自己抗体及びそれと関連する病態

●自己抗体
 ☆抗核抗体
  ○蛍光抗体間接法

  ○抗DNA抗体:ループス腎炎

  ○抗ヒストン抗体 (LE 因子): 関節炎・ルポイド肝炎・薬剤性ループス

  ○抗非ヒストン核蛋白抗体
   ・抗U1-RNP抗体 : レーノー現象・PH
   ・抗Sm抗体 : ループス腎炎・CNSループス
   ・抗SS-A抗体 : 抗SS-A抗体症候群 (円板状皮疹・亜急性ループス皮
            疹・新生児ループス・補体欠損・乾燥症状)
   ・抗SS-B抗体 : 乾燥症状・関節炎・皮疹
   ・抗PCNA抗体 : ループス腎炎・CNSループス・血小板減少
   ・抗Ki抗体 : 間質性肺炎・乾燥症状
   ・抗scl-70抗体 : 広汎性皮膚硬化
   ・抗セントロメア抗体 : CREST・PBC
   ・抗Jo-1抗体 : 筋炎・間質性肺炎
   ・抗PL-7抗体 : 筋炎・間質性肺炎
   ・抗PL-12抗体 : 筋炎・間質性肺炎
   ・抗PM-1(Scl)抗体 : 重複症候群
   ・抗ku抗体 : 重複症候群

  ○抗核小体抗体 : 皮膚硬化

 ☆リウマトイド因子 (RA・RAPA) : 関節炎

 ☆Coombs抗体 : 溶血性貧血

 ☆血小板抗体・PA-IgG : 血小板減少

 ☆ワ反応擬陽性 : 抗リン脂質抗体症候群

 ☆抗リン脂質抗体 : 抗リン脂質抗体症候群 (血栓症・臓器梗塞・自然流
           産・死産・血小板減少・溶血性貧血・ワ反応擬陽性)

 ☆抗好中球細胞質抗体
   cANCA : 血管炎症候群
   pANCA : 顕微鏡的PN・半月体形成性腎炎

 ☆抗アシアロGM-1抗体 : CNSループス

 ☆抗リボゾーマルP抗体 : 精神症状

●免疫血清
 ☆免疫複合体・クリオグロブリン : 血管炎・免疫複合体病

 ☆血清低補体価 : 免疫複合体病・糸球体腎炎








MCTD・複合結合組織病 (3000人/1992年)

A. MCTDの臨床所見・検査所見
  診断時 初診時  
 抗U1-RNP抗体陽性 99.4%  98.3%   (II:免疫学的所見)
 Raynaud現象 99.4%  97.5%   (I:共通所見-1)
 指乃至手背腫脹 80.3%  78.7%   (I:共通所見-2)
 多発性関節炎 72.1%  70.6%   (III:A.SLE様-1)
 リンパ節腫脹 29.7%  28.0%   (III:A.SLE様-2)
 顔面紅斑 21.1%  23.6%   (III:A.SLE様-3)
 心膜炎 5.4%  3.8%   (III:A.SLE様-4)
 胸膜炎 5.7%  5.4%   (III:A.SLE様-4)
 白血球減少 50.3%  49.0%   (III:A.SLE様-5)
 血小板減少 6.0%  6.4%   (III:A.SLE様-5)
 手指に限局した皮膚硬化 63.9%  58.2%   (III:B.PSS様-1)
 肺線維症 32.9%  27.5%   (III:B.PSS様-2)
 肺拘束性障害 31.8%  26.2%   (III:B.PSS様-2)
 肺拡散能低下 47.5%  47.1%   (III:B.PSS様-2)
 食道運動低下・拡張 25.9%  19.8%   (III:B.PSS様-3)
 筋力低下 39.4%  32.6%   (III:C. DM様-1)
 筋原性酵素上昇 44.6%  36.9%   (III:C. DM様-2)
 筋電図で筋原性パターン 43.5%  41.7%   (III:C. DM様-3)
 -----------------------------------------------------------------
 discoid疹 2.5%  2.9% 
 【MCTDの診断】

 1. I-1以上陽性
 2. IIが陽性
 3. III-ABC項のうち
   2項以上につき
   それぞれ1所見以上
   が陽性
 【以上3項を満たす時】
 日光過敏症 12.8%  13.5% 
 口・鼻潰瘍 9.5%  10.9% 
 精神神経症状 4.4%  4.7% 
 溶血性貧血 1.9%  1.3% 
 尿蛋白 0.5mg/d 以上 16.1%  14.6% 
 細胞性円柱 14.8%  13.3% 
 抗DNA抗体 33.7%  33.8% 
 LE細胞 9.4%  9.3% 
 梅毒反応擬陽性 1.4%  1.8% 
 蛍光抗核抗体陽性 97.5%  96.5% 
 近位部の皮膚硬化 14.6%  12.1% 
 指尖瘢痕 16.9%  13.5% 
 上眼瞼部浮腫性紅斑 1.3%  2.2% 
 関節背面の紅斑 1.6%  1.9% 
 肺高血圧 7.0%  6.2% 
 リウマチ因子 59.7%  58.3% 
 骨・関節エロジオン 5.2%  4.3% 
 Sjogren症候群 30.2%  29.2% 
 抗Sm抗体陽性 9.0%  9.2% 
 その他抗核抗体 24.3%  22.4% 
 低補体血症%     


B. MCTD・SLE・PSSの病変の対比

  MCTD SLE PS
 診断時年齢 30 〜 50 20 〜 40 40 〜 60
 Raynaud現象 95% 以上 30 〜 50 95% 以上
 指乃至手背腫脹 70 〜 80 2% 以下 10 〜 20
 手指硬化 60 1%以下 10
 近位部皮膚硬化 25 0 90
 顔面紅斑 30 〜 40 60 〜 80 0
 多発性関節炎 80 70 〜 80 30
 筋力低下 30 〜 40 5 5
 腎症 25 60 〜 80 5
 中枢神経障害 5 20 〜 30 2% 以下
 肺線維症 30 〜 40 5 50 〜 60
 肺高血圧 10 〜 15 3 5
 漿膜炎 15 20 5
 抗U1-RUP抗体陽性 100 40 〜 50 20 〜 30
 抗Sm抗体陽性 15 25 〜 30 0
 5年生存率 (診断後) 94 90 85 〜 90


C. MCTDの直接死因
  肺高血圧症 (34%) > CNS (22%) (髄膜炎・脳出血・くも膜下出血) > 肺線
  維症 (13%) > 肺炎・肝硬変・心不全 (6%) > ML・慢性膵炎・敗血症・突然
  死 (3%)

D. MCTD の検査所見の陽性率 (厚生省研究班、1016例)
  抗nRNP抗体 (100%)・抗Sm抗体 (18%)・白血球減少 (47%)・血小板減
  少 (12%)・蛋白尿 (21%)・細胞性円柱 (11%)・筋原性酵素上昇 (35%)・
  筋電図異常 (40%)・肺線維症 (28%)・ 肺拘束性障害 (27%)・肺拡散能低
  下 (37%)・食道運動低下 (25%)

E. MCTD・オーバーラップ症候群について。
 (1). オーバーラップ症候群
    重複現象を持つ症例のうち、複数の膠原病診断基準を完全に満たすも
    の。
 (2). MCTD
    重複現象を示し、抗U1-RNP抗体が単独高力価陽性
     (高力価とは血球凝集反応で 1:1000以上、単独とは子牛、家兎胸腺
     抽出物を用いた免疫拡散法で抗RNP (U1RNP) 抗体単独陽性とし、
     特に抗Sm抗体陽性例は MCTD に含まない。)
 (3). 重複現象を示しても、オーバーラップ症候群・MCTD と診断出来ず単独
    の膠原病と診断される症例が多い。 (膠原病重複例という)








リウマチ性多発筋痛症 (PMR)

(1). 60歳以上の高齢者に好発。 (年齢は特徴的ではない)

(2). 特に朝方に強い頚部・肩甲部・四肢近位部の筋痛やこわばりを訴える。
   朝の起床時には筋痛のため起き上がることも辛い程になる。着衣・洗顔も
   出来ない程のことがある。

(3). ESR 亢進・CRP 陽性以外、他の検査異常を起こす事は少ない。

(4). 少量のステロイドが有効

(5). 発熱は必発ではないがあるとすれば 37 〜 38℃ までであることが多い。

(6). 関節痛は大関節を主体にするが痛みの殆どは筋痛の為。

(7). 側頭動脈炎は PMR の 20% に合併、通常 PMR が先行し経過中に頑固な片
   頭痛開口障害・視力障害が現れたら側頭動脈炎を考慮。








成人Still病 (ASD)

(1). JRAの全身型であるStill病が成人期に初発ないし再発するもの。

(2). FUO (原因不明熱) の原因として増加。

(3). 高度貧血や重篤な肝機能障害を起こすので注意

(4). 必ず悪性腫瘍との鑑別を要す。

(5). 39℃ 以上の弛張熱・皮疹・関節痛・咽頭痛・リンパ節腫脹・肝障害・貧
   血・白血球増多・ESR 亢進・CRP 強陽性等。しかし特徴的所見なし。

(6). 全身衰弱感が強い、咽頭痛 (70%)、リンパ節腫脹 (60%)、肝障害 (85%)
   蕁麻疹様のリウマトイド疹 (87) に注目。

(7). RA 陰性・ANA 陰性がむしろ成人Still病に特徴的。

(8). 成人Still病の約90% に血清フェリチンが著増 (診断・活動性の判定に有
   効)








抗リン脂質抗体症候群

1. 臨床所見
 (1). 静脈系
  1). 四肢 : 静脈血栓症・血栓性静脈炎
  2). 肝臓 : Budd-Chiari・肝腫大・血清酵素上昇
  3). 腎臓 : 腎静脈血栓症
  4). 副腎 : 副腎機能低下
  5). 肺  : 肺静脈梗塞・肺高血圧症
  6). 皮膚 : 網状紫斑・血管炎 (様) 皮疹・皮膚結節
  7). 眼  : 網膜静脈血栓症

