不随意運動の種類と疾患(症候から診断へ第3集;2000年、p129、日本医師会)
種類 疾患 診断の参考事項
1. 振戦
 ・静止時振戦
 ・姿勢時振戦及び
   動作時振戦







・企画時振戦

Parkinson病
本態性振戦、老年性振戦
小脳障害
Wilson病

中脳性振戦

生理的振戦のvariants



Wilson病

脳幹障害(血管障害、MS)
無動・筋固縮・姿勢保持障害
良性経過、しばしば家族性
協調運動障害・筋緊張低下
Kayser-Fleischer角膜環・血清
セルロプラスミン低下
動眼神経麻痺・血管障害発作の
数週間以降に発症
甲状腺機能亢進症・重金属*など
による中毒)・精神的緊張・不安
・疲労・その他**)
動眼神経その他脳神経麻痺
片麻痺・運動失調
2. 舞踏病 Huntinton舞踏病
小舞踏病
有棘赤血球舞踏病
単優性遺伝・痴呆・精神障害
リウマチ熱・心障害・ASO高値
有棘赤血球症(acanthocytosis)
深部反射消失
3.アテトーゼ 脳性麻痺
脳血管障害
Paroxysmal
choreoatethosis
周産期異常・筋固縮
視床症候群(疼痛,異常感覚,視床手)

家族性・外傷・副甲状腺機能低下症
TIA
4. バリスム 脳血管障害 発作直後から発症、筋緊張低下
5. ジストニア 特発性ジストニア
症候性ジストニア
安静時筋緊張正常または低下
脳性麻痺・脳血管障害・脳炎後遺症
Wilson病・Hallervorden-Spatz病
など原疾患の症状
6. チック Gilles de la
Touretteチック
顔面チック
全身性チック・反響語・精神症状

部分性、良性、習慣性
7. ミオクローヌス ミオクローヌスてんかん
動作時ミオクローヌス
口蓋ミオクローヌス***

Creutzfeldt-Jakob病
てんかん・小脳失調・痴呆
脳アノキシア後遺症・低血糖症
血管障害が多い。ウイルス脳炎
にも注意
脳波異常(周期性同期性放電)
  *:水銀、鉛、ひ素、マンガン、一酸化炭素、薬物(炭酸リチウム、交感神経刺激薬など)
 **:長期臥床、筋萎縮、筋力低下、急性感染症、神経・筋疾患など
***:類似の病態に口蓋・眼球ミオクローヌス、opsoclonus-polymyoclonia syndrome
   がある。いずれも同側の小脳歯状核と反対側の赤核・下オリーブ核・中心被蓋路







各種の炎症性疾患にみられる髄液変化
(症候から診断へ第3集;2000年、p104、日本医師会)
  外観 初圧(側臥位)
(mm髄液柱)
細胞数
(/mm3)
総蛋白
(mg/dl)
糖濃度
(mg/dl)
その他
1. 正常 水様透明 100~150 5未満 15~40 45以上
2. 急性細菌
性髄膜炎
混濁,膿性 200~1000 1000以上
好中球優位*
↑~↑↑↑ ↓↓↓ 培養,抗原
陽性
3. 結核性
髄膜炎

4. クリプト
コッカス
髄膜炎

5. 癌性髄膜炎
細胞数の
多寡で水様
~混濁,総蛋
白の程度で
透明~黄色調
↑~↑↑


↑~↑↑



↑~↑↑
↑~↑↑
リンパ球優位**

↑~↑↑
リンパ球優位


↑~↑↑
リンパ球優位
↑~↑↑


↑~↑↑



↑~↑↑
↓~↓↓


↓~↓↓



↓~↓↓
ADA,PCR
培養陽性

抗原陽性
墨汁法


細胞診,腫
瘍マーカー
6. ウイルス
性髄膜炎
(脳炎)
水様 ↑~↑↑
リンパ球優位
→~↑ →*** PCRでDNA↑
抗体価↑
7. Behcet 水様 ↑~↑↑
リンパ球優位
→~↑ 培養陰性
8. サルコイ
ドーシス
水様
リンパ球優位
→~↑ →~↓ 培養陰性
9. 無菌性
髄膜反応
水様 →~↑ ↑~↑↑
リンパ球優位
培養陰性
10. くも膜下
出血
急性期は血
性,亜急性
期は黄色調
↑~↑↑ 多数の赤血球
と出血程度に
応じた白血球
↑~↑↑ →~
希に↓
培養陰性
11. 髄膜症 水様 ↑~↑↑ 培養陰性
   *:リステリア菌では、リンパ球優位となることもある。
  **:まれに好中球優位となることもある。
 ***:ムンプス性髄膜炎では低下することがある。







ピック病(Pick's disease)の診断(土谷邦秋:NIS 2004;No.4160:89)
  ピック病は1892年Arnold Pickの報告を嚆矢とする希な神経変性疾患であり、主と
して初老期に発症し、痴呆患者の約0.4~2%を占める。従来より、ピック病の病理診
断基準については種々の議論があり、主として北米の神経病理学者はPick球の存在
を必須としてきたが、ヨーロッパや日本の多くの神経病理学者は、肉眼的な大脳の
限局性(葉性)萎縮を重視し、pick球の存在を軽視してきた。しかし、1980年代後
半より、本疾患の病理診断におけるPick球の重要性が強調され、現在では大多数の
神経病理学者は、病理組織学的にPick球を有する症例のみをピック病と診断するよ
うになつてきている。
 (1)臨床像
  ピック病の臨床像はアルツハイマー型痴呆の臨床像とは明らかに異なる。本疾患
は通例、病初期には特有な人格変化と言語機能障害を主徴とし、病中期においても
アルツハイマー型痴呆で病初期から認められる記銘・記憶障害、地誌的失見当識は
目立たず、また病末期以外では神経症状(錐体外路症状・錐体路症状)は日立たない。
  ピック病に認められる人格変化・情動変化としては欲動的脱制止、接触性不良、
思考怠惰、自発性低下、多幸性、易怒性、感情鈍磨等がある。本疾患の言語機能障
害としては、病初期には健忘失語・語義失語が認められ、また病中期には、ピック
病に特徴的とされる滞続言語が認められ、病末期には寡黙(無口)あるいは意味不
明の言語のみの状態となる。また本疾患の知的能力障害は、病初期は創造的思考、
計画の立案遂行、抽象的思考等の高次の知的能力から障害され、病中期には判断・
学習能力の低下のため、習慣化・自動化した行為以外は不能となり、病末期には高
度痴呆、最末期には失外套症候群の状態となる。
 (2)病理像
  従来、ピック病の大脳萎縮(限局性萎縮、萎縮中心)は主として前頭葉・側頭葉
に認められ、前頭葉では眼窩面に萎縮が目立つ症例が多いとされ、また側頭葉では
後方より前方に、特に側頭極に萎縮が目立ち、上側頭回と海馬は比較的保たれ、こ
れらに挟まれた第二、第三、第四側頭回が強く障害され、さらに本疾患では通例、
中心前回・後回は保たれると記載されてきた。しかし、従来の剖検例の多くはPick
球の有無を問題としないピック病であり、ピック病の大脳皮質病変分布は1980年代
後半以後、神経病理学者にとって再検討すべき課題であった。
  筆者らは、2001年に本疾患としては非定型的な臨床症状を示したピック病の6剖
検例で、大脳半球・両球標本を使用し、大脳皮質病変を高度、中等度、軽度に分類
して顕微鏡下で検討し、発語失行を初発症状とした二例では、本疾患では通例保た
れるとされる中心前回に高度病変が存在し、また三例で従来ピック病では「萎縮中
心」とみなされていない中心後回に高度病変が存在することを解明した。なお、本
疾患の基底核病変、すなわち扁桃核、尾状核、被殻、淡蒼球、異質病変の程度は均
質性があることも解明した。
 (3)診 断
  ピック病の臨床診断は、本疾患の臨床像の特徴を理解すれば、筆者の経験ではそ
れほど困難ではないと思われる。臨床的に一番重要なことは、症例から受ける印象
であると思う。アルツハイマー型痴呆の症例は、改訂長谷川式等の痴呆検査をしな
ければ、一見普通の礼儀正しい老人のようであるが、それとは異なりピック病の症
例は、通例表情は硬く、背筋が寒くなるような冷たい視線をしており、一見、統合
失調症患者のようであるのが特徴である。
  なお、剖検にて脳検索を施行しなければ、最終的にピック病の診断は確実でない
ことに異論はないと思う。







脳圧亢進に対する治療方法(NEJM 2004;350:713)
1. 低酸素血症と低換気を避ける
2. 興奮、譫妄、痛みを抑える。
3. 過換気
4. 浸透圧に基づく加療
5. バルビタール
6. 脳室ドレナージ
7. 低体温
8. 硬膜形成を伴ったhemicraniectomy







