◎アレルギー反応の分類 (Coombbs & Gell)◇ I 型:IgE依存型 (アナフィラキシー・即時型):IgE・mast cell・化学伝達
物質
アトピー性皮膚炎・喘息・アレルギー性鼻炎・アナフィラキシーショック・
ABPA
※mast cell・basophil・eosinophil・Histamin・SRS-A
※標的細胞:平滑筋
※ロイコトリエン受容体拮抗剤
オノン (プランルカスト・小野・2cap*2/d)◇II 型:細胞障害 (融解)型:IgG・IgM・補体活性化
不適合輸血・Pemphigus・Pemphigoid・Goodpusture・白血球減少症・
AIHA・母子間血液型不適合・黄疸
※補体細胞 (C1-9)・マクロファージ・phagocytosis
※標的細胞:細胞融解◇III型:IgG・補体活性化・好中球遊走
血清病・ABPA・過敏性肺臓炎・SLE
※補体細胞 (C3a,C5a,C567)・Neutrophil・Lysosomal enzyme
※標的細胞:血管◇IV 型:細胞免疫型 (遅延型):T細胞
接触皮膚炎・アトピー性皮膚炎・細菌免疫・真菌免疫・ウイルス免疫・過敏
性肺臓炎
※感作リンパ球・リンフォカイン・Lysosomal enzyme
※標的細胞:結合組織※食餌性アレルゲン
ヤケヒョウダニ (83%)・カンジダ (65%)・アルテルナリア (49%)・卵白
(46%)・イヌ皮膚 (46%) ・米 (34%)・ネコ皮膚 (32%)・ソバ (29%)・サ
バ (23%)・大豆 (22%)・ミルク (11%)・小麦 (11%)※吸入系アレルゲン
◇気管支喘息
ヤケヒョウダニ (74%)・蛾 (53%)・スギ (43%)・カンジダ (30%)・ネコ
皮膚 (23%)・ブタクサ (20%)・カモガヤ (19%)・イヌ皮膚 (17%)・ヨモ
ギ (14%)・アルテルナリア (12%)・アスペルギルス (11%)◇アレルギー性鼻炎
スギ (72%)・ヤケヒョウダニ (53%)・カモガヤ (42%)・蛾 (32%)・ヨモ
ギ (27%)・ブタクサ (25%)・ネコ皮膚 (22%)・イヌ皮膚 (18%)・アルテ
ルナリア (12%)・カンジダ (11%)・アスペルギルス (4%)※金属アレルゲン
◇頻度の高いもの
クローム・コバルト・ニッケル・水銀
◇頻度の低いもの
金・パラジウム・プラチナ・Rh
◇頻度のごく低いもの
アルミニウム・マンガン・鉄・銅・亜鉛・カドミウム・スズ・Ir・鉛★皮膚症状:アレルギー性接触皮膚炎・扁平苔癬・掌蹠膿疱症・その他
○歯科金属アレルギー:扁平苔癬・掌蹠膿疱症 (特に水銀)
○水銀:全身性水銀症:猩紅熱様の発疹※シラカンバ花粉症と関連する果物・野菜アレルギー
a.関連性が明瞭
ヘーゼルナッツ・リンゴ・モモ・サクランボ・アーモンド・クルミ・ナ
シ・ニンジン・スモモ・ジャガイモ・ブラジルナッツ・ピーナッツ・ア
ンズ・ココナッツ(罹患率の高い順)b.関連性が疑われる
トマト・オレンジ・ブドウ・キウイ・パセリ・カブ・セロリ・アボカド
(罹患率の高い順)c.関連性がないと考えられる
イチゴ・エンドウ・バナナ・タマネギ・イチジク※スギ花粉症と果物アレルギー
a. 404人中 30人 (7.4%) に果物過敏症を認める。
b. メロン > モモ > スイカ > キウイ > リンゴ > イチジク に果物過敏症あり。
c. 果物アレルギーの診断
イ. 問診
ロ. IgE-RAST
ハ. 生の果物の果汁を適当に希釈してプリックテストをする。
※注意
果物アレルゲンは一般に熱に不安定であり缶詰など加熱加工してあると
過敏症状は抑制されるか出現しにくい。
◎アトピー性皮膚炎 (H8/5/16、勉強会より)(1). 病因論:アトピーと皮膚炎は全く違う、なぜアトピー性皮膚炎が存在する
か?
