●アレルギー性気管支炎:アトピーあり、多くは気道過敏性なし、ステロイドが有効
●ACE 阻害薬:ACE 阻害薬服用中、中止で消失
●気道感染症:喀啖培養、ウイルス・マイコプラスマ抗体
●間質性肺炎:胸部レ線・CT 、拘束性換気障害、DLco の低下
●気道内腫瘍:喀啖細胞診、腫瘍マーカー、体位による悪化・改善、BF
●横隔膜・胸膜疾患:胸部レ線・CT 、肺機能検査
●心膜疾患・潜在性心不全:胸部レ線・CT 、ECG 、心エコー
●誤嚥:高齢者、意識障害患者
●甲状腺疾患:甲状腺腫、頚部 CT
●心因性咳嗽:心理テスト、除外診断、チック、緊張状態
◎アレルギー性気管支炎(明かな喘鳴と呼吸困難がない点で喘息と区別)※咳喘息との違いについては明かではない。
(1). 慢性の咳、時に喘鳴
(2). 明かな呼吸困難発作がない
(3). アトピー素因を示す兆候
1). 血清 IgE 高値
2). 末梢血、喀啖中の好酸球増多
3). IgE 抗体 (RAST) の存在
4). アレルゲン吸入による症状発現
(4). 喘息以外のアレルギー性疾患の合併または既往
(5). アレルギー性疾患の既往歴
(6). 呼吸機能は正常、気道過敏はないか軽度亢進
(7). ステロイドが有効。鎮咳剤、気管支拡張剤、抗ヒ剤は多くは無効
(抗ヒ作用をもつ抗アレルギー剤は 70% に有効といわれる)
(8). 咳の原因となる他の心臓・肺疾患がない。※鑑別診断:AB・咳喘息・たばこ・慢性気管支炎・鼻炎・副鼻腔炎・後鼻漏・食道逆
流・慢性呼吸器感染症・腫瘍・心、血管、肺疾患・心因性咳など
◎特発性間質性肺炎:有病率(3 〜 5/10万 ; 4000 人)(IIP) 罹患率(0.3/10 万 ; 400 人 / 年)
男:女 =1.5:1 年齢:60 才代
予後:36.6% (5y) ; 22% (10y)
死因:Resp.F (54.5%)・C or P (15.2%)・LCa (9.1%)◇ IIP の病像
(1). 労作時息切れに始まる呼吸困難と胸部レ線所見上の瀰満性陰影が主徴で原因不
明。
膠原病・石綿肺等を伴わない。
(2). 臨床経過から急性・亜急性・慢性型に分類される。慢性型で急性悪化することあ
り。
(3). 治療上ステロイドが有効な症例もあるが通常無効。A. 特発性間質性肺炎に含まれる疾患
(1). 急性経過 :AIP (★ acute interstitial pneumonia)
病理診断:DAD (diffuse alveolar damage)
(2). 亜急性経過:BOOP
病理診断:BOOP (bronchiolitis obliterans organizing pneumonia)
※ BOOP は臨床的に予後良好なことが多く、ステロイドも効果あることから
AIP・IPF とは異なる範疇の疾患と考えられている。
a. BOOP の所見
主病変:末梢気道を占拠し肺胞道及び肺胞にひろがる肉芽組織
副病変:結合組織ポリープ・フィブリン様滲出物・泡沫状マクロファージの肺胞
腔内集積・胞隔炎・肺の構造は保たれる
b. BOOP を呈しうる疾患・要因
特発性・炎症後・薬剤・限局腫瘤性・リウマチ性あるいは結合組織病・免疫疾患
骨髄移植・肺移植
その他:HIV・放射線療法・MDS・リンパ腫及び癌・慢性甲状腺炎・アルコール
性肝硬変・胆汁鬱滞・炎症性腸症候群・トリプトファン・織物印刷用色
素
(3). 慢性経過:IPF (★ idiopathic pulmonary fibrosis)
病理診断
(1). UIP (usual interstitial pneumonia)
(2). DIP (desquamative interstitial pneumonia)
(3). DAD (diffuse alveolar damage)(急性悪化)
(上記に分類できぬ病変は NCIP (nonclassifiable IP) と呼ばれる)
(注意:★印は欧米で急性型と慢性型に用いられている病名)
※ IPF (idiopathic pulmonary fibrosis) について
(1). 炎症性肺疾患、線維化が起こる、早晩低酸素症まで進行
(2). 原因不明、自己免疫疾患またはウイルス感染後の病態と考えられる
(3). 肺における炎症反応、免疫反応、結果としての線維化が制御不能
(4). 一部では遺伝、II に罹りやすい個体の存在
(5). 平均生存期間は 4 〜 6 年B. IPF ( = 90% は UIP、10% は NCIP)について
1. 疫学・頻度:正確には不明、年齢とともに高くなる。たばことの関係は直接は不
明。何となく男に多い様だ。
2. 発見動機:60% は呼吸器症状(呼吸困難 (94%)・乾性咳 (73%))、40% は健診
3. 初診時臨床所見
I期:自覚症状なし、たばこ (82%)、Velcroラ音 (86%)、バチ状指 (41%)
ESR 15/h 以上 (52%)、CRP + (5%)、γ-gl↑(41%)、LDH↑ (47%)
RA↑ (19%)、ANA↑ (11%)
II期:自覚症状あり、たばこ (85%)、Velcroラ音 (90%)、バチ状指 (60%)
ESR 15/h 以上 (74%)、CRP + (26%)、γ-gl↑(50%)、LDH↑ (32%)
RA↑ (37%)、ANA↑ (44%)
III期:自覚症状あり、たばこ (83%)、Velcroラ音 (94%)、バチ状指 (65%)
ESR 15/h 以上 (69%)、CRP + (34%)、γ-gl↑(63%)、LDH↑ (58%)
RA↑ (16%)、ANA↑ (39%)
4. 症状:労作時呼吸困難・乾性咳・Velcroラ音
5. 検査所見(BALF (気管支肺胞洗浄液) に異常なし)
(1). 胸部レ線:典型例は両側性瀰満性陰影、下肺野にはじまる線状網状影の増加お
よび拡大、肺の縮小(但し全体の54%)
(2). 胸部 CT:胸膜直下の蜂巣肺所見、間質影、胸膜面の凹凸
(3). 肺機能・血液ガス:拘束性障害・拡散障害
(4). 血液検査:血沈亢進 (52 〜 69%)、LDH 高値 (47 〜 58%) で病期は関係なし
CRP 陽性 (5 --> 34%)、γ-gl 高値 (41-->63%)、ANA 陽性(11
--> 39%) は病期と関係。
(IgE↑、CEA↑は時に見られるが病期は関係なし)
6. 予後
(1). 5年生存率は 53%、10年生存率は 32%
(2). 肺癌合併、肺感染症の合併が高率
7. 治療:決め手なし
◎瀰満性汎細気管支炎(DPB)1. 概念
両肺に瀰満性に存在する細気管支領域の慢性炎症を特徴として強い呼吸障害をきた
す疾患。形態的特徴は呼吸細気管支を中心とした細気管支炎および細気管支周囲炎
であり、リンパ球・形質細胞など円形細胞浸潤がみられる。しばしばリンパ濾胞形
成を伴い肉芽組織や瘢痕巣により呼吸細気管支の閉塞を来す。2. 特徴
(1). 進行すると末梢気管支の拡張を生じる。
(2). 男女差なし。発病年齢のピークは 40 〜 50歳代。若年〜高齢者まで広い年代。
(3). 高率に慢性副鼻腔炎の合併または既往歴あり。
(4). HLA 抗原 B54 との相関などから遺伝的体質が示唆される。
(5). 慢性気道感染による呼吸不全のため予後不良だったが、エリスロマイシン長期療
法により予後改善。3. 主要臨床所見
(1). 臨床症状
持続性の咳・痰および労作時の息切れ。
(2). 胸部聴診所見
断続性(湿性)ラ音(多くは水疱 (coarse crackles)、時に連続性(乾性)
ラ音(wheezes、rhonchi)、ないしsquawk (ぎゃぁぎゃぁ鳴く様な声又は音)
を伴う)。
(3). 胸部レ線
両肺野瀰満性散布性粒状陰影、しばしば過膨脹所見あり、進行すると両下肺野に
気管支拡張所見がみられ、時に巣状肺炎を伴う。
(4). 胸部 CT
小葉中心性結節性陰影。
(胸部レ線・胸部 CT 所見はどちらか一方あるいは両方同時に出現)
(5). 肺機能検査および血液ガス
一秒率低下、肺活量低下。
残気量(率)増加(%RV:150% 以上又は RV/TLC:45% 以上)
低酸素血症、原則として肺拡散能の低下を認めず
(6). 高率に慢性副鼻腔炎の合併または既往(レ線像で確認)
(7). 参考項目
血清寒冷凝集素高値(64倍以上)、HLA 抗原 B54 陽性。3. 鑑別診断・臨床診断
臨床診断は主要臨床所見の 1 〜 6 を満たすものである。
鑑別は慢性気管支炎・気管支拡張症・気管支喘息・慢性肺気腫。
病理組織学的検査は本症の確定診断上有用である。
◎結核の治療1. RFP(アプテシン3T・9-12M)+ IHMS(ネオイスコチン6T・9-12M)+ EB
(3T・3M)
2. SM(0.5-1.0g・毎日 X3M-> その後 0.5g・週2回)を 12か月 + IHMS(ネオイス
コチン・12M)
★なおタリビットは若干効果あり
★多剤耐性肺結核の治療(その一例)
(1). KM (1.0g):3回/週、筋注。(3か月続行、または排菌陰性まで続行)
(2). PZA (1.2 〜 1.5g):分2、内服 (耐性となりにくいので有用、劇症肝炎に注意)
(3). TH(エチオナミド、0.3->0.5->0.75g):分3、内服
(4). OFLX 又は levo-FLOX (ニューキニロン)を適宜追加。
※(2)(3)(4) は概ね 18か月投与、または排菌陰性まで続行。
※手術の考慮:排菌継続・副作用のため服薬不能の場合。少なくとも感性の AG剤
(アミノグリコシド)が一剤残っている必要あり。
◎結核の迅速診断1. rRNA (リボソームRNA) を標的とした MTD (Mycobacterium Tbc. Detection?) 法
2. DNA を標的とした PCR (polymerase chain reaction) 法が臨床使用。
