◎電解質と酸塩基平衡◇AG (anion gap) : Na-(HCO3 + Cl) (正常:12 ± 4mEq/L)
☆AG (anion gap) の増加
●測定困難な陰イオンの増加
乳酸アシドーシスでの乳酸の増加
DM ケトアシドーシスでのアセト酢酸
中毒(サリチル酸・パラアルデヒド・エチレングリコール)によるケト酸
・有機酸
非ケトン性 DM 性昏睡での有機酸
高窒素血症でのリン酸・硫酸・有機酸
メタノール中毒でのギ酸
肝不全でのケトグルタール酸
大量のペニシリン投与等の他の陰イオン
P・硫酸塩の増加
輸液剤による(乳酸・クエン酸・酢酸を含む)
●測定困難な陽イオンの減少:K・Ca・Mg の減少
●水分欠乏:イオンの総量は同じでも水分欠乏のため血清電解質濃度が相対的に増
加
水分欠乏 (%) 分だけ AG は増加
●代謝性アルカローシス
血中蛋白はHイオンを放出しアルカローシスを補正しようとする。この結果血
中の測定できる陰イオンは減少する(蛋白に由来する陰イオンは増加するがこ
の陰イオンは測定困難。従って測定出来る陰イオンは減少し AG は増加する)
●測定誤差
※代謝性アシドーシスと AG (anion gap) の増加
この時 AG は通常 22mEq を越える。代謝性アシドーシスの場合は〈測定困難
な陰イオンの増加〉を伴う場合と伴わない場合がある。後者は測定困難な陰イ
オンの増加のない代謝性アシドーシスで高 Cl 血性代謝性アシドーシスといわ
れる。☆(anion gap) の減少
●測定困難な陰イオンの減少
低アルブミン血症(アルブミン濃度 4g/dl の時、陰イオンとして 11mEq/L
・1g ↓すると2.75mEq ↓)
●測定困難な陰イオンの増加
K・Ca・Mg の増加
多発性骨髄種・異蛋白血症
TRIS バッファー・ポリミキシン B・Li・Br 等の陽イオン
血中 Cl 濃度は低下する
●水分過剰:イオンの総量は同じでも水分過剰のため血清電解質濃度が相対的に減
少
水分過剰 (%) 分だけ AG は減少
●測定誤差
◎末梢静脈血による酸塩基平衡異常の診断※一般的には末梢静脈血を血液ガス分析装置で測定した結果を酸塩基平衡異常の診断
に使用できる。得られた HCO3 イオン濃度でアニオン・ギャップを計算できる。
☆注意事項
(1). 全てのサンプルは動脈血のサンプルと同様嫌気的に扱う。血清は使用しない。
(2). 一般に末梢静脈血の HCO3 イオン濃度は動脈血のそれより 2 〜 3mEq/L 程
度高値。正常値としては動脈血の 24mEq/L の代わりに 26mEq/L を使う。
他の無機陽イオンは動脈も静脈も差はない。※クロライド・シフト:静脈血の塩素イオンは動脈血の塩素イオンよりやや低い。
末梢で血液が二酸化炭素を受けとって HCO3 イオンとする際、その増加分だけ塩
素イオンが赤血球内に移動する。(塩素イオン + HCO3 イオンは同じ)
(3). アニオン・ギャップの計算は全て同一サンプルから得る事。
(4). 不用意に多量のヘパリンを用いて採血してはならない。
◎浸透圧と細胞外液量水分は浸透圧の低い領域から高い領域へ移動する。
ヒトでは ECF・ICF の浸透圧は 310mOsm/L である。これは血清や ECF の Na 濃
度が 142mEq/L で全陽イオン濃度は 155mEq/L であるということを意味してい
る。但し、このような関係は正常人にのみ成り立つ。※浸透圧の調節は血液量や ECF 量の調節より重要
血液や細胞外液の浸透圧が低下し、同時に血液や細胞外液の量も減少する様な場合
生体はまず浸透圧を是正する方向に働く。(例えば細胞外液の減少を 5% ブドー糖
液で是正すると、5% ブドー糖液は電解質を含まず浸透圧を上昇させないでかえっ
て浸透圧が減少する。そのため水分は速やかに細胞内に移動し血液量は最終的には
減少する。これに対して等張食塩水・糖加等張食塩水・デキストラン液は浸透圧を
上昇させ細胞内より水分を細胞外液に引き寄せ、血漿浸透圧の維持と共に血液量を
増加させる。)※血清浸透圧の臨床的意義
有効浸透圧 = 2 x Na + (血糖/18):正常値:285mOsm/Kg [ECF は自由に ICF
に移動しない。高ければ一般的に水分の相対的喪失]★実測浸透圧が高い時は ECF 全体の浸透圧が高いということを示す。この時血清 Na
は高・正常・低のいずれもとりうる。この様な場合すぐに Na の補正をしないで有
効浸透圧を計算する必要がある。
★実測浸透圧が低い時は ECF 全体の浸透圧が低い。この時血清 Na はやはり低い。
水分過剰・Na 欠乏・両者の合併を考える。※尿浸透圧
成人が普通の食塩と普通の蛋白を摂取すると一日約 1200mOsm の溶質を排泄す
る。
(尿素 (500mOsm)・Na・K アンモニウム等)。もしブドウ糖だけ投与されたな
ら200mOsm に低下。正常では 14時間絶食後の尿浸透圧は 850mOsm 以上を示
す。
腎不全では 400 〜 600mOsm 以下となる。※浸透圧の(尿/血清)比
正常は 3 (1を越える)。腎不全では 1 程度。
尿崩症(水制限で無変化)・心因性多飲(水制限で 1以上)では 1以下。
SIADH では Na 低下していても 1 を越える(尿浸透圧 > 血清浸透圧)※尿中ナトリウム濃度について
もし腎機能が正常であれば(体液の喪失が腎外の原因であれば)尿中ナトリウム濃
度はふつう 10 〜 15mEq/L 以下で ★FENa(ナトリウム分画排泄)は 1% 以下で
尿の浸透圧はしばしば上昇。
代謝性アルカローシスがあれば尿中ナトリウム濃度は高値であり、尿中クロール濃
度の低下 (10mEq/L) は ECF の著減の兆候である。★ナトリウム分画排泄 = [(U-Na) X (S-Cr)]/[(S-Na) X (U-Cr)] X 100
<例>正常:U-Na:15mEq/L ; S-Cr:1.0mg/dl ; S-Na:140mEq/l ;
U-Cr:100mg/dl(1.5g/day)
FENa = [(15 X 1.0)/(140 X 100)] X 100 = 約0.1%
腎不全:U-Na:30mEq/L ; S-Cr:5.0mg/dl ; S-Na:135mEq/l ;
U-Cr:10mg/dl(1.5g/day)
FENa = [(30 X 5.0)/(140 X 10)] X 100 = 約10.7%※重篤な ECF の欠乏は BUN およびクレアチニンの軽度上昇をもたらすことがよくあ
る。(腎前性高窒素血症:BUN/クレアチニン = 10:1 以上)
◎浸透圧 (mOsm/L) と膠質浸透圧 (mmHg)マンニトールの様な分子量の小さい物質は浸透圧を上昇させる。
アルブミン・デキストランの様な分子量の大きい物質は血漿浸透圧に殆ど影響せ
ず、膠質浸透圧を上昇させ毛細血管より過剰な体液の喪失を防止する。
◎ADH(抗利尿ホルモン・バゾプレッシン)の働き遠位尿細管・集合尿細管に働く。分泌が増加すると水分再吸収が増加し尿量は減少
し尿浸透圧が上昇する。◇ADH 分泌亢進
●ECF 浸透圧 > ICF 浸透圧
●ストレス・発熱・外傷・感染症・手術・鎮痛剤・麻酔剤・抗コリン剤・バルビタ
ール・ビンクリスチン・モルフィン・メペリジン・サイトキサン・カルバマジン
●左房圧の低下 (volume recepter の刺激低下)
室温上昇・立位・陽圧呼吸・出血・ECF 減少・心臓拍出量低下◇ADH 分泌抑制
●ECF 浸透圧 < ICF 浸透圧(相対的)
●血圧上昇・右房圧の上昇・心臓拍出量増加・安静・陰圧呼吸
●アルコール・フェニトイン
◎アルドステロンと細胞外液量◇アルドステロン分泌亢進
●Na 欠乏・出血・利尿薬投与(レニン↑→アンジオテンシンII↑→アルドステロ
ン分泌亢進→ Na・水の貯留→レニン↓…→アルドステロン分泌低下)
