パーキンソン病の治療

◇抗パーキンソン病薬の種類と作用点

  【ドパミン作動性神経終末】              【コリン作動性神経終末】
(1) L-DOPA (+DCI) の補充 ━━━━━━┓
                   ┃
phenyl → tyrosine → L-DOPA → DA →┣━━→ DA受容体
 alanine             ↑  ┃↑  ↑\_
     ┏━━━━━━━━━━━┛━ ┛┃   ┃ ▲\  Ach ←━━━━ Ach
     ┃               ┃   ┃    ̄ 受容体  ↑
     ┃               ┃   ┃          ┃
 (2) DA放出・促進     (5) DA代謝阻害剤 (3) DA受容体  (4) 抗コリン作動薬
   amantadine    selegiline(deprenyl)   刺激剤    (Ach受容体遮断) 
              lazabemide     bromocriptine
              torucapone     pergolide
                        talipexole
                        cabergoline
 ※DCI:DOPA脱炭酸酵素阻害剤         ropinirole
   (ベンセラジド・カルビドパの2種類) 
◇パーキンソン病の治療 (上記 (1) 〜 (5) に対応)
(1). L-DOPA (+DCI)
 a. L-DOPA
   ドパストン・ドパゾール・ドパール・ラロドーパ (1〜3g/d)
 b. L-DOPA + ベンセラジド
   EC-ドパール・マドパー・ネオドパゾール (300 〜 600mg)
 c. L-DOPA + カルビドパ
   メネシット・ネオドパストン (300 〜 600mg 〜 900mg)
 d. L-DOPA腸溶錠
   ドパストンSE

 ※副作用 (長期投与にて) 4)
 1). 不随意運動
   ○wearing off, on & off
     L-DOPA (+DCI) の分割投与
    ※wearing off:薬が途中で効果がなくなる、効果時間短縮。
    ※on & off:薬の効果が突然停止したり戻ったりする。
          すくみ現象。何れも前ぶれなしで生ず。
   ○early morning dystonia (早朝下腿筋群が収縮しとても痛い)
     少量の抗パ剤やクロナゼパムを服用
   ○早朝動きが悪い
     早朝に少量の抗パ剤服用または就寝前にアマンタジンやブロモクリ
     プチンを服用
   ○peak dose dyskinesia (血中濃度のピーク時に起こる)
     L-DOPA (+DCI) の用量を減らし (3) を加える。効果なければグラ
     マリールを併用。
   ○diphasic dyskinesia (血中濃度の急激な変化時)
     L-DOPA (+DCI) の分割投与または L-DOPA腸溶錠を服用

 2). 胸やけ・食欲不振・動悸
   L-DOPA と DCI の合剤を使う

 3). 精神症状 (不穏・幻覚が多い)
   ○peak dose type
     L-DOPA (+DCI) の投与量を減らす。
   ○diphasic type
     その出現が考えられる 30 〜 60分前に少量の L-DOPA (+DCI) を
     服用 (日記をつける)
   ○スルピリド・チアプリドなどドパミンD2 受容体阻害剤の少量を服用
     させると消失することがある

 4). ビタミンB6 は脱炭酸酵素活性を促進するので L-DOPA (+DCI) と併用し
   ない

 5). L-DOPA (+DCI) の中止は悪性症候群を避けるためゆっくりと行う。

(2). DA 放出促進剤:アマンタジン (シンメトレル・トーファルミン)
  ・軽症例;wearing off,on & off・dyskinesia・early morning
       dystoniaに有効
  ・幻覚など精神症状を起こしやすい。維持量は 150-200mg/d