3. 抗コードファクター抗体:脂溶性の結核菌抗原であるコードファクターに対する抗体
が結核の活動性をよく反映。抗コードファクターIgG 抗体の感度は、肺結核全体で
81%(排菌例で 91%、非排菌例で 76%)、特異度 100% という報告あり。
◎ツ反応について1. 現在のツ反応では結核感染か BCG 接種によるか区別出来ない。
2. 小一又は乳幼児期と小一で BCG を受けていれば中一でツ反応は強陽性を示すことが
ある。
3. 中一生徒では 40mm 以上の反応者は15% 以上、50mm 以上でも10% 近い。
4. 学生の強陽性者は他の症状等から慎重に判断し治療する。
◎肺胞蛋白症
1. 骨髄異形成症候群や骨髄線維症(特に骨髄球系悪性疾患)に合併し易い。
2. 肺胞蛋白症の 8.5% に白血病をはじめとする血液系の基礎疾患が認められたという報
告あり。
3. 肺炎様の所見を呈した血液系悪性疾患患者の 5.3% に肺胞蛋白症を認めたという報告
あり。
4. ブスルファン等の薬剤がサーファクタント産生や肺胞上皮細胞の増殖に関与するとい
う考えもある。
※肺胞腔内に多量の表面活性類似物質が蓄積する。原因不明。肺胞 II型上皮による表面
活性物質産生と肺胞マクロファージによる処理過程のアンバランス。
◎アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)診断基準:典型的 ABPA では 1 〜 5 を満たす必要あり
1. 気管支喘息
2. アスペルギルス抗原に対する即時型皮膚反応陽性(単にアスペルギルスによるアト
ピー型気管支喘息でも陽性)
3. 血清総 IgE 高値(800IU/ml 以上)
4. アスペルギルス抗原に対する沈降抗体陽性
5. 中枢性気管支拡張症
6. 肺浸潤影の既往(上中肺野の移動性浸潤・空洞もあることがある)
7. 末梢血好酸球増多症(肺浸潤影に一致)
8. アスペルギルス抗原に対する IgE、IgG 抗体陽性
◎アレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss 症候群)
(1). 症状・所見
◇主要所見
1. 気管支喘息
2. 好酸球増多症
3. 血管炎症候群
◇臨床経過の特徴
主要所見 1 , 2 が先行し 3 が発症
◇参考となる検査所見(これらは全てに認められるとは限らない)
1. 白血球数増加(10000 以上)
2. 血小板数増加(40万以上)
3. ESR 亢進(60mm/h 以上)
4. 血清 IgE 増加(600IU/ml 以上)
5. RA 陽性(2). 診断基準
I. 主要所見を全て満たす
II. 臨床経過の特徴あり
III. 参考となる検査所見のいずれかが陽性
以上 3項目を満たす症例は血管炎症候群発症時にアレルギー性肉芽腫性血管炎
(Churg-Strauss 症候群)と診断(3). 参考事項
1. 成人発症、性差なし
2. 気管支喘息はアトピー型(アレルゲンや IgE が高値のタイプ)とは限らない
3. 気管支喘息発症から血管炎症候群発症まで 3年以内
4. 未治療の好酸球増多症は1000/mm^3 以上の高値、ステロイドにて正常化
5. 多発性神経炎はほぼ必発、その他、紫斑、出血傾向、消化管出血、腹膜炎、心不
全、心嚢炎、心筋梗塞、間質性肺炎、胸膜炎、関節炎等多彩な炎症
但し腎臓症状は極めて少ない
6. 血管炎症候群発症時の気管支喘息の有無は関係ない。
7. 胸部レ線像に特徴的所見はない
8. 好酸球増多症・血管炎症候群を示す PN 等、他の疾患と鑑別が必要。
◎原発性肺高血圧症(PPH)1. 定義・疫学
(1). 前毛細管性高血圧症をきたす原因不明の疾患群の総称
(2). 安静時の平均肺動脈圧が 25mmHg 以上で、肺動脈楔入圧が正常で二次的肺高血
圧を来たす疾患がない。
(3). 30歳前後に発症、女性に多い (2:1)、診断から死亡までが約3年と予後が悪い。
全年齢に発症し得るが発症のピークは 20 〜 30歳、5生率は 41.3%。
(4). 死亡原因は右心不全 (48.6%)、突然死 (26.4%)
(5). 人種・地域差はない。
(6). 予後規定因子:呼吸困難の強さ・右心房圧・肺高血圧の程度・レーノー現象
心拍出係数の低下、肺拡散能の低下2. 病理
(1). 肺動脈病変
(2). 肺静脈閉塞症 (pulmonary veno-occlusive disease)
(3). 肺毛細血管腫症 (pulmonary capillary hemangiomatosis)3. 肺高血圧症の成因
凝固異常 ←━━ 血管内皮損傷と内皮機能障害 ←→ 素因による肺血管攣縮 ├┓ ↓ ┃ ↑ ┃ ┃ ┃┃ 成長因子やサイトカインの異常 ↓ ┃ ┃ ┃ ↓┗━━┓ ↓ 血管拡張・収縮物質の ┃ ┃ 凝固亢進 ┃ 血管平滑筋増生 アンバランス ┃ ↓ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ 反応性の肺高血圧と ┃ ┃ ↓ ↓ ┃ 肺細動脈血流の低下 ┃ ┗━→ 血小板・内皮・白血球の相互作用 ←━━━┛ ┃ ↓ │ ┃ ↓ 局所血栓形成 ←━━━┛ ┃ 肺血管床の障害と ┃ ↓ 肺細動脈の減少 ┃ 肺血管反応性異常 ←━━┛ ┃ ↓ ┗━━━━━━━━━━→ 血管損傷の悪循環 肺高血圧の永続化 ↓↑ 肺血管床の減少 ↓↑ 叢状肺動脈病変と血栓性肺動脈病変
4. PPH の鑑別診断
(1). 気道系と肺実質を広範囲に侵す疾患
COLD(肺気腫・慢性気管支炎・喘息)・特発性肺線維症・サルコイドーシス
肺結核・膠原病による肺病変・急性肺損傷とその後遺症・塵肺・好酸球性肉芽腫
肺切除後
(2). 肺胞低換気をきたす疾患
睡眠時無呼吸症候群・胸郭形成術後・神経筋疾患・脊柱湾曲症・原発性肺胞低換
気症候群
(3). 肺血管の閉塞・血管炎
肺血栓塞栓症・肺動脈炎・肺動脈閉塞症・肺腫瘍塞栓症・縦隔線維症・肺静脈閉
塞症 (pulmonary veno-occlusive disease)・膠原病に伴う肺高血圧症
(4). シャントを伴う先天性心疾患
ASD・VSD・PDA
(5). 左室流入障害有する左心疾患
MS・左心不全
(6). 薬剤性又は中毒性の肺高血圧症
食欲減退剤 (aminorex)・L-tryptophan・抗癌剤・クラック(コカイン)・な
たね油中毒
(7). 肝疾患
門脈圧亢進症・肝硬変・慢性肝炎
(8). HIV 感染症
(9). 高地住民5. 臨床症状・所見
(1). 自覚症状
呼吸困難(LOS による、肺高血圧の程度と必ずしも相関しない)、動悸、胸痛
(狭心症様、労作により悪化・安静で軽快)、労作時失神
(2). 所見
右心不全、LOS 、末梢静脈圧上昇、チアノーゼ、胸骨左縁下部の収縮期拍動、四
肢冷感、浮腫、肝腫大、腹水
(3). 心音異常
II音分裂、IIP 成分の亢進、三尖弁逆流音、Graham-Steel 雑音
(4). 胸部レ線
心左2弓の突出、肺門部血管陰影の拡張、肺動脈の急峻な狭小化と肺野のレ線透
過性亢進。
(5). 心電図
右心系の負荷(圧負荷型の右室肥大)
RAD 、V1 に qR型、V5-6 の深い S 、胸部誘導で陰性T
IRBBB 、V1-3 の陰性 U 。肺性Pも見られる。
(6). その他:心エコー・心カテ等6.治療
(1). 妊娠はいけない、経口避妊薬は禁忌、プロスタグランジン F2α は禁忌、インド
メタシンも交感神経刺激剤も禁忌
(2). 酸素療法
(3). 抗凝固療法
ワーファリンを PT 時間で 1.3 〜 1.5倍になる様投与。
(4). 血管拡張剤
これが有効なのは病初期であり、従って全体の 25 〜 30% にしか効果ない。
有効な患者では機能的な肺血管攣縮があると想像される。
(5). プロスタサイクリン (PGI2)
有効であるが CVカテーテルからの持続投与が必要。
(6). その他
NO(強力な血管拡張作用)、肺移植
◎肺結節影の原因A. Neoplastic causes
1. Benign
Hamartoma
Benign metastasizing leiomyoma
2. Malignant
Metastasis(carcinoma , melanoma , sarcoma)
Lymphoma and lymphomatoid granulomatosis
Bronchioloalveolar-cell carcinomaB. Inflammatory causes
1. Infectious
Granulomas(tuberculosis , histoplasmosis , cryptococcosis ,
coccidioidomycosis , aspergillosis)
Nocardiosis
Septic embolism
Parasite disease(echinococcosis , paragonimiasis)
Q fever
Pneumocystis carinii infection
2. Noninfectious
Rheumatoid nodules
Sarcoidosis
Wegener's granulomatosis
BOOP(Bronchiolitis obliterans with organizing pneumonia)
Drug-induced lesionC. Miscellaneous causes
Amyloidosis
Mucoid impaction
Post-traumatic lesion
arterio-venous malformation
◎市中肺炎 (および急性細菌性呼吸器感染症) の起炎菌1. S.pneumoniae > H.inflenzae (g-negative) ; mycoplasma > viral inf.