 (2). 動脈系
  1). 四 肢 : 虚血・壊疽
  2). 脳血管 : (多発性) 脳梗塞・TIA・Sneddon症候群
  3). 心 臓 : 心筋梗塞・心弁膜症・心筋症・血栓症・不整脈
  4). 腎 臓 : 腎動脈血栓症・renal thrombotic microangiopathy
  5). 肝 臓 : 肝梗塞
  6). 大動脈 : 跛行・大動脈弓症候群
  7). 皮 膚 : 指尖潰瘍
  8). 眼   : 網膜動脈血栓症

 (3). その他
  1). 習慣性流産
  2). 血小板減少








三叉神経障害をおこす結合組織疾患

MCTD・PSS・RA・SLE・PM (DM)・Sjogren








サルコイドーシス

※ACE (angiotensin-converting enzyme) の上昇疾患の鑑別
 ○若い人
 ○サルコイドーシス
 ○甲状腺機能亢進症
 ○糖尿病
 ○感染症
  イ. HIV感染
  ロ. ライ病 (leprosy)・結核
  ハ. コクシジオイドマイコーシス (coccidioidomycosis)
    ヒストプラスモーシス (histoplasmosis)
 ○アミロイドーシス (amyloidosis)
 ○リンパ腫
 ○悪性組織球症
 ○PBC (primary biliary cirrhosis)
 ○その他
   ウイップル (Whipple's disease)・ゴーシェ (Gaucher's disease)

(1). 神経系の症状
 イ. aseptic meningitis
 ロ. single or multiple cranial neuropathies
 ハ. hydrochepalus
 ニ. hypothalamic lesions
 ホ. neuroendocrine abnormality
 ヘ. intraparenchymal mass lesions
 ト. multifocal changes in white matter
 チ. vasculopathy
 リ. spinal cord lesions
 ヌ. peripheral-nerve lesions
 ル. myopathy








膠原病の推定患者数 (1992年、東條毅による)

○MCTD :2700 〜 3200人 (発症は 30歳代、男:女=1:13)
○PM :3000人、 DM :3000人
○PSS :6900人
○SLE :25000 〜 23000人 (平成 6年度 39000人といわれる)








進行性全身性硬化症・全身性強皮症

a. 特に皮膚、肺、消化管の硬化性病変。
  重症型
   Tuffenelli の分類で diffuse type;Barnett の分類で type-I・II
  軽症型
   Tuffenelli の分類で acrosclerosis;Barnett の分類で type-III
    (皮膚硬化軽微にて Raynaud病、あるいは気のせいとされるこtもある)

b. 原因不明
   (血管造影障害?、免疫以上?、ムコ多糖や膠原線維代謝異常? など)

c. 頻度・性差
  6000人 (但し、軽症例は見逃されているのでもっと多い)
   男:女 = 1:3.5;20 〜 30歳で発症、確診は 30 〜 50歳

d. 初発症状
  レーノー現象 (70 〜 80%)、皮膚硬化 (20 〜 30%)、関節痛 (10 〜
   20%)
  朝のこわばり (RA との鑑別)、手足の浮腫性腫脹 (緩徐に進行)

e. 皮膚症状
  軽症型は四肢末端に重症型は全身に。
  指・手背・前腕に高度、指趾の pitting scar や潰瘍、舌小帯の短縮
  仮面様顔貌、小口症、顔面毛細血管拡張、爪郭の出血
  前額・上胸部の dyschromasia (色素沈着と脱失が混在)
  指趾の壊死 (ASO や TAO との鑑別)

f. 内蔵病変
 1). 肺病変
    両下肺野肺線維症は重症型で必発。(軽症型でも70%)
    (dermatomyositis と比べて緩徐に進行、安易なステロイド投与は
     しない)
 2). 消化器病変
  イ. 食道 : 下部蠕動運動低下、逆流性食道炎より悪心嘔吐。
  ロ. 腸 : 蠕動運動低下、仮性憩室にともない下痢・便秘を繰り返す
 3). その他
  イ. 腎硬化症 → 悪性高血圧 (稀)
  ロ. 心筋の線維化 → 不整脈
  ハ. 骨 : 指先の骨吸収、指関節狭小化。
       皮膚硬化によるための二次的亜脱臼
  ニ. 筋肉 : 筋線維の線維化のため軽度筋脱力
        (筋症状が強いものは sclerodermatomyositis という)

g. 検査所見
 1). 免疫学的所見
  ・ANA陽性 (70 〜 80%、主にspeckled type)
  ・抗Scl-70抗体 (= 抗Topoisomerase-I抗体、重症型の 30 〜 40%、
   特異度は高く診断的価値は高い)
  ・抗セントロメア抗体 (軽症型の50 〜 60%、予後がいいという判断上の
   価値がある。)
  ・抗RNP抗体 (20 〜 30%)、抗SS-A抗体、RA (30 〜 40%)

 2). 一般的血液所見
    γ-gl上昇 (40 〜 50%)、貧血、進行例で CRP が弱陽性
   ・血漿中エンドセリン
    重症例に高値を示す傾向があるが、血管病変高度例では、むしろ低値
     (結局あてにならない。)
   ・血清亜鉛
    味覚異常をきっかけに調べた。
     18/55 (重症型10/20、軽症型 8/35) で 55μg/ml 以下の低下
     8例に味覚異常、重症例 2例に体重減少。いずれも亜鉛含有
     抗潰瘍薬 (プロマック) で改善
   ・腫瘍マーカー
    CA19-9 は11/70 (15.7%)、CA-125 は15/70 (21.4%) に陽性

 3). その他有用な検査
   胸部レ線、胸部CT、肺機能、GFS、サーモグラフィー、四肢単純レ線
   ●小唾液腺生検が有用 (シェーグレンとの関連で)


h. 鑑別診断・関連疾患
 1). レーノー症状
    SLE、Chain saw、キーパンチャー、振動病、クリオグロブリン血
    症、レーノー病
     (PSS が圧倒的に多い)

 2). PSS様疾患
    特に職業性のもの (有機溶媒、パラフィン豊胸)

 3). 硬化性粘液水腫 (皮膚の浮腫性腫脹)

 4). 妊娠は SLE では禁忌だが PSS では禁忌でない。

 5). シェーグレン
    18.8% 〜 45% の合併報告あり。

 6). 橋本病
    6/40 の橋本病合併をみた (うち 3例はシェーグレンも合併)。
    頻度は多くないが今後の検討課題。








サルコイドーシスの診断のきっかけ

a. 胸部レ線で偶然発見

b. 高熱、CRP陽性など炎症症状、所見で発症

c. 結節性紅斑でサルコイドーシスを疑う

d. 眼症状 (霧視、羞明、飛蚊症) で発見 (続発緑内障、続発白内障)

e. CRP のみ陽性で精査中発見

f. 検査所見の陽性率
  ツ反陰性   血清ACE 上昇   血清リゾチーム   γ-gl 上昇
   80.2%    63.1%      69.4%      11.3%

g. その他
 イ. 病変部位の (CD4 陽性T細胞)/(CD4 陽性T細胞) 比の増加 (51.4%)
 ロ. 気管支肺胞洗浄液のリンパ球増加 (46.1%)
 ハ. 放射性Ga の取り込みの増加
 ニ. カルシウム代謝異常









抗好中球抗体(ANCA)の種類と関連疾患

種  類 対応抗原 関連疾患 陽性率
C-ANCA
 (cytoplasmic ANCA)
 好中球細胞質全体が染色
 される
proteinase3 (PR3) ・Wegener肉芽腫症 80〜95%
C-ANCA
 (perinuclear ANCA)
 好中球細胞核周囲の細胞
 質が染色される
myeroperoxidas (MPO) ・顕微鏡的多発血管炎
・Churg-Strauss症候群
・壊死性半月体形成性腎炎*
 (pauciimmune型)
・正常血圧強皮症腎
40〜80%
〜70%
〜100%

〜100%
ラクトフェリン
カテプシン
エラスターゼ
・潰瘍性大腸炎
・その他炎症性腸疾患
40〜80%
10〜40%

 ANCA:anti-neutrophil cytoplasmic antibody
 壊死性半月体形成性腎炎:時に肺出血を起こし肺腎症候群ともいわれる








Chapel Hill Consensus Conferenceにより採択された血管炎の病名とその定義

  1. 大血管の血管炎
    1. 巨細胞血管炎(側頭動脈炎)
      大動脈とその主要な分枝の肉芽腫性血管炎で、頸動脈の頭蓋外分枝に高頻度である。しばしば側頭動脈に病変を認める。通常、発症年齢は50 歳以上でリウマチ性多発筋痛症と関連がある
    2. 高安動脈炎
      大動脈とその主要な分枝の肉芽腫性炎症。通常50歳以下に発症する
  2. 中血管の血管炎
    1. 結節性多発動脈炎(cPN)
      小動脈の壊死性炎症で、糸球体腎炎や細動脈、毛細血管、細静脈に炎症を認めない。
    2. 川崎病
      粘膜皮膚リンパ節の病変を伴う大・中・小動脈の炎症。冠動脈がしばしば侵される。大動脈や静脈にも変化を伴うことがある。通常、小児の疾患である
  3. 小血管の血管炎
    1. Wegener肉芽腫症(WG)
      気道の肉芽腫性炎症と小〜中血管の壊死性炎症を認めるもの(細動脈 、毛細血管、細静脈を含む)。通常、壊死性糸球体腎炎を伴う
    2. アレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss症候群:AGA)
      気道の肉芽腫性炎症で好酸球を多く含む。また、中・小血管に壊死性炎症を認める。気管支喘患や好酸球増多症を伴う
    3. 顕微鏡的多発血管炎(MPA)
      壊死性血管炎で免疫複合体の沈着を認めない。細動脈、毛細血管、細静脈などの小血管に変化を認める。中動脈の炎症を伴っても、伴わなくてもよい。壊死性糸球体腎炎の頻度が高く、肺毛細血管炎もしばしば伴う。
    4. Schonlein-Henoch紫斑病
      IgAを主体とする免疫複合体の沈着を認める小血管の血管炎。通常は 皮膚、腸管、腎糸球体が障害され、関節炎を伴う
    5. 特発性クリオグロブリン血症
      血清中にクリオグロブリンを認め、血管璧に免疫複合体の沈着を認め る血管炎。小血管が主に障害を受け、皮膚と腎糸球体ガしばしば侵される
    6. 白血球破砕性皮膚血管炎
      全身性血管炎や糸球体腎炎を伴わない。皮膚に限局した白血球破砕性血管炎