●K 濃度増加→ K 利尿
●ACTH(一過性にアルドステロン分泌亢進)※原発性アルドステロン症
アルドステロン上昇・レニン低下・17-OHCS 低下・17-KS 低下・デキサメサゾ
ン抑制試験陰性・浮腫なし(血糖上昇・アルカローシス・アンギオテンシン低下)
※続発性アルドステロン症◇レニン低下:クッシング症候群・等質コルチコイド産性腫瘍・偽アルドステロン症
・DOCA 産性腫瘍・ステロイド過剰・腎実質疾患・11- (17-) ハイドロキシラー
ゼ欠乏症◇レニン上昇:悪性高血圧症・腎血管性高血圧症・急性水腎症・レニン産性腫瘍・
利尿剤投与中の本態性高血圧症・Na 喪失性腎疾患・偽性バーター症候群(長期利
尿剤投与・長期下剤投与による慢性 K 低下)
◎低 Na 血症・低ナトリウム血症・hyponatremia※偽性低 Na 血症:高脂血症・高タンパク血症ではみかけの低 Na 血症(正浸透
圧)。※高血糖やマンニトール・ウレア負荷による低 Na 血症は高浸透圧性。
(1). Na も水分もいずれも減少するが Na が余計に減少(低張性脱水)
●症状他:脱水症状・血液濃縮
1. 腎からの Na 喪失(尿中濃度は 20mEq/l 以上)
1). 利尿薬
2). RTA(近位型)
2. 腎以外からのNa喪失:嘔吐・下痢・熱傷
(尿中 Na 濃度は 10mEq/l 以下)(2). 水分量は不変で Na が減少(尿中 Na 濃度は 20mEq/l 以上)
1. ADH 分泌異常症(SIADH:ADH の分泌亢進)
1). ACTH 産生腫瘍:下垂体腫瘍・肺癌
2). 中枢神経系疾患:髄膜炎・頭部損傷・脳腫瘍
3). 肺疾患:肺炎・肺結核・肺癌
4). 薬物:vincrisstine , cyclophosphamide
2. グルココルチコイド欠乏
アジソン病・下垂体前葉機能低下症
3.甲状腺機能低下症(3). NA も水分もいずれも増加するが水分が余計に増加(低張性膨脹)
1. ネフローゼ(尿中 Na 濃度は 10mEq/l 以下)
2. 腎不全(尿中 Na 濃度は 20mEq/l 以上)
3. 心不全(尿中 Na 濃度は 10mEq/l 以下)
4. 肝硬変(尿中 Na 濃度は 10mEq/l 以下)
◎SIADH を来す原疾患とその頻度(1). 中枢神経疾患 (138例、34%)
急性ポルフィリア (27例)・頭部外傷 (23)・脳血管障害 (20)・髄膜炎 (17)・
脳腫瘍 (12)・Guillain-Barre症候群 (7)・脳炎 (5)
(2). 悪性腫瘍 (127例、31%)
肺癌 (93例)・膵臓癌 (4)・前立腺癌 (3)・Hodgikin病 (3)・大腸癌 (2)・
膀胱癌 (2)・白血病 (2)・中皮腫 (2)・その他 (6)
(3). 薬剤 (57例、14%)
ビンクリスチン (15例)・クロルプロパミド (ダイアビニーズ) (8)・
サイアザイド (5)・アミトリプチン (5)・カルバマゼピン (2)・
イミプラミン (2)・ハロペリドール (2)・フルオキセチン (2)・
フルフェナジン (フェノチアジン) (2)・その他 (4)
(4). 胸腔内疾患(肺癌を除く)(47例、11%)
肺炎 (16例)・肺結核 (9)・気管支喘息 (3)・その他 (16)
(5). その他 (40例、10%)
精神疾患 (9例)・特発性 (8)・その他 (23)※SIADH の診断(急性の低 Na 血症に伴う脳浮腫)
(1). 低 Na 血症と低浸透圧血症の確認。(身体的脱水を除外)
(2). 尿中 Na が 20mEq/l 以上、尿浸透圧が 300mosm/l 以上を確認。(浮腫・
腹水なし)
(3). 血清コルチゾルと尿中 17-OHCS が低下してない事。腎機能異常を否定。
(4). 血清尿酸は低下傾向。
(5). 血清レニンが 10ng/ml/hour 以上なら SIADH 以外の低 Na 血症を考える。
(6). 血中甲状腺ホルモンの低下がないことを確認。※SIADH の治療(原因疾患の治療の他)
(低 Na 血症の治療)
(1). 食塩を 12g/日 以上摂取
(2). 水分摂取の制限 (800 〜 1000ml/日 以内)
(3). デメクロサイクリン(レダマイシン)600mg/日
(水中毒の治療)
(4). 2.5% 食塩水とラシックスの併用
(5). 血清 Na 上昇速度を 10mEq/l/日 までとする。(橋中心髄鞘破壊を避ける
ため)(注意)無症候性低 Na 血症(SIADH と鑑別する必要あり)
(1). 慢性的低 Na 血症で症状はない。(脳浮腫が起こらない)
(2). 心不全・肝硬変・栄養失調・高年齢・慢性消耗性疾患等に合併。
◎高 Na 血症・高ナトリウム血症・hypernatremia(1). Na も水分もいずれも減少するが水分が余計に減少(圧倒的に多い)
1. 腎外性喪失
1). 不感蒸泄の亢進(発汗・熱傷・呼吸器系感染症)
2). 消化管からの喪失
2. 腎性喪失
1). 中枢性尿崩症
脳外科手術・頭部外傷・脳腫瘍・肺癌・乳癌・ショック・シーハン・髄膜
炎・脳炎・サルコイドーシス・HIS-X・anorexia nervosa
2). 腎性尿崩症
3). 浸透圧利尿
3. 視床下部疾患
1). 本態性高 Na 血症
2). primary hydrodipsia
4. 細胞内への水移動:痙攣・激しい運動・横紋筋融解症(2). 過剰の Na 摂取
高張 NACl 投与・NaHCO3 投与・海水嚥下・透析液の異常
◎低 Ca 血症・低カルシウム血症・hypocalcemia※Ca の血中存在様式:蛋白結合 Ca (38%)・Ca 塩 (12%)・イオン化 Ca (50%)
(1). 慢性低 Ca 血症の原因
1. 慢性腎不全
2. 副甲状腺機能低下症
1). 手術後副甲状腺機能低下症
2). 特発性副甲状腺機能低下症
3). 偽性副甲状腺機能低下症
4). 低マグネシウム血症
5). 副甲状腺形成不全
6). 浸潤性疾患:ウイルソン病・転移性悪性腫瘍・鉄沈着・結核
3. ビタミン D 欠乏症
1). 摂取不足・吸収不良症候群
2). 日光不足
4. ビタミン D 代謝異常
1). ビタミン D 依存症 I型
2). 抗痙攣薬
5. ビタミン D 作用不全
1). ビタミン D 依存症 II型(2). 急性・亜急性低 Ca 血症の原因
1. アルカローシス
2. hungry bone症候群
3. 急性膵炎
4. rhabdomyolysis
5. tumor lysis
6. 骨形成性転移
7. 薬剤:カルシトニン・biphosphonate・doxorubicin・
シトシンアラビノシドクエン酸
8. 新生児テタニー
◎高 P 血症・高リン血症・hyperphosphemia※健康成人の体内全 P 量は体重の約1% (500 〜 800g)、その 80 〜 90% は骨、
15% は軟部組織で ECF 中には 0.1% (450 〜 700mg)が存在、血漿の全 P 濃度
は 12.0mg/dl (3.90nmol/l) であるが大部分有機リン酸(リン脂質)、有機エ
ステルとして血漿中に含まれている。
一般に血清 P といえばこれ以外の無機リンを意味する。血漿 P 濃度は比較的一
定であるが、Ca ほど厳密なコンチロールを受けておらず年齢、性、摂食などと
関係して生理的にかなり変動する。一般に成人では血清 P が 5.0mg/dl 以上に
上昇した場合高 P 血症という。(1). 高P血症の原因
A. ECF への P 負荷
イ. 外因性 P 負荷
経口摂取の増加(食餌性・P 含有製剤)
小腸 P 吸収亢進(ビタミン D 中毒)
P の静注(低 P 血漿治療時・大量保存血輸血)
皮膚からの P 吸収
ロ. 内因性 P 負荷
溶血
横紋筋融解・悪性過高熱
腫瘍融解(悪性腫瘍に対する化学療法)