> S.aureus ; regionella
2. 肺炎球菌 (25.8%) > インフルエンザ菌 (17.2%) > マイコプラスマ菌
(10.8%) > レジオネラ菌 (8.6%) > 非溶血性連鎖球菌 (4.3%) > クラミジア
(3.2%) > モラキセラカタラリス (2.2%) = シュードモナス属 (2.2%) > 緑
膿菌 (1.1%) = ナイセリア (1.1%) = 黄色ブドウ球 (1.1%) = クレブシェラ
(1.1%) = 大腸菌 (1.1%)
●不明 (63.4% :161/254 例の状況)※市中感染症としての敗血症
皮膚化膿症に続発することが多い。従ってグラム陽性菌が起炎菌となること
が多い。例外として腎盂腎炎や前立腺炎に続発するものは大腸菌などのグラ
ム陰性強毒菌が起炎菌になる。
従って敗血症の治療にはβ-ラクタマーゼ阻害薬の入ったユナシンか広い抗
菌スペクトルを持ったカルバペネムか第四世代セフェムを投与する。この時
菌交代現象にも前もって配慮してグラム陰性菌にも強い抗菌力をもつものを
投与する。
つつがむし病は敗血症の一種と考えテトラサイクリンを投与。3. 急性細菌性呼吸器感染症の起炎菌
1). 急性扁桃炎 : β-溶連菌 > 黄色ブドウ球菌 > インフルエンザ菌 > 肺炎球菌 2). 急性咽頭炎 : 肺炎球菌 > インフルエンザ菌 > β-溶連菌 > 黄色ブドウ球菌 3). 急性気管支炎: インフルエンザ菌 > 肺炎球菌 > 黄色ブドウ球菌 > β-溶連菌 4). 急性肺炎 :
(基礎疾患なし)肺炎球菌 > インフルエンザ菌 > 黄色ブドウ球菌 > 肺炎桿菌 5). 急性肺炎 :
(基礎疾患あり)インフルエンザ菌 > 肺炎球菌 > 肺炎桿菌 > 緑膿菌
◎高齢者の感染症・高齢者の肺炎1. 市中呼吸器感染における高齢者と一般成人の臨床像の比較
老年者 一般成人 ★発症 緩 徐 急 激 ★症状
発熱
胸痛
咳
呼吸困難
意識障害
その他
微熱程度のことあり
胸膜炎を起こしても程度が軽い
軽度か全くないことも多い
多い
稀でない
頭痛、倦怠感や食欲不振に注意
脱水に伴う症状で気付くことあり
殆どあり
胸膜炎を起こせばかなり痛い
咳とともに膿性痰を排出
少ない
稀
食欲不振が目立たない★理学所見
胸部
全身所見
非定型的
気道所見に先行することあり
定型的
先ずは風邪症候群★検査所見
炎症反応
低蛋白
腎障害
胸部レ線
(細菌性肺炎)
目立たないこともかなりある
認めることあり
認めることあり
非定型的
時に間質性陰影、陰影の遷延
著明
殆どない (食欲不振を除く)
ない
定型的
実質性陰影★経過 時に抗生剤抵抗性、難治、遷延、重症化 抗生剤によく反応する
2. 高齢者の肺炎の起炎菌
市中型肺炎 特別養護老人ホーム居住者 肺炎球菌
ウイルス肺炎 (特にインフルエンザ)
H.influenzae、Moraxella catarrhalis
好気性グラム陰性桿菌
S.aureus
Legionella、結核、真菌肺炎球菌
H.influenzae、M.catarrhalis (特にCOLD)
K.pneumoniae、その他腸内細菌
嫌気性菌 (特に誤嚥のエピソードの場合)
S.aureus (特にMRSA)
ウイルス感染 (インフルエンザA、B、RSV)
3. 高齢者に多い感染症と抗生物質選択の目安
選択薬の矢印は「上から順番に試してみる」事を表しています。 目標菌種 選 択 薬 備 考 ★感染機会の少ない市中発症例 S.pneumoniae
H.influenzae
(S.aureus)
(M.catarrhalis)
(K.pneumoniae)↓ BLI-PC
↓ 経口セ (III)
↓ 注射用PC
↓ 注射用セ (I, II)
↓ 注射用セ (II, III)マイコプラズマは稀
これらが無効の時はクラミジア、レジオネラ、結核を考慮★市中の慢性呼吸器感染症 H.influenzae
K.pneumoniae
P.aeruginosa↓ 経口セ (III)
↓ BLI-PC
↓ ニューキノロン
↓ 注射用PC
↓ 注射用セ (II, III, IV)
↓ カルバペネム過去の分離菌や直前の投与薬剤を参考にする ★誤嚥例
(悪臭、腫瘍)各種耐性菌
P.aeruginosa
MRSA
嫌気性菌↓ 注射用セ (II, III, IV)
↓ モノバクタム +
↓ クリンダマイシン
↓ 又はミノマイシン誤嚥を起こす基礎疾患あり
口腔ケア、食事形態に配慮
注意:BLI-PC:β-ラクタマーゼ阻害剤 + ペニシリンの合剤4. 市中肺炎の予後因子
a. 年齢
b. 合併症の存在
c. 意識障害
d. 頻呼吸
e. 血圧低下 (収縮期または拡張期血圧)
f. 血中 BUN の上昇
g. WBCの以上高値或は異常低値
h. 低酸素血症
i. 低アルブミン血症
j. 肺病変の広がり
◎肺気腫の外科治療の適応基準1.画像所見
胸部CT、肺換気・血流シンチで不均等な気腫性変化が認められる。2.機能的所見
1).1秒率55%以下で、気管支拡張剤の吸入により1秒率の有為の改善を認
めない。
2).全肺気量120%以上、残気率50%以上。
3).静肺コンプライアンス0.3l/cmH2O以上。
4).%DLCO60%以下、DLCO/VA 3.0ml/min/mmHg以下。3.症状
内科的治療によって、Flecher-Hugh-Jones III度以上の労作性呼吸困難
を認める。4.以上の3項目を参考にして、手術の危険性を理解した上で患者本人が手術
を強く希望する。
◎肺気腫の呼吸機能所見1).閉塞性換気障害
a).FEV1.0(1秒量)の減少、FEV1.0%(1秒率)の低下。
b).フローボリューム曲線の下降脚の急激な下降2).肺気量分画異常と肺弾性収縮力異常
a).残気率(RV/TLC%)の上昇、機能的残気量(FRC)の増加
b).静肺コンプライアンス(Cst)の上昇3).ガス交換障害
a).CO肺拡散能力(DLCO、DLCO/VA)の減少
b).換気の不均等性:N2 1回呼吸法でのΔN2の上昇
c).換気・血流比の不均等分布:AaDO2の開大4).動脈血ガス異常
a).低O2血症
b).高CO2血症
◎夏型過敏性肺炎の臨床像
- 夏期(主に5〜10月)に発症する
- 発生地域としては秋田が最北であり、青森、北海道ではみられない
- 住環境により発生するので、家族発生や翌年以降の再発生がみられる
- 夏期には帰宅にて症状の再現がみられる
- 発熱、咳嗽、呼吸困難
- 肺活量および肺拡散能は低下する
- 血沈は中等度に亢進、好中球も軽度〜中等度増多を示す
- 急性期はKL-6、Sp-Dは高値を示す
- HRCTでは小葉中心性の粒状影とモザイク様に汎小葉性の濃度上昇を示す<
- 血清および気管支肺胞洗浄(BAL)液中に抗Trichosporon asahii、 T.mucoides 抗体が検出される
- BAL所見はTリンパ球、とくにCD8+Tリンパ球の増多を示す
- 病理組織学的に類上皮細胞肉芽腫、マッソン体がみられる
◎厚生労働省特定疾患による特発性慢性肺血栓塞栓症(肺高血圧型)の診断基準特発性慢性肺血栓塞栓症(肺高血圧型)の診断の手引き
器質化した血栓により、肺動脈が慢性的に閉塞を起こした疾患である慢性肺血栓塞
栓症のうち、肺高血圧型とはその中でも肺高血圧症を合併し、臨床症状として老作時
の息切れなどを強く認めるものをいう。
- 主要症状及び臨床所見
1) Hugh-Jones II度以上の労作時呼吸困難又は易疲労感が3カ月以上持続
する。
2) 急性例にみられる臨床症状(突然の呼吸困難、胸痛、失神など)が、以
前に少なくとも1回以上認められている。
3) 下肢深部静脈血栓症を疑わせる臨床症状(下肢の腫脹及び疼痛)が以前
認められている。
4) 肺野にて肺血管性雑音が聴取される。
5) 胸部聴診上、肺高血圧症を示唆する聴診所見の異常(II音の肺動脈成分
の亢進、IV音、肺動脈弁弁口部の拡張期心雑音、三尖弁弁口部の収縮期
心雑音のうち、少なくとも1つ)がある。
- 検査所見
1) 動脈血液ガス所見
(a)低炭酸ガス血症を伴う低酸素血症(PaCO2≦35 Torr、
PaO2≦70 Torr )
(b)AaDO2の開大(AaD02≧30 Torr)
2) 胸部×線写真
(a)肺門部肺動脈陰影の拡大(左第II弓の突出、又は右肺動脈下行枝
の拡大:最大径18mm以上)
(b)心陰影の拡大(CTR≧50%)
(c)肺野血管陰影の局所的な差(左右又は上下肺野)
3) 心電図
(a)右軸偏位及び肺性P
(b)V1でのR≧5mm又はR/S>1、V5でのS≧7mm又はR/S≦1
4) 心エコー
(a)右室肥大、右房及び右室の拡大、左室の圧排像
(b)心ドプラ法にて肺高血圧に特徴的なパターン又は高い右室収縮
期圧の所見
5) 肺換気・血流スキャン
換気分布に異常のない区域性血流分布欠損(segmental defects)
が 、血栓溶解療法又は抗凝固療法施 行後も6か月以上不変あるいは
不変と推 測できる。推測の場合には、6か月後に不変の確認が必要
である。
6) 肺動脈造影
慢性化した血栓による変化としてa) pouch defects、b) webs and
bands、c) intimal irregularities、 d) abrupt narrowing、
E) complete obstructionの5つのうち少なくとも1つが証明される。
7) 右心カテーテル検査
(a)慢性安定期の肺動脈平均圧が25mmHg以上を示すこと
(b)肺動脈楔入圧が正常(12mmHg以下)
- 除外すべき疾患
以下のような疾患は、肺高血圧症ないしは肺血流分布異常を示すことがあ
るので、これらを除外すること。
1) 左心障害性心疾患
2) 先天性心疾患
3) 換気障害による肺性心
4) 原発性肺高血圧症
5) 膠原病性肺高血圧症
6) 大動脈炎症候群
7) 肺血管の先天性異常
8) 肝硬変に伴う肺高血圧症
9) 肺静脈閉塞性疾患
- 診断基準
以下の項目をすべて満たすこと。
- 新規申請時
(1)主要症状及び臨床所員の 1)〜4)の項目の 1)を含む少なくと
も1項目以上の所見を有すること。
(2)検査所見の 1)〜4)の項目のうち2項目以上の所見を有し、
5)肺換気・血流スキャン、又は 6)肺動 脈造影の所見があり、
7)右心カテーテル検査の所見が確認されること。
(3)除外すべき疾患のすべてを鑑別できること。- 更新時
(1)主要症状及び臨床所見の 1)〜5)の項目の 1)を含む少なくと
も1項目以上の所見を有すること。
(2)検査所見の 1)〜5)の項目のうち、5) の所見と2項目以上の
所見を有すること。
(3)除外すべき疾患のすべてを鑑別できること。
◎(孤立性)肺内腫瘍性病変の鑑別診断
- 腫瘍性病変
肺癌、カルチノイド、過誤腫、硬化性血管腫、炎症性偽腫瘍、気管支腺腫- 感染、炎症性疾患
結核腫、円形肺炎、真菌症- 血管性病変
肺動静脈痩、外傷性肺内血腫- 肉芽腫性疾患、膠原病
Wegener肉芽腫症、リウマチ性結節、サルコイドーシス- その他
器質化肺炎、葉間胸水、肺内リンパ節、器質性肺梗塞
◎単純X線写真で肺野に腫瘤影として投影される肺外病変
- 肋骨原発の腫瘍(骨腫、軟骨腫、軟骨肉腫など)
- 肋間神経由来の腫瘍(神経鞘腫)
- 胸膜由来の腫瘍(solitary fibrous tumor of the pleura、悪性中皮腫、脂肪腫)
- 胸膜転移(胸腺腫瘍、肺癌、乳癌由来が多い)
- 胸壁腫瘍(疣贅、神経線維腫)
◎肺のヘリカルCT(HRCT)が明らかにしたもの
- びまん性汎細気管支炎では、HRCTで気管支影の延長上に微細な分岐状影ないし粒状影が見られ、胸膜と肺静脈に接しない所見と合わせて細気管支病変の像と診断できる。
- サルコイドーシスのHRCTでは,リンパ路を含む構造である気管支、肺血管周囲組織、小葉間隔壁,胸膜などの肥厚がみられる。本症は、びまん性肺疾患のな かで大きな領域を占めるリンパ行性の諸疾患の代表例である。
- 特発性肺線錐症のHRCTは、気管支、肺血管と直接関係のない磨りガラス状影、網状影を示す。肺実質の疾患の代表例である。
◎肺内真菌症またはニューモシスティス症の顕微鏡的鑑別
- Yeast(発酵菌)
1) Small
・Torula
・Histoplasma
・Sporothrix
・Pneumocystis
2) Medium-sized
・Candida
・Cryptococcus
・North American blastomyces
・South American blastomyces
3) Large
・Coccidioides- Hyphae(菌糸)
1) Short
・Candida(pseudohyphae)
2) Long
・Aspergills
3) Broad and irregular
・Phycomyces(mucor、absidia、basidiobolus)
◎びまん性肺胞出血の鑑別診断
(Focal causes of vigorous bleeding must be ruled out.)
