心電図の読み方

◇正常洞調律の条件
  I、aVF の P が上向き、PQ 間隔が 0.12 〜 0.20秒 (3 〜 5mm)
  QRS 幅が 0.12秒 (3mm) 未満、PP 間隔 = RR 間隔で 15 〜 25mm

◇P 波の異常
 ※正常 P の条件:時間;0.08 〜 0.12秒 (2 〜 3mm)
          振幅 0.25mV (2.5mm) 以下
 (1). 肺性P と右房性P:II・III・aVF で大きく尖った P (幅は正常) をみる
    (右房肥大)    右房負荷を意味する。この時 V1の P も先鋭化して
             大きい (右房性 P)
    ※肺性心・PS・TS・Fallot・Eisenmenger・TA

 (2). 僧帽性P と左房性P:I・II・aVF で二峰性の P (幅も拡大) をみる、左
             房負荷
    (左房肥大)     を意味する。この時 V1 の P は (±) 二相性を呈
             す (左房性 P)
    ※MS・MR・HR・AR・HCM・IHD

 (3). 両房肥大:II・III・aVFで大きく尖った、幅広い P。V1 の P は (+-)
         二相性を呈す。その陽性相は先鋭で電位が高く、陰性相は
         0.1mV以上で0.04秒以上のことが多い。

 (4). Ebstein 奇形の巨大 P (Ebstein 奇形:TR と ASD を伴う先天性心疾
    患)

◇異常 Q波 (幅1mm 以上で R の 1/3 以上の深さ) の鑑別診断
 (1). 生理学的・位置変化によるもの
  1. 垂直位心での aVL での Q波 (QS 型) (側壁梗塞との鑑別、胸部誘導で
     異常 Q 波やRの減高を認めない)
    水平位心での III、aVF での Q波 (下壁梗塞との鑑別、ST-T の変化を
    伴なわず)
    III だけの異常 Q波は特に問題ない。
  2. 電極の位置異常
  3. V1、V2の正常亜型
  4. 左側気胸 (前胸部誘導でRを認めず:前壁梗塞と類似)
  5. 先天性心外膜欠損症
  6. 漏斗胸
  7. 完全修正大血管転移

 (2). 心室肥大
  1. 左室肥大 (時にV1 〜 V3 にて QS型、Qr を認める:前壁梗塞と類似)
  2. 右室肥大・慢性右心不全 (時計方向回転や SIII:心筋梗塞と類似)
  3. 肥大型心筋症 (20 〜 40% に異常 Q波:下壁・側壁誘導に比較的幅の狭
    い Q波)

 (3). 心室伝導の変化
  1. 左脚ブロック
  2. 右脚ブロック
  3. 心室ペーシング
  4. WPW 症候群 (B、C 型で異常 Q波)

 (4). 心筋障害
   ※心筋梗塞では梗塞部位からの脱分極が消失し梗塞部から離れる方向に
    平均ベクトルが向かう、そのため梗塞領域の上の誘導で異常 Q波を呈
    する。
  1. 急性:心筋梗塞、急性心筋炎、心筋外傷
  2. 慢性:拡張型心筋症、アミロイドーシス、サルコイドーシス、デュセン
       ヌ型筋ジストロフィー

★一見健常者にみられる異常 Q波
 (1). 横位心による III の異常 Q波
  1). QRS の初期ベクトルが水平に左方に向かい III では Q となる。
  2). II・aVF では初期 r波が記録され Q波とならない。
  3). III の Tは陰性であっても左右対称でなく冠性 T波の特徴をもたない。

 (2). WPW 症候群
  1). 心室早期興奮による心起電力ベクトル (δベクトル) の方向により異常
    Q波が作られる
  2). 心室早期興奮の範囲が狭い時はδ波が不明瞭となり異常 Q波が前面に
    捉えられ AMI と間違えやすい。この時一つの誘導でもδ波があれば
    WPW 症候群である。

 (3). 中隔線維化
    通常中隔ベクトルにより V1-2 の r と V5-6 の q が作られている。
  1). 何らかの原因で中隔線維化が起こると中隔ベクトルが消失し V1-2 が
    QS型になる。 (前壁中隔梗塞との鑑別)
2). V1-2 で冠性 T波を伴わない。 (冠性 T波があれば前壁中隔梗塞)
3). V3-4 で初期 r を示す。 (QR 型なら前壁中隔梗塞)

 (4). 心室内伝導障害
  1). 右脚ブロックでは III で著しいQ、かつ Tの陰性化 (冠性T波ではない)
  2). 左脚前枝ブロック
    V1-2 に q (前壁中隔梗塞に似る) 。-45 度以上の左軸偏位。I・VL
    の生理的 q 波増強 (高位側壁梗塞に似る)。
    この際の q (Q) は 0.04 秒以内である。

 (5). その他:先天的冠動脈異常・心筋炎の後遺症・無痛性心筋梗塞等考慮。

◇左室肥大
 (a). RV5 + SV1 > 35mm
 (b). RV5 > 26mm
 (c). RI + SIII > 25mm
 (d). RaVL > 11mm かつ RaVF > 20mm
 (e). VAT (QRS 開始から頂点までの時間) V5.6 > 0. 05秒
 (f). V5.6 の肥大性 ST・T 変化 (ST 下降、T 平低または逆転)
 ※AS・AR・MR・HT・肥大型心筋症・PDA・大動脈縮窄症

◇右室肥大
 (a). R/SV1 > 1.0
 (b). R/SV5 < 1.0
 (c). RV1 > 7mm
 (d). VAT (QRS 開始から頂点までの時間) V1 >= 0.04秒
 (e). 110 度以上の RAD
 ※PS・Fallot 四徴・Eisenmenger・PH・cor pulmonale

◇心室内ブロック
 (a). 右脚ブロック
    V1で rSR 型かつ V6 に幅広いs

 (b). 左脚ブロック
    V1で QS 型かつ V6 で RR (RsR) 型。

 (c). 左脚前枝ブロック
    LAD (-45 〜 -90度)・QRS が 0.09 〜 0.10秒
    PQ 軽度延長、I に異常 Q波 (qR型)
    II・III で rS型 (S は III の方が深く大きい)
    aVL で qR (高い R波)・aVF で rS (深いS)

 (d). 左脚後枝ブロック
    RAD (+90 〜 +120度)・QRS が 0.09 〜 0.10秒
    PQ 軽度延長、I で rS型、
    II・III で qR型 (R は III の方が高い)
    aVL で rS型 (深い S波) ・aVF で qR型 (高いR)

 (e). 右脚ブロック + 左脚前枝ブロック (二束ブロック)
LAD (-45 〜 -120度)・QRS が 0.12秒以上
PQ 延長、I に異常 Q波 (qRs型)
II・III で rS型 (S は III の方が深く大きい、r は III で少し高い)
aVL で qR (高い R波・異常 Q波)・aVF で rS (深いS)
V1 で rSR型かつ V6 に幅広いやや深い s (右脚ブロック型)

 (f). 右脚ブロック + 左脚後枝ブロック (二束ブロック)
RAD (+100 〜 +120度)・QRS が 0.12秒以上
PQ延長、I で rS型 (r・S 共に幅広い)
II・III で qR型 (R は III の方が高く大きい)
aVL で rS型 (深い幅広い S波)
aVF で qR型 (高い幅広い R)
V1 で rSR型かつ V6 に幅広い深い S (RS型)

 (g). 三束ブロック
    (e). + (f). で複雑になる、珍しい、省略。

◇QRS の見方:異常 Q波 (幅 1mm 以上で R の 1/3 以上の深さ)
 (1). 正常な QRS (一つのモデル)
  1). 幅:0.12秒 (3mm) 以上あれば異常

  2). 四肢誘導
    I で最初大きく上向き、次いでごく僅か下向き (Rs型)
    II で最初ごく小さな下向き、ついで大きく上向き (qR型)
    III で最初やや小さな下向き、ついで大きく上向き (qR型)
    aVR では殆ど下向きの QRS (QS型)
    aVL では最初上向き、次いで下向き (RS型)
    aVF では III と殆ど同じで最初やや小さな下向き、ついで大きく上向
     き (qR型)
   ※I・ aVL で q波があると異常として一考を要す。
   ※II・III・aVF の大きくて幅広い Q (異常 Q波) は完全に病的。
   ※II・III・aVF で s や S をみたら異常として一考を要す。
   ※aVR では異常 Q波は無視して考える。 (QS型を呈することがある)
   ※前面から見ると心室興奮は先ず左上に向かい、次いで大きく左下へ向
   かって、最後に基線に戻るがその直前にやや右に振れる。