アシドーシス
異化亢進B. 腎からの排泄減少(排泄閾値:Tmp/GFR の上昇)
イ. GFR 低下
急性・慢性腎不全
ロ. 尿細管における P 再吸収亢進
PTH の不足
副甲状腺機能低下症(原発性・続発性)
偽性副甲状腺機能低下症 (Type1, type2)
甲状腺機能亢進症
成長ホルモン過剰症
(2). 高 P 血症の診断
┏━ GFR ━━━━━→ 腎不全 ┃ 30ml/m 以下 ┃ ┃ 血清 P ━━━━→ 腎機能評価 ╋ 5.0mg/dl 以上 ┃ ┃ ┏━ 外因性 ┃ ┃ ┗━ GFR ━━━━━→ P の負荷 ╋ 30ml/m 以上 ┃ ┃ ┗━ 内因性((1)-A-ロ) ┃ ┃ ┗━ 尿細管 P 再吸収亢進 副甲状腺機能低下症(原発性・続発性) 偽性副甲状腺機能低下症 (Type1, type2) 甲状腺機能亢進症 成長ホルモン過剰症
(3). 副甲状腺機能低下症の分類
A. PTH の欠如または分泌低下
a). 特発性副甲状腺機能低下症
b). 続発性副甲状腺機能低下症
1). PTH の絶対的欠乏
甲状腺手術に伴うもの
頚部外傷
腫瘍の浸潤
ヘモクロマトーシス
2). PTH の分泌抑制
副甲状腺腫摘出後
サルコイドーシス
甲状腺機能亢進症
高 Ca 血症
低 Mg 血症B. PTH に対する標的器官の反応低下
偽性副甲状腺機能低下症 (Type1, type2)C. その他
偽性特発性副甲状腺機能低下症
偽性偽性副甲状腺機能低下症
◎低 P 血症・低リン血症・hypophosphemia※血清 P 値 1.0 〜 2.5mg/dl は軽度低P血症で 1.0mg/dl 以下は高度低 P 血症
である。症状は高度にならぬと出ない。(1). 低P血症の原因
A. 腸管からの P 吸収低下
低リン食
P 結合性制酸剤
嘔吐・下痢
吸収不良症候群
ビタミン D 不足・ビタミン D 依存症B. 腎からの喪失
尿細管障害
副甲状腺ホルモン過剰
ビタミン D 不足・ビタミン D 依存症
腎移植後
利尿剤・NaHCO3・糖質コルチコイド
低 K 血症・低 Mg 血症C. 細胞内への移動
糖負荷
アルカローシス
エピネフリン
タンパク同化ホルモン
インシュリン
熱傷回復期(2). 低 P 血症の症状
A. 全身症状:倦怠感・脱力
B. 血液系:赤血球変形・溶血・白血球機能障害・血小板機能障害
C. 神経系:痙攣・振戦・混迷・失調・昏睡
D. 筋骨格系:筋力低下・心収縮力低下・横紋筋融解・骨痛・骨軟化症・くる病
E. 消化管:食欲不振・イレウス・嚥下障害
F. 腎臓:高 Ca 血症・高 Mg 血症・RTA
G. 内分泌:1, 25 (OH) 2D の上昇
◎高 Ca 血症・高カルシウム血症の治療(1). 悪性腫瘍に伴う高 Ca 血症(高カルシウム血症)(MAH) の治療
※血清補正 Ca が 12mg を越えると種々の症状が出現a. 脱水の補正:生理食塩水を投与、尿量を 2l/日 以上を確保
b. 腎機能障害があればループ利尿剤を早期から投与
c. アレヂア(骨吸収抑制)(従来はカルシトニン)
(生理食塩水 200 〜 500ml に 30 〜 45mg を溶解し 4 〜 5時間で点滴)
◎高張性脱水症((Na + 水)↓ + 水分↓↓)と低張性脱水症((Na + 水)↓↓ + 水分↓)
●症状 ●高張性脱水症 (Na ↓ < 水分↓) ●低張性脱水症 (Na ↓ > 水分↓) ○脱水 (+++) (+++) ○渇き (+++) (−) ○倦怠感
めまい(+)
末期まで(−)(+++)
(+++)○粘膜の乾燥 (+) (−) ○嘔吐
痙攣(−)
(−)重症であり得る
重症であり得る○尿量
尿中 NaCl
血清 NaCl乏尿
多くは(−)
軽度上昇〜正常末期まで正常
(−)
減少○血漿量 末期まで正常 著しく減少 ○血液濃縮 (−)〜(+:軽度濃縮) (+++) ○血圧 末期まで正常 低下傾向 ○脈拍 正常 頻脈 ○水分吸収
死因
血清 NPH (?)↑速い
浸透圧の上昇?
(+)遅い
ショック
(+++)MCHC (Hb/Ht) * 上昇 (Ht ↓) (35.5 以上) 低下 (Ht ↑) (32.3 以下)
●MCHC (Hb/Ht) の基準値は、32 〜 36;32.5 〜 35.0;29 〜 37 と色々な範囲あり)※解説
(1). 高張性脱水症は Na がそれに見合う水分を伴って減少し、さらにその上多くの
水分が Na 量よりも相対的に減少した状態。
ECF の水分保持能力は保たれており(Na の相対的減少が少ない為)、循環血
液量は主に ECF の水分が循環血液に移動するという状況のまま保持されてい
る。
ICF 内水分は何とか正常に保たれており渇きはひどいが、嘔吐・痙攣などの
CNS 症状はない。尿量はこれ以上の水分欠乏を防止するため(浸透圧維持)
、早くから乏尿となる。経口的水分摂取は有効で、速やかに吸収され ECF を
満たす(脱水からの回復)。
しかしこの状態で、さらに水分摂取困難な状況があれば、体内水分の減少は止
まらず、血清浸透圧維持のため ICF の水分が ECF に動員され、末期には細胞
内脱水と血清浸透圧維持不能(高張のまま)のため生命が危険となる。(2). 低張性脱水症は Na がそれに見合う量の水分を伴って減少し、さらに色々な原
因でその上多くの が水分量よりも相対的に減少した状態。
ECF の水分保持能力は保たれず(Na は相対的に減少し血清有効浸透圧は低下
傾向となり、血清浸透圧維持のため低張尿をどんどん排泄する、さらに血漿蛋
白質は効果的に血清膠質浸透圧を上昇させ から血管内に水分を引き寄せる為)
、その結果、尿量は脱水にも関わらず外見上は正常という状況になっている。
体内水分量の減少は高張性脱水症より早く、ECF は循環血液量とともに急速に
減少(血液は濃縮し Ht が上昇、その為 MCHC (Hb/Ht) は低下)し、ICF 動
員の前にショックに陥る。
経口的水分摂取は無効に近く、速やかに生理食塩水またはブドウ糖加乳酸リン
ゲル液の静脈内投与を必要とする。※アルコール多飲の対策・急性アルコール中毒
●脱水(混合性脱水症〜低張性脱水症)・低血糖・電解質異常に対する治療が中
心。
程度により、生理食塩水 1000 〜 1500ml(又はそのうち 500 〜 1000ml を
ブドウ糖加乳酸リンゲル液でも良い、ショックがあれば生理食塩水のみ、体温が
高い時はブドウ糖加乳酸リンゲル液のみ)を 4 〜 5時間で投与。カリウムを適
宜加える。
なお尿量は十分に保たれているが決して脱水状態が回復したわけではないと言う
事を肝に銘じる。回復の指標は、倦怠感の消失、全身不快感の消失、渇き (元々
、口渇感は少しだけ) の消失、食欲の亢進(食欲低下があるうちは十分に回復し
ていない)等である。※なお、自律神経症状(不眠・頭痛・倦怠感・不安感・冷汗・嘔気・嘔吐等)はアル
コール性脱水として危険な状態を示す(上記の如く嘔吐は重症の低張性脱水症で起
こり得る)ので、速やかに治療をはじめる。精神安定剤が有効なこともある。
◎水・電解質治療の一般的原則◇水分必要量:30ml/Kg 、発熱時は 1℃ 上昇あたり 15% 増加
◇電解質
Na :100mEq (NaCl 5.9g) 、発熱・発汗あれば増やす。
汗による水分喪失に対する水分補給は生理食塩水とブドウ糖液を 1:2 に
混合した液で行う(汗に似る)500 〜 2000ml 必要。
K :60mEq (KCI 4.5g) 、発熱・発汗あればさらに 4mEq 以上必要。
Mg :8 〜 20mEq◇カロリー
絶食状態では体重 70Kg のひとは約 80g の体タンパクを失う。100g 以上のブ
ドウ糖が与えられればタンパク喪失は半分に減少。
ブドウ糖:最低100 〜 150g/日 投与(高血糖があればレギュラーインシュリン
を 1単位/4g 使用)
