高血圧症の鑑別診断 (特に二次性高血圧症について)
 ※日常見られる高血圧症の 90% は本態性高血圧症 (レニン活性は色々)

血漿レニン活性の測定
I. 高レニン活性
 ★経静脈性腎盂造影迅速撮影法 (RSIP) で腎の形態異常や造影剤の排泄状況
  をみる (簡便を期する場合は、造影CT)
 (1). 何らかの異常あり
  a. 腎血管性高血圧症 (RVH)
  b. 悪性高血圧症の一部
   ※悪性高血圧症
     治療前の拡張期血圧が常に130 以上、眼底 KW-IV 、急速に腎不全
     に移行、経過不良 (脳症・心不全等)、アルドステロンは通常増加、
     アンジオテンシンも I・II とも通常増加
  c. レニン産生腫瘍・傍糸球体細胞腫 (高レニン・高アルドステロン)

 (2). 異常なし
  a. 本態性高血圧症の一部
  b. 悪性高血圧症の一部
  c. レニン産生腫瘍・傍糸球体細胞腫の一部 (CT 等画像診断・消去法)
  d. 褐色細胞腫の一部
   ※褐色細胞腫
    大部分は片側副腎髄質 (chromophobe adenoma) ・10% が悪性・
    Sipple は常染色体優性・20% は副腎外性・10% 程度が家族性 (この
    うち 80% が Sipple) ・血中カテコールアミン上昇・尿中 VMA 上
    昇・WBC 上昇・RBC 上昇・T-Ch上昇・アンギオテンシン上昇・蛋白
    尿・カリウム低下 (20%)
    ◇腫瘍が PTH を分泌すれば Ca 上昇・P 低下
     カルシトニンを分泌すればCa低下
    ◇セロトニン上昇・5−HIAA 上昇・尿中 VMA 上昇
  e. 経口避妊薬 (血中カテコラミン正常または低値)
  f. 肝臓におけるレニン非働化障害 (血中カテコラミン正常または低値)
  g. 妊娠中毒症

II. 正レニン活性
 ★一般検尿・尿沈渣 (血尿・蛋白尿)
 (1). 何らかの異常あり
  a. 腎炎性高血圧 (CH50・C3 低下、但し C4 は不定)
  b. 嚢胞腎
  c. 慢性腎盂腎炎

 (2). 異常なし
  a. 本態性高血圧症の一部
  b. クッシング症候群の一部
  c. 褐色細胞腫の一部

III. 低レニン活性
 ★血中アルドステロン測定
 (1). 高値:原発性アルドステロン症とその鑑別 (腺腫か過形成かの鑑別は治
       療法が異なるので重要、CT・シンチ・副腎血管撮影を行う)
  a. 腺腫
    アルドステロン分泌は ACTH の影響を受けやすい
  b. 過形成
    アルドステロン分泌はアンジオテンシンII の影響を受けやすい、低カ
    リウムの程度が軽い

 (2). 正常:鑑別は尿中 17-KS・17-OHCS の測定、血中 ACTH・コルチ
       ゾール測定 CT・シンチ・副腎血管撮影を行う
  a. クッシング症候群の一部
    コルチゾール上昇・17-OHCS 上昇・17-KS 上昇 〜 正常・カリウム
    低下・アルカローシス・WBC上昇・好酸球低下
  b. 本態性高血圧症の一部

 (3). 低値:鑑別はデオキシコルチコステロン・コルチコステロン測定
  a. デオキシコルチコステロンのみ高値
   イ. デオキシコルチコステロン産生腫瘍
   ロ. 11β水酸化酵素欠損症
     血清 K 低下・血漿コルチゾール低下・血漿 ACTH 増加・血中 17-
     KS と 17-OHCS の増加*・尿中 17-OHCS と 17-KGS 増加
  b. 両者高値:17α水酸化酵素欠損症
   ※ 17α水酸化酵素欠損症
原発性アルドステロン症に似るが、アルドステロン低値・血清 K
      低下・血漿コルチゾール低下・血漿 ACTH 増加・血中 17-KS と
      17-OHCS の低下*・尿中 17-KS 増加
  c. 両者低値
   イ. 偽アルドステロン症
     低カリウム・アルドステロン正常
   ロ. リドル症候群
     偽アルドステロン症と症状は同じ、原因は腎尿細管異常で Na 再吸
     収と K 分泌増大
  d. コルチコステロンのみ高値
    コルチコステロン産生腫瘍 (CT・シンチ・副腎血管撮影を行う)