  3). 胸部誘導
    V1 と V2 は最初小さく上向き、ついで大きく下向き (rS型)
    V3 は最初上向き、次いで下向きで基線からの振幅はほぼ同じ(RS型)
    V4 と V5 は最初大きく上向き、次いで小さな下向き (Rs型)
    V6 は最初ごく小さな下向き、ついで大きく上向き (qR型)
   ※移行帯は V2 〜 4 にある。
    移行帯が V5 にあれば、正常より左に向かっており、心尖から見て時
    計方向の回転があると見る。
    移行帯が V2 〜 3 の場合は正常であるがやや反時計方向の回転がある
    と見る。
   ※V1 〜 2 の R波 (大きいR) も異常として一考を要す。
   ※V1 〜 2 の QS型は左室肥大でも生ずる (心筋梗塞との鑑別)
   ※V1 〜 5 に q波があったり、V6 に s波があれば異常として一考を要
    す。
   ※V5 〜 6 の S波 (時として QS型) は右室肥大でも生ずる (心筋梗塞と
    の鑑別)
   ※四肢誘導と胸部誘導から空間ベクトルは、先ず左前方に向かい、次い
    で左前下へ方向を転換し、さらに大きく左後下方へ向かい基線に戻
    る。

 (2). QRS 振幅の異常:山から谷までの最大の振れは 35mm を越えない。
  1). 低電位差
    QRS の振幅が四肢誘導で 0.5mV (5mm) 以下の時、または 胸部誘導
    で 1.0mV (10mm) 以下の時
   ※心膜炎、粘液水腫、正常 (空間ベクトルが前面に鉛直の時)

  2). 胸部誘導QRSの推移
    rS → rS → RS → RS → Rs → qR
   ※V1 〜 5 に q波があったり、V6 に s波があれば異常として一考を要
    す。
   ※V1 〜 2 の R波も異常として一考を要す。

  3). 左室肥大心電図:rS → rS → (rS → Rs) → qRs → qR
   ※LAD とは言わぬまでも左に軸変位
   ※V4 〜 5 に q波出現 (qR・qRs型)
   ※AS・AR・MR・HT・HCM・PDA・coarctation of aorta

  4). 右室肥大心電図:Rs → (rS → rS → rS) → rS → QS
   ※RAD、移行帯が V1 〜 2 の間にある。
   ※V5 〜 6 に深い S波出現 (rS・QS型)
   ※PS・fallot 四徴・Eisenmenger・PH・cor pulmonale

 (3). QS波 (QS型) と異常 Q波 (幅 1mm 以上で R の 1/3 以上の深さ)
  1). 胸部誘導の QS波 (QS型)
   (a). 前壁梗塞
     梗塞部位の起電力が失われr波が消失した場合その近くの胸部誘導は
     QS型となる。
   (b). 前壁梗塞との鑑別
    1. 左脚ブロック:QRS 幅は 3mm 異常で V6 で RR型
    2. WPW 症候群 (特に B・C型)
    3. 左室肥大 (V1 〜 2 で QS型) :ST・T 変化で区別

  2). II・III・aVF の異常Q波
   (a). 下壁梗塞
      (aVR (正常でも QS型あり) 以外で) II・III・aVF の異常 Q波。
移行帯は V2 〜 4 にあり正常。
   (b). 下壁梗塞との鑑別
    1. II・III に q があっても aVF が異常 Q波 (幅 1mm 以上で R の
      1/3 以上の深さ) でなければ、少なくとも下壁梗塞ではない。
      (注意!! 左室肥大)

  3). aVL の Q波
   (a). 右胸心
      aVR と aVL が入れ替わっていることを見る。
   (b). 垂直心
      II・III の波形同士、aVR・aVL の波形同士がよく似ている。
平均電気軸が真下にあることを意味する。
よって aVR と aVL ともに QS型を呈する。
   (c). 高位側壁梗塞
      I・aVL に qR や Qr をみる。(左肩から見える部位に梗塞)
胸部誘導で QS型や ST 上昇 (V1 〜 2 で ST低下のこともある) を
      見れば高位側壁梗塞と診断。
   (d). 右室肥大:I・aVL に QS型
      RAD と胸部誘導の右室肥大型をみる。
      胸部誘導で QS型や ST 上昇がないことも考慮。

 (4). ST・T の見方:I・II・V4 〜 6 の T波逆転は必ず異常
  1). 二次性 ST・T変化
   ※QRS と T は逆向きになることが多く ST 〜 Tの移行点が不明瞭。
   (a). 左脚ブロック
      QRS 間隔の異常 (ブロックの存在) 。
      ST は III 以外で QRS の大きな振れと反対方向に
      偏位 (低下または上昇) 、さらに ST 〜 T の移行点が不明瞭。
   (b). 右脚ブロック
      QRS 間隔の異常 (ブロックの存在) 。
      V6 に幅の広いs波をみる。
      ST は V1 〜 2 で QRS の大きな振れと反対方向に
      偏位 (低下または上昇) 、さらに ST 〜 T の移行点が不明瞭。
      胸部誘導で (特に V2 〜 4) T波が 2相性になる。
   (c). WPW 症候群
      QRS 間隔の異常 (ブロックの存在) 。
      特徴的なδ波の存在。

  2). 正常亜型としての ST・T変化
    胸部誘導でとくに V1 〜 4 で ST が上昇 (ST が下に凸の形で軽度上
    昇) し (このとき V5 〜 6 は正常) 、割合明瞭に ST 〜 T の移行点が
    ある時は正常。

  3). 虚血性 ST低下
    運動負荷により水平ないし下降型の ST 低下が 0.05mV (0.5mm) 以
    上であれば虚血性 ST 低下であり、心筋虚血の可能性は大きい。

  4). 非虚血性 ST 低下 (J点:QRS 〜 ST の移行点)
   ※ST低下の程度が 2.0mm 以上より大きければ虚血性の可能性が大きい
   (a). J型 ST 低下 (上向型 ST 低下)
      J点が基線より下にあり、斜め上にむかって T に移行する。頻脈
      にみられ病的意義なし。
   (b). 肥大型 ST・T変化
      左室肥大の証明。
      V1 〜 3 と V4 〜 6 の ST・T 変化は鏡像の如く異常を呈す。
   (c). その他の ST・T 変化
      ジギタリス効果等

  5). ST上昇
   (a). 心筋梗塞による ST上昇 (繰り返しECG をとる)
    1. 前壁・高位側壁梗塞
      I・aVL に QS型、I・II・aVL・V2G6 の ST上昇
      (冠性 T は少し時間が経つと V2G6 に出現)
    2. 前壁中隔梗塞
      V1 〜 3 の QS型、V1 〜 3 の ST 上昇 (V6 の ST 低下)
      I・aVL で ST の水平型低下 (II・III・aVF で ST やや上昇)
      (冠性 T は少し時間が経つと V3 〜 4 に出現)
    3. 狭心症発作時の ST 上昇
      基本的には夫々の誘導で異常 Q波や QS型がない事、繰り返し ECG
      をとると正常化する事で心筋梗塞と区別。

◇U波の見方:U波の成因は明かではない
 1). 陰性 U波
  ※aVR 以外にみられる陰性 U波は異常である。
  (1). 心筋虚血によるもの
     左冠動脈前下降枝近位部や左冠動脈主幹部に有意狭窄を有する重症冠
     動脈疾患でしばしば出現。

  (2). 切迫心筋梗塞を示す (運動負荷でも出現)
   (a). V3 〜 5
      左前下降枝または左冠動脈主幹部の切迫心筋梗塞
   (b). II・III・aVF・V4 〜 6
      左回旋枝または右冠動脈領域の切迫心筋梗塞

  (3). 高血圧症
     虚血心疾患と異なり大半は V5 〜 6 で陰性 U波をみる。
     二峰性 T やストレイン型の ST 〜 T 変化あり。

  (4). その他
     AR・ICM・右室負荷疾患
  ※虚血心疾患と異なり大半は V5 〜 6 で陰性 U波をみる。
  ※二峰性 T やストレイン型の ST 〜 T 変化あり。
  ※QRS 高電位・VAT (ventricular activation time) の延長あり。
    (VAT:QRS 開始から頂点までの時間)

◇高カリウム血症の心電図 (高 K血症)
 (1). 最も初期の変化
    T波の増高と先鋭化 (テント状 T) 、U波の増高を見る事あり。
  ※先鋭化した T波と直前の S波 (aVR では R) が ST の中点について点対
   称の様に見えるのが特徴。

 (2). P は減高・幅広くなり、さらに進行すれば消失

 (3). AV 伝導は遅延し PQ時間は延長。さらに高度になると完全房室ブロッ
    クとなる。

 (4). R波が減高し QRS幅が延長。

 (5). さらに進行すれば QRS幅延長がより著明となり、心室性不整脈も出現、
    ついには心停止に至る。








上室性頻拍症の鑑別

1. 規則正しい頻拍症
 (1). 洞頻脈
    100 〜 160拍/分 で正常の P-QRS の関係。

 (2). 心房性頻拍症
    120 〜 240拍/分 で P は洞性P と異なる。
    また種々の程度の AV ブロックを伴うことが多い。

 (3). 発作性上室性頻拍症
    120 〜 240拍/分 で P は不明瞭か QRS の直後に認める。

 (4). 非発作性房室接合部性頻拍症
    100 〜 200拍/分 で QRS の直後に逆行性 P を認めジギタリス中毒を
    考える。

 (5). 心房粗動
    240 〜 440拍/分 で通常型は陰性鋸歯状の F波を示す。340拍/分 以
    上では AF との移行型を示す。

2. 不規則な頻拍症
 (1). 多源性心房性頻拍症
    P の形や、出現間隔が一定でない。肺性心に合併しやすい。

 (2). 心房細動
    P なし、細動波。








その他の心電図異常

◇心室瘤
  心筋梗塞あり、異常 Q波 (QS型) 、ST上昇の持続

◇心膜炎
  I・II・III・aVF・V5 〜 6で ST 上昇 (心筋梗塞に似る)、規則洞調律

◇低 Ca 血症
  QT 延長、狭小 T波、平坦で延長した ST

◇低 K血症
  巨大 U波

◇ジギタリス中毒
  心房頻拍に各種ブロック

◇LGL 症候群
  WPW に似るが QRS 正常

◇後側壁心筋梗塞
  V1 に R 、V1 〜 4 の ST 低下

◇急性肺性心
  I に S 、III・aVF の q 、aVR・V1 で終末部 R 、IRBBB 軸の時計回転
   (移行帯が V5 辺りにある)
  V1 〜 6 に対称性の逆転 T波