エチルアルコール:7Kcal/g
タンパク必要量:40g/日
ビタミン:B 群・C◇水・電解質バランスのチャート化
可能な限り毎日の体重
水・電解質の一日摂取量
一日尿量とその比重(または浸透圧)
血清 Na・K・HCO3 (または pCO2)・Cl・浸透圧を頻回に測定
※※※※※ 水欠乏推定簡易バランスシート ※※※※※ 食事摂取 ゼロまたは殆ど不能
通常の 1/3 程度
通常の 1/2 程度
通常の 7 〜 8 割程度
全量0点
3 点
5 点
7 点
10 点水分摂取 ゼロまたは殆ど不能
薬を飲む程度
普通どうり0 点
5 点
10 点尿量 少ない
*普通
多い-4 点
(注意!!)-10 点
-15 点便 なし
普通便
下痢 (?) 回0 点
-1 点
-1 X ? 点嘔吐 (?) 回 -2 X ? 点 発熱 38度C 以上 -5 点 代謝−蒸散 -4 点 合計 《 ?? 》点 ☆水分過不足量 = 《 ?? 》 X 100ml ※注意!!:低張性脱水では尿量は末期まで十分に保たれており、必ずしも -10 とはか
ないことに注意する。(私見)★輸液について
◇10% NaCl 液 20ml は 34mEq の Na を含む。
◇0.9% 生理食塩水 500ml は 77mEq の Na を含む。
◇アスパラ K 液 10ml は 10mEq の K を含む。
通常一日 100ml (10A) を越えてはならない。
◇KCl 液 (2モル:15%) 20ml は 40mEq の K を含む。
通常一日 50ml (100mEq = 2.5A) を越えてはならない。
◇カルチコール液 5ml は 0.18mEq (約 40mg) の Ca を含む。
通常一日 250ml を越えてはならない。
◇マンニトールの様な分子量の小さい物質は浸透圧を上昇させる。
◇アルブミン・デキストランの様な分子量の大きい物質は血漿浸透圧に殆ど影響せ
ず、膠質浸透圧を上昇させ毛細血管より過剰な体液の喪失を防止する。
◎高山病低圧・低酸素により、人体に生じる様々な症状の総称。その病態は複雑であるが、
その本態は、体内水分分布の失調である。従ってその対策は水分分布の是正であり、
治療手段は、速やかな下山、酸素補給、利尿剤投与、補液が中心。
(高度と酸素濃度:海抜 0m の酸素を 100 とすれば 4300m では 60% となる)◇症状:2500m 以上の高度で発症、頭痛、不眠、食欲不振(悪心)を三主徴とし
て倦怠感、息切れ、咳、心悸亢進(これらは軽症)、ついで(中等症)、
軽症症状の悪化、運動失調、精神異常、安静時息切れ、尿量減少、全身浮
腫が起こる、ここまでなら 500m も下山すれば十分良くなる。
これ以上悪化すれば高度で重症の肺浮腫や脳浮腫を起こす。◇治療:とにかく下山
軽症ではダイアモックス (アセタゾールアミド・250mg) を一日一錠飲め
ば良くなる (ダイアモックスは予防としても効果あり)。
中等〜重症では酸素、ステロイドが必要となる。しかし 中等〜重症への
移行は高山病の知識をしっかりと持って、避けなかればならない。
最近ガモウバッグという高山病治療装置が実用化されている。
◎AG (anion gap) に関する補遺☆AG (anion gap) の減少
●測定困難な陰イオンの減少
低アルブミン血症 (アルブミン濃度 4g/dl の時、陰イオンとして
11mEq/L・1g↓すると 2.75mEq↓)
●測定困難な陰イオンの増加
K・Ca・Mg の増加
多発性骨髄種・異蛋白血症
TRIS バッファー・ポリミキシン B・Li・Br 等の陽イオン
血中 Cl 濃度は低下する
リチウム中毒
●水分過剰
イオンの総量は同じでも水分過剰のため血清電解質濃度が相対的に減少。
水分過剰 (%) 分だけ AG は減少
●測定誤差
ブロマイド、ヨード、高 TG 血症☆AG に基づく代謝性アシドーシスの分類
1. AG 高値
a. 酸排泄の低下
腎不全、横紋筋融解症
b. 酸産生の増加
乳酸アシドーシス
ケトアシドーシス (糖尿病・飢餓・アルコール多飲)
c. 酸負荷の増加
中毒性物質摂取 (サリチル酸・メタノール・エチレングリコール)2. AG 正常
a. HCO3-喪失
下痢、近位尿細管性アシドーシス、尿管 S状結腸瘻
b. 酸排泄の低下
遠位尿細管性アシドーシス、低アルドステロン症、
腎不全の初期 〜 中期、スピノロラクトン、トリアムテレン
c. 酸負荷の増加
塩化アンモニウム、アルギニン、リジン
◎尿細管性アシドーシス (RTA)1. 近位尿細管性アシドーシスの原因
A. 単一の機能障害を引き起こすもの
1). 原発性
2). 炭酸脱水素酵素の障害
イ. 炭酸脱水素酵素-II 欠損症
ロ. 薬物:アセタゾラミドB. 複数の機能障害 (Fanconi 症候群) を伴うことが多いもの
1). 原発性
2). 遺伝性の全身性疾患
シスチン尿症、Lowe 症候群、Wilson 病、チロシン血症、ガラク
トース血症、遺伝性フルクトース不耐症、ピルビン酸カルボキシ
ラーゼ欠損症、メチルマロン酸性尿症
3). 異蛋白血症
骨髄腫、単クローン性高γ-gl 血症
4). 二次性副甲状腺機能亢進症
ビタミンD 欠乏症
5). 間質性腎障害
sjogren 、髄質嚢胞腎
6). 薬物・重金属中毒
変性テトラサイクリン、ゲンタマイシン、ストレプトゾトシン、
鉛、水銀
7). その他
ネフローゼ症候群、アミロイドーシス2. 遠位尿細管性アシドーシス
a. 高カリウム血症を呈するもの
A. 鉱質コルチコイド欠乏
1). アルドステロン、デオキシコルチコステロン、コルチゾール欠乏
、 Addison 、両側副腎敵出後、癌や出血による副腎損傷、21-ヒドロ
キシラーゼ欠損症
2). アルドステロン単独欠乏
家族性低コルチコステロン (コルチコステロンメチルオキシダーゼ
欠損)、慢性特発性低アルドステロン症、持続性低血圧症、ヘパリン
3). アンジオテンシン変換酵素阻害薬
カプトリル・エナラプリル・リシノプリルB. 低レニン性低アルドステロン症
糖尿病、間質性腎炎、腎石灰化症、NSAID 、AIDSC. 鉱質コルチコイド抵抗性高カリウム血症
1). 間質性腎炎、腎不全を伴うもの
メチシリン腎障害、シクロスポリン腎障害、SLE 、閉塞性腎症、鎌
状赤血球症
2). 薬物
スピノロラクトン、アミロライド、トリアムテレンb. 低カリウム血症を呈するもの
1). 原発性2). 遺伝性の全身疾患
糖原病、髄質嚢胞腎、炭酸脱水素酵素-I欠損症、Ehles-Danlos 症
候群、鎌状赤血球症3). 自己免疫疾患
クリオグロブリン血症、sjogren 、甲状腺炎、SLE 、慢性活動性肝
炎、PBC 、血管炎4). 腎石灰化を伴う疾患
原発性甲状腺機能亢進症、ビタミンD 中毒、甲状腺機能亢進症、原発
性高シュウ酸尿症、特発性高カルシウム血症、遺伝性フルクトース不
耐症、髄質嚢胞腎、Wilson 病、Fabry 病5). 間質性腎障害
尿路結石による慢性腎盂腎炎、閉塞性腎症6). 薬物
アンフォテリシンB 、トルエン、鎮痛薬7). その他
肝硬変
◎水代謝異常 (中枢性尿崩症、腎性尿崩症、心因性多飲症)の鑑別
中枢性尿崩症 腎性尿崩症 心因性多飲症 多尿の様式 突 然 一定せず 一定せず 尿 量 多 い 中等度 〜 多い 不 定 夜間尿 +++ +−〜− ++〜− 冷水嗜好 +++ +− +− 尿浸透圧 低 い 低 い 不 定 血漿浸透圧 正常 〜 高 正常 〜 高 低 〜 正常 血清 Na 正常 〜 高 正常 〜 高 低 〜 正常 尿浸透圧 /
血漿浸透圧比*1 以下 1 以下 2 以上 血漿 AVP 値 基礎値 低 い 正常 〜 高 不 定 負荷後* 低 い 正常 〜 高 高 値 腎 AVP 反応性 正 常 低 下 正 常
(*) 水制限試験、高張食塩水試験