腎血管性高血圧症 (RVH)
※線維筋性過形成、粥状動脈硬化症、大動脈炎症候群、その他が原因

1. スクリーニング
 (1). 病歴
  1). 若年発症高血圧、50才以降の急な発症
  2). 高血圧の悪化、降圧薬の効果減弱
  3). 頭痛

 (2). 理学所見
  1). 上腹部の血管性雑音
  2). 高度の眼底変化

 (3). 検査
  1). 血漿レニン活性高値
  2). 経静脈性腎盂造影迅速撮影法 (RSIP)
  3). レノグラム

2. 腎動脈狭窄の証明
 (1). DSA
 (2). 選択的腎動脈撮影

3. レニン-アンギオテンシン系関与の証明
 (1). 左右腎静脈レニン活性の測定
 (2). アンジオテンシンII 遮断薬試験
 (3). カプトリル試験
    カプトリル 50mg を経口投与し、1 〜 2時間後の血漿レニン活性が
    60ng/ml/6h 以上の過大反応は RVH で 92% 、EH では 37%








東北大学第二内科入院高血圧症例

※総入院患者に占める高血圧患者数は 35 〜 40% で、これが日本全体の割合
 とは言えぬがかなり多い。
(1). 本態性高血圧症 (41.7%・うち糖尿病合併症は15.0%):レニン活性は色々

(2). 腎性高血圧症 (20.2%)
 1. 腎実質性:13.9% (CGN・CRF・ネフローゼ等)
 2. 腎血管性: 4.2% :高レニン性
 3. 嚢胞腎 : 0.5% :正レニン性
 4. その他 : 1.6% (RCC・腎萎縮等)

(3). 内分泌性高血圧症 (29.9%)
 1. 原発性アルドステロン症:6.6%:低レニン性(adenoma による過剰産生)
 2. 特発性アルドステロン症:0.3%:低レニン性 (両側副腎過形成)
 3. Cushing症候群:正レニン性・低レニン性
  a. 下垂体性      :1.8%
  b. 副腎腫瘍      :3.0%
  c. 低機能性      :1.2%
 4. 褐色細胞腫      :3.7%:高レニン性・正レニン性
 5. 非機能性副腎腫瘍   :4.7%
 6. 先端巨大症      :2.9%
 7. 下垂体腫瘍      :1.1%
 8. 甲状腺機能亢進症   :2.4%
 9. 甲状腺機能低下症   :0.3%
10. 副甲状腺機能亢進症  :1.1%
11. その他        :0.9% (Sipple 等)

(4). その他 (8.4%)
 1. SLE          :4.7%
 2. Aortitis syndrome  :1.5%
 3. 妊娠中毒症      :0.4%
 4. 薬物性        :0.4%
 5. その他        :1.2%








高血圧症の分類

I. 本態性高血圧症 (日常みられる高血圧症の90%)

II. 二次性高血圧症
 1. 腎性高血圧症
  (1). 腎実質性
     急性・慢性糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎、糖尿病性腎症、多発性嚢胞
     腎、水腎症、糖原病等
  (2). 腎血管性
     線維筋性過形成、粥状動脈硬化症、大動脈炎症候群、腎梗塞等
  (3). その他
     Liddle 症候群、Gordon 症候群等

 2. 内分泌性高血圧症
  (1). ステロイドホルモン異常
     原発性アルドステロン症、クッシング症候群、先天性副腎過形成
  (2). カテコラミン異常
     褐色細胞腫
  (3). レニン・アンジオテンシン系異常
     腎血管性高血圧症、レニン産生腫瘍
  (4). 甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症
  (5). 副甲状腺機能亢進症
  (6). 成長ホルモン異常
     先端巨大症

 3. 心・大動脈病変による高血圧症
  (1). AS
  (2). AR
  (3). Aortitis syndrome (Giant cell angiitis)
  (4). 大動脈粥状硬化症

 4. 神経性高血圧症
  (1). 脳圧亢進
     脳腫瘍、脳炎、脳外傷等
  (2). 脳血管障害
  (3). その他
     呼吸性アシドーシス、睡眠時無呼吸、急性ストレス等