1). アトピー:IgE により惹起される I型アレルギー (蕁麻疹)
2). 皮膚炎 (湿疹) :T-リンパ球が関する IV型アレルギー抗原はどこから 反応の場 タイプ
アトピー 血行性 真皮 I 型 (IgE)
皮膚炎 経皮的 表皮 IV型 (T-リンパ球)○I 型アレルギー (蕁麻疹 = 真皮浮腫・膨疹・痒み・熱・頭痛・倦怠感等)
抗原 (血行性侵入) ━→ IgE が肥満細胞に付着 ━→ 脱顆粒 ━→ 化学伝達物質
遊離 ━→ 血管の透過性亢進 ━→ 真皮の浮腫○IV型アレルギー (皮膚炎 = 漿液性丘疹・苔癬化)
抗原 (経皮的侵入) ━→ ランゲルハンス細胞と反応 ━→ Th1 (T-リンパ球)
への抗原提示 ━→ サイトカイン・IL-2・γINF ━→ 皮膚炎★アトピー性皮膚炎 (原因はまだ十分掴めてない)
抗原 (経皮的侵入) ━→ IgEと結合 ━→ ランゲルハンス細胞と反応 ━→ *へ┏→ IL-3 ━→ 肥満細胞刺激 ━→
* Th2 (T-リンパ球) への抗原提示 ━╋→ IL-4 ━→ B-リンパ球刺激 ━→
┃ ┗→ IL-5 ━→ 好酸球刺激 ━→
┃
┗━ ? → 皮膚炎 (★アトピー性皮膚炎)(2). アトピー性皮膚炎のその他の知識
○13歳以上は成人型という
○乳幼児の7%にアトピー性皮膚炎、男女差なし。都市部に多い
○成人型は遺伝傾向(3). アトピー性皮膚炎の合併症
○皮膚
とびひ・水イボ・カポシ水痘様発疹症 (herpes symplex)・真菌症・円
形脱毛症・手湿疹 (主婦湿疹等)
○眼
結膜炎・白内障・網膜剥離等、 (緑内障は少ない)
◎自己免疫性溶血性貧血(1). "warm" form (IgG autoantibody)
◇30 〜 50歳代の女性に多い
◇脾腫あり
◇ステロイドが効く(2). cold-agglutinin disease (IgM autoantibody)
◇60歳以上
◇脾腫をみることは少ない (B-cell lymphoma 又は CLLでは脾腫をみる)
※慢性寒冷凝集素症で脾腫がありその中に多発性に低吸収域があれば B細
胞リンパ腫と確診して良い。
◇ステロイドが効かない
◎Urticarial vasculitis (慢性蕁麻疹との鑑別)(1). 24時間以上続き、紫斑* をともない、痛みあり、色素沈着を残す。
かゆみはあるかも知れない。 (慢性蕁麻疹は必ずかゆみあり)(2). 発熱*、関節痛、腹痛、腎炎*、喘息発作をともなう。
(慢性蕁麻疹では関節痛、腹痛は余りない)(3). 血沈亢進、急性相反応蛋白の増加。
(慢性蕁麻疹でも時々ある)(4). C3の減少* をみることがある。
(慢性蕁麻疹ではない)(5). 血清中にimmune complexが証明* されることがある。
(慢性蕁麻疹ではない)(6). 抗ヒスタミン剤が効かぬことが多い。
(慢性蕁麻疹ではよく効く)(7). Histologic features of skin
◇venular endothelial-cell swelling (+) (慢性蕁麻疹では +-)
◇leucocyte invasion of venular endothelium (+) (慢性蕁麻疹では+-)
◇extravasation of red cells (+)* (慢性蕁麻疹ではない)
◇leucocytoclasia (+)* (慢性蕁麻疹ではない)
◇fibrin deposition (+) (慢性蕁麻疹では +-)(8). 蛍光抗体法による観察
◇C3 (+) (慢性蕁麻疹では証明されない)
◇免疫グロブリン (+) (慢性蕁麻疹では +-)
◇フィブリン (+) (慢性蕁麻疹では +-)※ (*)印は Urticarial vasculitisのdiagnostic criterion
◎特発性浮腫 (確定診断を急がず、しばらく様子をみる必要がある)(1). もっぱら女性に見られる
(2). 好発年齢は20 〜 40才 (15 〜 60才の間)
(3). 浮腫は一過性ないし持続性、特に立位で増悪 (尿量減少) する傾向
(4). 浮腫は全身性、特に足首や下肢に強い。腹部膨満を訴える