成人の白質脳症の原因疾患(NEJM 2004;350:1888)
1. 血管疾患
  1) 皮質下性動脈硬化性脳症(Binswanger's)
  2) 皮質下梗塞や白質脳症を伴う大脳常染色体優性の動脈疾患
  3) 孤発性CNS血管炎
2. 中毒あるいは代謝性疾患
  1) 一酸化炭素中毒
  2) シアン中毒
  3) 重金属(ひ素、鉛、水銀)
  4) 有機溶剤
  5) 放射線
  6) Marchifava-Bignami syndrome
  7) 中心髄鞘破壊
  8) VB12欠乏症
  9) 低酸素症
  10) サイクロスポリンの副作用
  11) Tacrolimus(タクロリムス、アトピー性皮膚炎薬)の副作用
3. 遺伝性
  1) 副腎白質脳症(Adrenoleucodystrophy)
  2) Metachromatic leucodystrophy
4. 自己免疫あるいは炎症
  1) 急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis)
  2) 多発性硬化症
  3) SLE
  4) Sjogren
  5) Behcet
  6) PN
  7) Sarcoidosis
  8) ウェゲナー肉芽種症
  9) 傍悪性腫瘍脳脊髄症
5. 腫瘍
  1) 原発性CNSリンパ腫
  2) 血管内播種性リンパ腫
  3) リンパ腫性肉芽種(lymphomatoid glanulomatosis)
  4) 大脳グリオーマ(Gliomatosis cerebri)
  5) Gliomas
  6) 転移性腫瘍
6. 感染症
  1) ライム病
  2) 神経梅毒
  3) 結核
  4) トキソプラスマ脳症
  5) 小血管炎を伴う帯状疱疹感染症
  6) 脳症を伴うHIV(HTLV encephalopathy)
  7) PML







脊髄小脳変性症の診断基準(1992)
(内科 1995;75:1356:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
1. オリーブ橋小脳萎縮症
  (1)家族性、遺伝性はなく、中年以降に発病する。
  (2)小脳性運動失調が初発・早期症状として前景に現れる。
  (3)経過とともにParkinson症候、自律神経症候が出現することが多い。
  (4)頭部のCTやMRIで小脳、橋萎縮を認める。
2. Menzel型遺伝性運動失調症
  (1)家族性、遺伝性であり、若年・中年に発病する。
  (2)小脳性運動失調が初発・早期症状として前景に現れる。
  (3)眼瞼・眼球運動障害、Parkinson症候、自律神経症候、錐体路症候、
    後索症候を伴うことが多く、筋萎縮がみられることがある。
  (4) 頭部のCTやMRIで小脳、橋萎縮を認める。
3. 晩発性小脳皮質萎縮症
  (1)家族性、遺伝性はなく、中年以降に発病する。
  (2)小脳性運動失調が初発・早期症状として前景に現れる。
  (3)Parkinson症候はみられず、自律神経症候が出現することも少ない。
  (4)頭部のCTやMRIで小脳萎縮を認めるが、脳幹萎縮は認めない。
    アルコール中毒症、抗てんかん薬中毒症、悪性腫瘍、甲状腺機能低下症
    などに基づく小脳性運動失調を除外できる。
4. Holmes型遺伝性運動失調症
  (1)家族性、遺伝性であり、若年・中年に発病する。
  (2)小脳性運動失調が初発・早期症状として前景に現れる。
  (3)Parkinson症候はみられず、自律神経症候が出現することも少ない。
  (4)頭部のCTやMRIで小脳萎縮を認めるが、脳幹萎縮は認めない。
5. 遺伝性痙性対麻痺
  (1)家族性、遺伝性であるが、孤発性にみられるものもある。やや若年に
    発病する。
  (2)主要症候は下肢優位の錐体路徴候で、痙性歩行を呈する。
  (3)後索症候がみられることがある。
  (4)頭部のCTやMRIでの異常所見に乏しい。症候性痙性対麻痺を除外できる。
6. Friedreich運動失調症
  (1)家族性、遺伝性であるが、孤発性にみられるものがある。若年に発病する。
  (2)主要症候は下肢優位の後索症候であり、腱反射は消失することが多い。
  (3)Babinski徴候、構音障害、知能障害、足変形、脊柱彎曲などがみられる。
  (4)頭部のCTやMRIで小脳萎縮のみられることがある。
7. 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症
  (1)家族性、遺伝性であるが、孤発性にみられるものもある。若年・中年に
    発病する。
  (2)病型により主要症候が異なり、小脳性運動失調、舞踏・アテトーゼ様運動、
    全身痙攣、ミオクローヌス、知能低下がみられる。
  (3)眼瞼・眼球運動障害、筋萎縮、感覚障害、錐体路徴候がみられることがある。
  (4)頭部のCTやMRIで小脳、脳幹萎縮を認め、尾状核の萎縮はない。
8. Joseph病
  (1)遺伝性、家族性であり、若年・中年に発病する。
  (2)主要症候として、小脳性運動失調、アテトーゼ、ジストニー、錐体路徴候、
    眼瞼・眼球運動障害、筋萎縮がみられる。
  (3)感覚障害、自律神経障害がみられることがある。
  (4)頭部のCTやMRIで小脳、脳幹萎縮を認める。
    (本邦における本症の呼称、位置づけには問題が残されている。上記疾患2、7
    との異同に留意する。Joseph病は通常、脊髄小脳変性症には含まれない)
9. Shy-Drager症候群
  (1)家族性、遺伝性はなく、中年以降に発病する。
  (2)自律神経症状が初発・早期症状として前景に現れる。
  (3)Parkinson症候や小脳症候を伴うことがある。
  (4)頭部のCTやMRIで小脳、橋萎縮を認めることが多い。
10. 線条体黒質変性症
  (1)家族性、遺伝性はなく、中年以降に発病する。
  (2)Parkinson症状で発病し、これが主症候で経過する。
  (3)自律神経症候や小脳症候がみられることがある。
  (4)頭部のCTやMRIで小脳萎縮がみられることが多い







ミトコンドリア脳筋症の診断基準
(内科 1995;75:1392:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
1. 進行性の筋力低下(外眼筋麻痺を含む)、知的退行・痙攣などの中枢神経
  症状のいずれか、あるいは両方がある。
2. 血清あるいは髄液の乳酸値が正常の1.5倍を超える(とくに髄液乳酸値が重要)。
3. 筋生検でミトコンドリアの形態異常、あるいはミトコンドリア関連酵素の欠損
  をみる。
4. ミトコンドリアDNAの変異がある。
■診断基準
  1.と2.3.4.のいずれか2項目(計3項目以上)を満たすものは確実
  1.と2.3.4.のいずれか1項目(計2項目)を満たすものは疑い







ミトコンドリア病の分類
(内科 1995;75:1393:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
A. 臨床的特徴からの分類
  1. 慢性進行性外眼筋麻痺症候群(chronic progressive external
    ophthalmoplegia、CPEO)
  2. MERRF(myoclonus epilepsy associated with ragged-red fibers)
  3. MELAS(mitochondrial myopathy、encephalopathy、lactic acidosis、
    and stroke-like episodes)
B. 生化学的異常による分類
  1. 基質の転送障害 
    ・carnitine palmitoyltransferase(CPT)欠損
    ・カルニチン欠損
  2. 基質の利用障害
    ・pyruvate carboxylase欠損
    ・Pyruvate dehydrogenase complex(PDHC)欠損
    ・β-oidationの障害
3. TCA回路の障害
    ・fumarase欠損
    ・α-ketoglutarate dehydrogenase欠損
4. 酸化的リン酸化共役の障害
    ・Luft病
5. 電子伝達系の障害
    ・複合体I欠損
      1) 筋型
      2) 全身型
    ・複合体II欠損
    ・複合体III欠損
    ・複合体IV(チトクロームC酸化酵素)欠損
      1) 乳児致死型
      2) 乳児良性型
      3) 脳筋型
    ・複合体V欠損
    ・複数の複合体欠損
c. その他
  Leigh脳症、Alpers病、Leber病、Pearson病、家族性ミオグロビン尿症







多発性硬化症の診断基準
(内科 1995;75:1352:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
I. 主要項目
  1. 中枢神経内に二つ以上の病巣に由来する症状がある(空間的多発性)
  2. 症状の寛解や再発がある(時間的多発性)
  3. 他の疾患(腫瘍、梅毒、脳血管障害、頸推症性ミエロパチー、SMON、
    ベーチェット病、膠原病、脊髄空洞症、脊髄小脳変性症、
    HTLV関連ミエロパチーなど)を鑑別しうる
II. 検査所見
  1. 髄液の細胞数、タンパク量ともに軽度増加することがあり、IgG増加、
    オリゴクロナールバンド、髄鞘塩基性タンパクを認めることが多い
  2. CTスキャン、MRI(とくに超伝導式核磁気共鳴)、誘発電位にて病巣
    部位が推定されることがある
III. 参考事項                
  1. 視神経および脊髄の病巣による症状をみることが多い
  2. 急性期に副腎皮質ホルモンが効果を呈することがある                   
  3. 全身性の異常所見(他臓器障害、赤沈促進、白血球増加など)に乏しい
  4. 成人に多く発症するが50歳以上の発症はまれ
  5. 症状には左右差を伴うことが多い
                       (厚生省特定疾患調査研究班、1988)