5. 妊娠中毒症

6. 外因性高血圧症
  (1). 薬物
     交感神経刺激剤、経口避妊薬、ステロイド、非ステロイド系抗炎症
     剤、甘草 (グリチルリチン)、漢方薬、過剰輸液等
  (2). 中毒
     鉄、タリウム

 7. その他
   多血症、カルチノイド等







あまり普通でない高血圧の原因
(J.Willis Hurst:Medicine for the Practicing Physician,2nd ed.,p.921)
A. Intrinsic renal diseases:
  1. Solitarycysts:umilateral hydronephrosis
  2. Horseshoe kidney
  3. Ask-Upmark kidney             
  4. Atheroembolic renal infarction
  5. Renalcrisis of sclerodema
  6. Groenblad-Strandberg-Touraine syndrome
  7. Reninoma(Robertson-Kihara syndrome)
B. Neurologic disorders:
  1. Intracranial hypertension
  2. Ruptured intracranial aneurysms
  3. Cerebellar tumors
  4. Colloid cysts or choroid plexus lesions of the third ventricle
  5. Autonomic hyperrefrexia of paraplegics and quadriplegics
  6. Sympathetic stom of tetanus
C. Endocrine disorders:
  1. Acromegaly
  2. Hyperthyroidism
  3. Hypothyroidism
  4. Extraadrenal pheochromocytoma
  5. Liddle's syndrome
D. Post traumatic clinical settings:
  1. Head trauma
  2. Renal hematoma;traumatic renal artery thrombosis
  3. Burns
E. Heavy metal and chemical poisonings:
  1. Lead poisoning
  2. Barium poisoning
  3. Tallium poisoning
  4. Sodium poisoning
F. Drug-induced hypertension:
  1. Chewing tobacco
  2. Exogenous mineralocorticoids and anabolic steroids
  3. Amphetamines and cocaine
  4. Phencyclidine
G. Miscellaneous:
  1. Takayasu's arteritis
  2. Scorpion stings
  3. Black widow spider bites