肺腎症候群における病態比較

症状/病態
Goodpasture
SLE
Wegener's
microscopicpolyangiitis
肺出血
糸球体腎炎
上気道病変
皮 疹
関節痛
ESR著明亢進
++++
++++
-
-〜+
-
-〜+
+〜++
+ ++〜++++
+〜++
++++
++++
++++
+++
++++
++++
+++
+++
++++
+++
++++
++
+++
+++
++++
血清学的所見
抗基底膜抗体
(ANCAは非常に稀)
抗核抗体
anti-
doublestranded
DNA antibody
(p-ANCAは稀)
c-ANCA
(p-ANCAは稀)
p-ANCA
c-ANCA
(注
     +:very rare,++:uncommon,+++:common,++++:usually present
  ANCA:antineutrophil cytoplasmic antibody
 p-ANCA:with a perinuclear pattern of staining
 c-ANCA:with a cytoplasmic pattern of staining 糸球体腎炎:血尿(+)のもので、蛋白尿を考慮せず)








原発性レーノー現象(Primary Raynaud's phenomenon)の診断基準

  1. Vasospastic attacks precipitated by cold or emotional stress
  2. Symmetric attacks involving both hands
  3. Absence of tissue necrosis or gangrene
  4. No history or physical findings suggestive of a secondary cause
  5. Normal nailfod capillaries
  6. Normal erythrocyte sedimentation rate
  7. Negative serologic findings,particularly negative test for antinuclear antibodies

    (注)631人の患者を追跡すると81例(12.6%)に続発症を発症。うち1例を除いて全て結合織病だった。








主な自己抗体の検査

1. リウマトイド因子

1) RAテスト 陰性・ラテックス凝集反応 関節リウマチ○
その他の膠原病,膠原病類
縁疾患、慢性肝疾患,時に
慢性炎症や悪性腫瘍など
2) RF定量 5U/ml以下・免疫比濁法
同 上  
3) RAPA(RAHA) 40倍未満・PA法
同 上  
 
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
4) 抗ガラクトース欠損
IgG抗体
6.0AU/ml未満・ECLIA法 関節リウマチ,特に早期RA、
Serおnegative RA
5) IgG型リウマトイド因子 2.0未満・EIA法 関節リウマチ、特に活動性と
相関


2. 赤血球抗体

1) クームス試験
・直接
・間接
 
陰性・カラム凝集法
陰性・カラム凝集法
 
AIHA,CAD○
AIHA○
2) 寒冷凝集反応 32倍未満・HA法 CAD,AIHA


3. 血小板抗体

1) 抗血小板抗体 陰性・混合受身凝集法 ITP、頻回血小板輸血後
2) 血小板表面IgG(PAIgG) 25.0ng/10^7PLT以下・EIA法 ITP○
SLE、AML、悪性リンパ腫など

 

4. 抗核抗体

1) 抗核抗体(ANA) 陰性(40倍未満)
・蛍光抗体法
SLE○
その他の膠原病、膠原病類縁疾患
2) 抗核抗体(ANA) 20.0未満・EIA法 同 上 
3) 抗核抗体(LEテスト) 陰性・ラテックス凝集反応 同 上 
4) 抗DNA抗体(DNAテスト) 80倍未満・PHA法 SLE○
5) 抗DNA抗体 6IU/ml以下・RIA硫安法 SLE○
6) 抗ds-DNA IgG抗体 10U/ml以下・ELISA法 SLE○
7) 抗ss-DNA IgG抗体 10U/ml以下・ELISA法 SLE以外の膠原病
8) 抗RNP抗体 10U/ml以下・ELISA法 MCTD○
抗核抗体陽性の膠原病
9) 抗Sm抗体 10U/ml以下・ELISA法 SLE○
10) 抗Scl-70抗体
(抗トポイソメラーゼI 抗体)
10U/ml以下・ELISA法 強皮症○
11) 抗Jo-1抗体 10U/ml以下・ELISA法 皮膚筋炎、多発性筋炎○
12) 抗SS-A/Ro抗体 10U/ml以下・ELISA法 Sjogren症候群○
膠原病各疾患
13) 抗SS-B/LA抗体 10U/ml以下・ELISA法 Sjogren症候群○
14) 抗セントロメア抗体 10U/ml以下・ELISA法 強皮症○

 

5. 抗甲状腺抗体

1) サイロイドテスト
(抗サイログロブリン抗体)
100倍未満・PA法 自己免疫性甲状腺疾患○
(Basedow病、Hashimoto病)
2) 抗サイログロブリン抗体
(TgAb)
0.3U/ml以下・RIA固相法 同 上 
3) マイクロゾームテスト
(抗マイクロゾーム抗体)
100倍未満・PA法 同 上 
4) 抗甲状腺ペルオキシ
ダーゼ抗体(抗TPO抗体)
0.3U/ml以下・RIA固相法 同 上 
  +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
5) TSHレセプター抗体
(TRAb)
15.0%以下・PRA法 Basedow病○
6) TSH刺激性レセプター抗体
(TSAb)
180%以下・PRA法 Basedow病○

 

6. 抗肝抗体

1) 抗平滑筋抗体(ASMA) 陰性(40倍未満)・
蛍光抗体法
自己免疫性肝炎○
2) 抗ミトコンドリア抗体 陰性(40倍未満)・
蛍光抗体法
原発性胆汁性肝硬変○
3) 抗ミトコンドリアM2抗体 7.0未満・ELISA法 原発性胆汁性肝硬変○
4) 抗LKM-1抗体
(抗肝腎マイクロゾーム抗体)
17未満・ELISA法 自己免疫性肝炎(II型)

 

 

7. その他

1) 抗カルジオリピン抗体
(IgG)
10U/ml未満・ELISA法 抗リン脂質抗体症候群○
2) 抗カルジオリピン抗体
(IgM)
8U/ml未満・ELISA法 抗リン脂質抗体症候群○
3) 抗カルジオリピン
β2グリコプロテインI
複合体抗体
3.5U/ml未満・ELISA法 抗リン脂質抗体症候群○
 
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
4) 抗好中球細胞質抗体
(PR3-ANCA、c-ANCA)
10未満EU・ELISA法 Wegener肉芽腫症○
ANCA関連血管炎症候群○
5) 抗好中球細胞質抗体
(MPO-ANCA,p-ANCA)
20未満EU・ELISA法 急速進行性糸球体腎炎○
顕微鏡的多発血管炎○
ANCA関連血管炎症候群○
 
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
6) 抗糸球体基底膜抗体
(抗GBM抗体)
10未満EU・ELISA法 抗GBM抗体腎炎○
Goodpasture症候群○
7) 抗GAD抗体
(抗glutamic acid
decarbokylase抗体)
1.5U/ml未満・RIA法 自己免疫性膵島炎
I型糖尿病
 
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
8) 抗アセチルコリン
レセプター抗体
(抗AchR抗体)
0.2nmol/ml未満・
RIA法
重症筋無力症○
 
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
9) 抗表皮細胞間抗体
(抗デスモグレイン3IgG抗体)
7未満・ELISA法 尋常性天疱瘡○
10) 抗表皮細胞間抗体
(抗デスモグレイン1IgG抗体)
14未満・ELISA法 落葉状天疱瘡○
11) 抗表皮基底膜部抗体
(抗BP180IgG抗体)
9未満・ELISA法 類天疱瘡○
 
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
12) 抗胃壁細胞抗体 陰性(10倍未満)・
蛍光抗体法
悪性貧血
13) 抗内因子抗体 陰性・RIA法 悪性貧血
 
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
14) 抗副腎皮質抗体 陰性(10倍未満)・
蛍光抗体法
Addison病








原発性硬化性胆管炎に関連する病態

 ・潰瘍性大腸炎
 ・クローン病
 ・免疫不全状態
 ・クリプトスポリジウム感染症
 ・鎌状赤血球症
 ・自己免疫性溶血性貧血
 ・ホジキン病
 ・嚢胞性線維症
 ・セリアック・スプルー
 ・慢性膵炎
 ・慢性活動性肝炎
 ・全身性紅斑性狼瘡
 ・皮膚筋炎






多発性筋炎(DM・PM・皮膚筋炎)
(溝口秀昭ら監修『外来診療のすべて』p.736.廣済堂.1992)
1. 概念・病因
  四肢近位筋、頸筋、咽頭筋の対称性筋力低下を主徴とする横紋筋のびまん性
  炎症性疾患で、特徴的な皮膚症状を呈する時、皮膚筋炎(DM)とよぶ。病因は
  不明だが自己免疫機序の関与が想定されている。悪性腫瘍の合併がみられる
  (特に、50歳以上、皮膚筋炎、男性例に多い)。
2. 病歴
  筋力低下、発疹、発熱、せき、息切れ、体重減少の有無に特に注意して聞く。
3. 診察所見







シェーグレン症候群の病型分類(厚生省シェーグレン病調査研究班)
(内科 1995;75:1298:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
I. 乾燥症候群
  1) 乾燥症候群単独群
  2) 結合組織病様症状を伴う群
II. 結合組織病を重複する群
  1) 慢性関節リウマチを伴う群
  2) その他の結合組織病を伴う群      
III. 他の自己免疫疾患(慢性甲状腺炎、原発性胆汁性肝硬変症など)を重複する群