- Systemic vasculittis syndromes
・Wegener'sgranulomatosis
・Microscopic polyangiitls
・Henoch-Sch6nleinpurpura
・Behcet's syndrome
・Mixed cryoglobulinemia
・Churg-Strauss syndrome- Connective-tissue diseases
・Systemic lupus erythematosus
・Rheumatoid arthritis
・Scleroderma
・Mixed connective-tissue disease
・Polymyositis or dermatomyositis- Anti-basement-membrane disease
- Glomerdonephritis-associated alveolar hemorrhage
・Immuno-complexex-mediated
・Pauci-immune IgA nephropathy- Infections
・Pneumonia
・Angioinvasive aspergillosis
・Candidiasis
・Cytomegalovirus infection
・Legionellosis
・Herpes simplex pneumonia
・Acquired immunodeficiency syndrome- Drugs or toxic agents
・Penicillamine
・Triimellitic anhydride
・Isocyanates
・Cocaine
・Propylthiouracil
・Tirofiban
・Abciximab
・Phenytoin- Pulmonary metastasis
・Metastasis of angiosarcoma
・Metastasis of Kaposi's sarcoma- Transplantadon
・Bone marrow transplantation
・Solid-organ transplantation- Diffuse alveolar damage or acute respiratory distress syndrome
- Cardiac disorders
・Mitral stenosis
・Congestive heart faiure
・Cor triatriatum- Bleeding disorders
・Adverse effect of anticoagulation therapy
・Disseminated intravascular coagulation
・Thrombotic thrombocytopenic purpura- Pulmonary vascdar disease
・Primary pulmonary hypertension
・Thromboembolic disease
・Pulmonary-capillary hemangiomatosis- Other disorders
・Lymphangioleiomyomatosis or tuberous sclerosis
・Sarcoidosis
・Idiopathic pulmonary fibrosis
・Antiphospholipid-antibody syndrome
・Heiner's syndrome(alveolar hemorrhage associated with allergy to milk)
・Isolated pauci-immune pulmonary capillaritis
・Idiopathic pulmonary hemosiderosis
◎特発性間質性肺疾患の種類
- Acute interstitial pneumonitis
- Acute eosinophilic pneumonia
- Alveolar proteinosis
- Bronchiolitis obliterans with organizing pneumonia
- Chronic eosinophilic pneumonia
- Desquamative interstitial pneumonia
- Idiopathic pulmonary hemosiderosis
- Idiopathic pulmonary fibrosis
- Lymphangioleiomyomatosis
- Nonspecific interstitial pneumonia
- Pulmollary histiocytosis X(Langerhans'-cell histiocytosis)
- Resplratory bronchiolitis-associated interstitial lung disease
- Sarcoidosis
◎特発性間質性肺疾患における症状経過について
- Acute(days to weeks)
Acute eoslnophilic pneumonia
Acute hypersensitivity pneumonitis
Acute interstitial pneumonitis
Acute respiratory distress syndrome
Bronchiolitis obliterans with organizing pneumonia- Subacute(weeks to months〉
Desquamative interstitial pneumonia
Respiratory bronchiolitis-associated interstitial lungdisease
Bronchiolitis obliterans with organizing pneumonia
Chronic eosinophilic pneumonia- Chronic(months)
Idopathic pulmonary fibrosis
Nonspecific interstitial pneumonia
Pulmonary histiocytosis X(Langerhans'-cell histiocytosis)
Sarcoidosis
Alveolar proteinosis
◎肺野の空洞(cavity)の鑑別診断
- collagen vascular disease
・Wegener's granulomatosis
・Rheumatoid arthritis
・Systemic lupus erythematosus- Sarcoidosis
- Neoplasms
・Benign neoplasm(bronchial adenoma or teratoma)
・Primary lung carcinoma
・Lymphoma
・Metastatic disease(adenocarcinoma or sarcoma)- Congenital abnormalities(bronchogenic cyst)
- Mechanical causes
・Obstruction(due to a tumor,a foreign body,or bronchostenosis)
・lnfected bullae(due to chronic obstructive pulmonary disease,emphysema,or irradiaion)- Vascular abnormalities
・lnfarction
・Septic emboli(right-sided endocarditis,emboli due to a vascular device,or Lemierre's syndrome)- lnfections
・Bacterial(mycobacteria,nocardia,Rhodococcus eqi,actinomyces,or Burkholderia pseudomallei)
・Pyogenic abscess(peptostreptococcus,prevotella,bacteroides, fusobacterium,staphylococcus aureus,Klebsiella pneumoniae, Streptococcus pyogenes,Haemophilus influenzae,legionella, or S. pneumoniae)
・Fungal(aspergillus,mucor,Blastomyces dermatidis,Penicillium marneffei,or Pneumocystis carinii)
・Parasitic(Echinococcus granulosus,Toxoplasmosis gondii,Entamoeba histolytica,or Paragonimus westermani)
◎成人呼吸窮迫(促迫)症候群(ARDS、ARDS)の原因
- びまん性肺胞障害(Diffuse alveolar damage)
- 感染性肺炎
- BOOP
- 出血(微小動脈炎=Capillaritis)
- 肺浮腫(alveolar or interstitial)
- 急性好酸球性肺炎
- 血栓症(血栓塞栓、脂肪、異物あるいは腫瘍)
- 気管支肺胞癌
- 肺胞蛋白症
- 急性移植片拒絶症
◎BOOPの原因
特発性、感染症、Collagen vascular disease、薬物副作用、刺激性の金属
粉末(Irritant fumes)、過敏性反応、Aspiration(逆流性肺障害)
◎増大したり縮小したりする肺内結節性病変の原因
- 感染症
・真菌症
・細菌感染症
・ウイルス感染症
・マイコバクテリウム感染症- 悪性腫瘍
・セミノーマの転移(original or second primary)
・Second,nonseminomatous cancer(転移癌、リンパ腫、腫瘍塞栓)
・Lymphomatoid glanulomatosis- 炎症性、自己免疫性、環境因子性
・サルコイドーシス
・好酸球性肉芽腫症
・ウェジナー肉芽腫症
・RA
・全身性硬化症
・過敏性肺臓炎
・Pneumoconiosis
・BOOP- 肺塞栓症
◎ BOOP(Bronchiolitis obliterance organizing pneumonia)
(内科 1995;75:991:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
BOOP(bronchiolitis obliterans organizing pneumonia、Eplerら1985年)は、
びまん性肺疾患に対する開胸肺生検症例の検討から生まれた新しい疾患概念である。
臨床的にみると、発症年齢は40〜60歳代が多く、性差はない。比較的急性ないし
亜急性に発症し、咳嗽、呼吸困難、発熱などの感冒症状がみられるが、検診で 発見
される例もある。喫煙との関係は否定的である。理学的にはfine crackleを聴取す
るが、ばち指やチアノーゼは少ない。臨床検査では約70%の症例に白血球増加、赤沈
亢進、CRP陽性、LDHの増加などの炎症所見がみられる。肺機能検査では拘束性障害、
拡散能障害および低酸素血症をみるが、閉塞性障害をみることはほとんどない。
胸部X線所見は両側多発性にair-bronchogramを伴う斑状陰影がみられ、約30%の
症例において移動性を示す。また両下肺野に粒状網状影を呈し肺線維症様の陰影を
認める。
胸部CTでは末梢側辺緑に斑状のair-bronchogramを伴う肺野濃度の著明な増強が
みられ、散在性のpatchy consolidation所見を示す。BOOPと肺線維症の鑑別にはCT
所見は不可欠である。
BALF所見は、総細胞数の増加、とくにリンパ球が増加(20%以上)し、好中球や
好酸球が軽度増加する。CD4/CD8比は低下する。
開胸肺生検による病理学的所見として、終末細気管支以下の閉塞と器質化肺炎を
認めるのが特徴であるが、このような所見はカリニ肺炎、好酸球性肺炎、閉塞性肺
炎、薬物によるもの、粉塵吸入、膠原病、腫瘍あるいは膿瘍などの周囲の二次反応
などでもみられ、臨床的な所見を考慮しながら診断がすすめられなければならない。
鑑別診断は好酸球性肺炎、マイコプラズマ、肺線維症などが対象となる。
◎原発性肺高血圧症の診断の手引
(内科 1995;75:985:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
原発性肺高血圧症は、本来、原因不明の肺高血圧症に対する臨床診断名である。
その診断根拠としては、
A. 肺動脈性(または前毛細管性)肺高血圧および/または、これに基づく右室肥大の確認
B. その肺高血圧が原発性であることの確認が、必要である。
A. 肺動脈性肺高血圧および/または、これに基づく右室肥大を示唆する症状や所見
I. 主要症状および臨床所見
1. 息ぎれ
2. 疲れやすい感じ
3. 労作時の胸骨後部痛(肺高血圧痛)や失神
4. 胸骨左縁(または肋骨弓下)の収縮期性拍動
5. 聴診上、第2肺動脈音の亢進、第4音の聴取、肺動脈弁口部の拡張期性
雑音および三尖弁口部の収縮期逆流性雑音
II. 検査所見
1. 胸部X線像で肺動脈本幹部の拡大、末梢肺血管陰影の細小化
2. 心電図で右室肥大所見
3. 肺機能検査で正常か軽度の拘束性換気障害
(動脈血O2飽和度はほぼ正常)
4. 右心カテーテル検査で
1)肺動脈圧の上昇(中間圧25mmHg以上)