◎高血圧緊急症・高血圧性緊急症(H20.5.7、Webより)
 1. 定義:血圧の著しい上昇により、脳・心・腎などの臓器障害をきたすか、それ
  が進行しつつある状態。高血圧性脳症、脳出血、進行性腎障害、急性肺水腫を
  伴う急性左心不全、眼底出血などがみられる。多くの場合、220/130mmHg以上
  のことが多く、緊急かつ適正な降圧を必要とする。
 2. 診断基準(以下4項目中2項目以上あれば診断確立)
 1) 拡張期血圧が130以上
 2) 眼底うっ血乳頭
 3) 腎機能が進行性に悪化
 4) 意識障害、頭痛、悪心、嘔吐、局所神経症状
   注)4)の症状があれば、本疾患を念頭におき、診断・処置を迅速に行う。
  注)急性腎炎や妊娠中毒症などで急激に血圧が上昇した場合、それほど血圧
    が高くなくても高血圧性脳症や心不全を起こすことがある。
  注)意識障害は脳卒中との鑑別が大切。昏睡から不穏症状までさまざま。
  注)鑑別すべき疾患としては、急性左心不全、尿毒症、脳血管障害、脳腫瘍、
    頭部外傷、SLE脳症、高度の不安状態などがあげられる。
 3. 診断
  1) 病歴
   a. バイタルサインをチェックしながら、手短に病歴を取る。
   b. 本症を疑った場合、高血圧歴・治療歴などを中心に(意識のない場合
    は家族や付添いの人から)聴取する。
  2) 理学所見
   a. 血圧測定:原則として四肢で測定。左右上肢は必ず。
   b. 胸部聴診:心雑音、III音、IV音、肺うっ血の有無
   c. 神経学的所見:意識状態、局所神経症状
   d. 眼底所見:うっ血乳頭、網膜出血、白斑の有無
  3) 検査所見
   a. 心電図:左室肥大・虚血性心疾患の有無
   b. 胸部レ線:心陰影の拡大、肺うっ血所見、大動脈弓部所見(石灰化・
     拡大)
   c. 心エコー:必須ではないが、心雑音の著明なとき、解離性大動脈瘤
     を強く疑うとき、心膜炎の疑いのあるときなどには施行する。
   d. 血液検査:血算、BUN、クレアチニン、電解質、血糖、アンモニア等。 
   e. 尿検査:尿蛋白、尿糖、尿潜血、比重、尿沈渣など。
   f. CT撮影:意識障害、脳血管障害の疑いのあるときなど
 4. 治療
  1) ポイント
  a. 降圧をはかるのは言うまでもないが、急激な降圧や下げ過ぎは重要
    臓器の血流を低下させる(特に脳の虚血)ので好ましくない。
  b. 目標は、拡張期圧100〜100前後とする。
  c. 緊急度は原疾患、合併症の状況により異なり、個々の患者の状態に
    より判断する必要がある。"The Joint Committee on Detection,
    Evaluation and Treatment of High Blood Pressure. 1984" の基準
    は下記のごとくである。
    ※高血圧性緊急症(hypertensive emergencies):1時間以内に血圧
     を下げる必要のある状態で、高血圧性脳症、脳内出血、クモ膜下出
     血、急性左心不全(肺水腫)、解離性大動脈瘤、腎不全、妊娠中毒
     症、頭部外傷、広範な火傷、不安定狭心症・急性心筋梗塞で高度の
     高血圧を伴う場合、褐色細胞腫のクリーゼ。
    ※高血圧性急迫症(hypertensive urgencies):24時間以内に血圧を
     下げるべき状態で、切迫した合併症のない加速型高血圧症または悪
     性高血圧症、手術前後の高血圧、緊急手術を要する患者の高血圧。
  2) 緊急降圧に使用される薬物
  a. カプトリル(1T=12.5mg):1回6.25〜50mgを経口投与。効果発現時間
    は30分、作用持続時間は6〜8時間。
  b. アルフォナード(1V=250mg):0.5〜5mg/分で点滴静注。効果発現
    は1〜2分、作用持続時間は10分。節遮断作用による視力障害 ・尿閉・
    麻痺性イレウスなどの副作用のため、長期間は使いにくい。また水分
    貯留をおこして降圧効果が減弱するのでループ利尿剤を併用する。48
    時間を目安に経口降圧剤に切り替えていく。妊娠中毒症には胎児への
    影響を考慮し使用しない。
  c. レギチン(1A=10mg):3〜20γ/kg/分で点滴静注。1回5〜10mg静注も
    可。効果発現時間1〜2分、作用持続時間は3〜10分。
  d. アポプロン(1A=0.5mg):1回0.2〜1mg筋注。効果発現時間1.5〜3時間。
    作用持続時間6〜24時間。傾眠傾向があるので、神経症状の修飾に注意
    する。
  e. ヘルベッサー(1A=10mg、50mg):1回10mgを緩徐に静注する(約1分)
    か5〜15μg/kg/分で点滴静注。 
   f. ペルジピン(1A=2mg、10mg):2〜10μg/kg/分で開始し、目的値まで
    下がったら以後血圧をモニターしながら点滴速度を調節する。発売され
    たばかりでまだ適応症は限られているが、作用は強力で副作用は少なく
    使いやすい。点滴速度に注意。
  3) 降圧剤の選択
  a. 悪性高血圧:重篤な合併症がなければ、降圧は緊急というほどではなく
    アダラート、カプトリルなどの経口降圧剤で十分。
    48時間までに160/110、数日後に150/110を目標とする。
  b. 高血圧性脳症:激しい頭痛・悪心・嘔吐ではじまり、意識障害・痙攣
    発作を生じる重篤な状態。アダラートをまず舌下で使用する。平均血
    圧で30%前後の降圧を目標とする。アポプロンは意識レベルを低下させ
    るので使用しない。又ヒドララジンは脳血流を増加させるので好まし
    くない。
  c. 急性左心不全(肺水腫):著しい血圧上昇(afterload)に左心機能
    が対応しきれず、肺浮腫を生じた状態である。亜硝酸剤・アダラート
    ・カプトリルなどが使用される。急性左心不全に対する一般的治療を
    平行して行う。
   d. 脳血管障害:脳出血やクモ膜下出血の場合、急性期には血圧上昇が見
    られることが多いが、不用意な降圧は脳循環を悪化させる恐れがある
    ので注意する。収縮期血圧が200を越えれば、20〜30%の降圧をはかる。
    アルフォナードを用いる。アダラートは脳血流を減少させないので有
    用であるが、急激な降圧と脳圧の上昇をきたすことがあるので注意す
    る。レセルピンは効果発現が遅く、意識レベルを低下させるので避け
    る。
   e. 解離性大動脈瘤:本症と診断または疑いが濃厚の場合はアルフォナー
    ドを用い、収縮期血圧100〜120を目標に降圧をはかる。その後、交感
    神経抑制剤とβ遮断剤を主体とした経口降圧剤に切り替えていく。
   f. 妊娠中毒症・子癇:第一選択はアプレゾリン。コントミンも降圧作用
    と抗痙攣作用を有し有用。アルフォナード・カプトリルは胎児を障害
    することがあるので使用しない。
   g. カテコールアミン過剰による高血圧クリーゼ:α遮断剤(レギチン)
    を使用する。同時に出現するβ受容体刺激作用に対し、β遮断剤を併
    用する。