シェーグレン症候群の診断基準(厚生省シェーグレン病調査研究班)
(内科 1995;75:1298:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
(確実例)
原因不明の乾燥症状があり           
  1. 原因不明の乾燥性結膜炎を認めること(注1)
  2. 涙腺または唾液腺組織に特徴的な異常所見(注2)を認めること
  3. 唾液腺管造影に特異的な異常所見(注3)を認めること
以上3項目のうち、1項目以上が認められた場合
(疑い例)
原因不明の乾燥症状があり
  1. 原因不明の乾燥性角結膜炎が疑われること(注4)
  2. 唾液腺分泌機能低下(ガム試験が10分間に10ml以下)を認めること
  3. 反復性または慢性に経過し、他に原因を求めえない唾液腺腫脹
以上3項目のうち、1項目以上が認められた場合
(注1):rose-bengal試験2(+)以上で、かつSchirmer試験10mm以下、または螢光
     色素試験(+)を認めること
(注2):小葉内導管周囲に50個以上の単核細胞の浸潤が同一小葉内に少なくとも
     1か所以上認められること
(注3):直径1mm以上の大小不同の点状・斑状陰影が腺内にびまん性に認められること
(注4):rose-bengal試験(+)で、かつSchirmer試験10mm以下、または螢光色素試験(+)を認めること







シェーグレン症候群のヨーロッパ診断基準(1993年)
(内科 1995;75:1299:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
1. 眼自覚症状(3項目中1項目以上)
   (a)3か月以上毎日続くドライアイ
   (b)目に砂や砂利がはいっている感じを繰り返す
   (c)1日3回以上目薬を使う
2. 口腔自覚症状(3項目中1項目以上)
   (a)3か月以上毎日口内の渇きがある
   (b)大人になってから繰り返すあるいは持続する唾液腺腫脹
   (c)乾燥食物を飲み込むのに飲み物がいる
3. 眼他覚所見(少なくとも1項目以上が陽性)
   (a)Schirmer-I 試験(5分間5mm以下)
   (b)Rose-bengal 試験(von Bijsterveld score 4以上)
4. 小唾液腺生検(focus score 1以上)
5. 唾液腺病変(3項目中1項目以上陽性)
   (a)唾液腺シンチグラム
   (b)耳下腺造影
   (c)無刺激唾液量(15分1.5ml以下)
6. 自己抗体(3項目中1項目以上)
  (a)抗Ro/SS-AまたはLa/SS-B抗体
  (b)抗核抗体
  (c)リウマトイド因子
除外疾患:リンパ腫、AIDS、サルコイドーシス、移植片宿主相関病(GVH病)
-----------------------------------------
原発性シェーグレン症候群
  確実例 6項目中4項目を満たす(6は(a)に限定)
  疑い例 6項目中3項目を満たす
続発性シェーグレン症候群
  確実例1または2と3,4,5のうち2項目が陽性
  疑い例1または2と3,4,5のうち1項目が陽性







サルコイドーシスの診断基準
(内科 1995;75:1327:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
(1)臨床症状
  呼吸器症状(咳、息切れ)、眼症状(霧視)、皮膚症状(丘疹)など
2. 臨床所見
a. 胸廓内病変
  1) 胸部X線、CT所見(両側肺門リンパ節腫脹、びまん性陰影、血管・
胸膜変化など)
  2) 肺機能所見(VC、DLco、PaO2の低下)
  3) 気管支鏡所見(粘膜下血管のnetwork formation、結節など)
  4) 気管支肺胞洗浄液所見(総細胞数、リンパ球の増加、CD4+/CD8+上昇)
     *喫煙歴を考慮する。
b. 胸廓外病変
  1) 眼病変(前部ぶどう膜炎、隅角結節、網膜血管周囲炎など)
  2) 皮膚病変(結節、局面、びまん性浸潤、皮下結節、瘢痕浸潤)
  3) 表在リンパ節病変(無痛性腫脹)
  4) 心病変(伝導障害、期外収縮、心筋障害など)
  5) 唾液腺病変(耳下腺腫脹、角結膜乾燥、涙腺病変など)
  6) 神経系病変(脳神経、中枢神経障害など)
  7) 肝病変(黄疸、肝機能異常、結節など)
  8) 骨病変(手足短骨の骨梁脱落など)
  9) 脾病変(腫脹など)
  10) 筋病変(腫瘡、筋力低下、萎縮など)
  11) 腎病変(持続性タンパク尿、高Ca血症、結石など)
  12) 胃病変(胃壁肥厚、ポリープなど)
3. 検査所見
  1) ツベルクリン反応  陰性
  2) γ-グロブリン    上昇
  3) 血清ACE      上昇
  4) 血清リゾチーム   上昇
  5) 67Ga集積像     陽性(リンパ節、肺など)
4. 病理組織学的所見
  類上皮細胞からなる乾酪性壊死を伴わない肉芽腫病変。
  生検部位(リンパ節、肺、気管支壁、皮膚、肝、筋肉、心筋、結膜など)
     * Kveim反応も参考になる。
(2)参考事項
 1. 無自覚で集団検診により胸部X線所見から発見されることが多い。
 2. 霧視などの眼症状で発見されることが多い。
 3. ときに家族発生がみられる。
 4. 心病変にて突然死することがある。
 5. ステロイド治療の適応には慎重を要する。
 6. 結核菌培養も同時に行うことが肝要である。
(3)診断の基準
 1. 組織診断群(確実)  :(1)-2,3のいずれかの臨床、検査所見があり、
                 (1)-4が陽性。
 2. 臨床診断群(ほぼ確実):(1)-2のいずれかの臨床所見があり、
                  (1)-3の 1) または 2) を含む3項目以上陽性。
(4)除外規定
  1. 原因既知あるいは別の病態の疾患、たとえば悪性リンパ腫、結核、肺癌(癌
    性リンパ管症)、べりリウム肺、じん肺、過敏性肺炎など。
  2. 異物、癌などによるサルコイド局所反応。
    (厚生省特定疾患「びまん性肺疾患」調査研究班、1989年1月)







ベーチェット病診断基準(1987年改定)
(内科 1995;75:1310:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
1. 主症状
  1) 口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍
  2) 皮膚症状
     a. 結節性紅班
     b. 皮下の血栓性静脈炎
     c. 毛嚢炎様皮疹、痘瘡様皮疹
         参考所見:皮膚の被刺激性亢進
  3) 眼症状
     a. 虹彩毛様体炎
     b. 網膜ぶどう膜炎(網脈絡膜炎)
     c. 以下の所見があれば a. b. に準じる
         a. b. を経過したと思われる虹彩後癒着、水晶体上色素沈着、
         網脈絡 膜萎縮、視神経萎縮、併発白内障、続発緑内障、眼球瘻
  4) 外陰部潰瘍
2. 副症状
  1) 変形や強直を伴わない関節炎
  2) 副睾丸炎
  3) 回盲部潰瘍で代表される消化器病変
  4) 血管病変
  5) 中等度以上の中枢神経病変
3. 病型診断の基準
  1) 完全型
     経過中に4主症状が出現したもの
  2) 不全型
     a. 経過中に3主症状、あるいは2主症状と2副症状が出現したもの
     b. 経過中に定型的眼症状とその他の1主症状、あるいは2副症状が出現したもの
  3) 疑い
     主症状の一部が出没するが、不全型の条件を充たさないもの、および
     定型的な副症状が反復あるいは増悪するもの
  4) 特殊病型
     a. 腸管(型)ベーチェット病
     b. 血管(型)ベーチェット病
     c. 神経(型)ベーチェット病
4. 参考となる検査所見
  1) 皮膚の針反応
  2) 炎症反応
      赤血球沈降速度の亢進、血清CRPの陽性化、末梢血白血球数の増加
  3) HLA-B51(B5)の陽性
<補遺>
  1) 主症状、副症状とも、非典型例は取り上げない。
  2) 皮膚症状の a.b.c. はいずれでも多発すれば一項目でもよく、眼症状も
   a.b. どちらでもよい。
  3) 眼症状について
     虹彩毛様体炎、網膜ぶどう膜炎を経過したことが確実である虹彩後癒着、
     水晶体上色素沈着、網脈絡膜萎縮、視神経萎縮、併発白内障、
     続発緑内障、眼球瘻は主症状として取り上げてよいが、病変の由来が不
     確実であれば参考所見とする。
  4) 副症状について               
      副症状には鑑別すべき対象疾患が非常に多いことに留意せぬばならない
     (鑑別診断の項参照)。
      診断が不充分な場合は参考所見とする。
  5) 炎症反応のまったくないもは、ベーチェット病として疑わしい。
      また、γ-グロブリンの著しい増量や、自己抗体陽性は、膠原病などをむしろ疑う。
  6) 主要鑑別対象疾患
     a. 粘膜、皮膚、眼を侵す疾患
        多型滲出性紅斑、急性薬物中毒、Reiter病
     b. ベーチェット病の主症状の一つをもつ疾患
        ・口腔粘膜症状
         慢性再発性アフタ症、Lipschutz病(陰部潰瘍もある)
        ・皮膚症状
         化膿性毛嚢炎、尋常性ざ瘡、結節性紅斑、遊走性血栓性静脈炎、
         単発性血栓性静脈炎、Sweet病
        ・眼症状
         転移性眼内炎、敗血症性網膜炎、レプトスピローシス、
         サルコイドーシス、強直性脊椎炎、中心性網膜炎、青年再発性
         網膜硝子体出血、網膜静脈血栓
     c. ベーチェット病の副症状とまぎらわしい疾患
        ・関節炎症状
          RA、SLE、PSSなどの膠原病、痛風
        ・消化器症状
          急性虫垂炎、Crohn病、潰瘍性大腸炎、急性膵炎、慢性膵炎
        ・副睾丸炎
          結核
        ・血管系症状
          高安病、Buerger病、動脈硬化性動脈瘤、深部静脈血栓症
        ・中枢神経症状
          感染症・アレルギー性の髄膜・脳・脊髄炎、SLE、血管障害
          脳・脊髄の腫瘍、サルコイドーシス、梅毒、多発硬化症
          精神病、サルコイドーシス