◇前壁新鮮貫壁性心筋梗塞
  I・aVL・V2 〜 4 で対称性の逆転 T波
  IIIII・aVF で鏡像的 ST 低下

◇急性滲出性心嚢炎
  初期は ST 上昇、q (Q) はない。数日後 T波陰転 (T波逆転)








Brugada 症候群
 ※特発性心室細動・突然死・失神発作の一部に共通の特徴

◇心電図所見
 (1). 右脚ブロック
    多くの場合 IRBBB で軽度、二束ブロックもある。

 (2). V12 の著しい ST 上昇
    数日 〜 数週の間隔で ST 上昇波形・上昇度が変動 (V1 〜 3 の QRS が
    rsR' 型で R' と ST 部との協会が明瞭でない 0.1mV 異常の ST 上昇と
    定義した論文もある)

 (3). 正常 QTc 間隔 (QTc = QT/rootRR:正常は 0.44 秒未満)

◇その他の所見
 (1). 男に多く、0.05% の頻度。14 〜 71才に分布

 (2). 心エコー、冠動脈造影、心筋シンチ等に異常を認めない。

 (3). 予後:30 〜 40% に失神発作、その 1/3 位が突然死。








WPW 症候群

 副伝導路を介して早期に伝わる興奮と正常伝導路を介してやや遅く伝わる興
 奮との融合収縮である。

(1). A 型:左房-左室にケント束 (左室後基部に副伝導路)
      1. V1 にδ波の存在。
      2. V1・V2 で QRS が R型又は R波が最大。
      3. 右脚ブロック型 。

(2). B 型:右房 〜 右室にケント束 (右室後基部に副伝導路)
      1. V1 にδ波なし、r の存在、PQ 短縮
      2. V1・V2 少なくとも一つの QRS に深い S あり。
      3. 左脚ブロック型。
      4. V1 で rS型 (上田による Rosenbaum 分類の細分化)

(3). C 型:中隔にケント束
      1. V1 にδ波なし、PQ 短縮、(r の存在については r(-) の場合あ
       り)
      2. V1・V2 少なくとも一つの QRS に深い S あり。
      3. 左脚ブロック型。
      4. V1 で Qr型及び QS型 (上田による Rosenbaum 分類の細分化)

※以上を原則として以下のことに注意。
 1. III・aVF の初期ベクトルが陰性ならば後壁、陽性なら前壁に副伝導路。
 2. I・aVL の初期ベクトルが陰性ならば左室壁局在。








急性滲出性心嚢炎 (Acute pericarditis)

(1). 多くは上気道感染に続発、発熱 37. 8 〜 40度

(2). 神経痛様の持続性胸痛、時に頚部・背部・肩への放散痛、痛みは嚥下によ
   り増強

(3). friction rnb (心膜摩擦音)

(4). ECG
   初期は ST 上昇、q (Q) はない。数日後 T波陰転 (T波逆転)

(5). 20 〜 50才に多い

(6). 頻拍

(7). 脈圧減少

(8). 頚静脈の怒張

※その他の原因
  血管炎、リウマチ熱、血清病、心筋梗塞、外傷、解離性大動脈瘤、尿毒
  症、SLE 、悪性腫瘍、リンパ腫等








抗不整脈剤・抗不整脈薬

※抗不整脈剤の中断:25% 前後は不整脈の消失
 ●クラス I
   心筋梗塞の心室性不整脈に使用しない。

 ◇クラス Ia
   Na チャンネル抑制剤・活動電位持続時間延長・不応期延長・キニジ
   ン・プロカインアミド・ジソピラミド・シベンゾリン・アジマリン・
   ピメノール (VT に、禁忌:AVB;SAB;HF、glaucoma、edema)
  ★心筋梗塞の心室性不整脈に使用しない。

 ◇クラス Ib
   Na チャンネル抑制剤・活動電位持続時間短縮・不応期短縮・リドカイ
   ン・メキシレチン・アプリンジン・フェニトイン

 ◇クラスIc
   Na チャンネル抑制剤・活動電位持続時間不変・不応期不変・ピルジカ
   イニド・フレカイニド;プロパフェノン (Ia に分類されることあり)
  ★心筋梗塞の心室性不整脈に長期使用した場合突然死率が 3倍高い

 ●クラス II :β-blocker
  ★中断後は狭心症悪化・AMI 発症・不整脈発症. 悪化・血圧上昇あり

 ●クラス III :アミオダロン (★有効であるが副作用多い・使いにくい)

 ●クラス IV :カルシウム拮抗薬 (ベラパミル・ジルチアゼム・ベプリジル)
  ★ベラパミルについて中断後は狭心症悪化あり。不整脈については有意差
   なし

※抗不整脈剤の併用療法
 単剤で無効、単剤で有効だが副作用がでる、種類の異なる不整脈を合併する
 という様な時
  作用機序の異なる薬物を組みあわせる:
    Ia + Ib・Ia (Ib) + II が心室性不整脈に対してよく用いられる。

※催不整脈作用の誘因:高齢者;心不全例;肝臓・腎臓障害;大量投与;徐脈
 例
  電解質異常 (低 K血症・低 Mg血症)








シシリアン・ガンビットによる新しい抗不整脈剤 (抗不整脈薬) の分類


薬物 チャンネル 受容体 Na-K
ATPase
臨床効果(1) 臨床効果(2)
Na Ca K If α β M2 A1 LVF SR EC PR QRS JT
f med s
 lido.                        
 mexi.                        
 diso.   ●a   * * * * *   ↑↓
 vera.     * * * * *   * *
 dilt.                     * *
 prop.           * * *     * *
 atro.             * * *   * *
 digo.             * * 注1 * *


マークの説明:遮断能力の比較:△ = low ○ = moderate ● = high
       (a = 活動状態をブロック、i = 非活動状態をブロック)
   (注1) :ジゴキシンは M2-recepter agonist である。








QT 延長を来す薬剤

(1). Ia 群抗不整脈薬 (キニジン・アミサリン・リスモダン・シモール等)

(2). III 群抗不整脈薬 (アンカロン)

(3). IV 群抗不整脈薬:ベプリジルのみ

(4). 三環系抗鬱薬

(5). その他
   プルブコール・H2 ブロッカー (ガスター・タガメット)・マクロライ
   ド・テルフェナジン等








スポーツ心臓
 (スポーツ心臓が見られる様になるのは高校生から、中学生は稀)

※スポーツの分類
 (1). 動的運動 (等張性、マラソン・サイクリング・サッカー・バスケッボー
    ル等)
    心拍出量増加・左心室容量負荷
 (2). 静的運動 (等尺性、柔道・重量上げ・レスリング等)
    血圧の上昇・左心室圧負荷

1. スポーツ心臓のみられる不整脈
 (1). 洞性徐脈・洞性不整脈
 (2). 移動ペースメーカー
 (3). 一度房室ブロック
 (4). Wenchebach 型 II 度房室ブロック
 (5). IRBBB
 (6). 房室接合部調律

2. スポーツ心臓の安静時心電図所見
 (1). RAD 傾向
 (2). 幅広く高い P
 (3). 胸部誘導に高い R
 (4). 下に凸の ST 上昇 (early repolarization syndrome)
 (5). 高く先鋭化した T波・標準肢誘導や左側胸部誘導の陰性 T波

※管理の要点:
  運動負荷後に正常心電図なら <3・E・可> で良い。








心音について

1. 第 I音:房室弁閉鎖音・心筋収縮音
 (1). 亢進
    MS (強く鋭い)・TS・VSD・PQ 短縮時・心活動亢進 (運動)・発熱・
     hyperthyroidism)

 (2). 減弱
    左心不全 (AMI・myocarditis・cardiomyopathy)・ショック・
     AVB・MR・AR・AS・emphysema・pericarditis・obesity

 (3). 分裂
    Aorta・PA の解放と血液駆出音が別々に聞こえる場合
     Aorta 性 : AR・AS・HT
     PA 性 : PS・PI (PR)・PH