2)肺動脈楔入圧(左心房圧)は正常(12mmHg以下)
5. 頸静脈波でα波の増大
B. 原発性を推定するための手順
原発性肺高血圧症においては、ときに赤沈亢進、γ-グロブリン値の上昇、
免疫反応の異常を認めることがあり、まれに関節炎、Raynaud現象、脾腫など
をみることもある。
また、心肺の一次性または先天性疾患が認められず、かつ、肝硬変の存在
も認められないうえで、次の組織像のあるもの。
III. 組織所見
1. 中膜の筋性肥大、求心性の内膜線推化、壊死性動脈炎、plexiform
lesionという特徴をそなえた肺血管病変
IV. 除外すべき病態
以下のような病態は肺高血圧ひいては右室肥大、慢性肺性心を招来しうるので、これらを除外すること
1. 気道および肺胞の空気通過を一次性に障害する疾患
慢性気管支炎、気管支喘息、肺気腫、各種の肺線維症ないし肺臓炎、
肺肉芽腫症(サルコイドーシス、べリリオーシス、ヒスチオサイトーシス、
結核など)、膠原病、肺感染症、悪性腫瘍、肺胞微石症、先天性嚢胞性
疾患、肺切除後、高度のハイポキシア(高山病、その他)、上気道の
慢性閉塞性疾患
2. 胸郭運動を一次性に障害する疾患
脊柱後側彎症、胸郭成形術後、胸膜胼胝、慢性の神経筋疾患(ポリオ
など)、肺胞低換気を伴う肥満症、特発性肺胞低換気症
3. 肺血管床を一次性に障害する疾患
肺血栓症、肺塞栓症、膠原病、各種の動脈炎、住血吸虫症、鎌状細胞貧血、
縦隔疾患による肺血管床の圧迫、
肺静脈閉塞症(pulmonary veno-occlusive disease)
4. 左心系を一次性に障害する疾患
各種弁膜症(ことに僧帽弁狭窄症)、左心不全
5. 先天性心疾患
心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存症、その他
■診断の基準
1. 確実例
I.と II.の半数以上の項目、および III.、IV.の条件を満たすもの。
2. 疑い例
I.と II.の半数以上の項目、および IV.の条件を満たすが、III.の検査
が行われていないもの。
(厚生省特定疾患原発性肺高血圧症研究班)
◎繰り返す非定型肺炎の原因(NEJM 2004;351:2744)
1. infection
・Bronchiectasis
・Atypical organism
Mycobacteria
Legionella
Pneumocystis
2. Cardiogenic pulmonary edema
3. Environmental or toxic exposure
・Hypersensitivity pneumonitis
・Drugs
・Acute eosinophilic pneumonia
4. Rheumatologic and autoimmune disease
・Acute lupus pneumonitis
・Diffuse alveolar hemorrhage
・Antineutrophil cytoplasmi cantibody-associated vasculitis,
Goodpasture's syndrome
・idiopathic pulmonary hemosiderosis
5. Idiopathic disorders
・Acute interstitial pneumonitis(Hamman-Rich syndrome)
・Interstitial pulmonary fibrosis with acceleration
・Bronchiolitis obliterans with organizing pneumonia
・Respiratory bronchiolitis with interstitial lung disease-desquamative
interstitial pneumonitis
・pulmonaryalveolarproteinosis
◎ARDSの稀な原因(とその治療)について(NEJM 2005;352:2429)
1. Occult infections (specific antimicrobial therapy)
1) Chlamydia
2) Cytomegalovirus
3) Leptosplrosis
4) Mycoplasma
5) Pneumocystis
6) SARS(Corticosteroid)
7) Tuberculosis
8) Tularemia
2. Vasculitis, capillaritis, or diffuse alveolar hemorrhage
(High-dose corticosteroids, Cytotoxic therapy(cyclophosphaamide))
1) Antineutrophil cytoplasmic antibody-positive vasculitis
2) Antiphospholipid-antibody syndrome
3) Cryoglobulinemia
4) systemic lupus erythematosus
3. Idiopathic inflammation (High-dose corticosteroids)
1) Accelerated usual interstitial pneumonitis
2) Acute bronchiolitis obliterans with organizing pneumonia
3) Acute eosinophilic pneumonia
4) Acute interstitial pneumonia
5) Hypersensitivity pneumonitis
4. Drug reactions (Supportive therapy, Corticosteroids)
1) Allergic (eosinophiic) pneumonia
2) Bleomycin toxicity (with oxygen exposure)
3) cocalne or heroin inhalation
4) Gemcitabine
5) Interleukin-2 therapy
6) Trans retinoic acid syndrome
5. Miscellaneous (Supportive care, Corticosteroids)
1) Acute chest syndrome
2) Amniotic-fluid embolism
3) Exposures (nitrous oxide, paraquat, chlorine gas)
4) Fat emboli
5) Ovarian hyperstimulation
6) Pulmonary alveolar proteinosis (Whole-lung lavage)
7) Transfusion-related acute lung injury
◎インフルエンザに合併する脳炎・脳症に関する全国調査(1998.1〜1999.3の発症)
(202例、男:102、女:100、NIS、No.3953(H12/1/29)、P26-28)
1.一歳をピークに0〜5歳が80.2%(162/202)。10〜19歳は14例、20歳以上は8例。
2.痙攣、意識障害などの神経症状は78.2%が発熱と同時またはその翌日に発症。
・痙攣:79.7%、咳:36.1%、嘔吐:26.2%、鼻水:19.3%、下痢:11.9%。
3.基礎疾患のない患者が83.7%(169/202)。
4.予後規定因子:血小板低下、GOT・GPT増加、LDH増加、血液凝固系異常
・血小板5万以下は83%が死亡、GOTは1000を越えると72%、500以上は61%が死亡
・出血傾向があれば60%以上が死亡
5.髄液中にウイルスゲノムや細胞増多を認めた例は一部にすぎない。
・細胞増多は100/μ1以上は2.5%(5例)、10/μ1以上は8.4%(17例)。
・蛋白増加は100mg/dl以上は9.4%(19例)と少ない。
6.Reye症候群に分類される病態は5%で、血糖低下(80mg/dl以下)が4.0%、血中アンモ
ニア増加(100μg/dl以上)も1.4%と少なかったためだろう。
◎呼吸困難のFlelcher-Hugh-Jonesの分類(日内雑誌2001;90:766)
TI度 :同年齢の健常者と同様の労作ができ、歩行、昇降も健常者なみにできる。
UII度 :同年齢の健常者と同様に歩行できるが、坂、階段は健常者なみに歩行でき
ない。
VIII度:平地でさえ健常者なみに歩けないが、自分のペースなら(1.6km以上)歩
ける。
WIV度 :休みながらでなければ(50m以上)歩けない。
V度 :会話、衣服の着脱にも息切れがする。息切れのため外出できない。
◎呼吸困難のBorgスケール
0 感じない (Nothing at all)
0.5 非常に弱い (Very、very weak)
1.0 やや弱い (Very weak)
2.0 弱い (Weak)
3.0 中位 (Moderate)
4.0 多少強い (Somewhat strong)
5.0 強い (Strong)
6.0
7.0 とても強い (Very strong)
8.0
9.0
10.0 非常に強い (Very、very strong)
・ 最大限に強い (Maximal)
◎COPDの診断基準と呼吸機能検査所見(日本呼吸器学会COPDガイドラインから引用)
1.肺機能スクリーニング検査所見
1)スパイロメトリー
1秒率(FEVl.0/FVC)の低下;55%以下をCOPD高度疑い症例とし、70%以下
(55~70%)をCOPD疑い症例とする、1秒量の低下、%1秒量の低下
2)特徴的なフローボリウム曲線:
努力呼出時、最大流速(ピークフロー)の直後の下降脚が下に凸の曲線を
描く、すなわち、急激に下降しその後の勾配が極めて綾やかで平坦なパターン
を呈する(V50およびV25の著しい減少)
3)気管支拡張薬による気流閉塞の可逆性:
気管支拡張薬(β2刺激薬MDI2パフ)吸入による改善は1秒量にして300mL
以下(改善率で20%以下)
2.呼吸機能精密検査所見
1)肺拡散機能の低下:%DLCO60%以下(気管支喘息との鑑別に有用な可能性がある)
2)残気率の増加:50%以上
3)静肺コンプライアンスの上昇:0.30L/cmH2O以上
4)動脈血ガス分析:呼吸機能の低下に伴い、動脈血酸素分庄の低下、動脈血二酸
化炭素分庄の上昇、肺胞気動脈血酸素分圧較差(AaDO2)の開大を来す
◎呼吸理学療法プログラム(日内雑誌2001;90:823)
1.リラクセーション:呼吸補助筋のマッサージ・ストレッチ、楽な体位、呼吸介助法
2.腹式呼吸と口すぼめ呼吸:1kgの砂のうを使用し1日2個(朝、夜)10分間施行
3.日常生活に呼吸法を活かす方法の指導:歩行、階段昇降、入浴時などに呼気と動作
を同調
4.胸郭可動域訓練:呼吸筋ストレッチ体操を1~3回/日、棒体操を3~5回/日、肋骨の
捻転法
5.パニックコントロール:楽な体位、口すぼめ呼吸、呼吸介助法、吸入療法を併用
6.運動療法:上肢筋トレーニング、下肢筋トレーニング、歩行訓練(6分間歩行距離
試験から歩行スピードを処方し、20~30分/日)
7.排痰法:1日30ml以上の喀痰のある場合に指導
体位排痰法(排痰体位、Squeezing、咳およびhuffing、吸入療法との併用、排痰
の時間及び頻度)、器具を用いて行う排痰法
8.日常生活指導:急性増悪の予防
9.栄養指導:%IBWが80%以下の症例には必要
◎侵襲的換気法と比較したNIPPV(非侵襲的陽圧換気法)の利点と欠点(日内雑誌2001;90:839)
<利点>
@1.気管内挿管に伴う危険が避けられる:食道挿管、低酸素血症、血圧上昇。
A2.会話が可能である。
B3.食事が可能である。
C4.鎮静剤の投与量の減量が可能である。
D5.感染の機会を減らせる:微生物の気遣内侵入の頻度が高くならない。喀痰排泄
能が低下しない。
E6.装着が簡便であり、時々外してみることができる:装着時間の調節が可能。
日中のQOLの向上が期待される。
<欠点>
@1.気遣と食道が分離されない:誤嚥、呑気がおこりうる。
A2.患者の協力が必要である:最も大切な点である。患者の協力が得られない症例
ではNIPPVは施行できない。
B3.医療スタッフの慣れと手間が必要:医師、看護婦などが機器の操作に慣れてい
ることと、手間をかけることが必要。
C4.気管内吸引が困難:気管内挿管例と比し、最大の欠点である。
D5.マスクの顔面圧迫による障害:長期使用の場合、マスクの圧迫により、顔面に
発赤や皮膚潰瘍が生じうる。
E6.マスクが適合しない症例がある:顔面の変形・外傷や胃チューブでマスクが適
合しなくなる。
F7.高い気道内庄が得られない:マスクの限界は約20cmH20程度である。
※NIPPV(非侵襲的陽圧換気法)施行が適応となる患者
@ 1.マスクの説明に納得し、受け入れることができる患者。
2.喀痰排泄が自分で可能であり、喀痰量があまり多くない患者。
B 3.意識清明であり咽頭反射が保たれ、誤礁の危険がない患者。
C 4.消化管出血やイレウスの合併症がない患者。
D 5.循環動態が安定している患者。
E 6.顔面変形・外傷がなく、マスク装着が可能である患者。
◎肺水腫(pulmonary edema)の原因疾患(*印は小児にも起こり得る
A.COMMON
*1.Agonal
*2.ARDS(eg,shock lung,respirator lung);oxygen toxicity
*3.Aspiration(eg,Mendelson's s.)