AVP:バゾプレッシン1. 中枢性尿崩症は突然多尿・口渇で発症、多尿は 3 〜 6L/日、時には10L
以上に及ぶ。渇中枢は障害されず、飲水で体液を保持。2. 中枢性尿崩症、腎性尿崩症では AVP による水分保持が不十分で血清浸透圧
は正常または高値である。3. 中枢性尿崩症 (677 例)
(1). 特発性 (261 例)
(2). 家族性 (7 例)
(3). 続発性 (409 例)
:胚芽腫 (90 例) 、頭蓋咽頭腫 (92 例)、下垂体腫瘍 (22 例)、 頭部
手術後 (67 例)、頭部外傷 (13 例) 、白血病 (3 例)、リンパ腫
(2 例)、サルコイドーシス (1 例)、ヒスチオサイトーシス (13 例)
◎Hypernatreniaの原因、高ナトリウム血症の原因
(JW. Hurst:Medicine for the Practicing Physician 2nd.Ed.,p1178,Butterworths)
1. 水分のみの欠乏(体全体のNa量は正常)
1) 粘膜や皮膚からの不感蒸泄(既に環境に順応した個体)
a. 発熱 Fever
b. 過度の異化亢進状態
c. 甲状腺中毒症
2) 腎よりの喪失
a. 中枢性尿崩症
イ. 原発性 primary(家族性、特発性 idiopathic)
ロ. 続発性
頭部外傷
頭部手術(下垂体摘除後 posthypophysectomy)
悪性腫瘍(原発あるいは転移)
肉芽腫(結核、サルコイドーシス、梅毒)
血管性(動脈瘤、血栓症、シーハン症候群)
感染症(脳炎、髄膜炎)
嚢腫
Histiocytosis(好酸球性肉芽腫、Habd-Schuller-Christian)
b. 局所性 pertial 尿崩症および hypodipsia
c. "Essential hypenatremia"
d. 腎性尿崩症
イ. 先天性
ロ. 後天性
・腎疾患
Amyloidosis
Multiple myeloma(light-Chain nephropathy)
Sjogren's syndrome
Medullary cystic disease
Polycystic kidney disease
Obstmctive uropathy
Chronic renal failure
Sickle cell disease
Radiation nephritis
・電解質異常
Hypercalcemia
Hypokalemia
・薬物
Lithium carbonate
Demeclocycline
Methoxyflurane
Amphotericin
Colchicine
Vinblastine
・countercurrent multiplier systemの破壊と髄質の高張性W
Pyelonephritis
Polycystic kidney disease
Interstitial nephritis
ロ. 尿素過剰
・高蛋白の経管栄養
・閉塞性尿路疾患の回復状態(after relif of obstructive uropathy)
e. 渇中枢の障害
・下垂体前葉障害
・老化
2. ナトリウム欠乏に勝る水分欠乏(体全体のNa量は減少している)
1) 粘膜や皮膚よりの喪失
Excessive perspiation(poorly acclimated individual)
2) 消化管よりの喪失
a. 嘔吐、下痢(成人)
b. 胃腸炎(小児)
3) 腎よりの喪失(浸透圧利尿)
a. 高血糖
b. マンイトール輸注
c. 尿素の過剰産生
・急性腎不全の回復期
・閉塞性尿路疾患の回復状態(after relif of obstructive uropathy)
・高蛋白の腸管経由の経管栄養
3. 体内Na過剰状態(体全体のNa量の増加)
1) 医原性
a. 蘇生時の重炭酸Na過剰投与
b. Salt "poisoning"
・Infant formula
・Induction of abortion
・Hypertonic dialysate
・Ingestion of salt tablets
c. 内分泌疾患
・原発性アルドステロン症
・クッシング症候群
※純粋な水分欠乏量=(0.60*BW(kg))*(1-140/Na濃度)
hypernatremiaをみたら(浮腫がなければ)まずは純粋な水分欠乏量を計算
することが必要。臨床所見とBUN、総蛋白、Ht・Hb・RBCなどを参考に脱水の
有無と程度を的確に把握しなければならない。(同時に尿量にも注目する。
3000ml/日以上の尿量があれば先ずは尿崩症を疑う)。
※通常のhypernatremiaは殆どiatrogenicである。Na-diuresisのためには低張液
投与とともにただちにループ利尿剤を使うべきである。神経症状を注意深く観
察しながら、尿量に応じて利尿剤の投与量を決めるべきである。血清浸透圧を
2~5mOsmol/kg/hまたは血清Naを1~2mEq/L/h低下させるようにしなければならな
い。そうでなければCNSの"等張性水中毒"が急に現実となってくる。
乏尿と体液膨脹の患者では5%dexystose投与とともに、血液透析を行うまで
にphrebotomyが必要になってくる。
◎高カルシウム血症の診断
●高カルシウム血症-->○尿中カルシウム排泄量測定
1)尿中Ca低値:◆家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(FHH)
2)尿中Ca高値-->○血清PTH測定(2003年の時点でintact-PTHが最も有効)
a.血清PTH低値:◆その他の原因の高カルシウム血症(PTHrp産生腫瘍(HHM)等)
b.血清PTH高値:◆原発性副甲状腺機能亢進症
イ.副甲状腺腫瘍の検索(◆腺腫、過形成、癌)
ロ.家族歴がある場合、過形成の場合:◆多発性内分泌腺腫症
◆家族性副甲状腺機能亢進症
☆高カルシウム血症を伴うintact-PTHあるいは高感度PTH高値の場合は、生化学
的に原発性副甲状腺機能亢進症と診断できる。悪性腫瘍に伴う高カルシウム
血症ではPTHは抑制される。(ただし原発性副甲状腺機能亢進症の合併、副甲
状腺癌、PTH産生腫瘍ではPTHは高値である)。
◎低カルシウム血症の診断
●低カルシウム血症-->○血清無機リン測定
(1)血清無機リン<3.5mg/dl-->○尿中Ca排泄
1)尿中Ca排泄高値:◆腎性高Ca尿症
2)尿中Ca排泄低値-->○骨軟化所見
a.骨軟化所見あり-->○血清25(OH)D測定
イ.血清25(OH)D正常-->○血清1,25(OH)2D測定
・血清1,25(OH)2D著明上昇:◆Vit-D依存症II型
・血清1,25(OH)2D低下:◆Vit-D依存症I型
ロ.血清25(OH)D著明低下:◆Vit-D欠乏症
b.骨軟化所見なし:◆Hungry bone症候群
(2)血清無機リン>=3.5mg/dl-->○GFR測定
1)GFR著明低下:◆慢性腎不全
2)GFR正常-->○血清PTH測定
a.血清PTH<30pg/ml-->○血清Mg測定
イ.血清Mg著明低下:◆低Mg血症に伴う副甲状腺機能低下症
ロ.血清Mg正常-->○頚部手術、放射線治療の既往の有無
・あり:◆続発性副甲状腺機能低下症
・なし
・先天性:◆常染色体優性低Ca血症、先天性形成不全等
・先天性でない:◆続発性副甲状腺機能低下症
b.血清PTH>=30pg/ml-->○E-H試験,cAMP排泄
イ.E-H試験,cAMP排泄なし:◆偽性副甲状腺機能低下症(I-a,b,c型)
ロ.E-H試験,cAMP排泄あり-->○無機リン排泄反応
・なし:◆偽性副甲状腺機能低下症II型
・あり:◆偽性特発性甲状腺機能低下症
◎浸透圧ギャップ(osmolar gap)について(『臨床検査診断マニュアル』永井書店)
血清Na濃度は140mEq/lであり、計算から求めた血清浸透圧は2Na(つまりNaとClの