2. 第 II音:大動脈弁閉鎖音・肺動脈弁閉鎖音 (吸気時 IIa・IIp の順に分裂)
 (1). IIp 亢進
    肺循環抵抗増大・慢性化すれば右室肥大・MS・Eisenmenger・
     ASD・左心不全・肺梗塞・肺疾患 (Pneumonia・Emphysema・
     Fibrosis)
  ◇注意:右心不全が起これば IIp は減弱

 (2). IIp 減弱
    右心不全の時・PS

 (3). IIa 亢進
    高血圧・大動脈の硬化や大動脈中膜炎

 (4). IIa 減弱
    AS・MS・左心不全・LOS・不整脈 (PC・AF) ・hypotension
     (cahexia,anemia) ・AR

 (5). 分裂
    呼気に際して分裂 : RBBB・PS・MR・VSD・ASD (固定性分裂)
    奇異性分裂 : CLBBB・AS・PDA・hypertension

3. 第 III音:拡張期の短い弱い低調音・若年者・臥位・心尖部

4. 第 IV音:左房収縮時心室壁が伸展されて生ず。小児。成人では聞こえぬ。
       弱い低調音・CAVB (心尖部・胸骨下端)

5. tic-tac 調律:頻拍・I音と II音の区別がつかず・心不全・LOS

6. gallop rhythm (過剰心音)
 (1). 重症心不全
    トットコトットコ (S3 gallop)

 (2). S3 gallop
    両室圧負荷 (HT・AS・PSetc.)・必ずしも心不全ではない。

 (3). OS (opening snap)
    拡張期過剰心音・MS








心雑音について

  (心膜摩擦音:シュッシュッシュッ (locomotive murmur) )

A. 収縮期雑音 (systoric murmur)
 (1). 心尖部
  1). 機能性雑音
  2). 器質性雑音
   a. MR
     高調・あらい・収縮期全体・I音減弱・体位、呼吸に影響されず
   b. AS の高調性雑音の伝播

 (2). 肺動脈弁領域
  1). 機能性雑音
    小児・若年者・胸壁のうすい人・収縮初期から収縮期全体・呼気時に
    強く体位変換で減弱・運動、発熱で増強
  2). 器質性雑音
   a. PS
     高調・あらい・収縮期全体・左上胸部に広範囲・thrill
   b. PDA

 (3). 大動脈弁領域:大部分器質性
   a. arteriosclerosis
     高血圧・梅毒はある時もない時もある・IIa 亢進
   b. AS
     収縮初期から I音をおおう・頚部、心尖部に放散・大きく粗い音で
     収縮期 thrill を触れる。しばしば AR を伴い拡張期雑音が続く。
     II音は消失
   c. Aortic aneurysma

 (4). 他の部位
   a. VSD
     第 3 〜 5 肋間胸骨左縁・高く粗い音で収縮期 thrill を触れる。

B. 拡張期雑音 (diastoric murmur):大部分器質性
 (1). 心尖部
   a. MS
     拡張中期に始まる・遠雷様 (rumbling)・左側臥位でききやすい
   b. AR
     比較的MS (左室の拡張のため、Austin Flint 雑音)

 (2). 肺動脈弁領域
    肺動脈圧上昇による二次的肺動脈拡張に伴い比較的 TR を起こし AR
    と似た 雑音を呈す。最も多いのは MS で Graham Steel 雑音とい
    う。IIp は亢進 (高調潅水様漸減性雑音)

 (3). 大動脈弁領域
   a. AR
     II音に引き続き拡張初期に始まる。II音はしばしば消失。座位でや
     や前屈し第 3 〜 4 肋間胸骨左縁できく
   b. 比較的 AR
     arteriosclerosis・梅毒性大動脈中膜炎・著明な HT・thyroto-
     xicosis・severe anemia

 (4). 三尖弁領域
   a. TS は胸骨下部できこえ MS と似る

C. 連続性雑音:殆ど常に血管性
   a. PDA
     第 1 〜 2 肋間胸骨左縁
   b. 大動脈中隔欠損・肺動静脈瘻
     (ASR・VSD + AR の雑音は往復雑音で連続性雑音ではない)

D. 動脈の聴診
  正常でも頚動脈・鎖骨下動脈では血管音あり
  AR:頚動脈で粗い収縮期雑音・II音は消失
    Duroziez 徴候:大腿動脈上の聴診器に圧をかけると収縮期・拡張期
    とも雑音がきこえる
  AS:頚動脈・鎖骨下動脈で収縮期雑音・左肩甲骨角でもきこえる
  大腿動脈血管音:AR・hyperthyroidism・脚気・発熱
    (Traube's double sound:収縮期・拡張期ともきこえる)








小児・学童の心電図・心音 (心音図) 異常

A. 心音 (心音図)
 1. 無害性心雑音:学童健診において最も多いのがこの雑音である。
  a. 比較的弱くて低い駆出性雑音 (I音より時間差を有するダイアモンド型の
    収縮期雑音)
  b. 限局性
    多くは胸骨左縁第2 〜 3 肋間の肺動脈弁口部で多く聴取
  c. 主に半月弁由来の雑音
  d. その他の心音異常を欠く

 2. 逆流性 (収縮期) 雑音
  a. MR
    最強点は心尖部
  b. VSD、TR
    胸骨左縁第3 〜 4 肋間で聴取

 3. 駆出性 (収縮期) 雑音
   主に胸骨左縁第2 〜 3 肋間で聴取
  a. PS
    II音の固定性分裂
  b. AS
    胸骨心窩でスリルを触れる
  c. ASD
    三尖弁の拡張期ランブルを聴取

 4. 拡張期雑音
  a. AR、PR
    主に胸骨左縁第2 〜 3 肋間で聴取
  b. TS
    胸骨左縁第4肋間で聴取
  c. MS
    心尖部で聴取

 5. 連続性雑音
  a. PDA
    胸骨左縁第2 〜 3 肋間
  b. MPS
    心尖部 〜 左中鎖骨線第4 〜 5 肋間での収縮中期クリック

 6. 血管性雑音
   連続性の高調な雑音

 7. 機能性雑音
   循環動態の変化によって発生する雑音、器質性雑音の場合もあるので注
   意。
   例えば貧血・甲状腺機能亢進・相対的な房室弁の逆流。

B. 心電図
  小児・学童で問題となる心電図異常
 1. 心拍数の異常
   参考値 (小学生低学年:85 〜 95 、中学生:75 、高校生:70/分)
  ●洞頻脈、洞徐脈のみでは病的意義は少ない

 2. P波の異常
   健康児童の P波 (幼稚園児童:< 0.08 、小学生:< 0.09 、
   中高校生:< 0.10秒)
  a. 左房負荷 P
    P-II の増幅 (>= 0.10秒)、時に二相性。P-V1 の後半成分は深く幅広
    い(漏斗胸では P-V1 は深い陰性を示し左房負荷と誤診しやすい)
  b. 右房負荷 P
    II・III・aVF・V1 〜 V2 で先鋭・増高 (>= 0.25mV)、幅は正常。

 3. QRS電気軸の異常
   RAD (>= +120度)、L AD (-30 〜 -90)、異常上軸 (-90 〜 +-180)
  ●軸偏位のみでは病的意義は少ない。

 4. QRS波の異常
  ●ストレインパターンを伴わない高電位 R波は殆どが生理的所見
  ● QRS 波幅の増加を伴わないスラー、ノッチなどは病的意義は少ない
  ●ただし、右側胸部誘導での rsR' や rsR's' は ASD との鑑別を要す

 5. ST 部分の異常 (T波の変化も一緒にみること)
  1). ST 下降
   a. 正常亜型
     II・III・aVF での軽度の J型 ST 下降など、希には左胸部誘導でも
     J型 ST 下降がみられる。
   ●接合部型 (J型) ST 下降は (特に洞性頻脈時は) 正常亜型のことが多い
   b. 0.1mV 以上の水平型、または下向型は病的意義が多い
     心筋虚血、心筋肥大、心筋症、心室の拡張や肥大を有する先天的心疾
     患

  2). ST 上昇
   ●V2 〜 V4 の ST 上昇 (多くは <= 0.15mV) は殆ど非特異的。
    (但し AMI 、心筋虚血、心筋炎、心膜炎などとの鑑別を要す)

 6. T波の異常
  a. 先鋭・増高 T波
    正常亜型、高カリウム血症、左室容量負荷、脳出血など

  b. 平低化 T波
    正常亜型、心筋虚血、心筋炎、心膜炎、低カリウム血症など

  c. 陰性 T波
    ストレインパターンを有する心室肥大、心筋虚血、心筋炎、心膜炎、
    心筋症など
    ●V1 〜 V3 までの陰性T波は小児期では正常所見である

  d. 深い陰性T波
    心尖部肥大型心筋症、心筋梗塞、心筋虚血
    ●V1 〜 V2 の深い陰性T波は生理的

  e. 孤立性陰転 T波
    ASD 、肥大型心筋症、高度側湾、漏斗胸などで V3 〜 V4 にかけて
    QRS-ST の変化を伴わない限局性の陰転T波。
    ●小児では右側胸部誘導の陰性 T波は V1 > V2 > V3 の順で顕著であ
     り、加齢につれて逆の順序で二相性、平低化を経て陽転してゆく