全身性紅斑性狼瘡(SLE)分類のための1982年改定基準
(内科 1995;75:1286:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
<診断基準>                    
  1. 頬部紅斑
    鼻唇溝をさけて、頬骨隆起部上の平坦あるいは隆起性の固定した紅斑。
  2. 円板状紅斑
    付着する角化性落屑および毛嚢栓塞を伴う隆起性紅斑、陳旧性病変では
    萎縮性癖痕形成がみられることがある。
  3. 光線過敏症
    患者の病歴あるいは医師の観察による日光に対する異常な反応の結果生
    じた皮疹。
  4. 口腔内潰瘍
    医師の観察による口腔もしくは鼻咽腔潰瘍。通常は無痛性である。
  5. 関節炎
    圧痛、腫脹あるいは関節液貯留により特徴づけられ、二つあるいはそれ
    以上の末梢関節をおかす非びらん性関節炎。
  6. 奨膜炎
    a)胸膜炎:信頼しうる胸膜炎による疼痛、もしくは医師による摩擦音
      の聴取、もしくは胸水の所見。
    あるいは、
    b)心膜炎:心電図、もしくは摩擦音、もしくは心嚢液貯留の所見により
      証明されたもの。
  7. 腎障害
    a)0.5g/日以上、もしくは定量しかなかったときは 3(+)以上の持続タンパク尿。
     あるいは、
    b)細胞性円柱:赤血球、ヘモグロビン、顆粒、尿細管性円柱あるいは
    それらの混合
  8. 神経障害
    a)痙攣:有害な薬物もしくは既知の代謝異常、たとえば尿毒症、ケト
      アシドーシスあるいは電解質不均衡などの存在しないこと。
    あるいは、
    b)精神障害:有害な薬物あるいは既知の代謝異常、たとえば尿毒症、
    ケトアシト_シス、もしくは電解質不均衡の存在しないこと。
  9. 血液学的異常
    a)溶血性貧血:網状赤血球増多を伴うもの。
   あるいは、
    b)白血球減少症:2回あるいはそれ以上の測定時に白血球数が4000/mm3
      未満であること。
     あるいは、
    c)リンパ球減少症:2回あるいはそれ以上の測定時に1500/mm3未満であること。
     あるいは、
    d)血小板減少症:有害な薬物の投与なしに100000/mm3未満であること。
  10. 免疫学的異常
    a)LE細胞陽性。
    あるいは、
    b)抗DNA抗体:native DNAに対する抗体の異常高値。
    あるいは、
    c)抗Sm抗体:Sm核抗原に対する抗体の存在。
    あるいは、
    d)血清梅毒反応の生物学的偽陽性:少なくとも6か月間陽性で梅毒トレポ
      ネーマ運動抑制試験TPIあるいは梅毒トレポネーマ螢光抗体吸収試験
      FTA-ABSにより確認されたもの。
  11. 抗核抗体
     螢光抗体法もしくはそれと等価の方法で、異常高値を示す抗核抗体を検出
     すること。経過中のどの時点でもよい。“薬剤誘発性ループス症候群
     drug-induced lupus syndrom”と関連していることが知られている薬剤投与
     のないこと。

■提案された分類は11項目に基づいている。臨床的研究で患者を同定するため
には、経時的に、あるいは同時に、またどれくらいの観察期間のあいだにで
も、11項目のうちいずれかの4項目、あるいはそれ以上が存在するときに、
その患者が全身性エリテマトーデスを有しているといえる。                         







全身性紅斑性狼瘡(SLE)活動性判定基準
(内科 1995;75:1287:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
1. 発熱
2. 関節痛
3. 紅斑(顔面以外も含む)
4. 口腔潰瘍または大量脱毛
5. 赤沈亢進(30mm/時以上)
6. 低補体血症(CH50:20U/ml以下)
7. 白血球減少(4000/mm3以下)
8. 低アルプミン血症(3.5g/dl以下)
9. LE細胞またはLEテスト陽性
■3項目以上陽性を活動期と判定する。感度95.7%、特異性94.0%。







フェルティ症候群(Felty's syndrome)
(内科 1995;75:1313:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
  慢性関節リウマチ、脾腫、白血球減少症を3主徴とする症候群で1924年Feltyによ
り報告された。今日では活動性の高い慢性関節リウマチに伴う関節外症状の一型で
あり、免疫異常による顆粒球減少症を伴ったものであると理解されている。慢性関
節リウマチがあり、発熱、体重減少、脾腫、リンパ節腫大、皮下結節とともに、白
血球減少症、貧血、血小板減少がみられ、その他の関節外症状とくに血管炎を認め
る症例が多い。骨髄では顆粒球過形成があり、脾臓は洞およびリンパ炉胞過形成で、
肝硬変は認めず、皮膚潰瘍などの血管炎を合併する症例が多い。真の原因は不明で
あるが、HLA-DR4の頻度が95%と高く、家族内発症例がみられることや白人での頻度
が高いことなどから遺伝的要因が大きいとみられている。
  治療は感染症対策と慢性関節リウマチの対策の2点に分けられる。白血球減少は
顆粒球数の減少のみならずその機能障害も高度であるので、皮膚感染症、肺炎、尿
路感染になりやすく、原因菌はグラム陽性および陰性細菌、真菌であることが多い。
感染予防と感染症対策が予後を左右するのでもっとも大切である。ステロイド薬(
パルス療法を含む)は副作用が少なく、効果的であり、緊急時(好中球100/mm3以下、
血小板数4万以下で出血傾向あり、感染症を伴う場合)に抗生物質と併用してしばし
ば用いられる。抗リウマチ薬は、緊急時でない場合、白血球数を増加させるために
慢性関節リウマチの治療を踏襲する。脾摘は一過性の白血球増加効果しか得られな
いため最近は行われないことが多い。G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)、GM-CSF
(顆粒球マクロフアージコロニー刺激因子)は本症にどのような効果あるいは害悪
があるのかわかっていない。慢性関節リウマチでは関節滑膜細胞のGM-CSF産生が高
まっているとの報告があり、炎症と組織障害を生じる原因の一つである可能性があ
るので、慎重に考慮されたい。







眼サルコイドーシス診断の手引き
(内科 1995;75:1328:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
I. 臨床所見の特徴
  1. 前部ぶどう膜炎
  2. 隅角結節、周辺部虹彩前癒着とくにテント状PAS
  3. 硝子体の数珠状、雪球状、塊状または微塵状混濁
  4. 網膜結核周囲炎(多くは静脈炎、ときに動脈炎)および血管周囲結節
  5. 網脈絡膜の広範囲萎縮病変(光凝固斑様または、これに類似した不定形萎縮斑)
  ■以上6項目中3項目以上のときは臨床診断群として、サ症診断基準I-3.の
   検査所見から診断する。
<サ症診断基準I-3.とは>
   1) ツベルクリン反応     陰性
   2) γ-グロブリン       上昇
   3) 血清ACE         上昇
   4) 血清リゾチーム     上昇
   5) 67Ga集積像       陽性(リンパ節、肺など)

II.参考事項
 1. ぶどう膜炎に顔面神経麻痺、角結膜乾燥症や唾液腺障害を併発している
   場合には、本症を疑わねばならない。
2. 視神経乳頭の充血や肉芽腫はときに本症のことがある。
3. 続発性緑内障の発生に注意しなければならない。
         (厚生省特定疾患「びまん性肺疾患」調査研究班、1990年1月)







心臓サルコイドーシス診断の手引き
1. 組織診断群
 心内膜心筋生検あるいは手術によって心筋内に乾酪壊死を伴わない類上皮
 細胞肉芽腫が病理組織学的に認められる場合。                                      宅
2. 臨床診断群
 心臓以外の臓器で病理組織学的にサルコイドーシスと確診し得た症例に項目a
 と項目b〜eの1項目以上を認める場合。
   a. 心電図ないしHolter心電図で右脚ブロック、左軸偏位、房室ブロック、
     心室頻拍、心室性期外収縮(*Lown2度以上)、異常Q波、ST-T変化のいず
     れかが認められる。
   b. 心エコー図にて左室壁運動異常、局所的な壁菲薄化あるいは肥厚、左室腔
     拡大が認められる。
   c. 201TI-CIシンチグラムで潅流欠損、あるいは67Ga-Citrateシンチグラムや
     99mTc-PYPシンチグラムでの異常集積など心臓核医学検査に異常が認められる。
   d. 心臓カテーテル検査における心内圧異常、心拍出量低下、左室造影におけ
     る壁運動異常や駆出率低下が認められる。
   e. 心内膜心筋生検で非特異的病変ではあるが、有意な中等度以上の間質線維
     化や細胞浸潤などの病理組織所見が認められる。
(付)1. 完全房室ブロック、心室頻拍、経過観察中に出現してきた右脚ブロックや
     心室性期外収縮(*Lown2度以上)はとくに頻度の高い心電図変化であり、
     b〜eを認めなくても心臓サルコイドーシスを考えて対処してよい。
   2. 虚血性心疾患と鑑別が必要な場合は冠状動脈造影を施行する。
   3. 副腎皮質ホルモン投与によって上記所見の改善をみた場合は本症の可能性
     が高くなる。
*Lown分類
  0:心室性期外収縮なし
  1:散発する単一の心室性期外収縮
  2:頻発する心室性期外収縮(毎分1個以上あるいは毎時30個以上)
  3:多形性心室性期外収縮
  4:反復性心室性期外収縮 A:2連発、B:3連発以上
  5:早期性心室性期外収縮(R on T)
    (Lown B,Wolf M:Approaches to sudden death from coronary heart
    disease.Circulation 44:130,1971)
注:この手引きは厚生省特定疾患びまん性肺疾患調査研究班サルコイドーシス分科
  会の班員および研究協力者を中とした心臓サルコイドーシス症例の多い研究者
  同志が1990〜1992年の3年間に協議した結果作製されたものである。