ウエルニッケ脳症(ビタミンB1欠乏症)
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p221)
アルコール中毒、胃癌などでビタミンB1欠乏のため脳神経の変性から外眼筋麻痺、
運動失調、意識と精神の異常を来す。小脳性運動失調と多発性神経炎のため歩行困難
になるが(適切な加療で)回復することが多い。







進行性核上麻痺
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p40)
眼筋運動核の上部すなわち淡蒼球、Luys体、赤核、黒質、中脳水道付近に神経
細胞の減少、顆粒空胞変性などのみられる疾患で性格変化、言語障害で始まり
構音障害、眼球の上下運動障害、仮性球麻痺、後方にそる体位などから痴呆に陥
り数年で死亡する。







副腎白質ジストロフィー(Addison-Schilder病)
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p40)
副腎、脳、末梢神経、睾丸に細胞質封入体を認める脂質蓄積症とされ、
Schilder病とAddison病の合併と考えてよく、男性のみにみられる伴性劣性遺伝
疾患である。10才前後に知能障害、仮性球麻痺による四肢の運動障害、構音障害、
嚥下、視力 聴力障害が進行して数か月ないし数年で死亡する。皮膚の色素沈着、
Na、Clの高値、低Kは副腎皮質障害による。







白質ジストロフィー
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p40)
1. 白質ジストロフィー
  大脳の白質に広範に髄鞘形成不全を示す希な遺伝性疾患で原因など明らか
  でないものが多い。以下の2.〜6.までの疾患を髄鞘形成障害性疾患と総称す
  ることもある。
2. 異染性白質ジストロフィー(サルファチド脂質症)
  乳幼児期に主として発症し大頭症、運動障害で発見される。知能、聴力、
  嚥下の障害が加わり数年で死亡する。arylsulfatase-Aの欠損により
  サルファチドが神経系に蓄積して発症するとされている。髄液の蛋白が増加
  し痙性麻痺に至る。尿沈渣中の異染物質を検索して診断できる。
3. 球状細胞型白質ジストロフィー(Krabbe病)
  β−ガラクトシダーゼの欠損により白質内に多核巨細胞の集積がみられる。
  生後まもなく痙攣、発熱、硬直などが急速に進行して2〜3年で死亡する。
4. 海綿状硬化症(Canavan病)
  生後まもなく大頭症、無関心状、筋弛緩、失明などで発見され硬直、痙攣
  などが急速に進行して3年以内に死亡する。大脳皮質下に多発性の海綿状の
  空胞変性がみられる。
5. ズダン好性白質ジストロフィー(Perizaeus-Merzbacher病)
  生後2年以内に運動失調、痙性麻痺、眼振などで発症し構音障害、知能低下
  などが加わるが経過は緩慢で10〜20年生存できる場合もあるが次第に痴呆に
  陥る。
6. フイブリノイド白質ジストロフィー(Alexander病)
  生後1年以内に発病し構語、筋力、知能の異常がくる。脳軟膜下や血管周囲
  に好酸性硝子体がみられ、最も希な部に属する。急速に進行して死亡する。







進行性皮質下脳症(PSVE・Binswanger型白質脳症)
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p40)
50才以後に記憶、判断力が低下し妄想、幻覚、痙攣発作をきたす。1〜2年のうち
に片麻痺、失語、半盲、仮性球麻痺が加わり痴呆に陥り死亡する。
1894年Binswangerが報告したもので病変は後頭葉、側頭葉の白質に限局し強度の
萎縮を示し脱髄巣もみられる。かなり希な疾患で生前には初老期痴呆、アルツハイ
マー病、多発性硬化症、脳腫瘍と区別し難い。
Binswanger病は比較的希な疾患とされていたが本症と酷似の病変は老年者剖検例
の数%に見いだされ高血圧、高度の細動脈硬化、血圧の低下、心疾患を既往にもつ
老人に見いだされることが多い。白質の小血管に肥厚狭窄があり白質に小梗塞が
散在する。びまん性の髄鞘消失の結果としての脳萎縮、基底核のラクナはあるが
皮質はよく保たれている。病状は他の脳血管性痴呆と異なることなく進行性の痴呆、
精神症状、巣症状がみられる。







クーゲルバーク・ウェランダー病(Kugelberg-Welander病、脊髄性筋萎縮症)
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p45)
10歳頃から歩行障害、大腿・上肢の筋萎縮がみられ腱反射は減弱するが予後は
悪くない。CPKと尿クレアチンは上昇する脊髄性進行性筋萎縮症の一種。







ケネディー・オールター・サン症候群(Kennedy-Alter-Sung syndrome)
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p45)
クーゲルバーク・ウェランダー病(脊髄性筋萎縮症)に似ているが発病は40歳
ころと遅く、口唇、頚部、舌の筋線維束性攣縮、振戦、高中性脂肪血症、腱反射
減退がありきわめて緩徐に進行する。遺伝性で脊髄性筋萎縮症に属す。







家族性痙性脊髄麻痺
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p43)
小児期に痙性対麻痺が出現し、下肢の屈曲困難、足は内反尖足位をとる。
腱反射は亢進しクローヌスがみられBabinskiが陽性にでる。進行は徐々で生命に
対する予後は良い。







眼球ミオクローヌス症候群(opsoclonus-polymyoclonia syndrome)
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p49)
胃腸症状や咳、鼻炎、めまい、倦怠感などののちに異常眼球運動をみる。眼振
とは違って無秩序に多方向に迅速に移動する。続いてミオクローヌスのため坐位
も困難になる。乳児に多く神経芽細胞腫が原因のこともあるがステロイドホルモン
剤によく反応して数か月で全治することが多い。髄液には軽度のリンパ球と蛋白の
増加が、脳波で軽い徐波がみられる。成人では脳炎によると思われる例が多く希に
肺癌、乳癌、子宮癌の合併や樵骨脳底動脈循環不全、橋出血、梅毒が原因のことも
ある。







バビンスキー・ナジョット症候群(Babinski-Nageotte症候群)
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p34)
延髄半側に障害があり、顔面の温痛覚消失、Horner症候群、小脳失調、眼振が
病側にみられ、反対側には半身の感覚解離と片麻痺がみられる。椎骨動脈の閉塞
による脳軟化が多く、腫瘍や炎症も病因となる。







ワレンベルグ症候群(Wallenberg症候群)
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p34)
眩暈、悪心、嘔吐、頭痛が突発し病側に顔面の温痛覚消失、角膜反射消失、
Horner症候群、眼振、構音・嚥下障害、小脳失調をみる。また反対側の上下肢の
温痛覚消失をみる。延髄外側部に病変があり主として椎骨動脈の血栓が原因とな
る。







肥厚性脊髄硬膜炎・頭部脊髄硬膜炎
  (榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p54)
頚髄に多くリンパ球、形質細胞の浸潤にて肥厚し炎症は軟膜、クモ膜に達する。
脊髄の前後根を圧迫して両下肢の疼痛、筋萎縮、脱力、上または下肢の痙性麻痺
をみ症状は徐々に進行する。原因として梅毒が多いが脊髄腫瘍と症状が似て生前
の診断は困難である。







前脊髄動脈症候群
  (榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p54)
頚髄から胸髄部の突然の疼痛で発症し数時間後には四肢の弛緩性麻痺、直腸膀胱
障害が現れる。あるいは徐々に運動麻痺が増強し筋萎縮から腱反射の消失に至る場
合もある。動脈硬化による血栓が多く梅毒、椎間板ヘルニア、腫瘍、外傷、大動脈
造影術の副作用などが原因としてあげられる。髄液は時に蛋白の増加やキサントク
ロミーを呈するが正常のことも多い。かなり希な疾患だが脊髄の血管障害の中では
最も多く脊髄腫瘍や出血との鑑別を要する。







後脊髄動脈症候群
  (榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p54)
前脊髄動脈症候群に比してかなり希であるが、病巣部以下の全知覚、深部反射の
消失、運動麻痺、膀胱直腸障害として突発する。疼痛を欠く点が前者と異なる。
原因が明らかでない場合が多く症例の報告も多くない。







マリー型運動失調症(マリー型遺伝性小脳性運動失調症)
  (榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p43)
20歳頃から起立歩行が痙性麻痺によって障害される。腱反射やBabinski反射は
亢進することが多く断綴言語、眼振、口囲の異常運動や眩暈、難聴をを伴うこと
もあるが感覚障害はみられない。遺伝性、家族性に発症する。







急性脊髄炎・視神経脊髄炎(Devic病)
(奥村二吉:『神経病の検査と診断』南山堂.1974.p.315)
両側麻痺の始まり方が全く急性で数日より2〜3週以内のものは先ず急性脊髄炎
acute myelitis を考えなければならぬ。微熱・倦怠の前駆症の後に急速に病巣
以下の弛緩性麻痺・知覚脱失・膀胱直腸障害・栄養および反射の異常が起こる。
病巣の直ぐ上の分節は刺激状態にあるため、知覚脱失部位と知覚正常な皮膚領域
との間には痛覚過敏地帯がある。麻痺は2〜3週の後には次第に痙性となってくる。
麻痺が対麻痺の形を呈するときは横断性脊髄炎transverse myelitisという。
脊髄炎が視力障害と共にくれば視神経脊髄炎(Devic病)を考えねばならぬ。もし
運動および知覚の麻痺が速かに上行するときは上行性脊髄炎ascending myelitis
 と呼ばれる。脊髄炎のほかにしばしば急性に始まって両側麻痺を起こすものは
脊髄梅毒がある。脊髄の大きな血管の血栓によるものである。脊髄膜脊髄炎型
および動脈内膜炎型に多い。しかし前者では対麻痺は徐々に発生することも少な
くない。いずれにせよ、すべての脊髄疾患では一応梅毒を考えることは絶対に
必要である。