*4.Cardiac failure(eg,left heart failure,mitral stenosis,total APVR
hypoplastic left heart s.,myocardiopathy
*5.Drug reaction(eg,nitrofurantoin,aspirin,hydrochlorothiazide,
beta adrenergic drugs,interleukin-2,radiologic contrast media)
*6.Glomerulonephritis,acute;nephrosis
*7.Iatrogenic(incl.fluid overload,overtransfusion,drug overdose)
8.Narcotics(esp.heroin,morphine,methadone)
9.Neurogenic,cerebral(stroke,head trauma,epilepsy,neoplasm,increased
intracranial pressure)
10.pulmonary infarction,thromboembolism
*11.Renal failure,uremia
12.Sensitivity pneumonitis,extrinsic allergic alveolitis(eg,farmar's
lung,silo-filler's disease,bagassosis)
B.UNCOMMON
*1.Cardiopulmonary bypass,open heart surgery
2.Collagen disease
*3.Disseminated intravascular coagulopathy
4.Fat embolism(incl.oily contrast medium,amniotic fluid)
*5.Hepatic disease(eg,acute hepatitis)
6.High altitude
*7.Hydrocarbon aspiration
*8.Hypoproteinemia(eg,malabsorption)
*9.Hypoxia,any cause
*10.Inhalation of noxious gas,smoke,paint fumes,sulfur dioxide,beryllium,
silica,dinitogen tetroxide,carbon monoxide,fluorocarbons,hydrocarbons,
paraquat,ammonium,chlorine,hydrogen sulfide,phosgene,cadmium
*11.Lymphangiectasia
*12.Near-drowning
13.Neoplasm of heart(esp.left atrial myxoma)
14.Pancreatitis,acute
*15.Parasitic disease(eg,malaria,ascariasis,strongyloidiasis)
16.Pericarditis,(esp.constrictive)
17.Pheochromocytoma(catecholamine release)
18.Pleural air or fluid aspiration,rapid or excessive;
reexpansion of lung following treatment for a large pneumothorax
19.Pregnancy
20.Radiation therapy
21.Shock(eg,insulin reaction;gram negative sepsis;snakebite;
electric shock;anaphylactic reaction to penicillin,blood transfusion,
or radiologic contrast medium)
*22.Transient tachypnea of newborn(retained fetal lung fluid)
*23.Trauma,thoracic
*24.Upper airway obstraction(eg,aspirated food,foreign body,hanging,
suffocation,epiglottitis,croup)
*25.Venous or lymphatic obstruction(eg,pulmonary veno-occlusive disease,
blockage by mediastinal mass)
◎肺胞出血をきたす疾患(日内雑誌2001;90:1396)
1.毛細血管炎による肺胞出血
・顕微鏡的多発血管炎(MPA)
・Wegener肉芽腫症(WG)
・全身性エリテマトーデス(SLE)
・Goodpasture症候群(GS)
・抗リン脂質抗体症候群(APS)
・Churg-Strauss症候群
・ベーチェット病
・Henoch-Schonlein紫斑病
・IgA腎症
・クリオグロブリン血症
・その他の膠原病(PM、MCTD、RA、SSc)、膠原病関連疾患
・一部の薬剤性(ジフェニルヒダントイン、ペニシラミン、プロピルチオウラ
シルその他)
2.その他の原因による肺胞出血
・骨髄移植後
・心アミロイドーシス
・僧帽弁狭窄症
・汎発性血管内凝固症候群(DIC)
・びまん性肺胞障害(DAD)
・肺血管肉腫
・肺毛細血管腫
・肺リンパ脈管筋腫症
・一部の薬剤性
・中毒物質吸入(isocyanateなど)
・特発性肺ヘモジデローシス
◎肺高血圧症の臨床的分類(WHO)
1.肺動脈性高血庄症
(1)原発性肺高血圧症
a)散発性
b)家族性
(2)続発性肺高血圧症
a)膠煉病
b)先天性全身肺シヤント
c)門脆高血圧
d)HIV感染
e)薬剤/毒物
@ ・食欲抑制薬
A ・その他
f)新生児持続性肺高血圧症
g)その他
2.肺静脈性高血庄症
(1)左心房・左心室疾患
(2)左側弁膜心疾患
(3)中心肺静脈の外部からの圧迫
a)線維性縦隔炎
b)リンパ節腫脹/腫瘍
(4)肺静脈閉塞症
(5)その他
3.呼吸器系疾患あるいは低酸素血症に関連した肺高血圧症
(1)慢性閉塞性肺疾患
(2)問質性肺疾患
(3)睡眠障害性呼吸
(4)肺胞低換気疾患
(5)慢性的な高所曝露
(6)新生児肺疾患
(7)肺胞毛細血管形成異常
(8)その他
4.慢性血栓塞栓性疾患による肺高血圧症
(1)近位肺動脈の血栓塞栓性閉塞
(2)遠位肺動脈の閉塞
a)肺塞栓症(血栓、腫瘍、卵子や寄生虫、異物)
b)その位置での血栓
c)鎌状赤血球症
5.直接肺血管に影響を及ぼす疾患による肺高血圧症
(1)炎症性
a)住血吸虫症
b)サルコイドーシス
c)その他
(2)肺毛細血管血管腫症
◎肺内多発結節影の読影と鑑別(大場覚氏「胸部X線写真の読み方」より、多少改変)
1)肺内に多発結節影を示す主な疾患は以下のごとくである。
A.腫瘍性
1.転移性肺癌
2.細気管支肺胞上皮癌
3.悪性リンパ腫(特にAIDS患者)
4.Langerhansce cell histiocytosis
5.上皮性血管内皮腫
6.転移性子宮筋腫症
7.重複癌
B.感染性
1.敗血症性膿瘍
2.肺結核症
3.クリプトコッカス症
4.アスペルギルス症
5.寄生虫症
C.血管性
1.器質化塞栓
2.血腫
3.多発性動静脈奇形
4.Wegener's granulomatosis
D.その他
1.サルコイド結節
2.リウマチ結節
3.アミロイド結節
4.珪肺結節
5.時に肺好酸球性肉芽腫も多発結節影にみえる
2)担癌患者や悪性腫瘍の既応症のある症例では肺内結節影は単発性であろうと、
多発性であろうと転移をまず疑う。胸部]線写真で孤立性にみえても、さらに
多発性かどうかを通常の断層撮影か、CTで確かめる。
3)腫瘍性多発結節像は通常境界明瞭、辺縁平滑な円形の充実性陰影のことが多い
がそうでないこともある。
4)血行性に撒布される肺転移巣や敗血症性塞栓巣は、下肺野および肺の外套部に
多く分布しているのが通常である。しかし、背臥位中に肺に血行撒布されると、
比較的全肺野に均等に分布されやすい。
5)炎症性多発結節影の辺縁は浸潤影を伴うので、不鮮明な丸い融合影となりやす
い。
6)空洞を伴う疾患は多いが、空洞の頻度や壁の厚さが多少診断に役立つことが
あるが、アスペルギルスの菌球を除けば、空洞の形態からは疾患を鑑別する
ことは困難なことが多い。
7)肺門、縦隔リンパ節腫大を伴うものとしては、悪性腫瘍、悪性リンパ腫、塵肺
症、サルコイドーシスなどがある。
8)骨肉腫、軟骨肉腫、粘液産生性大腸癌、卵巣癌の転移巣や、アミロイド結節
などでは石灰化することがある。
9)すべての多発結節影が−元的に説明できない時には、多元的に考えることも必
要である。例えば、肺結核の陰影に混ざって肺癌が生ずることもある。
10)胸部レ線写真に投影されている結節影の中にはRecklinghausen病の皮膚結節、
アスベスト症による胸膜胼胝(べんち)、胸膜転移巣、胸膜中皮腫、多発性
肋骨骨折治癒後の骨硬化像など、皮膚や胸膜や肋骨などの肺外の多発結節影の
こともあるので、注意深い観察が必要である。
◎COPDの重症度分類(GOLD)(日内雑誌 2002;91:139)
stage
0 :予備群
正常スパイロメトリー
持続性症状(咳、痰)
I :軽症
FEV1/FVC<70%
FEVl≧80%予測値
II :中等症
FEVl/FVC<70%
30%≦FEVl<80%予測値
III :重傷
FEVl/FVC<70%
FEVl<30%予測値
または
FEVl<50%予測値+呼吸不全か心不全
◎肺における癌の微小塞栓の病理学的変化(NEJM 2002;346:1316)
1. Mechanical occlusion by tumor
2. Thrombotic occlusion by fibrin
3. Carcinomatous arteriopathy(a florid intimal reaction)
4. Hemolysis and microangiopathic hemolytic anemia
5. Hypercoagulable state due to mucinous tumor
6. Pulmonary hypertension
7. Hemorrhageandhemorrhagici皿fおction
8. Spread into lymphatic system,lymphangitic carcinomatosis
◎気管支拡張症と関連する病態(NEJM 2002;346:1384)
1. Postinfectious conditions
・Bacteria(pseudomonas,haemophilus)
・Mycobacterium tuberculosis
・Aspergillus species
・Virus(adenovirus,measles virus,influenzavirus,human immuno-
defiency virus)
2. Congenital conditions
・Primary ciliary dyskinesia
・Alpha1-antitrypsin deficiency
・Cystic fibrosis