 7. Q波の異常
   小児では川崎病冠動脈病変を除いて非梗塞性 Q波が問題。V1 〜 V2 の
   Q波や V5 〜 V6 、II・III・aVF の深い Q波 (>= 0.5mV)が問題とな
   る。

  1). II・III・aVF での異常 Q波
   a. 正常亜型
   b. 修正大血管転換 (III のみの深い Q波)
   c. 肥大型心筋症 (ST・T異常の合併や他の誘導で異常 Q波)
   d. WPW 症候群
   e. 心筋梗塞 (下壁梗塞、Q波の幅 >= 0.04秒、Q/R 比 >= 25%)

  2). 左側胸部誘導での異常 Q波
   a. 正常亜型
   b. 左室負荷 (特に容量負荷、>= 0.5mV 、高電位R波を伴い ST 低下な
     し)
   c. 肥大型心筋症 (同部位の ST・T異常の合併、時に高振幅 R波を合併)
   d. 心筋梗塞 (左室側壁梗塞、同部位の ST・T変化や低振幅 R波を合併)

  3). 右側胸部誘導での異常 Q波 (通常の健診では a 〜 d が多い)
   a. 正常亜型
   b. 誘導部位の違い (第2 〜 3 肋間で記録)
   c. RBBB の亜型
   d. 早期興奮症候群 (B型 WPW 、結節心室間伝導路または束枝心室間伝
     導路)
   e. 修正大血管転換 (III の深い Q波と V5 〜 6 の Q波欠損)
   f. 右室容量負荷 (シャント量の多い ASD など)
   g. 心筋梗塞 (前壁梗塞、同部位の ST・T変化や低電位 R波を合併)
   h. 左室負荷 (高度の圧負荷)

 8. QT 間隔の異常
   (幼稚園児童:0.24 〜 0.35秒、小学生:0.28 〜 0.37秒、
    前思春期:0.30 〜 0.39秒)
  ●QT 延長 (QT >= 0.44秒、QTc >= 0.44秒) は健康小児でも数% にみられ
   その対処法は未だに確率されておらず、関係医師にとって困惑するとこ
   ろ。

 9. 不整脈
   安静時心電図で不整脈をみた場合の対処
  a. 運動負荷 (危険性に注意して) を行い増悪とその性状をみる。
  b. ホルターも病状把握と生活指導に有用
  c. 失神、めまい、動悸、立ちくらみ、胸部苦悶感では不整脈死の危険性が
    あり慎重に対処する。








成人心電図の normal variant

1. V1 の rsr' (r > r') パターン (QRS 幅は正常):IRBBBとの鑑別
  IRBBB では r < r' で r' の幅が広くなることが必須であり、rsr' (r > r')
  の時は病的意義を付けない。

2. 若年パターン V1 〜 V2 で陰性 T
  小児期では正常で、特に中年女性でしばしばみる。
  ★鑑別:右室負荷 (V1 〜 V2 の R波増高、RAD 、P波の変化をみる)
      左室前壁の虚血 (症状があれば鑑別出来るが、無症候では難しい)

3. 早期再分極
  R波が終了する直前に上昇した ST に移行。ST 上昇は下方に向かって凸
  で、V4 〜 V6 、II・III・aVF によく見られる。(前回との比較が肝要)
   (V1 〜 V2 での 2mm 程度の上昇は健常者でもよくみられる)

4. V1 〜 V3 でのR波増高不良
  ★鑑別:前壁梗塞、左室肥大、肺気腫との鑑別が必要

5. I・II・III 誘導で、それぞれ R波と S波の大きさが同程度のもの。
  ★鑑別:先天性心疾患、肺気腫の右室負荷

6. V1 の高いR波
  健常者で V1 で高いR波をみることがある
  ★鑑別:右室肥大 (V1 〜 V2 で陰性 T波、RAD 、右房負荷)
      純後壁梗塞 (下壁あるいは後壁梗塞に合併)

7. 若年者の III・aVF の陰性T波。しばしば ST 低下を伴う
  ★鑑別:II にも変化がある場合は基礎病変の可能性を疑う

8. V3 、V4 のみの陰性 T波
  isolated T wave in version、自覚症状がなければ概ね健常と思われ
  る。
  ★鑑別:冠動脈疾患や肥大型心筋症を鑑別する必要あり。








発作性頻拍症(PAT、PSVT)の治療(Expert-MLより、橋本先生)

 1.いきこらえ(息を止めて力む)

 2.頸動脈マッサージ(片方だけにして下さい。)
両方やると心停止して失神することあり注意

 3.目玉押さえ
網膜剥離をおこしてしまうことあり(良く効く)
敬遠されがち、これも片目にすること

 4.ATP注のone shot
いずれも一時的に心停止を見ますが、SSSがないなら戻るので大丈夫

 5.ワソラン注(5mg)ゆっくりiv (5-10分)
100ml+ワソラン5mgでこれくらいの時間で
--------------------------------

 6.midlな方法
ジギラノーゲンC DIV(時間がかかるのが難点)
--------------------------------

 7.過激な方法で
同期型カウンターショック(即時に取れる)

 8.カテーテルアビュレーション(カテーテルによる手術)
--------------------------------

 9.予防
  ・ワソランまたはリスモダン 3T 3x
   ラニラピット1T 1x
  いずれもtriggerとなる上室性不整脈を減すことやre-entryのタイミング
  をずらしてやるということでしょうか。

 ※注意:タンボコールやアンカロンは大学で使って欲しい。







心疾患における肺浸潤の原因

  1. 心源性
    1. 不釣り合いに高い左心房圧を呈する疾患
      ・僧帽弁疾患
      ・心房細動
    2. 左室拡張期終末圧上昇
      ・拡張不全(高血圧、大動脈弁狭窄)
      ・収縮不全(貧血、心筋症)
  2. 非心源性
    1. 感染症
      ・Mycoplasma
      ・Legionella
      ・Chlamydia psittaci
      ・Coxiella
      ・Viruses
      ・Fungi
      ・Pneumocystis
    2. Idiopathic disease
      ・Usual interstitial pneumonitis
      ・Nonspecific interstitial pneumonitis
      ・bronchiolitis obliterance organizing pneumonia(BOOP)
    3. Exposures
      ・吸入によるもの(abestosis,Silicosis,Chronic
       aspiration,inhalation of hardmetal,
       hypersensitivity pneumonitis)
      ・薬物(amiodarone,bleomycin,Penicillamine,
       nitrogurantoin,carmustine)
      ・放射線被爆
      ・喫煙(respiratory bronchiolitis with interstitial
       lung disease, desquamative interstitial pneumonia,
       Langerhans'-cell histiocytosis)
    4. Cancer
      ・lymphangitic adenocarcinomatous metastases
      ・lymphoma(with lymphocytic interstitial pneumonitis
       pattern)
    5. Systemic disease
      ・Sarcoidosis
      ・Amyloidosis
      ・Autoimmune disease(systemic lupus erythematosus,
       rheumatoid arthritis,POIymyositis,scleroderma,
       Sjogren's syndrome)







正常状態あるいは種々の病態におけるST上昇について(NEJM 2003;349:2133)
1. 正常(いわゆるmale pattern):若い健康男性の約90%にみられるもの
  ・1〜3mmのST上昇、V2で最も明瞭、凹んだ形(concave)
2. 早期再分極(early repolarization)
  ・V4で最も明瞭、J点(QRS-Tの移行点)の高さでnotchを伴う
  ・真っ直ぐ直立した(upright)T波
  ・aVRでは相反してST低下。aVLでは低下せず
3. normal variantとしてのST上昇
  ・V3〜V5でT波の逆転を伴ってみられる
  ・QTは短縮し、QRS振幅は大きい
4. 左室肥大
  ・凹んだ形(concave)
  ・左室肥大に特徴的な形
5. 左脚ブロック
  ・凹んだ形(concave)
  ・QRS軸に一致しないST偏位あり
6. 急性心膜炎
  ・誘導全体に広がる(diffuse)ST上昇
  ・aVRでは相反してST低下。aVLでは低下せず
  ・ST上昇が5mmを越えることは希
  ・PR区画の低下
7. 高カリウム血症
  ・高カリウム血症を示す他の兆候:QRS時間の延長。高く尖ったテント状T波
  ・P波の平低あるいは消失
  ・STは通常下り坂状になる
8. Burugada 症候群
  ・V1・V2でrSR'型
  ・V1・V2でSTが上昇し、典型的には下り坂状になる
9. 肺動脈梗塞
  ・下壁梗塞および前壁中隔梗塞でみられる異常波形に似たST変化
10. カウンターショック
  ・突然の10mmを越えるST上昇。直流通電後1〜2分続いて治まる。
11. Prinzmetal's angina(異型狭心症、冠動脈攣縮)
  ・心筋梗塞に似るが一過性
12. 急性心筋梗塞
  ・プラトー型ないし上ぼり坂状のST上昇
  ・aVLとIIIで、相反するようにST低下