(3). DA 受容体 (D1-D6) 刺激剤
   :D1・D2 が薬理学的に重要、ブロモクリプチン (パーロデル) とペルゴ
    リド (ペルマックス)
  ・wearing off,on & off・dyskinesiaの副作用を生じにくい。
  ・抗パ療法の上乗せ・胸やけ・食欲不振・吐き気がでたらドンペリドン
   (ナウゼリン) を併用。
  ・ブロモクリプチンの維持量は7.5 - 15mg/d (始めは 1.25mg - 2.5mg
    (1T = 2.5mg) より、1W 毎に 2.5mg ずつ増量 15.0 - 22.5mg (6T
   - 9T) の間で維持量を決める)
  ・ペルゴリド (ペルマックス) は D1・D2 刺激剤ですくみ足に効果。半減期
   がやや長い
  ・カベルゴリン (治験中) は作用時間が長い。非麦角剤のタリペキソール・
   ロピニロールは消化器症状が少ない

(4). 抗コリン作動薬:アーテン (トリヘキシフェニディール)
  ・二次性パーキンソニズムに有効
  ・大量で痴呆を誘発・尿閉・麻痺性イレウスに注意

(5). DA 代謝阻害剤

(6). L-DOPS:NAD 前駆物質 (L-DOPA (+DCI) と併用するのが望ましい)
  ・すくみ足に効果あり。 (すくみ足はノルアドの低下のためか?)

(7). MAO-B阻害剤 (デプレニール・ラザベミド)・COMT阻害剤 (トルカポン)

(8). その他:低蛋白食 (朝・昼低蛋白食;夜にまとめて一日必要蛋白)
  ・リハビリ
  ・脳外科的 (定位脳手術:70 以下、片側の tremor または rigidity に、
   薬が効かぬ時)

◇パーキンソン病の鑑別診断 (1) (二次性パーキンソン症候群)
 1). 薬物性パーキンソニズム
   プリンペラン・ミコス・スルピリド・アルドメット・レセルピン・デカ
   セルピン・シンナリジン・フルナール・グラマリール・クロルプロマジ
   ン・ハロペリドール
 2). 血管性パーキンソニズム:ドーパが効かぬ
 3). 進行性核上麻痺
   パーキンソニズム・dysarthria・Parinaud (垂直注視麻痺)・項部ジス
   トニア (姿勢が全く違う)
 4). 線状体黒質変性症
   パーキンソニズム・失神・立ちくらみ・dysarthria・多幸症
 5). 正常圧水頭症に伴うパーキンソニズム
 6). OPCA・Shy-Drager に伴うパーキンソニズム
 7). 頭部外傷・脳腫瘍に伴うパーキンソニズム
 8). 中毒性パーキンソニズム
 9). 代謝性脳症
   パーキンソニズム・進行が早い・多幸症・姿勢反射異常なし

◇パーキンソン病の鑑別診断 (2)
※病歴をよく聞く・姿勢をみる・まず薬剤性のものを考える・CT, MRI で鑑別
 1). tremor と rigidity があればパーキンソン病の可能性が大 (tremor の
   みなら違う)
 2). 急速に発現すればパーキンソン病ではない
 3). tremor, rigidity 以外が全景の時はパーキンソン病ではない
 4). 40才未満の場合はパーキンソン病ではない、遺伝性のものや代謝性脳症
   を考える
 5). ドーパが効かぬ時はパーキンソン病以外の病気も考える。

◇パーキンソニズムの病理学的分類
I. Lewy 小体型パーキンソニズム
 1). パーキンソン病 (特発性パーキンソニズム・振戦麻痺) (58.7%)
 2). 瀰満性 Lewy 小体症

II. 神経原線維変化型パーキンソニズム
 1). 進行性核上性麻痺 (1.9%)
 2). 脳炎後パーキンソニズム
 3). Parkinsonism-dementia complex on Guam (2.1%)

III. 系統変性型パーキンソニズム (6.7%)
 1). OPCA
 2). 線状体黒質変性症
 3). Shy-Drager 症候群
 4). Huntinton 病の筋固縮型
 5). Wilson 病
 6). Corticobasal degeneration (2.7%)