2つのイオンの数)に近似している。事実、臨床においては多くの場合、血清浸透圧
の異常は血清Naの異常を意味し、逆もまた真である。
しかし、NaClは血中では100%イオン化しているわけではなく、またNa、Clだけが
浸透圧物質ではないので、計算でより正確に近似させるには血清尿素窒素(BUN)と
血糖(BG)の値を加味した下記の式が用いられる。
計算で求めた血清浸透圧=2Na + BUN[mg/dl]/2.8 + BG[mg/dl]/18
この式の第2、3項の割り算は、m/dlで測定されたBUNとBGの値を分子量で割って
mEq/lに換算するためである。 i
臨床的に重要なことは、血清浸透圧を上記の式で求めた値(calculated
osmolality)と実測した値(measured osmolality)を比較することであり、実測値
が計算値よりも15mOsm/kg・H2O以上高値の時は“浸透圧ギャップ(osmolar gap)が
ある”といい、次の2つのケースを考えねばならない。第一は尿素、血糖以外の浸透
圧物質が増加している場合である。例えばマニトール投与とか大酒(エタノール)
の後、あるいは何らかの意図で体内にメタノール、エチレン・グリコール、パラアル
デヒドが入って代謝された場合であり、多くの例では、アニオン・ギャップ(anion
gap)高値の代謝性アシドーシスを呈している。第二は血清中の水分含量が減少して
血清中に蛋白(高グロブリン血症、多発性骨髄腫)や脂質(高脂血症)が増加してい
る場合である。ここで特に留意しておかなければならないことは、BUN、エタノール、
メタノール、エチレン・グリコールは細胞膜透過性を有しているので、測定された浸
透圧値は高値であっても、体内ではいわゆる有効浸透圧(effective osmolality)は
高くはなく、したがって細胞内脱水は起こらず、よって血清Na値の変化も招来しない
ということである。また末期腎不全ではosmolar gapが高値となるが、原因物質は現
在のところ不明である。
尿比重を測定する場合の注意事項は、尿中タンパク、糖、造影剤などが存在すると
影響を受けて“高値”(偽高値)となることである。
◎熱性障害の臨床像の概略(NIS、No.3926(H11/7/24)、P29)
1.熱痙攣
a.誘発要因:塩分喪失、多量の飲水
b.中枢神経系:正常
c.皮膚:湿潤
d.筋攣縮:顕著
e.直腸温:40度未満
f.血圧:正常
g.脈拍:正常
2.熱疲労
a.誘発要因:高温環境への長時間の暴露、水分摂取不足、多量発汗+水分摂取のみ
b.中枢神経系:全身倦怠、頭痛など
c.皮膚:湿潤
d.筋攣縮:多様
e.直腸温:40度未満
f.血圧:低下傾向
g.脈拍:頻脈/徐脈
3.熱射病
a.誘発要因:熱疲労、発汗異常、電解質不足
b.中枢神経系:頭痛、昏迷、精神症状、痙攣
c.皮膚:乾燥
d.筋攣縮:多様
e.直腸温:40度以上
f.血圧:上昇/低下
g.脈拍:頻脈
◎アシドーシスとアルカローシス
(1)代謝性アシドーシス((*)印は頻度の多い疾患を示す)
l.AG(アニオンギャップ) normal(Cl elevation)
A.HC03-の喪失(通常K低下)
a.diarrhea*、膵痩、胆汁痩、コレスチラミン投与
b.ileal conduit
c.acetazolamide(炭酸脱水素阻薬)=Proximal RTA
B.腎尿細管での水素イオン分泌障害
a・RTA(distal & proximal、通常K低下)
b.間質性腎炎
c.hypoaldosteronism
C.HCl投与
HCl.NH4Cl.arginuine-HCl.lysine-HCl.アミノ酸製剤*
D.希釈性アシドーシス=HC03-を含まない輸液の大量投与
2.AG(アニオンギャップ)elevated(Cl-normal)
A.無機酸の蓄積
腎不全(急性及び慢性=尿毒症)*
B.有機酸の異常産生
a.ketoacidosis
糖尿病性アシドーシス*
アルコール摂取*
thyroid crisis
飢餓・嘔吐*・下痢*・発熱*
b.乳酸アシドーシス
1.type 1
acute heart failiure*、Shock
hypoxia:CO intoxication、Severe anemia
Sepsis(ABE、SBE、W-F syndrome)
過激な運動
2.type 2
特定疾患:糖尿病*、悪性腫瘍*、肝臓疾患*、低血糖、急性腎不全*
薬剤・毒素
サリチル酸中毒(呼吸性アルカローシスを合併)
エチレンブリコール・エタノール・メタノール
ソルビトール・キシリトールり・パラアルデヒド・トルエン
遺伝性疾患
糖代謝異常・ピルビン酸脱水素酵素欠損症
その他
D-乳酸アシドーシス
C.その他
rhabdomyolysis
高浸透圧性ケトン性昏睡
3.AG(アニオンギャップ)decreased
A.低アルブミン血症(mye10ma、LC等)(2mEq低下/lgAl)
B.hypercalcemia(1mEq低下佗mgCa)
C.hypermagnesemia(1mEq低下/2mgMg)
D.Br中毒(セデスA)
(2)代謝性アルカローシス((*)印は頻度の多い疾患を示す)
1.NaCl反応性(尿中Cl:10mEq/l以下)
利尿剤の影響*(contractio nalkalosisを起こす)
嘔吐・胃液吸引*−ECF減少(NaCは水の喪失)
Contraction alkalosis*:食欲不振等(ECF減少・混合性脱水(NaClと水の
喪失))
慢性下痢*:先天性Cl下痢症・下剤常用・Villous adenoma
2.NaCl抵抗性(尿中Cl:20mEq/l以上):ECF減少せず
A.鉱質コルチコイド過剰
Primary aldosteronism
Bartter症候群(腎臓でのCl再吸収低下)
Cushing症候群・DOC過剰(11/17-hydroxylase deficiency)
ACTH産生腫瘍・副腎癌・コルチゾール過剰
偽アルドステロン症*(甘葦)・licorice(薬物)
B.低K血症*(水素イオン分泌冗進・アルカローシス)
3.その他
多量のペニシリン誘導体の投与
高Ca血症
大量の輸血
メイロン(NaHCO3)の大量投与(pCO2増加を招き呼吸性アシドーシス
にもなる)
制酸剤・クエン酸・乳酸・酢酸の過剰
ミルク・アルカリ症候群
慢性高CO2血症からの回復期*
飢餓後の多量の糖質摂取
(3)呼吸性アシドーシス((*)印は頻度の多い疾患を示す)
A.急性
1.気道閉塞
喉頭浮腫・@気管内異物*
@気管支喘息*・@肺気腫(COLD)*・気管支痙攣
上気道・気管支疾患*
@喉頭癌*・@肺癌*・@甲状腺癌*・◎食道癌*
ジフテリア・喉頭蓋炎・気管支炎*
2.呼吸中枢機能異常
@鐘痛剤*・@睡眠剤*・@精神安定剤等の過剰投与*
脳血管障害*・@脳腫瘍*・脳炎(ヘルペス・ポリオ等)・髄膜炎*
頭部外傷*・急性硬膜外血腫
@代謝性脳症*
3.心・肺機能障害・疾患
心停止・重症鬱血性心不全*・ARDS(重症)
肺水腫・無気肺・肺炎*(@結核)・@肺線維症*・@COLD*・@肺癌*
・@気胸*
4.神経-筋機能障害
@脊髄外傷*
神経・筋疾患
重症筋無力症・@ALS・Guillain−Barre s.・@末梢神経炎*
@筋ジストロフィー
薬剤及び毒素
ふぐ中毒・ボツリヌス・破傷風
筋弛緩剤
@抗生剤・…ゲンタマイシン等
5.胸郭異常・その他
@漏斗胸等の胸郭変形*・@脊柱側わん*・@dwarfism
胸部外傷(緊張性気胸)*・胸水*・血胸・腹部外傷*
@レスピレーターによる低換気*
胸・腹部手術に伴う呼吸不全*・@腹水(横隔膜運動制限)*
B.慢性
1.気道閉塞:上記(@)を付記した状態
2.呼吸中枢機能異常:上記(@)を付記した状態
慢性硬膜下血腫*
重症肥満(Pickwickian synd.)