傍三叉神経症候群(レーダー)
40歳以後の男性に主としてみられ一側(左が多い)の眼に拍動性の上眼部痛と
眼瞼下垂、縮瞳(発汗異常のないHorner症候群)を合併する。同側の三叉神経痛
も合併。数週間繰り返して突発し高血圧を伴う事も多い。飲酒で早朝に頭痛を訴
えるものもある。病因は内頚動脈瘤、上顎洞炎、腫瘍(髄膜腫など)、慢性中耳炎、
帯状疱疹、肺炎などで原因疾患の治療やステロイド剤で痛みは軽減する。







empty-sella症候群
中年女性にみられ頭痛、めまいと肥満のくる疾患で多産婦に多く髄液鼻漏をみる
ことがある。妊娠に際して下垂体とトルコ鞍は拡大するが出産とともに下垂体は縮小
しトルコ鞍は縮小しないのでemptysellaをおこすと考えられている。二次性のものは
下垂体手術後にみられ頭痛、視力障害を伴うことが多い。







モーバン症候群(Movan 症候群)
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p248)
脊髄空洞症、癩、糖尿病性神経炎に際してみられる、上肢の運動麻痺、知覚障害
と手指の無痛性壊死で自律神経障害の関与が考えられている。







ライ症候群(Leigh's syndrome、小児ウェルニッケ脳症、亜急性壊死性脳症)
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p39)
主として乳幼児にみられる亜急性の進行性遺伝性脳変性疾患で、脳幹・脊髄に左右
対称性に壊死病巣がみられる。Wernicke脳症と病理学的には似ているが、チアミン
欠乏とは閑係がうすい。病初、精神運動発育の遅延や哺乳困難、痙攣などがあり、
年長児では歩行障害や失調もみられ呼吸困難で死亡する。生前の診断は家族発生以外
困難である。







ジャクソンーマッケンジー症候群
迷走神経、副神経、舌下神経が同側性に障害された状態。喉頭反射障害、
構音障害、味覚障害、舌萎縮、胸鎖乳突筋・僧帽筋麻痺(頭が前後に倒れ易くなる)
をみる。







四つの記憶系(日時・挿話記憶(episodic)/意味記憶(semantic)
 /手続き記憶(procedural)/作業記憶(working))を損なう通常の疾患(NEJM 2005;352:692-699)

 1. Episodic memory(Medial tempolal lobe,anterior thalamic nulleus,
            mammillary body,fornix,preflontal cortex)
   ・Alzheimer's disease
   ・Mild cognitive impairment,amnestic type
   ・Dementia with Lewy bodies
   ・Encephalitis(mos commonly,herpes simplex encephalitis)
   ・Frontal varian of frontotemporal dementia
   ・Korsakoff's syndrome
   ・Transient global amnesia
   ・Concussion
   ・Traumatic brain inJury
   ・Seizure
   ・Hypoxic-ischemic injury
   ・cardiopulmonary bypass
   ・Side effects of medication
   ・Deficiency of vitamin B12
   ・Hypoglycemia
   ・Anxiety
   ・Temporal-lobe surgery
   ・Vascular dementia
   ・Multiple sclerosis
 2. Semantic memory(Inferolateraal tempolal lobe)
   ・Alzheimer's disease
   ・Semantic dementia(temporal variant of frontotemporal dementia)
   ・Traumatic brain injury
   ・Encephalitis(most commonly,herpes simplex encephalitis)
 3. Procedural memory(Basal ganglia,cerebellum,supplementary motor area)
   ・Parkinsons's disease
   ・Huntington's disease
   ・Progressive supranuclear palsy
   ・Olivopontocerebellar degeneration
   ・Depression
   ・Obsessive-compulsive disorder
 4. Working memory(Phonologic:preflrntal cortex,Broca's area,Wernick's area
          Spatial:preflrntal cortex,visual-association area)
   ・Normal aging
   ・Vascular dementia
   ・Frontal variant of frontotemporal dementia
   ・Alzheimer's disease
   ・Dementia with Lewy bodies
   ・Multiple sclerosis
   ・Traumatic brain inJury
   ・Side effects of medication
   ・Attention deficit-hyperactivity disorder
   ・Obsessive-compulsive disorder
   ・Schizophrenia
   ・Parkinson's disease
   ・Huntington's disease
   ・Progressive supranuclear palsy
   ・cardiopulmonary bypass
   ・Deficiency of vitamin B12







Alzheimer型(アルツハイマー)痴呆の診断基準(DSM-IV)
 A. 多彩な認知障害の発現。以下の2項目がある。
   1. 記憶障害(新しい情報を学習したり、以前に学習した情報を想起したりする
    能力の障害)。
   2. 以下の認知障害が1つ(またはそれ以上)ある。
   (a)失語(言語の障害)
   (b)失行(運動機能は障害されていないのに運動行為が障害される)
   (c)失認(感覚機能が障害されていないのに、対象を認識または同定できな
         い)
    (d)実行機能(計画を立てる、組織化する、順序立てる、抽象化する)
    の障害
 B. A1およびA2の認知障害は、そのそれぞれが、社会的または職業的機能の著しい
   障害を引き起こし、病前の機能水準からの著しい低下を示す。
 C. 経過は緩やかな発症と持続的な認知の低下により特徴づけられる。
 D. 上記Aに示した認知機能の障害は以下のいずれによるものでもない。
   1. 記憶と認知に進行性の障害を引き起こす他の中枢神経疾患(例:脳血管障害、
    Parkinson病、Huntington病、硬膜下血腫、正常庄水頭症、脳腫瘍)
   2. 認知症を引き起こすことが知られている全身性疾患(例:甲状腺機能低下症、
    ビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏症、ニコチン酸欠乏症、高Ca血症、神経梅毒、
    HIV感染症)
   3. 外因性物質による認知症
 E. 上記の障害は、意識障害(せん妄)の期間中だけに出現するものではない。
 F. 障害は他の主要精神疾患(例:うつ病、統合失調症など)ではうまく説明されな
   い。
 注)基準のA、BについてはMMSE(Mini-Mental State Examination)、ADL(Activity
   of daily living)、医療面接で明らかにされる。







アルツハイマー病の治療(NEJM 1999;341:1670-1678、review) 
A.Cholinergic Augumentation Therapy
  1.Physostigmine:nonselective reversible inhibitor of acetylcholinesterase
    現在FDAより推奨されてない。
  2.Tacrine:nonselective,reversible anticholinesterase
    アルツハイマー病治療薬として推奨されている。認知能力改善。ただし55%は
   トランスアミナーゼ上昇や嘔気・嘔吐のため脱落し、現在は少数派となった。
  3.Donepezil:selective,reversible anticholinesterase
    アルツハイマー病治療薬として1996年に推奨された。副作用は比較的少なく
   軽度で、一日一回投与で広く使われている。
  4.Metrifonate(trichlorfon):antihelmintic drug,no anticholinesterase
                activity,pseudoirreversible inhibitor of
                anticholinesterase
    下痢と筋痙攣が認められ、現在phase 3 trial中。
  5.Rivastigmine:relatively selective pseudoirreversible inhibitor of
          acetylcholinesterase
    高濃度投与で嘔吐、下痢、食欲不振、体重減少あり。ヨーロッパで推奨。
  6.Eptastigmine:carvamate derivative of physostigmine,irreversible inhibitor
          of anticholinesterase
    洞性徐脈、薬用量依存性の顆粒球減少あり治験は一時中断。
B.Slowing the Progression of Alzheimer's Disease
  1.α-Tocopherol(フリーラジカル形成抑制) and Selegiline(monoamine okidase
   inhibitor)
    日常の基本動作の消失やひどい痴呆などへの移行などについて効果が決定
   された。しかし失神の副作用は増加。Selegilineはメペリジンと併用しては
   いけない。
  2.Idebenone:benzoquinone derivarative with antioxidant properties
    効果はすくなく、吐き気・めまい・頭痛・胸やけ・狭心症、トランスアミナ
   ーゼ上昇を生じる。
  3.Propentofylline:a xanthin derivartive, stimulates the synthesis and
           release o fnerve growth factor in the basal forbrain
    あまり効果がなさそう。副作用は少ないが吐き気・めまい・頭痛・腹痛あり。
  4.Ginkgo biloba:亜熱帯のGinkgo bilobaの葉っぱからの抽出物。
      putative antioxidant,neurotrophic and antiinflammatoryproperties
    認識能力を若干改善
  5.Acetyl-L-Carnitine:アセチルコリン遊離促進、コリン・アセチルトランスフェ
             ラーゼ作用の増強、抗酸化物。
    効果は少ない様子
  6.Social interventions
    家族教育やカウンセリングは家族の負担を軽減するが、痴呆への効果は
   α-Tocopherol and Selegilineの効果と変らない。
 