IV. 外因性パーキンソニズム
 1). 脳血管障害性パーキンソニズム (14.7%)
 2). 薬剤性パーキンソニズム (12.5%)
   スルピリド (7.2%)・チアプリド (グラマリール・0.5%)・フルナリジン
    (ミタナール・Ca拮抗剤・0.5%)・プリンペラン (0.5%)・アモキサピン
    (抗鬱剤)・シンナリジン (アプラクタン・0.3%)・テガフール・ビンク
   リスチン・抗分裂病薬 (2.1%)
 3). 中毒性パーキンソニズム (CO (0.3%)・マンガン等)

◇Yahr (Yahr) の重症度分類
 ステージ I:一側性障害・機能障害殆どなし
 ステージ II:両側性または体幹障害を伴うが平衡障害なし
 ステージIII:姿勢反射障害あり。方向変換不安定、突進現象。
        労働能力は軽度-中等度低下。日常生活は自分でできる。
 ステージ IV:介助なしに立位、歩行可能であるが重症。
        労働能力は著しく低下。
 ステージ V:介助なしでは臥床、または車椅子生活。

※厚生省生活機能程度
I度:Yahr I + II
II度:Yahr III + IV
III度:Yahr V








パーキンソン病の診断

(1). rigidity
   手首・頚部・項部 (cogweel, lead pipe)、左右差がある
   一側上肢 → 同側下肢 → 反対側上肢 → 反対側下肢の順に進行

(2). akinesia
   まばたきが少ない、masked face 等

(3). tremor
   安静時、一側 (70 〜 80% の初発症状)

(4). 姿勢反射異常 (これがあれば Yahr III 以上)








パーキンソン病の疫学 (H6年度:32000人)

(1). 初発は 50才代以上 (49才以下は若年性で稀)

(2). 有病率
   100/10万人 (白人:200/10万人、黒人:数人/10万人)








パーキンソン病のlife style

(1). 野菜、海草を食べない

(2). 酒、タバコを飲まない

(3). 趣味がない

(4). 仕事中心

(5). 運動量が少ない

(6). 非社交性、臆病、内向的、深く考える

(7). やせている








瀰満性レビー小体病

1. 病理と症候
 (1). 脳幹型
    脳幹・間脳にレビー小体出現、大脳皮質にはない。パーキンソン病に
    相当

 (2). 移行型
    脳幹・間脳にレビー小体出現、大脳皮質にも少数出現。
    症状はパーキンソン病

 (3). 瀰満型
    脳幹・間脳のみならず、大脳皮質・扁桃体にも多数レビー小体出現。
    瀰満性レビー小体病と呼ばれる。欧米では変形型痴呆としてアルツハ
    イマー病についで多く AD:瀰満性レビー小体病 = 7:1

 (4). 大脳型
    大脳皮質に多数レビー小体が出現、脳幹・間脳には殆どない。
    進行性痴呆を示す。

2. 診断
 (1). 知的機能の変動

 (2). 視聴覚性幻視とそれに伴う妄想

 (3). 軽度の錐体外路症状

 (4). 抗精神病薬に対する過剰反応

 (5). 易転倒性または一過性意識消失

 (6). パーキンソニズム








特発性脳アミロイド血管症

1. 診断:直視下に髄膜血管の生検

2. 病型 (本邦の Aβ蛋白沈着型)
 (1). 出血型
    後頭・側頭・前頭葉に反復性脳出血。

 (2). 痴呆型又は痴呆-脳出血複合型
    小血管の CAA のため進行性痴呆を生ず。








一過性全健忘

1. 診断基準 (Hodges)
 (1). 発作に関して十分な情報が得られている事。

 (2). 発作中明かな前向性健忘が存在する。

 (3). 意識の混濁や自己に関する見当識障害がない事

 (4). 失語・失行など健忘意外の認知障害がないこと。

 (5). 癲癇の徴候がないこと。

 (6). 発作は 24時間以内であること (普通、数時間)。

 (7). 発作前の外傷及び活動性の癲癇がないこと。

2. その他留意すべき事項
 (1). 突然発症する近時記憶の障害と様々な長さの逆行性健忘。

 (2). 発作中は「私は何をしているの」「どうしてここにいるの」とか言って
    落ち着きがない。 (言語性・非言語性の記憶障害され、説明しても
    わからない。)