・Tracheobronchomegaly(Mounier-Kuhn syndrome)
・Cartilage deficiency(Williams-Campbell syndrome)
・Pulmonary sequestration
・Marfan's syndrome
3. Immunodefiency
・Primary
Hypogammaglobulinemia
・Secondary
Caused b ycancer(chronic lymphatic leukemia),Chemotherapy,or
immune modulation(after transplantation)
4. Sequelae of toxic inhalation or aspiration
・Chlorine
・Overdose(heroin)
・Foreign body
5. Rheumatic conditions
・Rheumatoid arthritis
・Systemic lupus erythematosus
・Sjogren's syndrome
・Relapsing polychondritis
6. Other
・Inflammatory bowel disease(chronic ulcerative colitis or Crohn's
disease)
・Young's syndrome(secondary ciliary dyskinesia)
・Yellow nail syndrome(yellow nails and lymphedema)
◎気管支内病変に伴う血痰の鑑別診断(NEJM 2002;346:1477)
1. Endobronchial carcinoma
2. Metastatic endobronchial tumor
・Melanoma
・Endometrial or ovarian carcinoma
・Thyroid carcinoma
・Renal-cell carcinoma
・Kaposi's sarcoma
・Calcified carcinoid tumor
3. Endobronchial endometriosis
4. Benign tumo ro rpyogenic granuloma
5. Granulation tissue
・Response to a forelgn body or irritation
・Trauma
6. Vasculitis
7. Wegener's granulomatosis
8. Lymphomatoid granulomatosis
9. Sarcoidosis
10. Fungal infection
・Aspergillosis
・Phaeohyphomycosis
・Sporotrichosis
・Blastomycosis
・Histoplasmosis
・Coccidioidomycosis
11. Tuberculosis
12. Broncholithiasis
◎急性過敏性肺臓炎の診断基準(NIS 2000;No.3982:33)
a. 臨床像
臨床症状・所見1)〜4)のうちいずれか2つ以上と、検査所見1)〜4)
のうち1)を含む2つ以上の項目を同時に満足するもの
1. 臨床症状・所見
1)せき、2)息切れ 3)発熱、4)捻髪音ないし小水疱性ラ音
2. 検査所見
1)胸部X線像にてびまん性散布性粒状陰影(またはスリガラス状)
2)拘束性換気能障害
3)血沈値亢進、好中球増多、CRP陽性のいずれか一つ)
4)低酸素血症(安静時あるいは運動後)
b. 発症環境
1)〜6)のうちいずれか1つを満足するもの
1)夏型過敏性肺炎は夏期(5〜10月)に、高温多湿の住宅で起こる
2)鳥飼病は鳥の飼育や羽毛と関連して起こる
3)農夫肺は黴びた枯れ草の取り扱いと関連して起こる
4)空調肺、加湿器肺はこれらの機器の使用と関連して起こる
5)有機塵挨抗原に曝露される環境での生活歴
6)特定の化学物質と関連して起こる
注:症状は抗原暴露4〜8時間して起こることが多く、環境から離れる
と自然に軽快する。
c. 免疫学的所見
1)〜3)のうち1つ以上を満足するもの
1)抗原に対する特異抗体陽性
(血清あるもいはBAL*1液中)
2)特異抗原によるリンパ球増殖反応陽性
(末梢瓜あるいはBALリンパ球)
3)BAL所見(リンパ球↑、Tリンパ球↑)*2
d. 吸入誘発
1)〜2)のうち1つ以上を満足するもの
1)特異抗原吸入にまる臨床像の再現
2)環境暴露による臨床像の再現
e. 病理学的所見
1)〜3)のうちいずれか2つ以上を満足するもの
1)肉芽腫形成、2)胞隔炎、3)Masson体
【診断基準】
確実:a、b、dまたはa、b、c、eを満たすもの
強い疑い:aを含む3項目を満たすもの
疑い:aを含む2項目を満たすもの
*1:bronchoalveolar lavage(気管支肺胞洗浄)
*2:一般的にリンパ球比率は35%を超える。抗原回避2日以内では好中球増多を示す。
◎肺の肉腫と由来組織(NIS 2002:4074:94)
・線錐組織 線維肉腫 fibrosarcoma
・平滑筋 平滑筋肉腫 leiomyosarcoma
・骨格筋 横紋筋肉腫 rhabdomyosarcoma
胞巣状軟部肉腫 alveolar soft part sarcoma
・リンパ管 リンパ管肉腫 lymphangiosarcoma
・血管 硬化性血管肉腫 epithelioid hemangioendothelioma
カポジ肉腫 Kaposi's sarcoma
肺血管肉腫 pulmonary angiosarcoma
肺動静脈肉腫 pulmonary artery and vein sarcoma
・神経 神経肉腫 neurogenic sarcoma
神経芽腫 neuroblastoma
未分化神経外胚葉性腫瘍
primitive neuroectodermal tumor
・滑膜 滑膜肉腫 synovial sarcoma
・軟骨 軟骨芽腫 chondroblastoma
軟骨肉腫 chondrosarcoma
・骨 骨肉腫 osteosarcoma
・脂肪 脂肪肉腫 liposarcoma
・組織球 悪性線維性組織球腫
malignant fibrous histiocytoma
・開業系+上皮系 肺芽腫 pulmonary blastoma
癌肉腫 carcinosarcoma
◎アスベスト(石綿)について(井原医師会:河合恭廣先生)
1. アスベスト(石綿)
蛇紋石や、角閃石が繊維状に変形した天然の珪酸塩鉱物。蛇紋石系(白石綿:
クリソタイル)と角閃石系(茶石綿:アモサイト、青石綿:クロシドライトなど)
に大別される。石綿の繊維は髪の毛の5000分の1程度の細さである。アスベスト
(asbest)はオランダ語で、英語ではアスベストス(asbestos)と呼ばれる。
白石綿はしなやかさが高く、茶石綿は柔軟性があり強靭、青石綿は耐酸性が極め
て高い特徴を持っている。
2. 歴史
古代エジプト:ミイラを包む布。古代ローマ:ランプの芯。日本:竹取物語に
登場する、火にくべても燃えない「火鼠の皮衣」、平賀源内が布にした物を火浣
布(火で洗える布)と名付けて幕府に献上。
ヨーロッパでは1940年代からドイツ、イギリスなどで多く使用されてきた。日
本では、耐久性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの特性に非常に優れ安価で
あるため、「奇跡の鉱物」と珍重され、建設資材、電気製品、自動車、家庭用品
等、様々な用途に1960年代から広く使用されてきた。
3. 石綿の用途
防音・断熱用として学校や各建築物、船舶、鉄道車両などに広範囲に使用され
た。(理科の実験用の石綿付き金網は現在セラミックに切り替わっている)。ま
た、絶縁材料、自動車や鉄道車両のブレーキパッド、クラッチ板、屋根瓦、屋根
板用波板、天井用化粧版、ガスケット、シーリング材、パッキング、モルタルや
アスファルト混和材として道路の凍結防止などを目的として使用された。
今まで世界で使用されてきた石綿の約9割以上が蛇紋石系の白石綿である。ま
た石綿の使用量のうち9割以上が建材に使用されている。
日本では茶石綿及び青石綿については平成7年4月1日よりすべての製品の製造
等が禁止されている。その他の石綿については平成16年10月1日より建材、摩擦
剤、接着剤の製造等が禁止されている。
1) 石綿含有建材関係
押出成型セメント板
住宅屋根用化粧スレート
織維強化セメント(平板、波板)
窯業用サイディング(上下水道など)
石綿セメント円筒
2) 石綿含有非建材関係
接着剤
耐熱・電気絶縁板*
ジョイント*、シート材*
クラッチフェーシング、クラッチライニング
ブレーキパッド、ブレーキライニング
石綿布*、石綿糸*など
(*印は代替化の可能性困難とされている)
4. 石綿による健康障害
石綿にさらされる業務による肺がん・中皮腫の労災認定件数は平成9年の22件
から平成16年の186件と急増。平成16年度末までの累計856件(中皮腫502件、肺
癌354件)。
最初の労災認定は昭和48年(石綿による肺癌)、昭和53年(中皮腫)
(1)石綿肺
石綿を大量に吸入することにより、肺が線維化して、本来スポンジのよう
な軟らかい肺組織が硬く厚くなる病気でじん肺(肺線維症)の一種。
(2)肺癌
石綿の高濃度ばく露後、20年以上の潜伏期を経て発症するといわれ、石綿
繊維は肺に吸い込まれると、痰などとして排出されにくく、長期間残留する
ためにがんが発生するとされている。一般の肺がんと、その性質に大きな違
いはない。なお喫煙との間に相加効果が認められ、石綿にばく露し喫煙した
場合、肺がんの発症リスクは50倍高くなるといわれている。
発がん性:白石綿:1 茶石綿:100 青石綿:500と言われている。
(3)悪性中皮腫
肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起
始部を覆う心膜にできる悪性の腫瘍で、30〜40年の潜伏期を経て発症すると
言われている。早期発見は困難。欧米では悪性中皮腫患者の70〜80%が石綿
にばく露した経験があったと報告されている。
(4)良性石綿胸膜炎
(5)びまん性胸膜肥厚・胸膜プラーク
5. これからの対応
代替え化の促進と全面禁止の前倒し(遅くとも平成20年までの全面禁止を前倒し)。
石綿建材を用いた建築物の解体工事が2020〜2040年頃ピークを迎えるため、解
体時のばく露防止の強化。健康管理手帳の普及啓発。救済制度の検討。
6. 労災補償制度
疾病治療に必要な補償、貸金を受けられない場合の補償、死亡した場合には、
遺族に対する補償を受けることが出来る。
◎肺出血の原因疾患(NEJM 2007;356:402)
1. Diffuse pulmonary hemorrhage
1) Pulmonary-renal syndromes
2) Goodpasture's syndrome
3) Systemic lupus erythematosus
4) Wegener's granulomatosis
5) Microscopic polyangiitis
6) Henoch-Schonlein purpura
2. Coagulation disorders
1) Hemophilia
2) Von Willebrand's disease