代謝異常
重症粘液水腫
電解質異常*
3.神経-筋機能障害:上記(@)を付記した状態
4.胸郭異常・換気抑制・その他
(上記(@)を付記した状態)
原発性肺胞低換気症
5.重炭酸過剰投与*
(4)呼吸性アルカローシス((*)印は頻度の多い疾患を示す)
1.低酸素血症(anoxic drive)
高地での居住
換気血流不均等・肺胞-毛細血管の拡散障害
心・呼吸器疾患
ARDS(初期はアルカローシス)
鬱血性心不全*(初期はアルカローシス)
先天性心疾患(右-左シヤント)
肺炎*・肺水腫・問質性肺疾患(悪性腫瘍・リンパ腫の肺浸潤等も考慮)
肺血栓(栓塞)症(頻呼吸のため)
2.中枢神経系疾患(呼吸中枢機能異常)
a.中枢神経系疾患
脳血管障害*・脳腫瘍・脳炎(ヘルペス・ポリオ等)・髄膜炎
頭部外傷*・急性硬膜外血腫*
代謝性脳症
てんかん*
b.薬剤・ホルモンの影響
サリチル酸中毒症(代謝性アシドーシスも合併)
ニコチン・キサンチン誘導体
昇圧ホルモン・プロゲステロン
3.精神的原因・心因反応
過換気症候群*
神経症*
不安神経症・緊張・興奮
ヒステリー等
神経循環無力症
4.その他
妊娠
肝硬変・肝不全
敗血症(グラム陰性桿菌性)
熱への暴露
◎水・電解質代謝異常について(浮腫、血清Naの増減、脱水症など)
■ 生体(成人)の水分(TBF=体重の60%)
=●ICF(細胞内液、体重の40%) + ●ECF(細胞外液、体重の20%)
●ECF=○ISF(間質液、体重の15%) +
○IVF(血漿、体重の5%)
A. 希釈性低ナトリウム血症(ICF↑・ECF↑・TP↓・Ht↓・Na↓)
Na貯留に見合う以上の水分貯留状態。(ICF,ECF両者に溜る。TP,Ht 低下)
ECF が700ml以上増加すると浮腫が来る。(2000mlを越えると全身水腫)
<主たる病名>
1.鬱血性心不全
2.肝硬変症
3.ネフローゼ症候群
4.SIADH−中枢神経障害・悪性腫瘍・利尿剤投与・ポルフィリア等
5.水中毒−腎不全にたいする低張液の輸液等
<治療>
1.現疾患の診断と治療
2.利尿剤投与−投与過剰によるcontraction alkalosis 発現に注意
(発現すれば生理食塩水+カリウムの投与)
3.24時間の絶飲水
4.アシドーシスがある時はClを投与してはならない。
5.中枢神経症状(痙攣・麻痺)があるときは5% NaCl を6ml/kgの量で
100ml/hで点滴静注する。 ただし400ml/日をこえてはならない。
6.TP, Ht の正常化が参考になる。
<付録>
血清Naを10mEq/l 上昇させるために必要な5%NaCl液の量は
[BW(kg)×6]mlである。
B. 偽性低ナトリウム血症(ICF↑・ECF→・TP→・Ht→・Na↓)
<原因となる病態>
1.高脂血症
2.高窒白血痕
3.高血糖(100mg/dlから100mg/dlの↑毎に1.6mEq/lのNaが↓する)
<治療>
1.浸透圧を正常に維持するために見かけ上の低ナトリウム血症がある。
原因となる病態を是正すればいい。
2.水分代謝に関しては、急いで加療の必要はない。
3.合併症のない糖尿病性アシドーシスの場合はインシュリンを投与。
ナトリウム塩を含む輸液をしてはならない。
注意:尿毒症では見かけ上ナトリウムが低下していても高浸透圧の時あり、
この時は、実際は水分欠乏状態であるから水分の相対的過剰と即断し
てはならない。
C. 低張性脱水症(ICF↑・ECF↓・TP↑・Ht↑・Na↓)
Naがそれに見合う水分を伴うことなく失われた時に生じる。
典型例はアジソン病。
<主たる病態>
1.アジソン病 【高張<等張<低張の順でショックになりやすい】
2.利尿剤の投与
3.糖尿病(糖尿病は色々な病態を呈す。)
<輸液療法>
1.ショックに注意:尿量が保たれていても、ECFは低下している。
(HtやTPが↑していれば注意)
2.生理食塩水を中心としてNa、水分を投与する。(浸透圧↓を考慮して
デキストランを投与することもある。)
Na投与量:[BW(kg)×0.6×(142−Na)]mEq/日
水分投与量:尿量+不惑蒸泄量+水分不足量一代謝水
●尿量:前日尿量又は最近の数時間より予測した1日尿量
又は理想尿量=ml/kg/h)
●不惑蒸泄量:[15×BW(kg)+200(体温−36.8)]ml/日
●水分不足量:
○口渇(-) :1000ml以下
○口渇のみ(+):約1400ml(1000~2000ml)=軽度(2%)
○2~4日の絶飲
又は乏尿:約4000ml(2000~5000ml)=中等度(6%)
○精神障害(+):5000~10000ml=高度(7−14%)
●代謝水:[5×BW(kg)]ml/日
3.アシドーシスがあればメイロンを投与
参考投与量:[(24−HCO3)×0.5×BW(kg)]mEq
4.ICFは希釈されておりICF内Kは低下傾向にあり、Kを補う必要あり。
5.利尿剤投与によるcontraction alkalosis発現には生食とカリウム投与
<付録>血清Naを10mEq/l上昇させるために必要な5%NaCl液の量は
[BW(kg)×6]mlである。
※注意:SIADHは水分量は不変でNaが減少(脱水ではないが鑑別の必要あり)
D. 等張性膨脹(合併症のない浮腫性疾患)(ICF→・ECF↑・TP↓・Ht↓・Na→)
ECFに主として水分が過剰に貯留(TP↓、Ht↓)、ICFはほば正常。
ECFの水分貯留は1000ml以下に止まる。
<治療>
1.水分代謝上は治療を急ぐ必要はないが、ナトリウム、TP、Htの動きに
注意してそれらの値が↓せぬ様にする。不注意な治療をすると希釈性
低ナトリウム血症に移行する。
2.心不全・肝硬変・ネフローゼに対しては利尿剤を適宜投与する。
3.アシドーシスがある時はClを投与してはならない。
4.過剰輸漆は肺水腫の原因になるので十分注意する。
E. 混合性脱水症(ECFが減少する等張・低張・高張性脱水)
通常の脱水症は細胞外液が減少する。水分喪失に対してNaがどの程度
喪失するかで等張・低張・高張のように区別する。臨床的に遭遇する脱水症
は、多くは混合性脱水症である。等張性脱水の場合喪失液はほば等張である
からICFの容積は変化することなく、全ての損失はECFにかかる。問質液と
血漿は3:1の容積比で存在し水分損失は、(血漿蛋白質の効果的な浸透圧
増大のため)問質液の犠牲が増す形で進行する。即ち血液濃縮、血漿量減少
にもかかわらず腎臓は最小量の尿量を保っている。この状態に対処が遅れる
とECFを保てずショックは急速におとずれる。
<等張性脱水症の原因>(ICF→・ECF↓・TP↑・Ht↑・Na→)
1.嘔吐・下痢
2.出血 【高張<等張<低張の順でショックになりやすい】
4.塩類喪失性腎炎
<低張性脱水症の原因>(ICF↑・ECF↓・TP↑・Ht↑・Na↓)
1.アジソン病
2.利尿剤の投与
3.糖尿病(糖尿病は色々な病態を呈す。)
<高張性脱水症の原因>(ICFl・ECF↓・TP↑・Ht↑・Na↑)
1.発汗・発熱・熱中症
2.摂食・摂水不能
3.尿崩症
4.意識障害・中枢神経疾患 (渇中枢の麻痺)
5.慢性腎疾患(※Naが低下している時もある)
6.非ケトン性糖尿病性昏睡
【低張性脱水では、想像以上にECF減少が起こっており、ショックに陥り易い】
<輸液療法>
治療は血中ナトリウム・TP・Htを参考にして水分欠乏とナトリウム欠乏
の状態を的確に把握して効率的に行う。
1.ショック発症への注意及びショックヘの対応
尿量は保たれていてもECFは縮小していることを念頭において十分の
輸液を行うが過剰にならぬ様注意を払う。
(是正不十分ならショックを起こし、過剰なら肺水腫を起こす。)
2.投与水分量の計算(但し重症者・口渇がひどい場合は不感蒸泄量は極端
に少ない)
水分投与量:尿量+不惑蒸泄量+水分不足量+(嘔吐・下痢等喪失量)
−代謝水
●尿量:前日尿量又は最近の数時間より予測した1日尿量
又は理想尿量=ml/kg/h)
●不感蒸泄量:[15×BW(kg)+200(体温−36.8)]ml/日(注意!)