 (3). 手続き記憶や意味記憶は保たれており自動車の運転は可能。

 (4). 近時記憶障害は序々に回復、逆行性健忘も古い事がらから回復するが発
    作中の記憶及びしばしば発作前数時間 (8時間以内) の記憶が永久に消
    失。

 (5). 中・高年に多く、しばしば肉体的・精神的ストレスに引き続き発症。

 (6). 片頭痛の有病率が高い。

 (7). 発作は単発性のことが多く、再発は 20% 足らずで三回以上は数%。

 (8). 両側側頭葉内側面を中心として後大脳動脈領域の一過性の血流低下が報
    告されている。








精神病・躁鬱病・鬱病・躁病・仮面様鬱病・抗精神病薬・抗鬱薬

◇抗鬱薬の選択 (老人には常用量の1/2 〜 1/3 を投与)
 (1). 感情が悲哀と失意に満ちたもの
    イミプラミン (トフラニール)・ミアンセリン (テトラミド)・マプロチ
    リン (ルジオミール)

 (2). 不安、焦燥
    アミトリプチリン (トリプタノール)・トリミプラミン (スルモンチー
    ル)

 (3). 精神運動制止 (意欲減退)
    ノルトリプチリン (ノリトレン)

 (4). 自律神経症状、身体的愁訴
    マプロチリン (ルジオミール)








幻覚・妄想・澹妄 (せん妄)・興奮

1). 幻覚・妄想状態の治療
 ※注意:薬原性錐体外路症状 (遅発性神経学的症候群) を起こし易い (体の動
     揺運動・足ぶみ運動・口〜舌〜下顎ジスキネジア等)

 (1). ハロペリドール (セレネース)
    0.5 〜 2.0mg で十分
 (2). スルピリド
    効果は弱いが錐体外路症状は少ない
 (3). オキシペルチン
    錐体外路症状が少ない、抗不安作用あり:20 〜 60mg/d
 (4). その他
    クロルプロマジン・レボメプロマジン・チオリダジン・フルフェナジ
    ン

2). 澹妄 (せん妄)・興奮状態の治療
 ※注意:原因薬物の推定

 (1). 夜間の不安、焦燥、不穏
    ベンゾジアゼピン系
 (2). 夜間澹妄 (せん妄)
    三環系抗鬱薬・抗コリン薬・レボドパ

 ※使用薬物
 (1). ハロペリドール (セレネース)
    1.5 〜 3mg
 (2). ブロムペリドール (インプロメン)
    1mg/vdS
 (3). その他
    チアプリド・オキシペルチン








意識障害

(1). Japan Coma Scale (JCS)
  I. 刺激しないでも覚醒している状態 (delirium, confusion,
    senselessness)
   1. 大体意識清明だが、今一つはっきりしない。
   2. 見当識障害がある。
   3. 自分の名前・生年月日が言えない。

  II. 刺激すると覚醒する状態 (刺激をやめると眠り込む)
    stupor, lethalgy, hypersomnia, somnolence, drowsiness
   10. 普通の呼びかけで容易に開眼する。
     合目的な運動 (例えば、右手を握れ・離せ等) をするし、言葉も出る
     が、間違いが多い (何らかの原因で開眼出来ぬ時)
   20. 大きな声や体を揺さぶることで開眼する。
     簡単な命令に応じる。
     例えば、離握手 (何らかの原因で開眼出来ぬ時)
   30. 痛み刺激を加えつつ、呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する。

 III. 刺激をしても覚醒しない状態 (deep coma, coma, semicoma)
  100. 痛み刺激に対し、払いのける様な動作をする。
  200. 痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる。
  300. 痛み刺激に反応しない。

※R:Restressness  I:Incontinence  A:Akinetic mutism (Apallic
   state) を適宜加えて表現する。