3. Cardiovascular disorders
1) Congenital heart disease
2) Pulmonary hypertension
3) Pulmonary embolism
4) Pulmonary-capillary hemangiomatosis
5) Mitra1-valve stenosis
4. Idiopathic pulmonary hemosiderosis
5. Heiner's syndrome (allergy to cow's-milk protein)
6. Focal pulmonary hemorrhage
1) Pneumonia
2) Mycobacterium tuberculosis
3) Pulmonary carcinoid tumor
4) Trauma
5) Infarction
6) Arteriovenous malformation
7) Bronchogenic cyst
8) Foreign body
9) Bronchiectasis and cystic fibrosis
◎年齢別でみた肺出血の主な原因疾患(NEJM 2007;356:403)
1. Newborns
1) Congenital heart disease
2) Prematurity
3) Pneumonia
4) Respiratory distress syndrome
5) Coagulation disorders
6) Hyperammonemia
2. Infants
1) Bronchogenic cysts
2) Pneumonia
3) Idiopathic pulmonary hemorrhage or hemosiderosis
4) Heiner's syndrome
5) Coagulation disorders
3. Schoo-Age Children
1) Bronchogenic cysts
2) Congenital arteriovenous fistula
3) Pneumonia or pulmonary abscess
4) Tuberculosis
5) Pulmonary-renal syndromes
6) Hemangioma
7) Foreign body
8) Idiopathic pulmonary hemosiderosis
9) Heiner's syndrome
4. Adolescents
1) Bronchogenic cysts
2) cystic fibrosis
3) Pneumonia or pulmonary abscess
4) Tuberculosis
5) Pulmonary-renal syndromes
6) Hemangioma
7) Foreign body
8) Pulmonary hypertension
9) Pulmonary embolism
10) Congenital heart disease
11) Pulmonary alveolar proteinosis
◎過眠およびいびきのまとめ(内科2007増大号、Vol.99、No.6、p.1104)
睡眠時無呼吸症候群は、2003年の新幹線の居眠り運転を機に日本でも注目され
るにいたった。欧米では肥満の程度が重度であるのに対して、日本では強度肥満
がなくとも、猪首、小顎、副鼻腔炎による鼻閉・口呼吸に伴って、肥満が中等度
であっても重度の睡眠時無呼吸を呈している症例はめずらしくない。
治療は重度のものに対してはnCPAPの導入が心血管イベントを含む長期予後も
改善することが示されているが、解剖学的な問題については手術療法の併用が、
さまざまな意味での患者負担を軽減する可能性がある。また、軽度ないし中等度
の睡眠時無呼吸については、口腔内装具もnCPAPとほぼ同様の効果をあげている。
一方で、多系統萎縮やその他の中枢神経の異常に伴う無呼吸はしばしば致死的
となることがあり、肥満を伴っていると単純な閉塞型睡眠時無呼吸との鑑別が困
難となる場合がある。また、関節リウマチに伴う環軸亜脱臼に伴う無呼吸も、環
軸脱臼に先んじて現れる重要な兆候であり、後方固定などの治療を急ぐ必要性が
高い。いずれも専門各科との連携を取りつつ治療に当たらなくてはならない。
このように、睡眠時無呼吸は内科の範疇を超えて治療に取り組むべき疾患であ
り、安易な対症療法で治療を終えずに、背景に上記のような重大疾患を併発して
いないことを確認することが必要である。
◎息切れ・呼吸困難の臨床的評価指標(内科2007増大号、Vol.99、No.6、p.1118)
さまざまな疾患で、息切れ、呼吸困難が認められる。呼吸器疾患による息切れ
・呼吸困難の評価には、従来よりFletcher-Hugh-Jones分類が用いられてきたが、
最近ではより世界的に広く用いられているMRCスコアが日本でも使用されるよう
になってきている。一方、心疾患や肺循環障害による息切れ・呼吸困難の評価に
は、NYHA分類を用いるのが一般的である。
1. Fletcher-Hugh-Jones分類
I度:同年齢の健康者と同様の労作ができ、歩行、階段の昇降も健康者なみ
にできる
II度:同年齢の健康者と同様に歩行できるが、坂、階段の昇降は健康者なみ
にはできない
III度:平地でさえ健康者なみには歩けないが、自分のペースでなら1.6km以上
歩ける
IV度:休みながらでなければ約50m以上歩けない
V度:会話、着物の着脱にも息切れがする。息切れのため外出できな い
2. Medical Research Council(MRC)質問票
0:息切れを感じない
1:強い労作で息切れを感じる
2:平地を急ぎ足で移動する、または緩やかな坂を歩いて登るときに息切
れを感じる
3:平地歩行でも同年齢の人より歩くのが遅い、または自分のペースで平
地歩行していても息継ぎのために休む
4:約100ヤード(91.4m)歩行したあと息継ぎのため休む、または数分間、
平地歩行したあと息継ぎのために休む
5:息切れがひどくて外出できない、または衣服の着脱でも息切れがする
3. New York Hear tAssociation(NYHA)分類
I度:心疾患があるが、身体活動にはとくに制約がなく日常労作により、と
くに不当な呼吸困難、狭心痛、疲労、動悸などの愁訴が生じないもの
II度:心疾患があり、身体活動が軽度に制約されるもの
安静時または軽労作時には障害がないが、日常労作のうち、比較的強
い労作(たとえば、階段上昇、坂道歩行など)によって、上記の愁訴
が出現するもの
III度:心疾患があり、身体活動が著しく制約されるもの
安静時には愁訴はないが、比較的軽い日常労作でも、上記の主訴が出
現するもの
IV度:心疾患があり、いかなる程度の身体労作の際にも上記愁訴が出現し、
また、心不全症状、または、狭心症症候群が安静時においてもみられ、
労作によりそれらが増強するもの
◎RSウイルス(RSV;RSV)感染症(乳幼児急性細気管支炎)について<(日経メディカル 2008;11月号:76
Respiratory syncytial virus(RSV)感染症は乳幼児の急性紳気管支炎がよく
知られているが、症状は上気道から肺にかけても出現し、さらに大人でも罹患す
るコモンデイジーズである。流行期は秋から春にかけてである。母親からの移行
抗体では感染をブロックできないため、新生児でも罹患する。また、成長後も、
RSVへの獲得免疫は十分成立しにくいため、生涯に何度も雁思し得る。
中でも、乳児や高齢者は重痘化しやすい。全乳児の3分の2が生後初めての冬に
RSV感染症に罹患し、そのうち3分の1は下気道感染に至る。2歳までにほとんど
の児が感染する。小児科外来には多くのRSV感染症の乳幼児が受診しているはず
であるが、外来では迅速検査が保険適用でないため、正確な実態を把握すること
は困難である。感染後の喘息発症との関連が指摘されており、小児科医にとって
重要な疾患といえる。
好発年齢は0〜3歳であるが、4歳以上の発症者も0〜7歳未満児のRSV下気道感染
症の16%を占めている。発熱が必ずあるわけではなく、幼児で76%、乳児で54%程
度である。
※ DNAの豊富な分泌物が特徴(喀の喀出はインフルエンザより多い)
RSV感染症では、鼻汁や湿性咳嚇が特徴的な症状である。肺炎マイコプラズマ
感染症と違って湿性咳嚇は早期から出現する。また、高粘度で大量の鼻汁や喀痰
が終始認められ、それにより頑固な湿性咳嚇が生じる。下気道では粘液腺からの
分泌亢進による喀痰や気道上皮細胞の脱落による細胞残渣が生じ、DNAの豊富な
大量の気道分泌物が認められる。気道症状で最後まで残るのが、後鼻漏およびそ
れに起因する湿性咳嚇である。
RSV感染症の診断では、流行時期が一部重なっていることから、インフルエン
ザとの鑑別が重要である。RSV感染症は、インフルエンザと異なって毎年必ず流
行がある。流行時期は一定しており、10〜11月に始まり、3〜4月まで流行が続く。
ピークは12〜1月である。両者の流行時期に、インフルエンザ様症状で来院した
場合、迅速検査でインフルエンザが陰性であれば、次に考えられる疾患として考
慮しなければならない。RSV感染症と診断できれば、最初から抗菌薬は不要である。
治療は気道分泌物を除去し、去痰薬やβ刺激薬、解熱薬投与などの対症療法を
行う。
◎百日咳診断の目安2008(案)ver1
1. 臨床症状:14日以上の咳がありかつ下記症状を1つ以上を伴う。
(1) 発作性の咳込み
(2) 吸気性笛声(whoop)
(3) 咳き込み後の嘔吐 (CDC 1987 WHO 2000)
2. 実験室診断
発症から4週間以内:培養とPCR、4週以降:血清診断(CDC, FDA Hewlett 2005)
(1) 百日咳菌分離
(2) 遺伝子診断:PCR法あるいはLAMP法
(3) 血清診断(対血清での有意上昇を基本とする)
1) 凝集素価
a. DTPワクチン未接種児・者:流行株(山口株)、ワクチン株(東浜株)
いずれか40倍以上
b. DTPワクチン接種児・者または不明者
・対血清:流行株(山口株)、ワクチン株(東浜株)いずれか4倍
以上
・単血清
イ. DTPワクチン最終接種から2年以上経過:流行株(山口株)、
ワクチン株(東浜株)いずれか40倍以上
ロ. DTPワクチン最終接種から2年以内
i) 凝集原を含まないワクチン接種児:流行株(山口株)、
ワクチン株(東浜株)いずれか40倍以上
ii) 凝集原を含むワクチン接種児:対血清で流行株(山口
株)、ワクチン株(東浜株)いずれか4倍以上の上昇
2) EIA法(PT-IgG測定:PTはpertussis toxin)
a. DTPワクチン未接種児・者:10EU/ml以上
b. DTPワクチン接種児・者または不明者
・対血清:2倍以上を基本
・単血清(参考)
94EU/ml以上(Baughman,2004)
100EU/ml以上(de Melker,2000)
3. 臨床診断:臨床症状は該当するが実験室診断はいずれも該当しない。
4. 確定診断
1) 臨床症状は該当し実験室診断の(1)〜(3)のいずれかが該当する
2) 臨床症状は該当し実験室診断された患者との接触があったとき
(病原微生物検出情報 IASR Vol.29 pp.75-77 No.3(No.337)March 2008より)