◎悪性高血圧症について(H20.5.7、Webより)
 1. 悪性高血圧の診断基準
  (1) 拡張期血圧が120mmHg以上
  (2) 高血圧性眼底所見:視野のかすみ,線状出血 flame-shape,滲出性病変
    cotton-wool,乳頭浮腫
  (3) 壊死性細動脈炎
   高血圧性脳症(頭痛,中枢神経症状,意識障害)
   腎障害(微量アルブミン尿,腎不全)
   うっ血性心不全(急性肺水腫)
   消化管症状(急性膵炎,腸間膜血管炎による急性腹症)
  ※(2)(3)の症状がなく(1)拡張期血圧が120mmHg以上の場合を無症候性重症高血
  圧と呼び,悪性高血圧とは区別している.この場合は,急速な降圧の必要は
  ない.
 2. 診断と治療の手順
  (1) 臨床症状に注目:意識障害,胸部痛,呼吸困難,浮腫,視野異常
  (2) 拡張期血圧の上昇確認
  (3) 溶血性貧血の有無をチェック(正球性正色素性貧血,網状赤血球数増加,
   間接ビリルビンの上昇)
  (4) 血小板減少をチェック
  (5) 眼底検査
  (6) 自己抗体(抗scl-70抗体,抗セントロメア抗体,抗RNP抗体)検査
  (7) 高血圧の原因検索(レニン活性,アルドステロン,カテコーラミン)
  (8) 腎臓のサイズと血管雑音の有無確認
  (9) 特殊病態(脳症,大動脈解離,褐色細胞腫,心不全,腎不全)のチェック
  ※溶血性尿毒症症候群・血栓性血小板減少性紫斑病(HUS/TTP)と悪性高血圧と
  強皮症腎クリーゼはいずれも内皮細胞障害が基本にあり末梢循環不全により
  臓器障害をきたしている.この3つを鑑別する必要がある.
 3. 悪性高血圧の特殊病態
  (1) 高血圧自体が血管壁に機械的ストレスを与える:pressure hypothesis
  (2) 内因性物質(アンジオテンシンII, バゾプレッシン,カテコールアミン)
   が血管内皮細胞を直接傷害する:vasculotoxic hypothesis
  (3) 高血圧によりナトリウム利尿が生じそれに反応してレニン・アンジオテ
   ンシン・アルドステロン系が活性化される.
  (4) 内皮細胞障害によるEDGF(NO)の血管拡張因子低下
  (5) 内皮細胞から血管収縮性物質であるendothelin-1の放出
  ※以上のメカニズムが複雑に関連して悪循環に陥っている.本態性高血圧で
  あれほかの原因で生ずる二次性高血圧であれ悪循環を断ち切ることが重要で
  ある.
 4. 頻度と危険・予後因子
  (1) 高血圧患者の1%で高血圧緊急症が発生
  (2) 高血圧緊急症は救急外来の約25%
  (3) 悪性高血圧症は,人口10万人に対して年間1〜2人の発症頻度
  (4) 放置した場合:1年以内に80〜90%が死亡・死因は脳梗塞,脳出血,
   心不全,腎不全
  (5) 降圧薬使用により生存率70〜80%に改善
  (6) 危険因子として
  (a) 血中尿素窒素
    (b) 血清クレアチニン
  (c) 心電図でのhigh voltage
  (7) 予後因子として
    (a) 受診時の拡張期血圧が140mmHg以上群と未満群で平均生存期間
     (月)56.0 vs 15.9 (p<0.0001)
    (b) 受診時に降圧療法を受けている群といない群:127.2 vs 55.5 (p=0.017)
    (c) 受診時にタンパク尿がない群とある群:209.7 vs 56.7 (p<0.0001)
    (d) 欧米人:黒人:東洋人:121.0 vs 30.4 vs 108 (p=0.0009):黒人
     が予後不良