QT延長(QT延長)の原因となる病態(NIS 2005;No.4233(H17/6/11):54)
  1. 先天性QT延長症候群(LQTS)
   1) Romano-Wald症候群(LQTl〜LQT7)
   2) Jervell and Lange-Nielsen症候群(JLN 1.2)
  2. 後天性QT延長症候群
   1) 薬剤
     イ. 抗不整脈薬:Ia群、Ic群、III群薬、ベプリジル
     ロ. 抗うつ薬・向精神薬
        アミトリプチリン、イミプラミン、クロールプロマジン、
        フェノチアジン、ドロペリドール、ハロペリドール、リスペリドン、
        チオリダジン、フロキセチン、フルボキサミン、セルトラリン
     ハ. 抗生物質・抗真菌薬
        マクロライド系、ニューキノロン系、ケトコナゾール、
        フルコナゾール、イトラコナゾール、メトロニダゾール、ST合剤
     ニ. 抗ウイルス薬・抗がん剤
        リトナビル、インジナビル、サキナビル、アマンタジン、
        フォスカルネット、タモキシフェン
     ホ. 免疫抑制剤:タクロリムス
     ヘ. 高脂血症薬:プロブコール
     ト. 抗アレルギー薬:テルフェナジン、アステミゾール
     チ. 消化管運動改善薬:シサプリド
     リ. H2遮断薬:シメチジン、ラニチジン、フアモチジン
   2) 電解質異常:低K血症、低Mg血症、低Ca血症
   3) 徐脈:房室ブロック、洞不全症候群
   4) 自律神経障害
   5) 中枢神経疾恵:くも膜下出血、脳出血、外傷など
   6) 心疾患:心筋虚血,心筋炎など
   7) 内分泌異常:甲状腺機能低下症など







ホルター心電図の記録が望ましい不整脈
  1.心室性期外収縮
   (l)運動負荷心電図で心室性期外収縮の著しい増加、多源性や額発する心室性
     期外収縮が出現するもの
   (2)多源性もしくは連発する期外収縮、R on Tを認めるもの、期外収縮後T波
     異常を認めるもの
  2.心室性頻拍
  3.II度房室ブロック
   運動負荷心電図で正常房室伝導がみられないもの
  4.高度および完全房室ブロック
  5.洞不全症候群
  6.洞機能不全が疑われる洞性不整脈(洞房ブロック、洞停止)や洞性徐脈
  7.持続性上室性頻拍
  8.心房細動、心房粗動
  9.QT延長症候群
 10.不整脈と関連のありそうな症状を有し、原因追求が必要な場合
   (l)頻脈を伴う動悸で発作型(上室性、心室性)頼拍が疑われる場合
   (2)失神発作の症状で不整脈が疑われる場合
 11.心疾患術後で不整脈を認めながら、医師の定期検診を受けていないもの

 ※注(l)1.〜5.については、「小児不整脈の管理基準の改訂」(大国真彦:小児
      不整脈の管理基準の改訂.日本小児循環器会誌 1988;4:307)を参考
      とする.
   (2)心室性頻拍、QT延長症候群、高度および完全房室ブロック、洞不全症
      候群などの不整脈は、専門医による管理が望ましい.







基礎疾患を認めない不整脈の管理基準(昭和63年7月改定)
●不整脈の種類      ●条件         ●管理区分   ●観察期間
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
洞性不整脈                        管理不要(4)
----------------------------------------------------------------------------
接合部調律                        管理不要(4)
接合部補充収縮
----------------------------------------------------------------------------
上室性期外収縮    心房性、結節性        管理不要(4)
          ---------------------------------------------------------
              多源性              E禁または可  6か月〜1年ごと
----------------------------------------------------------------------------
上室性頻拍     1.比較的短時間で消失
            2.自覚症状がない、あるいは
             きわめて軽い症状
            3.心不全がない             E可       1〜6か月ごと
            4.運動によって誘発されない
            (以上の4つの条件を満たすもの)
          ---------------------------------------------------------
         ・運動によって誘発される          D        1〜3か月ごと
           ・但し、頻拍時に心拍数が少      E禁       3〜6か月ごと
            なく、短時間に消失する
          ---------------------------------------------------------
         ・心不全を認めるが、治療が      DまたはE禁    必要に応じて
          奏功する
          ---------------------------------------------------------
         ・薬物は奏功しないが、心不全や    DまたはE禁   1〜3か月ごと
          自覚症状がない
          ----------------------------------------------------------
         ・薬物が奏功せず、心不全がある      A〜C    必要に応じて
----------------------------------------------------------------------------
心房粗動、細動  ・基礎疾患のない場合       上室性頻拍に準じる
----------------------------------------------------------------------------
心室性期外収縮  ・連発なし、単源性、負荷心電図  E可または長期
(運動負荷心電図  で消失、減少、不変         観察例は管理
 を記録し必要に                        不要(4)    1〜3か年ごと
 応じてHolterも     ------------------------------------------
記録)       ・ただし小学校低学年で、1〜3  E可または管理
            分の安静時心電図において  不要(4)        1〜3か年ごと
            その発生が少ない(8/分以下)
          ---------------------------------------------------------
         ・負荷心電図で増加、多原性、    DまたはE禁     1〜6か月ごと
          連発
          ---------------------------------------------------------
         ・安静心電図で多源低速発、     DまたはE禁     必要に応じて
          RonT、期外収縮後T波異常
----------------------------------------------------------------------------
心室性副収縮                        心室性期外収縮に準じる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●不整脈の種類      ●条件         ●管理区分  ●観察期間
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
         ・失神発作、心不全、自覚症状が  DまたはE禁  1〜6か月ごと
          なく、運動負荷で消失、または
          減少する非持続型心室性頒拍
          ----------------------------------------------------------
心室性頻拍    ・失神発作、心不全の既往はない   B〜D      必要に応じて
(運動負荷心電図  が、運動員荷によって誘発され
 Holter心電図、  る・または減少しない
 心エコー図を記  ----------------------------------------------------------
 録し、慎重に決 ・失神発作、心不全の既往はある   CまたはD   必要に応じて
 定)       が、薬物が奏功し、運動によっ
          て誘発されない      
          ----------------------------------------------------------
         ・失神発作または心不全を伴い、     AまたはB   必要に応じて
          薬物が十分奏功しない
----------------------------------------------------------------------------
心室固有調律   ・心室性頻拍との監別が必要     E可    6か月〜1年ごと
----------------------------------------------------------------------------
         ・失神発作の既往あり            B〜D    必要に応じて
              ------------------------------------------
QT延長症候群     ・薬物服用でコントロール     DまたはE禁  l〜3か月ごと
            されている
          ---------------------------------------------------------
         ・孤立性QT延長症候群(無症状)     E禁または可 6か月〜1年ごと
----------------------------------------------------------------------------
WPW症候群    ・上室性頻拍の既往なし        E可     l〜3年ごと
          ---------------------------------------------------------
        ・上室性頻拍の既往あり           上室性頻拍に準ずる
----------------------------------------------------------------------------
完全右脚ブロック・左軸偏位や、PR時間延長合併    E可または   l〜3年ごと
         例は経過観察            管理不要(4)
----------------------------------------------------------------------------
完全左脚ブロック                   慎重に経過観察
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●不整脈の種類      ●条件         ●管理区分  ●観察期間
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
I度房室ブロック ・PR時間≦0.24秒            管理不要(4)
(PR時間>0.24秒 ・運動負荷によリPR時間正常化   管理不要(4)
 は運動負荷が ・運動負荷でPR時間正常化せず   E可    l〜3年ごと
 望ましい)  ・運動員荷によリII度以上の       該当項目に準
          房室ブロックが出現           ずる
----------------------------------------------------------------------------
II度房室ブロック・運動負荷でWenckebach型が   E可または    l〜3年ごと
(運動負荷で正   正常房室伝導になる      管理不要(4)
 常房室伝導が ・運動員荷で丁度房室ブロック  E禁または可   l〜3年ごと
 みられない場   になる
 合は、Holter ・運動負荷でII度房室ブロック    DまたはE禁  6か月〜l年ごと
 心電図記録を   のまま
 する)    ・運動負荷で高度または完全     該当項目に準ずる
          房室ブロックに進む
        ・Mobitzll型                 慎重に経過観察
----------------------------------------------------------------------------
高度および完全 ・運動負荷時心室拍数が1.5〜2  DまたはE禁   3〜6か月ごと
 房室ブロック   倍以上で症状がない
(運動員荷心  ・運動員荷時心室拍数が1.5〜2    D     3〜6か月ごと
 電図、 Holter   倍以上に増加しない
 電気生理学的 ・運動負荷時に瀕発する心室性   BまたはC    必要に応じて
 検査の結果を   期外収縮や心室性頻拍が見
 考慮)      られる
        ・Adams-Stokes発作や心不全を      A〜C    必要に応じて
          伴う
----------------------------------------------------------------------------
洞不全症候群  ・徐脈傾向が軽度で、運動負荷で  DまたはE禁   3〜6か月ごと
(運動員荷心    心室拍数の増加が良好
 電図、Holter ・運動負荷で心室拍数の増加が    CまたはD    必要に応じて
 電気生理学的   悪い
 検査の結果を ・Adams−Stokes発作や心不全を  A〜C      必要に応じて
 考慮)      伴う
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
注1)運動負荷は十分の監視のもとに心拍数150/分以上になることを目標とする.
   ただし高度または完全房室ブロック、洞不全症候群ではこの心拍数を目標と
   しない.方法としてはMaster負荷、工ルゴメーター法、トレッドミル法、跳躍、
   下肢屈伸、その他がある.
注2)心室性頼拍、QT延長症候群、高度および完全房室ブロック、洞不全症候群など
   の不整脈は専門医による管理が望ましい.
注3)管理を要しない不整脈は洞性不整脈、接合部調律(結節調律、冠静脈洞調律、
   左房調律、下部心房調律およびいわゆる移動性ぺ−スメーカーなど)および
   接合部補充収縮、多くの上室性期外収縮や上に述べた不整脈のうち管理不要(4)
   としたものである.