(5). 健康な女性の BW の日内変動は 0.6Kg 程度だが、特発性浮腫では1.4Kg
以上の BW 増加と尿量減少あり。(6). 多彩な不定愁訴を伴う。腹痛・頭痛・胸部不快感・狭心症様症状・不安・
焦燥・神経質・鬱状態。(7). 診断:心疾患・腎臓疾患・肝疾患・リンパ性浮腫・ネフローゼ等を除外
○体重測定
1.4Kg 以上の体重の日内変動を確認○水負荷試験
20ml/Kg の水負荷を、日を替えて行う。負荷後立位と仰臥位でそれぞ
れ 4 時間後の尿量を測定 (健康であれば負荷量の 65% 以上を排泄る)。
特発性浮腫の場合、立位での尿量が激減する (仰臥位では問題なし)。
利尿剤は 6W 以上禁止、たばこは 48時間以上禁止。但し陰性でも特発
性浮腫を除外出来ない (特発性浮腫の 20% では陰性)○立位では FENa と CCr が著明に減少
○血清・尿アルドステロンの増加、ADH、プロラクチンも増加。
○尿中ドパミン排泄量低下
○習慣的に利尿剤を黙って服用している場合は高レニン・低カリウム
低マグネシウム血症あり。
◎免疫グロブリン異常症(1). 多クローン性免疫グロブリン異常
I. 増加症
1. 感染症
HBV・HCV・HIV・cytomegalovirus等ウイルス、結核・ライ、梅
毒、カンジダ・アスペルギルス・クリプトコッカス、カラアザール、
リーシュマニア・トリパノソーマ etc2. ヒト・アジュバント病 (珪肺・乳房形成後)、サルコイドーシス等
3. 膠原病、自己免疫疾患
4. 肝疾患
慢性活動性肝炎、自己免疫性肝炎、肝硬変等5. (類)腫瘍性疾患
IBL、AILD、Castlemanリンパ腫、IPL、サルコイドーシス、リンパ
腫、CLL、単球性白血病6.その他
糖尿病、火傷の回復期、癌等II.減少症
1. 原発性免疫不全症
X染色体性無γ-gl血症、高IgM症候群、IgH鎖遺伝子欠失症、κ鎖欠
損症 、IgA単独欠損症、IgGサブクラス欠損症、乳児一過性γーgl血症、
重症複合免疫不全症、ADA欠損症、細網異形成症2.続発性Ig減少症
1). Ig産生低下
リンパ腫、CLL、骨髄腫における正常Ig成分、免疫抑制剤や抗癌剤
によるもの
2). Igの喪失
ネフローゼ症候群、蛋白漏出性胃腸症、火傷、腹水、失血等
3). Igの異化亢進
家族性本態性低蛋白血症、筋緊張性ジストロフィー、甲状腺機能亢
進症、ステロイド投与等
(2). 単クローン性免疫グロブリン異常
I. B細胞の単クローン性増殖
1. 骨髄腫 (各種:くすぶり型・非活動性・顕性他)
G > A > D > E2. 原発性マクログロブリン血症
IgM (κ > λ) + BJP3. 寒冷凝集素症
IgM (κ)4. M 蛋白を伴うリンパ増殖性疾患 (CLL・B-cell リンパ腫)
5 .H鎖病 (γ、α、μ-鎖病)
α > γ > μ + BJP6. AL (AH) アミロイドーシス
λ > κBJP + IgG、A、M、D7. L鎖・H鎖沈着症:λ < κBJP
8. 本態性B-J蛋白尿 (骨髄腫・アミロイドーシスを除く)
BJP が 1g/d 以上9. 成人発症 Fanconi 症候群
κBJP10. 末梢神経症を伴うM蛋白血症
IgG、IgA、BJP、IgM11. 骨硬化性骨髄腫 (POEMS・Castleman)
IgG > IgA ( < 3g/dl)12. 単クローン性クリオグロブリン血症-I (IgG、IgA、IgM)
II (IgG、、IgM + 多クローン性Ig)13. 粘液水腫性苔癬
IgG (λ > κ)14. 壊疽性膿皮症
IgA15. Gaucher病
IgG16. systemic capillary leak syndrome
IgG (κ)17. 後天性 C1 esterase inhibitor 欠損症
(IgG、IgM)
II. B細胞の反応性増殖に伴うもの
1. 感染症2. 感作症 (CH・肝硬変・癌等)
IgG、IgM、IgA3. 膠原病、自己免疫疾患
IgA、IgM、IgG4. 原発性免疫不全症
III.意義不明のM蛋白血症 (MGUS)
1. 良性M蛋白血症 (といわれている) 状態
IgG、IgM、IgA、IgD2. 高齢者、健常人