ウェゲナー肉芽腫症(Wegener肉芽腫症)
(内科 1995;75:1314:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
  Wegener肉芽腰症は、1939年ドイツのWegenerにより報告された上・下気道の壊死
性肉芽腫性炎、細小動脈の壊死性血管炎、半月体形成性糸球体腎炎を3徴とする疾
患である。わが国では1987年に厚生省により改訂された診断基準が用いられている
(下記Tablel)。
  また、本症の病型分類としては、1976年に Mayo ClinicのDeRemeeらが提唱した
ELK分類が知られている。Eは上気道病変、Lは肺病変、Kは腎病変であり、病状の進
展もこの順であることが多く、臨床上有用である。
  さて、1985年van de rWoudeらにより、抗好中球細胞質抗体(ANCA)が、本症患
者で高率に陽性を呈することが報告された3。本疾患におけるANCAは蛍光抗体法に
てcytoplasmic patternを呈し、C-ANCAと呼ばれ、対応抗原はproteinase3である。
ANCAの抗体価は病勢を反映するといわれており、今後診断基準にも取り入れられる
可能性がある。
  <Table1. Wegener肉芽腫症の改訂診断基準>
1.主要症状
  1) 上・下気道の壊死性肉芽腫性炎による症状(鼻、口腔、咽喉頭、肺等)
  2) 血管炎による症状(皮膚、強膜等)
  3) 腎炎による症状
2.組織所見
  1) 上・下気道の壊死性肉芽腫性炎
  2) フイブリノイド型血管炎
  3) 巣状分節状または半月体形成性腎炎







悪性関節リウマチ
(内科 1995;75:1315:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
  1952年Bevansらは、腹部症状から短期間に死亡した慢性関節リウマチ(RA)を
2例剖検したところ、結節性多発動脈炎類似の血管炎を全身に認めたので、これら
例を悪性関節リウマチ(MRA)と名づけた。わが国でも血管炎を伴う生命予後不良
のRAが注目され、1973年厚生省が研究調査班を組織し、MRAの診断基準が作られた。
しかし、この診断基準では血管炎に起因しない臨床所見も含まれるなど予盾点が
指摘された。そこで、1989年厚生省特定疾患系統的脈管障害調査研究班MRA小委員
会で、MRAを血管炎をはじめ関節外症状を伴い、難治性または生命予後のわるいRA
と位置づけ、特異性の高い改定診断基準が提唱された(Table1)。現在、この改定
診断基準を用いてMRAの診断が行われている。

  <Tablel. 悪性関節リウマチの改訂診断基準>
  既存の慢性関節リウマチ(RA)に、血管炎をはじめとする関節外症状を認め、
難治性もしくは重篤な臨床病態を伴う場合、これを悪性関節リウマチmalignant
rheumatoid arthritis(MRA)と定義し、以下の基準により診断する。
■基準項目:
A. 臨床症状、検査所見
  1. 多発性神経炎
     知覚障害、運動障害いずれを伴ってもよい。
  2. 皮膚潰瘍または梗塞または指址壊疽
     感染や外傷によるものは含まない。
  3. 皮下結節
     骨突起部、伸側表面もしくは関節近傍にみられる皮下結節
  4. 上強膜炎または虹彩炎
     限科的に確認され、他の原因によるものは含まない。
  5. 滲出性胸膜炎または心嚢炎
    感染症など、他の原因によるものは含まない。
    癒着のみの所見は陽性にとらない。
  6. 心筋炎
    臨床所見、炎症反応、筋原性酵素、心電図、心エコーなどにより
    診断されたものを陽性とする。
  7. 間質性肺炎または肺線維症
    理学的所見、胸部X線、肺機能検査により確認されたものとし、
    病変の広がりは問わない。
  8. 臓器梗塞
    血管炎による虚血、壊死に起因した腸管、心筋、肺などの臓器梗塞
  9. リウマトイド因子高値
    2回以上の検査で、RAHAテスト2560倍以上の高値を示すこと
  10. 血清低捕体価または血中免疫複合体陽性
    2回以上の検査で、C3、C4などの血清補体成分の低下またはCH50に
    よる補体活性化の低下をみること。または、2回以上の検査で血中免疫
    複合体陽性(Clq結合能を基準とする)をみること(ただし、医療保険
    が適用されていないので検査のできる施設に限る)。
B. 組織所見
  皮膚、筋、神経、その他の臓器の生検により、小ないし中動脈に壊死性
  血管炎、肉芽腫性血管炎ないしは閉塞性内膜炎を認めること

■判定:definite以上の慢性関節リウマチの診断基準を満たし、上記に掲げる
項目の中で、
  1)Aの項目の3項目以上満たすもの、または、
  2)Aの項目の1項目以上とBの項目があるもの、
     をMRAと診断する。
■鑑別疾患:感染症、アミロイドーシス、Felty症候群、SLE、多発性筋炎、MCTDなど







川崎病診断の手引きと特異的所見(NIS、No.3942(H11/11/13)、1999、P23)
  主として4歳以下の乳幼児に好発する原因不明の疾患。性比は1.3〜1.5:1で男児に
 多く年齢分布は4歳以下が80〜85%、致命率は0.3〜0.5%。再発例は2〜3%に、同胞例は
 1〜2%にみられる。(*)は特異的な症状、所見。
A.主要症状
  1.5日以上続く発熱
  2.四肢末端の変化:急性期の手足の硬性浮腫*、掌蹠ないしは指趾先端の紅斑*、
           回復期の指先からの膜様落屑(重要)*
  3.不定型発疹
  4.両側眼球結膜の充血
  5.口唇、口腔所見:口唇の紅潮、苺舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤
  6.急性期における非化膿性頚部リンパ節腫脹

  6つの主要症状のうち5つ以上の症状を伴うものを本症とする。ただし、上記6主要
 症状のうち、4つの症状しか認められなくても、経過中に断層心エコーもしくは心
 血管造影法で、冠動脈瘤(いわゆる拡大も含む)が確認*され、他の疾患が除外され
 れば、本症とする。

B.参考条項
 以下の症状および所見は、本症の臨床上留意すべきものである。
  1.心血管:聴診所見(心雑音、奔馬調律、微弱心音)、心電図変化(PR・QT延長
       、異常Q波、低電位差、ST-Tの変化、不整脈)、胸部X線所見(心陰
       影拡大)、断層心エコー(心膜液貯留、冠動脈瘤*)、狭心症、末梢
       動脈瘤(腋窩部など)*
  2.消化器:下痢、嘔吐、腹痛、胆嚢腫大*、麻痺性イレウス、軽度の黄疸、血清
       トランスアミナーゼ値上昇
  3.血液:核左方移動を伴う白血球増多、血小板増多*、血沈値の亢進、CRP陽性、
      低アルブミン血症*、α2-glの増加、軽度の貧血
  4.尿:蛋白尿、沈渣の白血球増加
  5.皮膚:BCG接種部位の発赤・痂皮形成*、小膿疱、爪の横溝*
  6.呼吸器:咳、鼻水、肺野の異常陰影
  7.関節:疼痛、腫脹
  8.神経:髄液の単核球の増加、痙攣、意識障害、顔面神経麻痺、四肢麻痺







リウマチ性間質性肺炎
  リウマチ性疾患患者において急性にせよ慢性経過にせよ乾性咳、労作時呼吸困難
 の愁訴があり、胸部レ線上びまん性陰影が認められた場合、リウマチ性間質性肺炎
 つまり肺胞壁を病変の主座とする線維化形成性肺炎が疑われ、細かい鑑別診断が要
 求される。以下の理由でリウマチ性間質性肺炎は呼吸器疾患で重要。
  1.リウマチ性疾患患者に出現する各種病変のなかで間質性肺炎は患者の経過・予
   後を支配する重要な病態である。治療反応性に差異がある。
  2.人口の高齢化に伴って新たな患者が増加し、治療の進歩によって延命効果も顕
   著になってきており、以前にましてリウマチ性間質性肺炎の経験が多くなって
   きた。
  3.肺病変にのみ着目した場合、リウマチ性間質性肺炎と原因不明の特発性間質性
   肺炎との鑑別は困難で、時にはリウマチ性のもにでさえ、肺病変が先行する場
   合がある。
 A.リウマチ性肺疾患の疫学
           頻度     性     年齢
    ------------------------------------------------
    RA       不明    M>F    40〜60歳代
    SLE      9〜70%   M<F   10〜40歳代
    PSS       90%    M<F    40〜60歳代
    PM/DM     5〜30%  M<F    40〜50歳代
    MCTD      不明   
    Sjogren    30〜40%   M<F    40〜50歳代   

 B.リウマチ性疾患に見られる肺病変
              RA  SLE  PSS  PM/DM  Sjogren  MCTD
   ---------------------------------------------------------------
   急性間質性肺炎    +   ++   0   +    0    ++
   慢性間質性肺炎    ++  +   ++   +    +    ++
   間質性血管炎     +   +   +   0    0    +
   胸膜病変(+-胸水)  ++  ++   0   0    ++    ++
   限局性実質性病変   ++  +   +   0    +    +
   びまん性肺胞出血   0   +   0   0    0    +
   気管支・細気管支炎  ++  +   +   +    ++    +
   無気肺          +   ++   0   +    ++    ++
   呼吸筋力低下     0   +   0   +    0    +
   胸壁運動制限     +   0   +   0    0    0







血管炎症候群の臨床ならびに病理所見の特徴(NIH。No.3981(H12/8/12)、P25)
  疾患名           臨床所見         病理所見
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1.多発動脈炎     多臓器            中小動脈のフイブリノイド壊死
2.川崎病        小児、粘膜皮膚病変、   中小動脈のフイブリノイド壊死
             冠動脈炎
3.混合性クリオ     紫斑、クリオグロブリン  中小動脈のフイブリノイド壊死
  グロブリン血症  HB抗原
4.Churg-Strauss   喘息、好酸球増加     小血管の肉芽腫性血管炎
      血管炎
5.Wegener肉芽腫症  上・下気道病変      小血管の肉芽腫性血管炎
   -------------------------------------------------------------------
6.中枢神経系の    中枢神経系病変      中小血管の肉芽腫性血管炎
  肉芽腫性血管炎
7.過敏性血管炎    薬剤誘発性、紫斑     小血管の白血球破壊性血管炎
8.Henoch-Schonlein  小児、紫斑         小血管の白血球破壊性血管炎(IgA)
       紫斑病                        
9.低補体血症性皮膚  低補体血症、葦麻疹    小血管の白血球破壊性血管炎
       血管炎
10.巨細胞性動脈炎   老年、リウマチ性     大中動脈の巨細胞性動脈炎
               多発筋痛症、脳動
               脈病変
   -------------------------------------------------------------------
11.高安動脈炎     若年、動脈病変に     大中動脈の巨細胞性動脈炎
              よる虚血症状
12.Cogan症候群    間質性角膜炎、聴     大中小動脈病変
              ・前庭神経障害
13.Buerger病      若年、喫煙者、末梢    中小動脈の閉塞性、炎症性、
              動脈障害          非壊死性病変
14.Goodpasture    肺出血、糸球体腎炎    糸球体腎炎
    症候群     抗糸球体基底膜抗体
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