   [結論]α-Tocopherol and Selegilineがアルツハイマーの最後のステージへの
       移行を20〜30週間遅らせるが、これが意義あるものかどうか疑わしい。
C.Treatment of the Behavional Manifestations of Alzheimer's Disease
  1.うつ状態、うつ病
    アルツハイマーの5〜8%にうつ病あり。記憶障害時に25%にうつ状態あり。
   抗鬱剤はいずれも同じような効果がある。アミトリプチリンは抗コリン作用が
   ありconfusionや起立性低血圧を伴う。選択的セロトニン再取り込み抑制剤は
   不眠症や食欲不振や射精不能をおこすけれども有効だろう。
  2.妄想、精神症状
    アルツハイマーの20%に妄想、精神症状あり。また20%に興奮(agitation)あり。
   これにたいしてはハロペリドールのような神経遮断剤効く。しかしそれは錐体
   外路症状や遅発性のdyskinesiaを副作用として20%に生じ、dose dependentで
   ある。カルマゼピンは興奮(agitation)に50%有効。
  3.コリン作動性薬剤と行動上の症状
    幻覚や妄想の発現は少ないように思う。
  4.睡眠障害
    睡眠障害とともに譫妄は夕方から夜間に起きて、日中は静まっている。これは
   脳幹の変性に伴うもの。通常neurolepticsからsedativesの広範囲にわたって投与
   する。日中のうたたねを減らし、ベッド上で過ごさないよう配慮し、起きている
   時は眩いくらいの明るさで光を照射するといい。
  5.徘徊
    36%が徘徊するという。環境変化やドア方向の道を隠すと徘徊は制限される。







広義の不随意運動の分類(日内雑誌 89:606,2000)
 1.振戦
   a.振戦の分類
   b.安静時振戦
   c.姿勢振戦
   d.企図振戟
   e.動作時振戦
 2.ミオクローヌス(アステレクシスを含む)
 3.驚愕反応
 4.舞踏運動(舞踏アテトーシスを含む)
 5.バリズム
 6.ジスキネシア
 7.ジストニア
 8.アテトーシス
 9.チック
10.アカシジア(Restless leg syndromeを含む)
11.異常行動(Rett syndrome,Stereotypic movementを含む)
12.異常連合運動(鏡像運動を含む)
13.脊髄性と名のつく不随意運動
  ・脊髄性自動運動
  ・脊髄性ミオクローヌス
  ・刺激過敏性脊髄固有ミオクローヌス
14.末梢神経・筋に由来する異常連動
  ・線維束性攣縮
  ・筋スパズム
  ・ミオトニア
  ・ミオキミア
  ・テタニー
  ・Painful legs and moving toes syndrome







責任病巣による不随意運動の分類(日内雑誌 89:609,2000)
 1.錐体外路性
   バリズム ballism
   舞踏運動 chorea
   アテトーゼ athetosis
   ジストニー dystonia
   振戦 tremor
  ※錐体外路性不随意運動の基底核神経回路について(日内雑誌 89:615,2000)
     バリズムでは視床下核に、舞踏運動では線状体の尾状核に責任病巣が
    あり、淡蒼球内節/黒質網様体部への入力の低下は、淡蒼球内節/黒質網
    様体部の活動低下、脱抑制による視床腹外側核の活動亢進をきたし、運
    動過多の不随意運動が出現する。また、淡蒼球内節は、バリズムでは筋
    活動に相関して、時折活動するphasicな神経活動が見られる。淡蒼球・
    視床腹外側核に対する手術で、バリズム、舞踏運動、ジストニー、が改
    善すると報告されている。振戦の明らかなパーキンソン病では、視床腹
    中間核に反対側上下肢の振戦に対応した神経活動が見られる。定位脳手
    術で視床腹中間核に限局した破壊を行うと、パーキンソン病の振戦、本
    態性振戦、粗大な姿勢時振戦、動作性振戦などが改善するとされている。 

 2.大脳皮質性および皮質下性
   けいれん(大発作、焦点発作)convulsion
   皮質性ミオクローヌス cortical myoclonus
   皮質下性ミオクローヌス subcortical myoclonus(延髄網様体、視床)
 3.小脳怪、脳幹性
   企図振戦 intentiontremor
   骨格筋ミオクローヌス skeletal myoclonus
   軟口蓋ミオクローヌス palatal myoclonus
   しゃっくり singultus
 4.脊髄性
   脊髄性ミオクローヌス spinal myoclonus
   線維束性攣縮 fasciculation
 5.筋原性
   ミオトニア myotonia
   クランプ cramp
 6.深部感覚障害
    (末梢神経一袖経根一脊髄一脳)
   仮性アテトーゼ pseudoathetosis
 7.大脳皮質を含む高次中枢
   眼瞼痙攣、顔面痙攣、書痙、チック、Gilles de la Tourette症候群
   連合運動 synkinesias
   akathisia
   restless legs syndrome







運動の性状による不随意運動分類(日内雑誌 89:609,2000)
1.規則的(律動的)
  A)振戦
   a)安静時に出現(安静時振戦)
     イ.遅い振戦(3-6Hz)
       ・Parkinson症候群
       ・ミオトリー(myorhythmia)
       ・軟口蓋ミオクローヌス
       ・骨格筋ミオクローヌス
       ・中脳振戦
   b)動作・姿勢時に出現(動作時・姿勢時振戦)
     イ.速い振戦(7-11Hz)
       ・生理的振戦
       ・本態性振戦(書家振戦・起立性振戦)
       ・老人性振戦(頸部振戦)
       ・甲状腺機能亢進症
     ロ.遅い夜戦(3-6Hz)
       ・企図振戦
2.不規則(非律動的)
  A)速い動き
   a)動作、姿勢保持の時に出現
     イ.羽ばたき振戦(asterixis)
     ロ.動作性ミオクローヌス
   b)安静時に出現
     イ.舞踏病 ;遠位優位
         ・ Huntington舞踏病
         ・小舞踏病
         ・妊娠舞踏病
     ロ.バリズム;近位で租大
     ハ.ジスキネジア
         ・ロ頬舌ジスキネジア
         ・遅発性ジスキネジア
   c)外界からの刺激で出現
     イ.刺激反応性ミオクローヌス
     ロ.びっくり反応・驚愕反応(startle response)
 B)遅い動き
     イ.アテトーゼ
     ロ.ジストニー
         ・捻転ジストニー
         ・痙性斜頚
         ・眼瞼痙攣(Meige症候群)
         ・書痙







歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症の分類と臨床像(日内雑誌 89:646,2000)
            若年発症型    成人発症型
  ------------------------------------------------------
  発症年齢       20歳末満     20歳以上
  重症度       中等〜重度    軽〜中等度
  舞踏運動        +         ++
  ミオクローヌス    +++        +
  てんかん発作     +++       +
  知能障害       +++       ++
  運動失調        ++        +++







トウレット(Tourette)症候群の診断基準(DSM-IV、1994)
                        (日内雑誌 89:682,2000)
  A.多発性運動性チックおよび一種以上の発声チックの両型が、経過中のいずれかの
   時期に出現する。ただし、両者は同時に出現しなくてもよい。(チックとは突然
   起こる、すばやい、反復性、非律動的、常同的な運動または発声をいう)
  B.チックは一日のうちに(通常、群発して)頻回に起こる。これはほぼ連日のこと
   もあれば、1年以上にわたって間欠的に起こることもある。1年以上にわたるとき
   は、連続した3カ月以上、発作を免れることはない.
  C.この病気のために、患者には社会的、職業的、またはその他の重要な領域で著し
   い困難や障害がおこる。
  D.発作は18歳以前である。
  E.この病気はある物質(精神刺激薬など)、あるいは医学的疾患(ハンテントン病
   やウイルス性脳炎後)の直接的影響によって起こるものではない。