◎自己免疫性肝炎診断基準
(内科 1995;75:1067:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
<概念>
女性に好発し、早期に肝硬変への進展傾向を示す慢性活動性肝炎であり、
その病因としては自己免疫性機序が関与し、ウイルス、アルコール、薬物など
は除外される。
コルチコステロイドが著効を奏する。
I. 主要所見
1. 持続性または反復性の血清トランスアミナーゼ活性の上昇
2. 血清γ-グロブリン値が2.5g/dl以上またはIgG値が2500mg/dl以上
3. 自己抗体の陽性:a)またはb)
a)LE細胞現象陽性(註1)
b)抗核抗体陽性またはLE test陽性(註2)
4. IgM anti-HA陰性、HBs抗原陰性かつanti-HBc陰性または低力価
5. C型肝炎ウイルス関連マーカーが原則として陰性(註3)
II. 副所見
1. 発熱、関節痛、発疹などの全身症状を認める。
2. 膠原病を含む自己免疫性疾患の合併(註4)
3. 検査所見:a)またはb)
a)血沈の促進(30mm/hr以上)
b)CRP陽性
III.組織学的所見
著明な形質細胞浸潤と肝細胞壊死所見が目立つ活動性の慢性肝炎、肝硬変で
ある(註5)。
■診断
1)I.のすべての項目および III.を満足する場合を確診とする。
2)I.のすべての項目を満足する場合は自己免疫性肝炎が疑われ、I.のすべての
項目を満足し、さらに II.のうち1項目を認めた場合は自己免疫性肝炎が極め
て疑わしい。
(註1)自己免疫性肝炎のうちLE細胞現象陽性の場合ルポルド肝炎と呼ぶこともある。
(註2)抗核抗体陰性で肝腎マイクロソーム1抗体陽性の自己免疫性肝炎が報告されて
いる。
(註3)C型肝炎ウイルスマーカー陽性の症例も除外するものではない。
(註4)SLEが疑われる場合は、III. を満たすこと、尿蛋白が陰性であることを確認
する。
(註5)時に急性肝炎の像を示す例がある。
(厚生省「難治性の肝炎」調査研究班1992)
◎フォークト・小柳・原田症候群
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p105)
感冒様症状の頭痛、めまい、微熱、嘔気、眼痛などののち、両眼性の急性びまん
性ブドウ膜炎が発症する。続いて髄膜炎症状を合併し、髄液中の細胞が増加し、
難聴、耳鳴り、めまいもみられる。発病2か月を過ぎると、回復期に入り角膜輪部、
皮膚、毛髪に脱色素が起こり半数に脱毛もみられる。メラノサイトに対する特異
的自己免疫疾患といわれ日本人に多い。
◎PIE症候群
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p92)
末梢血の好酸球増加を伴う肺浸潤を指しReeder and Goodrich(1952)がPulmonary
infiltration with eosinophiliaとして報告したのに始まる。病因的には真菌による
III型アレルギーが考えられ、レフレル症候群のごとき軽症型から慢性好酸球性肺炎
とよばれる重症型までが存在し、一応下記の分類が行われている。
1. 単純性肺好酸球増加症(レフレル症候群)
2. 遷延性好酸球増加症(慢性好酸球性肺炎)
3. 熱帯性好酸球増加症:ミクロフィラリアなどが原因
4. 喘息を伴う肺好酸球症:アスペルギルスの関与もありうる。
5. 結節性多発動脈、Wegener肉芽腫、過敏性血管炎など
◎化学物質過敏症について(シックハウス症候群も少し)
(共済エグザミナー通信 2004;15号,p.12)
1. 化学物質過敏症(MC)の定義
・かなり大量の化学物質に接触した後、または微量な化学物質に長期に接触し
た後で、非常に微量な化学物質に再接触した場合に出てくる不愉快な症状
(Cullen、エール大学)。
・多種類化学物質過敏症(MCS)に移行することが多い。
2. 化学物質過敏症の診断
1) 他の慢性疾患が否定されている。
2) 化学物質接触エピソードがあり、これが発症の契機になっている。
3) 化学物質接触で再発し、遠ざけることにより症状が軽減する。
4) 患者の訴えによる自覚症状が