慢性関節リウマチの合併症についての知識(NIS、No.3995(H12/11/18、P1-14))
  1.呼吸器
    a.間質性肺炎・肺線維症(rheumatoid lung)
      比較的男に多い。息切れ、Velcro(fine crackle)、網状線状影-->
     honeycomb陰影。急速進行型に注意(SpO2低下、PO2低下、胸水、胸痛)
    b.胸膜炎(胸膜血管の炎症)
      RF高値でactive、比較的男に多い。結核との鑑別必要。通常片側性。
     胸水は滲出性で糖が著しく低い、補体も低い、ADAも高くない。
    c.BOOP
      斑状影が多発して移動する。比較的ゆっくり影が移動。ステロイドに
     良く反応。発熱・咳・胸痛・労作時呼吸困難で発症し肺炎と鑑別が必要。
    d.薬剤性肺炎(gold-induced pneumonitis、MTX lung)
      RAの経過中に突然生じるスリガラス陰影。好酸球増多=好酸球性肺炎。
     ステロイドが必要。多いのは金剤、他にリマチル、サラゾピリン。
     頻度は1~2/1000人。一旦起こると急激に進むので注意。
    e.肺野の塊状影、多発性結節影
      リウマチ結節が肺に達したケース。
  2.腎臓:RA自体による腎障害は、特に早期RAでは非常に少ない。薬剤性が多い。
    a.二次性アミロイドーシス(稀)
      長期罹患、強い炎症(ESR>100以上、CRP>10以上)--->蛋白尿、下痢、
     顕微鏡的血尿。
    b.シェーグレン合併ではRTA発症(稀)
      尿のPHが7を遥かにこえている。低比重。
  3.消化管:RA自体による腎障害は、特に早期RAでは非常に少ない。薬剤性が多い。
    a.薬剤性:大量出血、大量下血
      症状があまりなく、ある日突然大量出血、大量下血。
  4.肝臓:RA自体による肝障害は非常に少ない。薬剤性が多い。
    a.薬剤性:急激にトランスアミナーゼが上がる急性肝障害型が多い。
      胆汁鬱滞型は非常に少ない。MTXは容量依存性。
  5.脾臓:普通RAで脾腫大は起こらない
    a.Felty症候群:脾腫あり。長期RA罹患。好中球減少、易感染性、関節変形。
  6.造血器
    a.小球性低色素性貧血:TIBC、UIBCはRAでは増加しない。
    b.薬剤性:汎血球減少、白血球減少、血小板減少。
    c.pure red cell aplasia:サラズスルファピリジン
    d.巨赤芽球性貧血:MTXは葉酸と拮抗
    e.アミロイドーシス-->腎性貧血(正球性正色素性貧血)。Epoが効かない。
  7.神経
    a.手(両手)がしびれる:長期罹患。頚椎病変、環軸椎亜脱臼。
    b.手指の2~4指の灼熱感、ビリビリ感(夜間、手関節の背屈で悪化):
      手根管症候群(正中神経圧迫症状)
     (妊娠、サルコイドーシス、甲状腺機能低下でも生ずる)
    c.薬剤性無菌性髄膜炎:ブルフェン、イブプロフェン、クリノリルなど
    d.痙攣:ナパノール+ニューキノロン
    e.多発性神経炎:神経栄養血管の血管炎が原因
      glove and stocking型知覚障害。運動神経障害も起こし得る。
  8.皮膚
    a.didital vasculitis:手の末梢の血管炎に伴う血管梗塞(MRA)
    b.リウマトイド結節:中心部はcentral necrosis、柵状配列(palisading
      layer)、最外側は肉芽組織という3層構造。治療が遅れたら出来る。
      肘、後頭部、仙骨など外からの物理的刺激を受け易い部位に多い。
    c.MTX-indused nodulosis
      MTX投与例で指先に発赤、腫脹、硬結の多発。MTX有効例に多い。
  9.眼
    a.上強膜炎、紅彩炎(血管炎に伴う=MRA)
      紅彩炎はRAでもよく起こる。上強膜炎はで悪化するとステロイド全身
     投与が必要。







Chappel Hill会議により採用された血管炎の病名(1994)
  1.大血管の血管炎
   巨細胞血管炎(側頭動脈炎)
   高安動脈炎
  2.中血管の血管炎
   結節性多発動脈炎
   川崎病
  3.小血管の血管炎
   Wegener肉芽腫症
   アレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss症候群)
   顕微鏡的多発血管炎
   Henoch−Schonlein紫斑病
   特発性クリオグロブリン血症
   皮膚白血球破砕性血管炎







Fauciの血管炎分類
  1.全身性壊死性血管炎(結節性多発動脈炎群)
   古典的結節性動脈炎
   アレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss症候群)
   多発血管炎オーバーラップ症候群
  2.過敏性血管炎
   Henoch−Schonlein紫斑病
   血清病、血清病様反応
   その他の薬剤誘発性血管炎
   感染症に伴う血管炎
   悪性新生物に伴う血管炎
   結合織病に伴う血管炎
   その他の基礎疾患に伴う血管炎
   先天的補体欠損症
   持久性隆起性紅斑
  3.Wegener肉芽腫症
  4.巨細胞性動脈炎
   頭蓋あるいは側頭動脈炎
   高安動脈炎
  5.その他の血管炎症候群
   皮膚粘膜リンパ節症候群(川崎病)
   ベーチェット病
   中枢神経系に限局した血管炎
   閉塞性血栓性血管炎(Buerger病)
   混合性血管炎







抗リン脂質抗体症候群診断基準案(Sapporo Criteria-1998)
 臨床所見
  1.血栓症
    画像診断、Doppler検査または病理学的に確認されたもの(表在静脈の血栓症
   をのぞく)
  2.妊娠合併症
   a.妊娠10週以降で、他に原因のない正常形態胎児の死亡、または
   b.重症子癇前症、子癇または胎盤機能不全による妊娠34週以前の形態学的異常
    のない胎児の1回以上の早産、または
   c.妊娠10週以前の3回以上つづけての他に原因のない流産
 検査基準
  1.標準化されたELISA法によるβ2グリコプロテインI依存性抗カルジオリピン抗体
   の測定法において、中等度以上の力価のIgG型またはIgM型の抗カルジオリピン
   抗体が、6週間以上の間隔をおいて2回以上検出される。
  2.国際血栓止血学会のループルアンチコアグラントガイドラインに沿った測定法で、
   ループスアンチコアグラントが6週以上離れた機会に2回以上陽性であること。す
   なわち
   a.リン脂質依存性凝固反応(活性化部分トロンボプラスチン時間、カオリン凝固
    時間、希釈Russell蛇毒時間、テキストラン時間など)の延長が認められる。
   b.正常乏血小板血漿との混合試験で延長した凝固時間が補正されない。
   c.過剰のリン脂質の添加により凝固時間が補正または短縮される。
   d.他の凝固異常が除外できる。

 臨床所見の1項目以上が存在し、かつ検査項目のうち1項目以上が存在するとき抗リン
 脂質抗体症候群とする。除外項目はこれを設けない。







SLE関連血球貪食症候群の診断の目安(日内雑誌2001;90:1436)
 1. 進行性の2系統または汎血球減少(とくにWBC2500/μl未満)
 2. 肝機能障害(GOTまたはGPT基準値上限の3倍以上、通常100U/l以上)
 3. 高フェリチン血症(基準値上限の4倍以上、通常1000ng/ml以上)
 4. FDP(フイブリン分解産物)高値
 5. 持続する高熱

  SLE活動期に上記1.を認め、さらに2.〜5.の内1つ以上満たす場合に、骨髄穿刺(ま
たはリンパ節生検)で血球貪食細胞増加を認めればSLE関連血球貪食症候群と診断でき
る。

 *ステロイド投与中の場合臨床所見が軽微な場合あり。
 *SLE非活動期ではIAHSを疑う。







後腹膜線維症の原因(日内雑誌2001;90:1478)
 1.特発性(約70%)
 2.続発性(二次性、約30%)
  (1)薬剤性
    麦角アルカロイド:methysergide、bromocriptineなど
    鎮痛薬:Phenacetinなど
    降庄薬:methyldopa、hydralazineなど
    β−ブロツカー
  (2)悪性疾患
    泌尿生殖器系腫瘍:膀胱癌、前立腺癌、
    消化器系腫瘍:胃癌、大場癌、カルチノイドなど
    血液疾患:悪性リンパ腫など
  (3)腹部大動脈瘤
  (4)膠原病・結合組織病
    血管炎、SLEなど
  (5)感染症・炎症性疾患
    虫垂炎、Crohn病など
  (6)外傷







膠原病でみられる皮膚症状(日内雑誌2001;90:1483)
 疾患名          特異疹*          非特異疹**
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  SLE         牒形紅斑(Malarrash)    Raynaud現象
             円盤状紅斑(DLE)      アクロチアノーシス
             (口腔内潰瘍)        凍瘡棟皮疹
             (光線過敏)          網状皮斑
                              クリオグロブリン血症
-----------------------------------------------------------------------------
 皮膚筋炎      ヘリオトロープ疹         肢端潰瘍
             Gottron徴候            紫斑
             多形皮膚萎縮(poikiloderma) 毛細血管拡張
                                皮膚潰瘍、壊疽
                                血栓性静脈炎、血栓症
-----------------------------------------------------------------------------
 全身性強皮症   皮膚硬化            じんま疹
             斑状毛細血管拡張       滲出性紅斑
             舌小体硬化           環状紅斑
             (Raynaud現象)         口内炎、口腔潰瘍
-----------------------------------------------------------------------------
 関節リウマチ     リウマチ結節
-----------------------------------------------------------------------------
 Sjogren症候群    環状紅斑            爪囲紅斑
              高ガンマグロプリン性紫斑  爪上皮の延長
-----------------------------------------------------------------------------
 結節性動脈周囲炎  多発性潰瘍          光線過敏
               分枝状皮斑          脱毛
                                石灰沈着
-----------------------------------------------------------------------------
 混合性結合組織病  ソーセージ様指関節腫脹   皮膚アミロイドーシス
               (Raynaud現象)
-----------------------------------------------------------------------------
 ベーチェット病    再発性アフタ
              結節性紅斑
              毛嚢炎
              血栓性静脈炎
              針反応
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  *特異疹:疾患特異的ないし関連の深い皮膚症状
 **非特異疹:膠原病に比較的高頻度にみられるが非特異的な皮膚症状
 ()は診断基準に記載、ないし高頻度に見られるが、特異性に欠く症状