神経難病調査票から(H12/10/24、岡山大学医学部神経内科より)
1.パーキンソン病 Hoehn−Yahrによる重症度分類
  Stage I:症状は一側性で、機能的障害はないかあっても軽微。
  Slage II:両側性の障害があるが、姿勢保持の障害はない。日常生活、職業は
       多少障害はあるが行いうる。
  SlageIII:立ち直り反射に障害がみられる。活動はある程度制限されるが職種
       によっては仕事が可能であり機能的障害は、軽ないし中等度だが
       まだ誰にも頼らず一人での生活が可能である。
  Stage IV:重篤な機能障害を呈し、自力のみによる生活は困難となるが、まだ
       支えられずに立つこと、歩くことはどうにか可能である。
  Slage V:立つことも不可能で、介助なしにはベッドまたは車椅子につききり
       の生活を強いられる。
2.パーキンソン症候群
  a.脳血管牲パーキンソニズム
    多発性脳梗塞によりパーキンソン病様の症状が発現する。MRIで梗塞巣がみら
   れる。
  b.進行性核状性麻痺
    核上性眼球運動障害、項部ジストニア、仮性球麻痺、痴呆を特徴とする。
  c.線条体黒質変性症
    パーキンソニズムを主要神経症状とし、両側性の筋固縮は高度で、安静時
   振戦は稀、排尿困難を特徴とする。
  d.大脳皮質基底核変性症
    中年以降に、失行(明らかな左右差を示す肢節運動失行)とパーキンソニ
   ズムで発症、安静時振戦は稀。
  e.びまん牲レビー小体病
    初老期、老年期に進行性痴呆症状で発症、後にパーキンソニズムが加わる。
   幻覚や妄想を伴う。
  f.純粋無動症
    中年以降に発症し、緩徐進行する歩行・書字・会話における反復運動の
   加速とすくみを主徴とする。
3.脊髄小脳変性症
  a. SCAl
    常染色体優性遺伝形式(6p22-23)をとる小脳性失調症、四肢筋萎時を
   特徴とする。
  b. SCA2
    常染色体優性遺伝形式(12q23-24.1)をとる小脳性失調症、腱反射低下、
   緩徐眼球運動を特徴とする。
  c. SCA3(Machado−Joseph disease)
    常染色体優性遺伝形式(14q24.3-32.1)をとる小脳性失調症、びっくり
   眼を特徴とする。
  d. SCA4    
    常染色体優性遭伝形式(16q22.1)をとる小脳性失調症、知覚障害を伴う。
  e. SCA5
    常染色体優性遺伝形式(11q13)をとる小脳性失調症、小脳失調のみが主。
  f. SCA6
    常染色体優性遺伝形式(19p13)をとる小脳性失調症、小脳失調のみが主。
  g. 歯状壊赤核淡昔球ルイ体萎縮症
    常染色体優性遺伝形式(12p12-ter)をとる小脳性失調症、ミオクロー
   ヌスてんかん、痴呆を特徴とする。
  h. 遺伝性痙性対麻痺
    遺伝歴を有し(優性、劣性遺伝、孤発例もある)下肢優位の錐体路徴候で、
   痙性対麻痺を呈する。
  i. フリードライヒ失調症
    常染色体劣性遺伝を示し、下肢優位の後索症候を呈する。
  j. オリーブ梼小脳萎締症
    中年以降に発症する孤発性小脳失調症、経過とともにパーキンソニズム、
   自律神経症状を呈する。
  k. 小脳皮質萎縮症
    中年以降に発症する孤発性小脳失調症、小脳失調のみが主。
4.筋萎縮性側索硬化症







突発性難聴の診断基準(厚生省突発性難聴調査研究班報告書より)
A.主症状
  1.突然の難聴
    文字どおり即時的な難聴、または朝、目が覚めて気づくような難聴。
   ただし、難聴が発生した時「就眠中」とか「作業中」とか、自分がその時何を
   していたかが明言できるもの。
  2.高度な感音難聴
    必ずしも「高度」である必要はないが、実際問返としては「高度」でないと
   突然難聴になったことに気づかないことが多い。
  3.原因が不明、または不確実つまり原因が明白でないこと
B.副症状
 1.耳鳴り
    難聴の発生と前後して耳鳴りを生じることがある。
  2.めまい、および吐き気、嘔吐
    難聴の発生と前後してめまいや吐き気、嘔吐を伴うことがあるが、めまい
   発作を繰り返すことはない

〔診断の基準〕
  確実例:A主症状、B副症状の全事項を満たすもの
  疑い例:A主症状の1. 2.の項を満たすもの

〔参考〕
 1.recruitment現象の有無は一定せず
  2.聴力の改善・悪化の繰り返しはない
  3.一例性の場合が多いが、両側性に同時罹患する例もある
  4.第VIII脳神経症状以外に顕著な神経症状を伴うことはない







外リンパ瘻の診断基準(厚生省高度難聴調査研究班報告書より)
  1.確実例
    手術(鼓室開放術)または内視鏡により、蝿牛窓、前庭窓のいずれか、または
   両者の破裂を確認できたもの
  2.疑い例
   1)髄液庄・鼓室庄の急激な変動を起こすような誘因の後に、耳閉塞感、難聴、
    耳鳴、めまい、平衡障害などが生じた。
   2)外耳・中耳の加庄、減圧などでめまいを訴える。または、眼振が記録できる。
   3)原因の明らかでない高度難聴が数日かけて生じた。
   4)「水の流れるような耳鳴」あるいは「流れる感じ」がある。
   5)パチッという音(pop音)の後、耳閉塞感、難聴、耳鳴、めまい、平衡障害
    などが生じた。
 以上の症状のいずれか一つでもある場合、外リンパ痩を疑う。







せん妄(譫妄)とせん妄への対処(NIS、No.4029(H13/7/14)、P37)
 1.意識障害
  1)意識混濁:意識レベルの障害
  2)意識変容:意識の質的異常。意識混濁を背景に生ずる精神症状で譫妄、アメン
        チア、もうろう状態、夢幻様状態などと表現
 2.せん妄(譫妄)の症状
   動揺する意識混濁(部分健忘)、不安、不穏、徘徊、興奮、叫声、不眠(睡眠
  覚醒リズムの障害)、錯視、幻視(小動物が見える)、人物誤認、夢と現実の
  混同、捜衣模床(Flockenlesen、衣服の裾やシーツをまさぐるような動作)、独語
  妄想、まとまらない言動
 3.名称のついた譫妄
   夜間譫妄、老人譫妄、作業(職業)譫妄、術後譫妄、離脱譫妄、振戦譫妄(アル
  コール離脱時)、熱性譫妄
 4.活動面からの分類
  1)高活動型:特に夜間譫妄が問題。不眠ではじまる。
  2)低活動型:時に鬱病や痴呆と誤診される
  3)混合型
 5.夜間せん妄(夜間譫妄)への対処
  1)原因療法
   a.基礎に原因となる疾患があれば、その治療を。(甲状腺機能、血糖値に注意)
   b.薬物副作用:ステロイド、インターフェロン、MAO阻害薬(塩酸セレギリン)
   c.感染症による譫妄:脱水の是正、抗生剤の投与
   d.熱中症ほかの脱水による譫妄:補液
  2)対症療法・薬物療法:投与前にバイタルサインや、呼吸器・肝・心・腎疾患の
             有無や変化を注意深く評価する。
   a.経口摂取可能の場合
    ・チアプリド(グラマリール)25mgを1〜2錠を眠前に投与。睡眠薬を加える
     こともある(レンドルミン0.25mgを1錠追加)。
    ・これで改善しまければチアプリド(グラマリール)25mgを3〜4錠まで増量
      チアプリドは安全性が高い。
    ・チアプリド(グラマリール)が無効の場合
      ハロペリドール(セレネース)0.75mg、1〜2錠とビペリデン(アキネトン)
     1mg、1錠を眠前に投与。
   b.経口摂取不可能の場合
    ・ハロペリドール(1A=5mg)をワンショット静注または生理食塩水100mlに
     まぜて1時間程度で静注
    ・以上で改善しなければ同じことをもう一度繰り返す。
      ハロペリドールは心・循環系への影響が少なく、意識レベルを下げる
     ことが少ないので使い易い。(静注の場合はビペリデンなど抗パーキン
     ソン薬は必要ないが、錐体外路症状が出現したらビペリデン1A=5mgを
     静注)
   c.その他の方法
    ・早急に譫妄を鎮静させたい時にフルニトラゼパム(ロヒプノール・サイレ
     ース)を呼吸状態に注意しながら点滴静注して眠らせる。
    ・夜間譫妄が繰り返される時は眠前にテトラミドを経口投与する場合がある。
   d.注意
     改善すればハロペリドールは経口でも静注でも早めに減量。経口ができれ
    ば静注は経口薬へと切り替える。
  3)夜間は一人部屋に患者をうつす。(他の患者への影響が大のため)
  4)軽い身体拘束はやむを得ないことがある。(家族へ連絡し承諾を得る)
  5)日中は起こす。夜間は良眠を図る。(覚醒と昏睡のリズムを取り戻す)
  6)家族との連絡、家族との協力
 6.アルコール離脱譫妄への対処
   ジアゼパム2mg、4〜8錠(分4)を断酒と同時に投与すれば譫妄を起こさないで
  すむ。これを約1週間投与する。幻覚・妄想を伴うアルコール性譫妄ではジアゼ
  パムは無効なので、ハロペリドールを各種投与で用いる。