(2). Glasgow coma scale (GCS)
 A. 開眼 (eye opening)




自発的に (spontaneous)
言葉により (to speech)
痛み刺激により (to pain)
開眼しない (nil)
 
:E4
:E3
:E2
:E1
 
 B. 言葉による応答
   (best verbal response)


 
見当識あり (oriented)
錯乱状態 (confused conversation)
不適当な言葉 (inappropriate word)
理解できぬ言葉 (incomprihensible sound)

:V5
:V4
:V3
:V2

 C. 運動による応答
   (best motor response)




命令に従う (obeys)
痛み刺激部に手足を持ってくる (localises)
四肢を屈曲する (flexes) -逃避 (withrraws)
異常屈曲 (abnormal flexion)
四肢伸展 (extends)
全く動かさぬ (nil)
:M6
:M5
:M4
:M3
:M2
:M1

※特殊な意識障害
◇失外套症候群 (apallic syndrome、外套:大脳外周の皮質白質を pallium
        という)
 両側大脳半球の瀰満性変化により無動無言となった状態、患者は硬直性乃至
 痙性となり、意識状態の判定は困難 (一般的には意識障害を伴うと考えられ
 ている) 無酸素脳症、脳炎の後遺症、重症頭部外傷 (特に diffuse axonal
 injury) に続発。

◇無動無言症 (akinetic mutism)
 "言葉は発しないが、意識は清明であるかの如く見え、かつ体動もきわめて
 少ない状態" を言う。臨床的にもEEGでも明かに睡眠と覚醒の区別がある。
 しかし患者に精神活動があるかどうかは判定が難しい。失外套症候群では痙
 性麻痺を示すが、本症の患者は、本来知覚・運動麻痺がないはずなのに、自
 発運動が殆どみられないのが特徴。本症は内側前頭葉下面が広く損傷された
 場合や間脳・脳幹の損傷で生ず。

◇閉じ込め症候群 (locked-in syndrome)
 患者は外見では無動無言である。しかし意識や精神機能は正常で随意眼球運
 動と開眼・閉眼は保たれているし、意志の疎通も可能である。四肢は完全麻
 痺だが自発呼吸は保たれていることが多い。障害部位は橋腹側、または延髄
 にある。

◇植物状態 (so-colled vegitative state)








脳血管障害・脳血管性痴呆・脳動脈硬化症

◇脳血管性痴呆に対する薬剤の選び方
 ○アバン (イデベノン)
   意欲低下・不安・焦燥・抑鬱・感情失禁・言語障害・仮面様顔貌・その
   他情緒障害

 ○シンメトレル (アンマンタジン)
   抗パーキンソン薬・自発性低下・感情失禁

 ○グラマリール (チアプリド)
   攻撃性・精神興奮・夜間澹妄・情緒障害・睡眠障害

 ○セレポート (ビフェメラン)
   自発性低下・感情障害 (高齢者、脳血栓患者)

 ○オイナール (リスリド)
   感情失禁・自発性低下・知的機能障害 (脳血管性痴呆)

 ○エレン (インデロキサジン)
   自発性低下・問題行動・知的機能障害・情緒障害
   特に痴呆・失見当に有効

 ○ケタス (イブジラスト)
   自発性低下・不安・抑鬱・睡眠障害

 ○サーミオン (ニセルゴリン)
   四肢しびれ・体調不良・抑鬱・多幸症・病識低下・半身麻痺・歩行障
   害・着衣失行

 ○ヘキストール (プロペントフィリン)
   意欲低下・情緒障害・記憶障害・失見当

 ○エパデール (EPA)
   痴呆・知的機能障害 (当帰芍薬散)








高齢者における薬物療法

※口渇の治療:ペクタイト・チスタニン・フェルビテン・ムチノール・白虎加
       人参湯

I. 高齢者に多い症状と薬剤による誘発
 (1). 錯乱
    催眠剤、精神安定剤、抗鬱剤、抗精神病薬、抗コリン薬 (中枢作動
    性)、NSAID、レボドパ、ブロモクリプチン、血糖降下剤、ステロイ
    ド、ジギタリス、抗痙攣剤、シメチジン