心筋梗塞の部位診断(安斉ら、日医雑誌2001;Vol.125:667)
部位 責任冠動 心電図異常Q波。ST上昇の出現部位
I II III R L F V4R V1 2 3 4 5 6
前壁中隔 LAD近位部
心尖部 LAD、RCA or LCX
高位側壁 LADの第一対角枝
前側壁 LAD近位部+対角枝
広範前壁 LAD近位部
前側下壁 心尖部の曲入LAD
側壁 心尖部LAD対角
高位後壁 LCX
後側壁 LCX+(大)鈍縁枝
後下壁 LCX or 大RCA
下壁心尖部 RCA or LCX
下壁 RCA or LCX
下壁・右室 RCAの前枝分岐前
  ●:R波の増高あるいはST低下。LAD:左前下行枝、RCA:右冠動脈、LCX:左回旋枝







torsade de pointes(トルサ・ド・ポアン、石川恭三「心電図学」P999-より要約)
 1.特徴
  ・通常の心室細動やVTとは明らかに異なる。
  ・基本調律のQT延長と、特殊な治療法もtorsade de pointesの属性とされる。
  ・160〜280の発作性心室頻拍で、幅広いQRSが5〜20連拍する間にQRSの形態および
   振幅(電位)が周期的に変動し、あたかも基線を軸にねじれ回転しているよう
   な様相。頻拍周期は通常不規則。
  ・連結期の長いVPCが誘発因子。頻拍持続は数秒と短いが長いこともあり、繰り
   返す。心室細動への移行の危険性もある。
  ・AVBやSSSなどの徐脈性基本調律の存在は常に見られるとは限らない。
  ・基本調律の最も特徴的なものは、QTまたはQU間隔の延長。
 2.臨床的意義
  ・torsade de pointesは通常短く、無症状。
  ・心室細動ほどには循環虚脱をおこさないが、通常のVTと比べて血行動態悪化が
   強く、発作が遷延すれば、失神発作を起こす。また心室細動への移行の危険性
   も少なくない。
  ・(心室内reentryがその成因に強く関与している可能性あり)
 3.原因
  ・遺伝性QT延長症候群
     Romano-Ward症候群、Jervell-Lange-Nielsen症候群
  ・高度の徐脈性不整脈
     AVB、SSS
  ・薬物
    1) 抗不整脈薬:キニジン、ジソピラミド、プロカインアミド、アプリンジン
           アミオダロン
    2) 冠拡張薬:プレニラミン、シドフラジン
    3) 向精神薬:フェノチアジン、三環系抗うつ薬
    4) その他 :シサプリド、エリスロシン、トリルダン、プロブコールなど
  ・電解質異常
    低カリウム血症、低マグネシウム血症
  ・心疾患
    心筋炎、虚血性心疾患、異型狭心症、MPSなど
  ・中枢神経系疾患
    クモ膜下出血、気脳撮影合併症など
 4.治療
  ・緊急治療は同期してカウンターショック。
   (次善:心房ペーシングまたはイソプロテレノールの点滴)
  ・QT延長を伴うtorsade de pointesではクラスIの抗不整脈剤は禁忌。ただし
   QT延長がない場合ではクラスI抗不整脈剤は50%有効。リドカイン、フェニトイン
   インデラールの有効例もある。
  ・基礎病態是正、電解質異常是正、原因薬物中止。
  ・徐脈性不整脈ではpacemaker植え込み。
  ・遺伝性QT延長症候群では強力なβ-ブロッカーが有効。







拡張型心筋症の心電図所見
  1.ST-T変化         :163/196(83.2%)
  2.心室性期外収縮      :105/200(52.5%)
  3.QRS幅の延長(0.08秒以上): 93/186(50.0%)
  4.異常P波         : 84/188(44.7%)
  5.左室側高電位       : 78/185(42.2%)
  6.異常Q波         : 72/200(36.0%)
  7.左軸偏位(-300以上)   : 48/201(23.9%)
  8.心房細動         : 44/198(22.2%)
  9.中隔Q波の消失      : 32/185(17.3%)
 10.第I度房室ブロック    : 33/195(16.9%)
 11.心房性期外収縮      : 28/196(14.3%)
 12.低電位          : 27/194(13.9%)
 13.右脚ブロック       : 28/201(13.9%)
 14.心室性煩拍        : 21/197(10.7%)
 15.左脚ブロック       : 18/197 (9.1%)
 16.右軸偏位(-1100以上)  : 17/198 (8.6%)
 17.第III度房室ブロック   : 14/200 (7.0%)
 18.心房粗動         : 12/196 (6.1%)
 19.第II度房室ブロック    : 6/194 (3.1%)
 20.WPW症候群        : 1/199 (0.5%)







コカインによる不整脈および伝導障害(NEJM 2001;345:357)
  1. Sinus tachycardia
  2. Sinus bradycardia
  3. Supraventricular tavhycardia
  4. Bundle-branch block
  5. Complete heart block
  6. Accelerated idioventricular rhythm
  7. Ventricular tachycardia
  8. Ventricular fibrillation
  9. Asystole
 10. Torsade de pointes
 11. Brugada pattern(right bundle-branch block with ST-segment elevation in leads V1,V2,andV3)







両脚ブロック(二束および三束を含めて)の診断規準
 (1)左前ヘミブロックを伴う右脚ブロック
 (2)左後ヘミブロックを伴う右脚ブロック
 (3)右脚ブロックと左脚ブロックが交互するもの
 (4)あるときは右脚ブロック、別のときには左脚ブロックが出現するもの
 (5)I度またはII度房室ブロックを伴う左脚または右脚ブロック
 (6)MobitzII型房室ブロック
 (7)HV間隔の延長を伴う左脚または右脚ブロック
 (8)心室(心室固有)補充調律を伴う完全房室ブロック
 (9)上記の組み合わせ







心電図の読み方(和田敬「新しい心電図とその解説」南山堂、1973第3版、P360)
1.P波
  1) 正常ではI・II・aVF・V1〜6で陽性、aVRで陰性
T 2) 誘導で陰性ならば
    a)左・右両手の導子の着け違い
    b)右胸心
    c)房性歩調とり、または早期興奮など
T 3) aVRで陽性か、aVFで陰性ならば逆行性調律
T 4) 幅0.10秒以内かつ高さ2.5mm以内で丸みをおびる
T 5) 高いか尖れば、右房性
    a)先天性心疾患
    b)急性・慢性右室圧上昇(肺梗塞・肺気腫など)
T 6) 幅が拡がるか二峰性ならば、左房性
    a)僧帽弁障害
    b)高血圧症
    c)心不全
T 7) 高く尖り、幅が拡がり二峰性ならば
    a)先天性心疾患(心房中隔欠損症など)
    b)高血圧+慢性肺疾患など
T 8) P波がなければ
    a)心房細・粗動
    b)房室性早期興奮、房室性調律
    c)心室性早期興奮、心室性調律
T 9) V1のP波が陰性ならば
    a)高度の心下垂が疑われる
    b)V1の導子の位置が高すぎる
T10) V1のP波が2相性(プラス・マイナス型)でマイナスの部分が大きければ
    a)高血圧症、心不全
    b)僧帽弁障害
T11) P波の数がQRS群の数より多ければ
     房室ブロック(虚血性心臓病・心筋炎・ジギタリス中毒症、僧帽弁障害)
T12) P波の数がQRS群より少なければ
     房室干渉解離(ジギタリス中毒症・虚血性心臓病)

2.PR間隔
T 1) PR間隔(正常0.22秒以内)が延長していれば房室ブロック
    a)リウマチ熱(心筋炎)
    b)虚血性心臓病
    c)ジギタリス中毒
    d)先天性心疾患(心房中隔欠損、肺動脈弁狭窄)
  2)PR間隔(正常0.12秒以上)が短縮していれば
    a)房室性歩調とり、または早期興奮
    b)WPW(先天性・後天性)