リンパ球性下垂体前葉炎の診断の手引き(日内雑誌 2002;91:90)
T A. 主症候
     頭痛、視野障害、乳汁分泌などの下垂体腫瘍に類似の症候や、疲労感、無
    月経などの下垂体機能低下症に類似の症候がある。
T B. 検査所見
    1. 血中下垂体前葉ホルモンの1ないし複数の基礎値または分泌刺激試験にお
     ける反応性が低い。
    2. 画像検査で下垂体の腫大、ときに下垂体茎の肥厚を認める。造影剤により
     早期に著明で均一な造影増強効果を認める。
    3. 下垂体の生検で、前葉に線維化、下垂体細胞の破壊像や主としてTリンパ
     球の浸潤を認める。
T C. 参考所見
    1. 女性でしかも妊娠末期、産褥期の発症が多い。
    2. 尿崩症を呈する例がある(注1)。
    3. プロラクチンの上昇が1/3の症例に認められる。
    4. 他の自己免疫疾患(慢性甲状腺炎など)の合併を認める例が比較的多い。
    5. 抗下垂体抗体を認める例がある。
    6. 長期経過例は稀にempty sellaを示すことがある。
 [診断基準]
   1)確実例:AとBを満たすもの。
   2)疑い例:Aと(Bの1と2)を満たすもの。
 T
 (注1)尿崩症を示す例ではリンパ球性漏斗下垂体後葉炎を併発している場合がある。
 (注2)経過観察中に以下の疾患の鑑別に注意を要する。
    1. プロラクチン産生腺腫及び非機能性下垂体腺腫
    2. 頭蓋咽頭腫
    3. 胚細胞腫
    4. ラトケ嚢胞
    5. 肉芽腫性下垂体炎
    6. サルコイドーシス及び炎症性肉芽腫(結核、真菌症など)
      (平成13年度厚生労働省間脳下垂体機能障害調査研究班報告書)







リンパ球性下垂体炎の治療の手引き(日内雑誌 2002;91:92)
  1. 下垂体の腫大が著明で、腫瘤による圧迫障害(視力、視野の障害や頭痛)が
    ある場合グルココルチコイドの薬理量(プレドニン換算で1mg/kg体重/日)を
    投与し、症状の改善が認められれば、グルココルチコイドを漸減する。
     症状の改善が認められない場合は腫瘤の部分切除による減圧を試みる。
  2. 下垂体の腫大による圧迫障害が認められない場合で、下垂体一副腎系の機能
    低下や尿崩症が認められる場合グルココルチコイドの補充療法を試みる。
     急性期であれば、薬理量を試みることも勧められる。
  3. 下垂体腫大による圧迫障害がなく下垂体一副腎系の低下が認められない場合
    MRIによって下垂体腫瘤の形態学的変化を経過観察する。
  4. 甲状腺ホルモン低下があれば補充する。尿崩症があればデスモプレッシンを
    用いる。
      (平成13年度厚生労働省間脳下垂体機能障害調査研究斑報告書)







脳内出血のメカニズム(NEJM 2002;346:1653)
  1. 高血圧症
  2. 外傷
  3. 血管奇形
   1) 動脈瘤
   2) 動静脈奇形
   3) 海綿状血管腫
  4. 腫瘍
  5. 出血傾向
   1) 凝固異常
   2) 抗凝固剤投与中
   3) フィブリン溶解剤投与中
  6. 大脳アミロイド血管症
  7. 静脈血栓症および静脈圧上昇
  8. 出血性梗塞
  9. 交感神経様作用薬剤投与中(たとえばコカイン)
 10. 血管炎






脳内出血を惹起する脳内血管炎症候群(NEJM 2002;346:1654)

  1. 原発性壊死性血管炎
   1) PN
   2) Wegener肉芽腫症
  2. 全身疾患と関連する血管炎
   1) SLE
   2) RA
   3) Sarcoidosis
   4) ベーチェット病
  3. 過敏性血管炎
   1) Henoch-Schonlein purpura
   2) 薬剤誘起性血管炎
  4. 感染症と関連する血管炎
   1) 細菌感染症(通常感染性心内膜炎に伴う)
   2) 真菌感染症
   3) ウイルス感染症
   4) 寄生虫感染症







◎Floppy infant syndromeの鑑別診断(NEJM 2006;355:2135)
 1. Central nervous system disorders
  a. Congenital, nonprogressive encephalopathies
  1) Ischemic encephalopathies
  2) Infectious encephalopathies
  3) Metabolic encephalopathies
  4) Endocrine encephalopathies
  4) Developmental encephalopathies(e.g., Prader-Willi syndrome)
  b. Degenerative, progressive encephalopathies
 2. Spinal cord disorders(anterior horn cell and peripheral nervous system)
  a. Infections(e.g., poliomyelitis)
  b. Motor neuron diseases(spinal muscular atrophy type l)
  c. Neurogenic arthrogryposis
  d. Glycogen storage diseases(e.g., Pompe's disease)
  e. Lysosomal storage abnormalities
  f. Sensorimotor polyneuropathies
  1) Demyelinating disorders
  2) Axonal disorders
 3. Disorders of the neuromuscular junction
  a. Presynaptic disorders
  1) Infantile botulism
  2) Congenital myasthenia
  b. postsynaptic disorders
  1) Neonatal myasthenia gravis
  2) Congenital myasthenia
 4. Muscle disorders
  a. Infantile myotonic dystrophy
  b. Congenital myopathies







◎異常眼球運動と病巣局在(NIS 2007;No.4317(H19/1/20):60)
 1. 末梢前庭性:水平性眼振、水平・回旋混合性眼振(麻痺性病変の場合は健側向
   き眼振となり、臨床的には健側向きが多い)、方向固定性頭位眼振、純回旋
   性頭位性眼振、純回旋性反対回旋性頭位変換眼振(いわゆる良性発作性頭位
   めまい症の場合が多い。この場合、懸垂頭位で、眼振急速相の回旋方向が患
   側である)。方向交代性下向性頭位眼振、方向交代性上向性預位眼振、回転
   感、嘔気・嘔吐が強い。
 2. 中枢性:
  1) 延髄:視性ミオクロニー、水平性ないし回旋性自発眼振(患側向きが多い)、
  下眼瞼向き垂直性自発眼振、不規則混合眼振、純回旋性預位ないし頭位変
  換眼振、シーソー眼振、上眼瞼向き垂直性自発眼振
  2) 脳橋:開散眼振、注視不全麻痺性水平性眼振、健側への共同偏視。下眼瞼
  向き垂直性自発眼振
  3) 中脳:水平性眼振、注視不全麻痺性水平性眼振、電光眼運動、緊張性注視
  痙攣、緊張性輻輳痙攣、輻輳麻痺、輻輳眼振、陥没眼振、視性ミオクロニ
  ー、上方注視麻痺
  4) 脳幹背側:核間神経麻痺(内側縦束症候群)
 3. 脳幹一般:開閉限などの条件により方向の変わる自発眼振、非共同性眼振、
   方向固定性頭位眼振、方向交代性上向性頭位眼振、垂直性(懸垂)頭位眼
   振、垂直性頭位変換眼振、眼振の律動不動、先天性特発性眼振の一部、
  Skew deviation
 4. 小脳半球:注視調節障害性眼振、方向固定性頭位眼振
    注:両側障害では、方向交代性上向性頭位(変換)眼振、垂直性頭位
     変換眼振、flutte rlike oscillation、ocular dysmetry、反跳眼
     振(rebound nystagmus)
 5. 小脳虫部:注視調節障害性眼振、短期不規則方向交代性眼振、方向固定性頭
     位眼振、方向交代性上向性頭位眼振、小頻打性垂直性頭位変換眼
     振、垂直性懸垂頭位眼振
 6. 大脳半球:患側への共同偏視、方向交代性下向性頭位眼振
 7. 中枢一般:(完全)注視方向性眼振







◎小児細菌性髄膜炎について(特にインフルエンザ菌b型(Haemophilus influenzae type b=Hib)感染症)(日医雑誌、136巻、9号、HIB-1〜HIB-8)
  1. 我が国の小児細菌性髄膜炎では、Hib > 肺炎球菌 > B群溶連菌 > 大腸菌 >
  リステリア > 髄膜炎菌 > 黄色ブドウ球菌 > 表皮ブドウ球菌
  2. 患児の95%以上が5歳未満、2/3が2歳未満(5歳未満10万人あたり8.6〜8.9人)
  3. Hibについて
   ・G(-)桿菌、3〜5%の子どもが鼻に持っている常在菌。
   ・通常は上気道の不顕性感染
   ・抗生剤(アンピシリン・CP・セフェム・ニューキノロン)耐性株の増加
  4. Hib感染症について
   ・髄膜炎には特異的症状がない。発熱・白血球増多・CRP陽性、時に白血球
   正常
   ・急激に悪化し死亡する電撃型髄膜炎あり。
   ・喉頭蓋炎・肺炎・敗血症を引き起こす。
  6. Hibワクチン
   ・ワクチン接種で劇的に効く。4回接種が必要。
   ・重大な副反応はない。
   ・無脾、免疫不全、ホジキン病などで、Hibワクチンは髄膜炎予防に有効
   ・DPTなどと同時接種が認められている。







◎視神経障害の鑑別診断(NEJM 2008;359:2828)
 1. 炎症
  1) 感染症
  2) 神経変性疾患
  3) サルコイドーシス
 2. 血管性
  1) Arteritic antrior ischemic optic neuropathy
  2) Nonrteritic antrior ischemic optic neuropathy
 3. 圧迫性
  1) 新生物
   ・髄膜腫
   ・血管腫
  2) 非新生物
   ・甲状腺性眼症状
   ・感染症
 4. 浸潤性
  1) 新生物
   ・白血病
   ・リンパ腫
   ・Glioma
  2) 非新生物
   ・サルコイドーシス
 5. 中毒・代謝性・栄養障害
  1) ビタミンB12欠乏
  2) エタンブトールによる中毒性障害
  3) メタノールによる中毒性障害
 6. 遺伝性
  1) Leber病(Leber's hereditary optic neuropathy)
  2) Kjer's disease(Dominant hereditary optic neuropathy)
 7. 外傷性