●水分不足量:ロ渇(-):1000ml以下
●水分不足量:
○口渇(-) :1000ml以下
○口渇のみ(+):約1400ml(1000~2000ml)=軽度(2%)
○2~4日の絶飲
又は乏尿:約4000ml(2000~5000ml)=中等度(6%)
○精神障害(+):5000~10000ml=高度(7−14%)
●代謝水:[5×BW(kg)]ml/日
3.Na投与量=[BW(kg)×0.6×(142−Na)]mEq/日
(5%NaCl液を[6×BW(kg)]ml投与すると10mEq/は曽加する)
4.具体的な輸液法
1) ショックがある時
体温が高ければ、乳酸加リンゲル液を平熱ならば等張食塩水
(生食)を1200ml~1400ml/4hで投与。
2) ショックがない時
a. 上記で求めた水分量とNa量を初日に1/2量、残りを2日日以降
数日かけて投与
b. アシドーシスがあればメイロンを投与
参考投与量:[(24−HCO3)×0.5×BW(kg)]mEq
3) カリウムを補給する。(80~100mEq/日まで、20mEq/hを越えぬこと)
カリウム欠乏量の推定:
・3mEq/l以上のとき1mEq/lの低下につき100~200mEq欠乏
・3mEq/l未満のとき1mEq/lの低下につき200~400mEq欠乏
4) 利尿割投与によるcontraction alkalosis発現には生食とカリウム投与
F. 高張性膨張(ICF↓・ECF↑・TP↓・Ht↓・Na↑)
ナトリウム貯留に水分の増加が追いつかぬ状態。
ECFが増加し、浸透圧も↑して、ICFが減少する。(TP↓、Ht↓)
日常臨床では比較的稀である。
<原因となる病態>
1.ステロイドの過剰投与
2.塩分中毒:大量の海水や高張食塩水を飲んだ時
<治療>
1.純水を経口投与。(静脈内に投与すると溶血する。)
2.等張液(5%ブドウ糖)を投与しつつ、ECFの希釈を図る。
この時、TP・Htの値を参考にする。
通常、尿量は保たれているはずであるが、乏尿の時はその原因を考えた
後で、できるだけ少量の利尿割を使う。脱水にならぬ様注意。
(ECFの浸透圧が下がり水分が急速にICF中に戻る時、乏尿になること
がある)
G. 偽高ナトリウム血症(ICF↓・ECF→・TP→・Ht→・Na↑)
<原因となる病態>
1.高アルドステロン症
2.クッシング症候群
3.偽アルドステロン症
<治療>
1.浸透圧を正常に維持するために見かけ上の高ナトリウム血症がある。
2.水分代謝に関しては、急いで加療の必要はない。徐々に水分、カリウムを
補いつつ原因となる病態を是正すればいい。
3.合併する代謝性アルカローシスは上記治療で回復する。
H. 高張性脱水症(ICF↓・ECF↓・TP↑・Ht↑・Na↑)
失ったナトリウムに見合う以上の水分を喪失しておこる。たとえば、嘔吐、
下痢があって水分が補給できぬ状態では、初期には等張性脱水でも、次いで
高張性脱水に移行する。ECF:ICFは通常1:2だからICFの犠牲が大きく中枢
神経系の変化が主要な特色である。
●注意:慢性腎疾患ではナトリウムが低くても高浸透圧でECF、ICFの縮小を来す。
【高張<等張<低張の順でショックになりやすい。】
<高張性脱水症の原因>(ICFl・ECF↓・TP↑・Ht↑・Na↑)
1.発汗・発熱・熱中症
2.摂食・摂水不能
3.尿崩症
4.意識障害・中枢神経疾患 (渇中枢の麻痺)
5.慢性腎疾患(※Naが低下している時もある)
6.非ケトン性糖尿病性昏睡
<輸液療法>
治療は血中ナトリウム・TP・Htを参考にして水分欠乏とナトリウム欠乏の
状態を的確に把握して効率的に行う。
1.ショック発症への注意及びショックヘの対応
尿量は保たれていてもECFは縮小していることを念頭において十分の
輸液を行うが過剰にならぬ様注意を払う。
(是正不十分ならショックを起こし、過剰なら肺水腫を起こす)
2.投与水分量の計算 (ただし重症者・口渇がひどい場合は不惑蒸泄量は
極端に少ないことを念頭におく)
水分投与量:尿量+不惑蒸泄量+水分不足量+(嘔吐・下痢等喪失量)
−代謝水
●尿量:前日尿量又は最近の数時間より予測した1日尿量
又は理想尿量=ml/kg/h)
●不感蒸泄量:[15×BW(kg)+200(体温−36.8)]ml/日(注意!)
●水分不足量:ロ渇(-):1000ml以下
●水分不足量:
○口渇(-) :1000ml以下
○口渇のみ(+):約1400ml(1000~2000ml)=軽度(2%)
○2~4日の絶飲
又は乏尿:約4000ml(2000~5000ml)=中等度(6%)
○精神障害(+):5000~10000ml=高度(7−14%)
●代謝水:[5×BW(kg)]ml/日
3.Na投与量=[BW(kg)×0.6×(142−Na)]mEq/日
(5%NaCl液を[6×BW(kg)]ml投与すると10mEq/l増加する)
4.具体的な輸液法
1) ショックがある時
体温が高ければ、乳酸加リンゲル液を平熱ならば等張食塩水
(生食)を1200ml~1400ml/4hで投与。
2) ショックがない時
a. 上記で求めた水分量とNa量を初日に1/2量、残りを2日日以降
数日かけて投与
b. アシドーシスがあればメイロンを投与
参考投与量:[(24−HCO3)×0.5×BW(kg)]mEq
3) カリウムを補給する。(80~100mEq/日まで、20mEq/hを越えぬこと)
カリウム欠乏量の推定:
・3mEq/l以上のとき1mEq/lの低下につき100~200mEq欠乏
・3mEq/l未満のとき1mEq/lの低下につき200~400mEq欠乏
4) 利尿割投与によるcontraction alkalosis発現には生食とカリウム投与
5.尿崩症への輸液
純水の経口投与又は5%ブドウ糖の静脈内投与
6.非ケトン性糖尿病性昏睡への輸液
生食+カリウム(20~40mEq)+インシュリン
◎高齢者の低Na血症、とくにSIADHと鉱質コルチコイド反応性低Na血症について
(NIS、No.4049(H13/12/1)、PP91-92)
高齢者の低Na血症は、体液量の増減が+-10%以内のいわゆるeuvolemic hyponatremia
に属する。また加齢に伴って、バソプレッシン(AVP)の分泌は増加するため、高齢者
で低Na血症の原因を検索すると、SIADHの診断基準に合致して、水制限の治療が行わ
れることが多い。高齢者のSIADHの診断に際して、両者の病態は体液管理上相反する
ので、常に鉱質コルチコイド反応性低Na血症(MRHE)を念頭においておく必要があ
る。
1. SIADH:省略(1.2.とも約20~30%の頻度)
2. 鉱質コルチコイド反応性低Na血症(MRHE)
1) 対液量減少があるため、SIADHと早とちりしての水制限は危険
2) 低Na血症、低浸透圧血症、尿中Na排泄亢進、高張尿、低レニン・低アルドス
テロン、相対的AVPの分泌亢進(これらはSIADHと同じ)
3) SIADHと異なる点
軽度の脱水(体液量が6~8%減少)あり。ただし理学的には脱水所見が把握
できないことが多い。
4) MRHEでのAVP分泌亢進は、対液量減少に伴う非浸透圧性刺激によるもので、
生体は代償的に体液保持に傾く。(この病態は加齢に伴う腎のNa保持能力の
減退に由来すると考えられている)。さらに遠位尿細管における、アルドス
テロン反応性の減弱や、加齢に伴う低レニン・低アルドステロンが関与する。
さらにAVPや心房性Na利尿ホルモンの分泌亢進が加わる。
5) SIADHとの鑑別に窮っした場合、とりあえず水制限を7~10日施行。ただしこの
やりかたは、Naが120mmol/L以上で行うべきで、低下しているNaは高張食塩水
で補正しつつ行う。このような短期間の水制限でもSIADHでは、血清Na値が
改善する。
6) 水制限に全く無反応で、尿中Na排泄も持続して亢進するばあいはMRHEと考え
る。
7) 治療は鉱質コルチコイドを使う。フルドロコルチゾン0.05~0.2mg/日の投与
で、約1~2週間の経過で血清Naは明らかに改善し全身状態も回復。MRHEでの
AVP分泌亢進は代償性のものなので、フルドロコルチゾン投与により、その
分泌亢進は治まってくる。
◎低Mg血症(低マグネシウム血症)の主な原因(日内雑誌 2006;95:847)
1. 消化管性
1) 摂取不足
2) 嘔吐・胃管留置
3) TPN
4) 脂肪便(短腸症候群)
5) 重症下痢
6) 家族性Mg吸収不良
7) 慢性アルコール中毒
2. 腎性
1) 遺伝性原発性腎Mg喪失
2) Bartter症候群
3) Gitelman症候群
4) 薬剤(アミノ配糖体、シスプラチン、サイクロスポリン、ペンタミジン
ジギタリス製剤、利尿薬など)
5) アルドステロン症
6) SIADH
7) 体液過剰
8) 高Ca皿症
9) 塩分負荷
10) ケトアシドーシス(飢餓、糖尿病)
11) 慢性アルコール中毒
3. 細胞外から細胞内への移動
1) Hungry bone syndrome
2) 低栄養へのブドウ糠静注
3) 冠動脈バイパス術後
4) 急性膵炎