3.QRS群
T 1) V1はrS、V6はqR
T 2) QRS群の幅は0.10秒以内
T 3) 0.10秒以上ならば
    a)左室負担
    b)脚枝ブロック
    c)右室負担
    d)室性早期興奮
    e)WPW
  4) V6〜V7にq波がなければ
    a)左脚枝ブロック
    b)右回りのため
      i)右室負担
  5) Vl〜V2がq波またはQ波で始まれば
    a)前壁中隔部梗塞
    b)左脚枝ブロック
    c)右房拡張(右室肥大)
    d)肺気腫
  6) V1〜V2がrSr'(rSR')かV6〜V7でqRs(qRS)ならば
    a)正常(上室櫛肥厚)
    b)右脚枝ブロック
       i)虚血性心臓病
      ii)高血圧症
      iii)右室負担(僧帽弁狭窄・心房中隔欠損・肺気腫など)
  7) V1〜V2のSの上行脚がスラーならば
     左脚枝ブロック(虚血性心臓病・高血圧症・心筋症)
  8) V1のrS、V6〜V7のqR間隔が0.06秒以上ならば左室肥厚
  9) V1V2のS、V5〜V6のRが26mm以上ならば左室負担・痩せた人
 10) V1のRが0.03秒以上ならば右室負担
 11) V1のr/S比が1に近づけば
    a)心臓の左回り(左室負担)
    b)後壁の梗塞
    c)右室負担
 12) V5〜V6のq/R比が1:5以上(R波がq波の4倍以下)になれば
    a)側壁の梗塞
    b)心室中隔肥厚
 13) V5〜V6のq波が0.02秒以上あれば
      心筋梗塞
 14) QRS群が低ければ
    a)肺気腫、胸水、心包内液体貯溜、心筋梗塞、悪液質
    b)甲状腺機能低下症
    c)肥満症
    d)較正曲線が小さすぎる
 15) QRS群が高ければ
    a)痩せた人
    b)子供
    c)左・右心室負担
    d)急性心筋障害
    e)較正曲線が大きすぎる
 16) 移行部
    a)V3〜V4が普通
    b)V1〜V2にあれば左回り(左室負担)
    c)V4〜V5にあれば右回り(右室負担)
    d)移行部がなければ(左右心室負担)
 17) QRS群が下記誘導で似ていれば
    a)aVL=V1 & aVF=V6:立位
    b)aVL=V3〜4V & aVF=V6:半立位
    c)aVL=aVF=V6:中間位
    d)aVL=V6 & aVF=V1:横位
    e)aVL=V6 & aVF=V3〜4:半横位
   35才以下で横位はまれ(妊娠・腹水を除く)
   幼→若年は立位・中間位、中年以降は中間・横位、老年で立位ならば
   肺気腫など

4.QT間隔
  1) QT間隔が延長していれば
     a)左・右心室負担
     b)低カリウム症
     c)徐拍
     d)心筋炎
     e)低カルシウム血症(STの延長)
     f)心不全
  2) QT間隔の短縮があれば
     a)ジギタリス効果
     b)頻拍
     c)高カルシウム血症(STの短縮)

5.STの上昇・下降
  1) ST部の上昇があれば
     a)正常でも2mm(胸部誘導)0.5mm〜1.0mm(四肢誘導)の上昇はある
      が、多くは盆状
     b)丸みを帯びて上昇していれば
       i)心膜炎、心筋梗塞、肺梗塞
       ii)心室瘤(梗塞による)
      iii)心内膜下筋層傷害(aVRで)(狭心症・心、内膜下筋層梗塞)
  2) ST部の下降があれば
     a)aVRにあるときは心外膜傷害(心膜炎・梗塞)
     b)胸部誘導にあれば
       i)左室負担
       ii)右室負担
      iii)心内膜下筋層傷害
       iv)ジギタリス・キニジンの影響

6.T波
  1) T波が高く尖っていれば
     a)反対側の梗塞
     b)高カリウム血症
     c)左室拡張期負担
     d)心筋梗塞直後
  2) T波が低ければ
     a)心筋虚血(左右室負担・虚血性心臓病)
     b)低カリウム血症
     c)心筋炎
  3) T波が陰性ならば
     a)正常ではaVRでかならず陰性
     b)心筋虚血
     c)ジギタリス・キニジンによる影響
     d)低カリウム血症、心筋梗塞直後







深い陰性T波の鑑別診断(NIS、No.4062(H14/3/2)、P108)
 1.一次性陰性T波
   a.正常亜型(若年性T波パターン、早期再分極亜型、過換気)
   b.心筋虚血または心筋梗塞
   c.左室または右室 "ストレイン"
   d.神経心臓症候群(脳出血、頚部リンパ節切除後、両側頚動脈血栓・内膜切除
    後、QT延長-失神症候群、迷走神経切断術後、アダムス・ストークス症候群)
   e.ペーシング後陰性T波パターン
   f.頻拍後陰性T波パターン
   g.その他:僧帽弁逸脱症 拡張型心筋症、肥大型心筋症(特に心尖部に限局す
        る型)、不整脈源性右室異形成心外膜炎など
 2.二次性陰性T波
   a.左脚ブロック
   b.右脚ブロック
   c.WPW症候群
   d.心室ペーシング







心機能指標正常値(日内雑誌 2002;91:975)
  1. 心内圧正常値:収縮期/拡張期(平均)
   ・右房圧:1〜5mmHg
   ・石室圧:15〜30/1〜7mmHg
   ・肺動脈圧:15〜30/4〜12(9〜19)mmHg
   ・肺静脈楔入圧:4〜12mmHg
   ・左室拡張末期圧:5〜12mmHg
  2. 収縮機能指標正常値
   ・1回拍出量(SV):40〜97ml(Teichholz)、40〜115ml(Pombo)
   ・心係数(Cl):2.6〜4.2l/min/m2
   ・左室駆出率(LVEF):60〜75%(modified Simpson's role)
              53〜85%(Teichholz)
              62〜88%(Pombo)
   ・左室内径短縮率(%FS):25〜43%
   ・平均左室円周方向心筋線維短縮速度
         (meanVcf):0.97〜1.2l circ/sec
   ・Peak positive dp/dt:>1200mmHg/sec
  3. 拡張機能指標正常値
   1)パルス・ドップラ左室流入血流指標の解釈
          左室弛緩障害波形    正常波形    拘束型波形
     IRT     >100msec      60〜100msec    <60msec
     E/A     <1.0         1.0〜2.0     >2.0
     DT     >250msec      150〜250msec    <150msec

     IRT:等容性弛緩時間
     E/A:拡張早期ピーク血流速(E)/心房収縮期ピーク血流速(A)比
     DT :拡張早期波の減速時間

      注 :50歳前後における診断の目安である。それより若年者では、E/A比
        の基準を高値に設定し、lRT・DTの基準を若干低めに設定しなけれ
        ばならない。高齢者では.逆にE/A比の基準を低値に、またDTの基
        準を高値に設定するのが望ましい。
   2)最大充満速度(peak fillng rate=PFR):3.13±0.85/sec
   3)左室圧下降脚の−次微分の最大値(peak negative dp/dt):
                            1.864±390mmHg/sec
     左室圧下降脚の時定数(time constant=Tau.t):33± 8msec(対数法)
      (正常参考値はmean±SD)          47土10msec(微分法)







房室ブロックの後天的原因(NEJM 2002;346:1734)
  1. 冠動脈疾患
  2. 冠動脈攣縮
  3. 薬物
    ・ジゴキシン
    ・β-ブロッカー
    ・カルシウムチャンネルブロッカー
    ・アミオダロン
    ・プロカインアミド
    ・クラス Ic 抗不整脈薬
  4. 心筋浸潤性疾患
    ・アミロイドーシス
    ・ヘモクロマトーシス
    ・サルコイドーシス
    ・腫瘍(原発性あるいは転移性)
  5. 不整脈原性右室低形成
  6. 膠原病性血管障害
    ・SLE
    ・RA
    ・強皮症
    ・強直性脊椎炎
  7. 感染症
    ・リウマチ熱
    ・トキソプラスマ症
    ・トリパノソーマ症(シャーガス病気)
    ・細菌性心内膜炎
    ・ウイルス性心筋炎
    ・梅毒
    ・ライム病







心停止の原因となる心室細動の原因(NEJM 2005;353:1496)
 1. Noncardiac
   1) Respiratory
    ・Bronchospasm
    ・Aspiration
    ・Sleep apnea
    ・Primary pulmonary hypertension
    ・Pulmonary embolism
   2) Metabolic or toxic
    ・Electrolyte disturbances
    ・Medications or drug ingestion
    ・Environmental poisoning
    ・Sepsis
   3) Neurologic
    ・Seizure
    ・Cerebrovascular accident: intracranial hemorrhage or
      ischemic stroke
 2. Cardiac
   1) Structural heart disease
    ・Myocardial ischemia or infarction due to coronary artery disease
    ・Cardiomyopathy
      Dilated
     Hypertrophic
     Arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy or dysplasia
    ・Aortic stenosis
    ・Aortic dissection
    ・Pericardial tamponade
    ・Congenital heart disease
    ・Myocarditis
   2) No structural heart disease
    ・Catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia and right
      ventricular outfow tract tachycardia
    ・Mechanical (commotio cordis) or electrical accidents
    ・Preexcitation
    ・Heart block
    ・Drug-induced QT prolongation with torsades de pointes
    ・Channelopathies
     Long-QT syndrome
     Short-QT syndrome
     Brugada syndrome