ループス膀胱炎診断基準案(日内雑誌2001;90:1450)
 1. SLE:アメリカリウマチ協会(ARA)のSLEの診断基準を満足すること
 2. 膀胱症状:頻尿・排尿感・残尿感があり、かつ尿培養陰性・尿中白血球増加を
   伴わない
 3. 消化管症状:低補体価などSLE活動期に一致した原因不明の悪心、嘔吐、下痢
 4. 水腎症:IVP(intravenous pyelography)、あるいは超音波で確認
 5. 病理像:問質性膀胱炎;勝胱生検で粘膜下の細胞浸潤・浮腫あるいは粘膜下血管
       壁に免疫グロプリンの沈着

 1.があり、2.3.4.の中から2項目以上、および5.の病理像を有するものを確診とする。
 除外項目:神経因性膀胱、後腹膜線維症







ぶどう膜炎とその臨床
1.自覚症状
  視力低下、霧視、飛蚊症、羞明、流涙、疼痛、調節障害、変視症、暗点
2.眼科的検査:省略(NIS、No.3856(H10/3/21)、P37を参照)
        上記自覚症状があれば眼科に紹介。
3.検査所見
  a.ベーチェット病では増悪時に好中球増多。
  b.血沈、CRP:個人差が大きいが、症状と関連すれば活動性の指標となる。
  c.免疫グロブリン:炎症によりIgG、IgA、IgMが高くなる。
            ベーチェット病ではIgA、原田病ではIgDが高値。
  d.血清補体値(CH50):ベーチェット病で増悪時に高値となりC3の上昇を
               伴う。
  e.ACE:サルコイドーシスの症状と関連して高くなる。
  f.梅毒血清反応:梅毒性ぶどう膜炎の診断。
  g.トキソプラスマ赤血球凝集反応:トキソプラスマ性脈絡網膜炎で陽性、特に
                   先天性のもので高値。しかし陰性でも否定
                   出来ない。
  h.RA:リウマチ性ぶどう膜炎の診断。
  i.HLA(ヒト主要組織適合抗原):ベーチェット病ではB51、原田病はDR、
                    強直性脊椎炎ではB27と関連。
  j.ツ反応
    ・結核、ベーチェット病、トキソプラスマで陽性。
    ・サルコイドーシスでは陰性
  k.髄液:原田病、交感性眼炎で細胞増多。
  l.ウイルス、細菌検査:ぶどう膜炎の鑑別に必要。
4.ぶどう膜炎を合併する主要疾患
 A.ベーチェット病
   ※我が国の内因性ぶどう膜炎で最も多く約20%を占める。後天的失明の原因
    としても重要。
  (1)診断:完全型と不全型を確定診断とする。(副症状2つ=主症状1つと同等)
       ・完全型:主症状の4つが全て揃ったもの
       ・不全型:主症状のうちの3つ、または眼症状と外の主症状のうちの
            1つが出現したもの。

    1)主症状
      イ.口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍:必発。初発症状のことが多い。
        頬粘膜だけでなく、舌・口唇・歯肉・扁桃・咽頭などにもできる。
      ロ.皮膚症状:ほぼ必発。多彩。
       a.結節性紅斑様皮疹:暗赤色、やや隆起、数cm大、下肢伸側を中心に
                  多発。
       b.毛嚢炎様皮疹:頚部、頭部、顔、前胸部、背部に好発。ニキビに
                似る。円形で赤みを帯び、膿点を持つ小皮疹
       c.血栓性静脈炎:頻度は低いが特徴的で診断価値は高い。
                四肢の皮下で索状のしこりとして触知、圧痛あり。
       d.皮膚の被刺激性亢進:化膿しやすく、ヒゲ剃り後や注射針の刺入
                   後に起こり易い。
      ハ.陰部潰瘍:女性に多い。外陰部にアフタ性の潰瘍。腟にもできる。
             月経前に多い。男では陰嚢に好発、陰茎・亀頭にもできる。
             肛門粘膜にもできるので注意。
      ニ.ぶどう膜炎:90%以上は両眼性。殆どが再発する。多くは眼外性
              症状が出た後で発症。男性に多発、男手は重篤な眼底
              の炎症を繰り返し視力の予後は不良。
              女性は軽症が多いし、ぶどう膜炎を欠くものも多い。
              気象の変動などで発症。
              激しいぶどう膜炎を眼発作という。
       a.前部ぶどう膜炎:詳細略
       b.後部ぶどう膜炎:詳細略
    2)副症状
      イ.関節炎:患者の60%以上に発症。女性にやや多い。大関節中心。
            RA反応陰性。骨・関節破壊はない。
      ロ.副睾丸炎:数%と頻度は少ないが、結核を除外出来れば、診断価値は
             高い。
      ハ.精神神経症状:精神症状、錐体路症状、脳神経症状など多彩。
      ニ.消化器症状:消化器粘膜に潰瘍の多発。回盲部に好発し虫垂炎との
              鑑別が必要。腸穿孔は死因となる。
      ホ.血管症状:大中血管に閉塞や動脈瘤を生じて、動脈瘤破裂は死因と
             なる。

 B.サルコイドーシス:概ね省略。眼科で指摘されることが稀でない。
            前部・後部ぶどう膜炎の外に、涙腺腫脹、乾性角結膜症、
            角膜帯状混濁、顔面神経麻痺、眼筋麻痺、視神経炎、乳頭
            浮腫などがみられる。
   ※TBLBにてBAL(気管支肺胞洗浄)を行い、洗浄液も検査する。
    診断価値は高い。総細胞数増加、リンパ球数増加、CD4/8上昇をみる。

 C.原田病(Vogt-小柳-原田病)
      ※自己のメラノサイトを標的とする免疫応答異常による、自己免疫疾患
       と考えられている。
      ※原田型:眼底病変型。ほとんどを占める。
       Vogt-小柳型:前眼部病変型
    1)眼症状:概ね省略。
          交感性眼炎と症状が酷似。
          夕焼け状眼底は特徴的(発症2〜10か月頃)
    2)眼外症状
       ・初期:頭痛、耳鳴り、難聴。頭髪の接触感異常、角膜輪部の色素脱失。
       ・発病1〜2か月:皮膚白斑。毛髪や眉毛の白変や脱毛。
       ・髄液の細胞増多が発病初期に必発。







リウマチ性胸膜炎における一連の病理組織変化(NEJM 2002;346:849)
  1. Fiblin
  2. Neutrophilic exudate
  3. Lymphocytic inflammation
  4. Mesothelial hyperplasia
  5. Multinucleated mesothelial cells
  6. Palisading histiocytes
  7. Rheumatoid nodulee
  8. Fibrosis






ウェジナー肉芽腫症(Wegener's granulomatosis)の肺病変(NEJM 2002;346:1898)
  1. 急性病変
Y  1) 血管病変
     ・壊死性動脈炎と壊死性静脈炎
     ・毛細血管炎
Y  2) 血管外病変
     ・微小膿瘍(Microabscess)
     ・壊死性細気管支炎(Necrotizing bronchiolitis)
     ・柵状肉芽腫(Palisading granuloma)
     ・びまん性の肉芽腫様組織(Diffuse granulomatous tissue)
  2. 亜急性病変
   1) 血管病変
     ・肉芽腫性動脈炎と壊死性静脈炎
   2) 血管外病変
     ・肉芽腫性細気管支炎
     ・線維性細気管支炎(Fibrosing bronchiolitis)
     ・柵状肉芽腫(Palisading granuloma)
     ・びまん性の肉芽腫様組織(Diffuse granulomatous tissue)
  3. 慢性病変
   1) 血管病変
     ・分節性壁在性瘢痕形成(Segmental mural scarring)
     ・線維性閉塞(Fibrous occlusion)
     ・ヘモジデローシス
   2) 血管外病変
     ・不規則かつ明瞭に区別され得る、柵状に並んだ組織球を伴った壊死組織
     ・炎症性腫瘤
     ・リポイド肺炎(Lipoid pneumonia)
     ・間質性肺臓炎
     ・空洞形成を伴った瘢痕






後腹膜線維症(retroperitoneal fibrosis)の原因(GAMUT IN RADIOLOGYより)
  A. Common
  1. Drug reaction (eg, methysergide, ergotamine, hydralazine)
  2. Idiopathic
  B. Uncommon
  1. Amyloidosis
  2. Appendicitis, perfrated  
  3. Carcinoid tumor
  4. Collagen disease  
  5. Crohn's disease (fistula)
  6. Diverticulitis of colon
  7. Extravasated contrast medium (esp. Thorotrast)
  8. Fungus disease (esp. histoplasmosis)
  9. Hemorrhage, traumatic or bleeding disorder?
  10. Lymphogranloma venereum
  11. Lymphoma (esp. nodular sclerosing Hodgkin's disease)
  12. Mediastinitis (extension)
  13. Mesenteritis, retractile; Weber-Christian s.
  14. Pancreatitis
  15. [Pelvic lipomatosis]
  16. Postoperative
  17. [Psoas muscle hypertrophy]
  18. Radiation fibrosis
  19. Retroperitoneal extension of scirrhous or desmoplastic carcinoma
   (eg, stomach, colon, prostate)
  20. Riedel struma
  21. Sclerosing agent (for hemorrhoids)
  22. Tuberculosis
  23. Urinary extravasation (eg, trauma)
  ([ ]で囲んであるのは、直接の原因ではないがレ線上同じ様にみえる疾患)