◎可逆性脳血管収縮症候群(Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome)に関連する因子(NEJM 2009;360:1131)
  1. Idiopathic
  1) No identifiable precipitating factor
  2) Headache disorders (migraine, primary thunderclap headache,
    benign exertional headache, benign sexual headache, and
    primary cough headache)
  2. Pregnancy and puerperium
   Early puerperim, late pregnancy, preeclampsia, eclampsia,
   delayed postpartum eclampsla
  3. Drugs and blood products
   Phenylpropanolamine, pseudoephedrine, ergotamine tartrate,
   methylergonovine, bromocriptine, lisuride, selective
   serotonin-reuptake inhibitors, sumatriptan, isometheptene, 

   cocaine, ecstasy, amphetamine derivatives,marijuana,
   lysergic acid diethylamide, tacrolimus, cyclophosphamide,
   erythropoietin, intravenous immune globulin, and red-cell
   transfusions
  4. Miscellaneous
   Hypercalcemia, porphyria, pheochromocytoma, bronchial
   carcinoid tumor, unruptured saccular cerebral aneurysm,
   head trauma, spinal subdural hematoma, post-carotid
   endarterectomy, postdural puncture, open neurosurgical
   procedures







◎脳卒中(脳動静脈奇形に起因する脳出血(Broca野〜Wernicke野))回復のためのオススメ
(ジル・ボルト・テイラー『奇跡の脳』竹内薫訳、新潮社、pp.217-221)

 1. 病状評価のための10の質問
  1) 見たり聞いたりできているか、誰かに目と耳をチェックしてもらいましたか?
  2) 色が判別できますか?
  3) 三次元を知覚できますか?
  4) 時間についての何らかの感覚がありますか9・
  5) からだの全ての部分を、自分のものだと確認できますか?
  6) 背景の雑音から、声を判別できますか?
  7) 食べ物を手に取ることができますか? 手で容器を開けられますか?
 
  自分で食べる力と器用さがありますか?
  8) 快適ですか? 充分に暖かいですか? 喉が渇いていますか? 痛いですか?
  9) 感覚的な刺激(光や音)に対して敏感すぎていませんか? 
  もし「敏感すぎる」なら、眠れるように耳栓をもってきて、そして、目を開
  けていられるようにサングラスをかけて。
 10) 順序立てて考えられますか? 靴下と靴が何であるかわかりますか? 靴の前に、
  靴下をはくという作業が理解できますか?
 2. 最も必要だった40のこと
  1) わたしはバカなのではありません。傷を負っているのです。どうか、わたし
  を軽んじないで。
  2) そばに来てゆっくり話し、はっきり発音して。
  3) 言葉は繰り返して。わたしは何も知らないと思って、最初から繰り返し、
  繰り返し、話してください。
  4) あることを何十回も、初めと同じ調子で教えてくれるよう、忍耐強くなって。
  5) 心を開いて、わたしを受け入れ、あなたのエネルギーを抑えて。どうか急
  がないで。
  6) あなたの身振りや顔の表情がわたしに伝わっていることを知っていて。
  7) 視線を合わせて。わたしはここにいますーーーわたしを見に来て。元気づけ
  て。
  8) 声を大きくしないでーーーわたしは耳が悪いのではなく、傷を負っているの
  です。
  9) 適度にわたしに触れて、気持ちを伝えて。
 10) 睡眠の治癒力に気づいて。
 11) わたしのエネルギーを守って。ラジオのトーク番組、テレビ、神経質な訪問
  者はいけません! 訪問は短く(五分以内に)して。
 12) わたしに何か新しいことを学ぶエネルギーがあるときは、脳を刺激して。た
  だ、ほんの少しですぐに疲れてしまうことを憶えていて。
 13) 幼児用の教育玩具と本を使って教えて。
 14) 運動感覚を通して、この世界を紹介して。あらゆるものを感じさせて(わた
  しは再び幼児になったのです)。
 15) 見よう見まねのやり方で教えてください。
 16) わたしが挑戦していることを借じてくださいーーーただ、あなたの技術レベ
  ルやスケジュール通りにいかないだけです。
 17) いくつもの選択肢のある質問をしてください。二者択一(Yes/No)式の質問
  は避けて。
 18) 特定の答えのある質岡をして。答えを捜す時間を与えて。
 19) どれくらい速く考えられるかで、わたしの認知能力を査定しないで。
 20) 赤ちゃんを扱うように優しく扱って。
 21) わたしに直接話して。わたしのことについて他の人と話さないで。
 22) 励ましてほしい。たとえ20年かかろうとも、完全に回復するのだという期待
  を持たせて。
 23) 脳は常に学び続けることができると、固く信じてください。
 24) 全ての行動を、より小さい行動ステップに分けてください。
 25) 題が上手くいかないのは何が障害になっているのか、見つけてください。
 26) 次のレベルやステップが何なのかを明らかにして。そうすると、何に向かっ
  て努力しているかがわたしにもわかります。
 27) 次のレベルに移る前に、今のレベルを十分に達成している必要があることを
  憶えていてください。
 28) 小さな成功を全て讃えてください。それがわたしを勇気づけてくれます。
 29) どうか、わたしの文章を途中で補足しないで。あるいは、わたしが見つけら
  れない言葉を埋めないでください。わたしには脳を働かせる必要があるので
  す。
 30) もし古いファイルを見つけられなかったら、必ず新しいファイルを作るのを
  忘れないで。
 31) 実際の行動以上にわたしが理解していることを、わかってもらいたいのです。
 32) できないことを嘆くより、できることに焦点を合わせましょう。
 33) わたしに以前の生活ぶりを教えてください。
   前と同じように演奏できないからと言って、もう音楽を楽しんだり、楽器
  を演奏したりしたくないなんて考えないでください。
 34) 一部の機能を失ったかわりに、わたしが他の能力を得たことを、忘れないで。
 35) 家族、友人たち、優しい支援者たちと親しい関係を保てるようにしてくださ
  い。カードや写真を貼り合わせたコラージュを作って見せてください。それ
  らに見出しをつければ、わたしはゆっくり見ることができます。
 36) 大勢に助けを求めましょう。「癒しチーム」を作るように頼みましょう。み
  んなに伝言しましょう。そうすれば、みんなはわたしに愛を伝えてくれます。
  わたしの病状の最新情報を伝え続けて。そして、わたしを助けてくれるよう
  な特別なことを頼んでみて。わたしがらくに飲み込んでいるところや、から
  だを揺り動かして、上半身を起き上がらせるところを見せてあげて。
 37) 現在のわたしをそのまま愛して。以前のようなわたしだと思わないで。今で
  は、前と異なる脳を持っているのです。
 38) 守ってください。でも、進歩を途中で阻まないで。
 39) どのように話したり歩いたり、どんな身ぶりを見せたかを思い出させるため
  に、何かをやっているわたしの古いビデオテープを見せて。
 40) 薬物療法が疲れを感じさせ、それに加えてありのままの自分をどう感じるか
  を知る能力をぼやけさせていることも、忘れないで。

 ※脳卒中によってひらめいたこと。それは右脳の意識の中核には、心の奥深くに
  ある、静かで豊かな感覚と直接結びつく性質が存在しているんだ、という思い。
  右脳は世界に対して、平和、愛、歓び、そして同情をけなげに表現し続けてい
  るのです。(ジル・ボルト・テイラー『奇跡の脳』竹内薫訳、新潮社, pp.162-163)







◎脳血管炎の原因(『エマージェンシー神経学』メディカル・サイエンス
            ・インターナショナル、p.157)
  1. 感染症
    ・ウイルス性(水痘帯状疱疹、サイトメガロウイルス感染症、HIV感染症など)
    ・真菌性(アスペルギルス症など)
  ・細菌性(梅毒、ライム病、結核、細菌性髄膜炎など)
  2. 原発性全身性血管炎
    ・壊死性(結節性多発動脈炎、Churg-Strauss症候群、顕微鏡的多発血管炎など)
  ・巨細胞性(側頭動脈炎、高安動脈炎など)
  ・肉芽腫性(Wegener肉芽腫症、リンパ腫様肉芽腫症など)
  ・その他(Buerger病、川崎病など)
  3. 全身性疾患に続発する血管炎
  ・全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、Sjogren症候群、強皮症
    ・ Behcet病
    ・サルコイドーシス
    ・皮膚筋炎
    ・潰瘍性大腸炎
    ・セリアック病
  4. 悪性腫瘍に関連したもの
    ・ Hodgkin/非Hodgkinリンパ腫
    ・毛様細胞白血病
    ・悪性組織球増加症
  5. 薬物に関連したもの
    ・コカイン、アンフェタミン
  ・交感神経作動薬
  6. 中枢神経限局性血管炎(巨細胞性肉芽腫性血管炎、脳の肉芽腫性血管炎)