■主症状2 + 副症状4あるいは主症状1 + 副症状5 + 2検査所見
---------------------------------------------------------
●主症状
1) 持続あるいは反復する頭痛
2) 筋肉痛あるいは筋肉の不快感
3) 持続する倦怠感、疲労感
4) 関節痛
●副症状
1) 咽頭痛
2) 微熱
3) 下痢、便秘、腹痛、月経過多
4) 羞明、一過性の暗転
5) 集中力・思考力の低下
6) 健忘
7) 興奮、精神不安定、不眠
8) 皮膚のかゆみ、感覚異常
●検査所見
1) 副交感神経刺激型の瞳孔異常
2) 視覚空間周波数特性の明らかな閥値低下
3) 眼球運動の典型的な異常
4) SPECTによる大脳皮質の明らかな機能低下
5) 誘発試験の陽性反応
※シックハウス症候群
◆室内空気汚染/居住環境が原因となって化学物質過敏症様の障害が現れて
きた場合。
◎原発性胆汁性肝硬変(PBC)診断基準(埠生省「難治性の肝炎」調査研究班1992)
<概念>
中年以降の女性に好発し、皮膚掻痒感で初発することが多い。黄疸は出現後
消退することなく漸増することが多く、門脈庄亢進症状が高頻度に出現する。
なお、皮膚掻痒感、黄疸など肝障害に基づく自覚症状を欠く場合があり、無症
候性(asymptomatic)PBCとよび、無症候性のまま数年以上経過する場合がある。
1.検査所見
黄疸の有無にかかわらず、血沈の促進、血清中の胆道系酵素(ALPなど)、総
コレステロール、IgM上昇を認める。
抗糸粒体抗体(AMP)または抗pyruvate dehydrogenase(PDH)抗体が高頻度に
陽性で、高力価を示す。
2.組織学的所見
肝組織では中等大小葉間胆管ないし隔壁胆管に慢性非化膿性破壊性胆管炎
(chronic non-suppurative destructive cholangitis:CNSDC)あるいは胆管消失
を認める。連続切片による検索で診断率は向上する。
3.合併症
高脂血症が持続する場合に皮膚黄色腫を伴う。
Sjogren症候群、慢性関節リウマチ、慢性甲状腺炎などの自己免疫性疾患を合併
することがある。
4.鑑別
慢性薬剤起因性肝内胆汁うっ滞、肝内型原発性硬化性胆管炎、成人性肝内胆管
減少症など。
<診断>
次のいずれか1つに該当するものをPBCと診断する。
1)組織学的にCNSDCを認め、検査所見がPBCとして矛盾しないもの。AMAまたは
PDH抗体が陰性例もまれに存在する。
2)AMAまたは抗PDH抗体が陽性で、組織学的にはCNSDCの所見を認めないが、PBC
に矛盾しない(compatible)組織像を示すもの
3)組織学的検索の機会はないが、AMAまたは杭PDH抗体が陽性で、しかも臨床像
および経過からPBCと考えられるもの
◎免疫グロブリン各クラスの特徴
構造 半減期 胎盤通過性 特徴
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IgM 五量体 5日 (-) 抗原に侵入早期に産生。補体活性化能・
が多い 細菌凝集能が高い。
------------------------------------------------------------------------------
IgG 21日 (+) 血中量が最も多い。中和抗体、オプソニン
抗体の殆んど。補体活性化能(+)。半減期長
好中球・マクロファージ・NK細胞に結合。
------------------------------------------------------------------------------
IgA 二量体 6日 (-) 粘膜上に分泌。涙・唾液・気管支粘膜・腸
管粘膜などに多い。局所免疫の中心。
------------------------------------------------------------------------------
IgE 3日 (-) 好塩基球や肥満細胞に結合。即時型アレル
ギーの原因。寄生虫の感染防御。
------------------------------------------------------------------------------