 (2). 鬱病
    メチルドパ、レセルピン、β- 遮断剤、精神安定剤、レボドパ、ステ
    ロイド

 (3). 転倒
    催眠剤、精神安定剤、抗鬱剤、抗精神病薬、抗ヒスタミン剤、抗痙攣
    剤 (カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバール)、ニトログリセリ
    ン、(下記、起立性低血圧を起こす薬物)

 (4). 起立性低血圧
    降圧薬、利尿剤、抗狭心症薬、β- 遮断剤、催眠剤、精神安定剤、抗
    鬱剤、抗精神病薬、抗ヒスタミン剤、レボドパ、ブロモクリプチン

 (5). 便秘
    コデイン (咳止め)、麻薬 (性鎮痛薬)、利尿剤、抗コリン薬、抗精神病
    薬、ジソピラミド、ベラパミル (ワソラン)、ニフェジピン、抗鬱剤

 (6). 尿失禁
    利尿剤、催眠剤、精神安定剤、抗精神病薬、プラゾシン、β- 遮断剤
    ラベタロール (トランデート)、リチウム

 (7). パーキンソン
    抗精神病薬、メチルドパ、レセルピン、プリンペラン、抗眩暈剤

II. 第一に薬物の副作用を考えるべき症状 (上記の他)
 (1). 胃痛・腹痛 (NSAID)

 (2). 喘息・心不全・徐脈・失神 (β- 遮断剤)

 (3). 糖尿・感染・骨粗鬆症 (ステロイド)

 (4). 間質性肺炎 (金製剤、小柴胡湯、NSAID、テトラサイクリン、他)

 (5). 中枢性痙攣 (キノロン系抗生剤 + NSAID、アミノグリコシド他の抗生
    剤)

 (6). 不整脈 (テルフェナジン + マクロライド + テルフェナジン + イトラコ
    ナゾール (アゾール系抗真菌剤))

 (7). 血中濃度上昇
    トリアゾラム (ハルシオン) とシメチジン・エリスロマイシン・ジョサ
    マイシン・オレアンドマイシン・アゾール系抗真菌剤等の併用。
    シサプリド (アセナリン、リサモール) とアゾール系抗真菌剤

 (8). その他
    貧血、血小板減少、顆粒球減少、肝機能障害、腎不全、電解質異常、代
    謝異常

III. 薬物からみた見逃しやすい副作用 (重要なもの、見逃しやすい副作用のみ
   列挙)
  (1). 抗パーキンソン剤
    幻覚、興奮、痴呆症状

  (2). ベンゾジアゼピン (特にハルシオン)
    幻覚、興奮、錯乱、記憶障害

  (3). ジギタリス
    吐き気、食欲不振、頭痛、下痢、行動異常、色覚異常

  (4). NSAID
    浮腫

  (5). プリンペラン・フェノチアジン・スルピリド・シンナリジン
    パーキンソン、アカシジア (正座不能症)、鬱病

  (6). ループ利尿剤
    難聴、高尿酸血症

  (7). カルシウム拮抗剤
    便秘、浮腫

  (8). メバロチン等
    活動性低下、睡眠障害

  (9). プロブコール
    不整脈、QT 延長

 (10). 血糖降下剤
    水分貯留、耐アルコール能低下

 (11). リチウム
    尿失禁、脱水 (抗甲状腺作用・白血球増多もある)

 (12). エストロゲン
    心不全、水分貯留

 (13). イミペネム (チエナム)
    痙攣、ふるえ、痴呆、幻覚

 (14). 大量のペニシリン・セフェム
    痙攣、ふるえ、痴呆、幻覚 (但し腎障害時)

IV. 各論
 (1). ACE阻害剤
    腎不全、高カリウム血症、ループ利尿剤との併用で作用増強、インド
    メタシンとの併用で作用減弱、咳