IgD 3日 (-) 血清中にごく微量(1mg/dl)存在。 機能不明。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◎NK細胞(NK-cell、ナチュラルキラー細胞)について
1.ナチュラルキラー細胞の顔つき
a.形態学的:大顆粒リンパ球(large granular lymphocyte、LGL)
b.表面抗原:CD3-、免疫グロブリン陰性、CD16+、CD56+、IL-2レセプター(α、
β、γ鎖)陽性、T-cellレセプター(TCR)陰性
2.ナチュラルキラー細胞の働き
a.ウイルス感染細胞の破壊--->感染免疫
b.腫瘍細胞の破壊--->腫瘍免疫
c.その他:造血調節など
◎Henoch-Schonlein紫斑病の臨床症状と合併症(NIH、No.3981(H12/8/12)、P25)
臨床症状 合併症
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1.眼症状 眼底出血、血管硬化症、虹彩炎、ブドウ膜炎、上強膜炎
2.口腔症状 咽頭・軟口蓋の出血斑、粘膜疹
3.呼吸器症状 肺出血、Goodpasture症候群
-------------------------------------------------------------------
4.循環器症状 心雑音、心筋障害、心筋梗塞、高血圧、心電図異常
(ST低下 T平低化 不整脈) リウマチ性心炎
-------------------------------------------------------------------
5.腎症状 微少血尿、紫斑病性腎炎(急速進行性腎炎、ネフローゼ
(20~60%) 症候群)、高血圧、腎不全
・組織所見 巣状分節状糸球体腎炎、IgAがメサンギウムに沈着、
メサンギウム領域のelectron dense deposits
-------------------------------------------------------------------
6.泌尿生殖器 亀頭の紅斑・浮腫、陰嚢腫脹・疼痛、睾丸捻転、
症状 陰嚢壁・精嚢・睾丸出血、尿管狭窄・閉塞
◎自己免疫性膵炎の臨床的特徴(日内雑誌 2002;91:640)
・高齢男性に多い傾向
・軽〜中等の腹部症状
・時に閉塞性黄疸
・他の自己免疫疾患の合併
・糖尿病の合併
・ステロイドに反応
・膵酵素上昇
・膵外分泌機能異常
・膵のびまん性腫大
・主膵管のびまん性・限局性不整狭窄像
・時に膵頭部腫瘤を形成・総胆管狭窄
・膵の石灰化、嚢胞合併は稀
・高γグロフリン血症
・自己抗体の存在
・リンパ球、形質細胞。好酸球などの炎症性細胞の浸潤
◎血清総IgE(IgE)値の異常を示す疾患(H18.10、日本医師会雑誌別冊『最新臨床検査のABC』S149より)
1. 増加する疾患
1) アレルギー性疾患:アレルギー性鼻炎・結膜炎・気管支炎、アトピー性
皮膚炎など
2) 寄生虫感染症
3) 肝疾患:急性・慢性肝炎、肝硬変
4) 膠原病:SLE、RAなど
5) 気管支肺アスペルギルス症
6) ネフローゼ症候群
7) 高IgE血症
8) Wiscott-Aldrich症候群
9) DiGeorge症候群
10) 川崎病
11) 木村病(軟部好酸性肉芽腫症)
12) IgE骨髄腫
2. 減少する疾患
◎IgG4関連全身疾患を疑わせる病態(NEJM 2009;361:5117)
1. Autoimmune pancreatitis
2. Sclerosing cholangitis
3. Chronic sclerosing sialadenitis (Kuttner's tumor)
4. Riedel's thyroiditis
5. Retroperitoneal fibrosis
6. lymphoplasmacytic aortitis
7. Lacrimal gland enlargement
8. Dacryocystitis
9. pseudotumor of the lung, kidney, and orbit